虹ヶ咲学園の恥晒し   作:種子島

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 零士くんにとってのご褒美回。





家具選びは慎重に

 

 

 

 突然だけど棚が欲しいんだなぁ〜

 

 なんかこう……いい感じにフィギュアとかゲームとか置いておける棚が欲しいんだなぁ〜

 

 

 てな訳で今日は遠路はるばる、わざわざ街に出てきています。適当に家具の売ってる店を見て回っていい感じのがあったら買おうと思っているのですが……ここで問題発生です。

 

 

「へいへいへ〜いwww そこの可愛いお姉ちゃんたちぃ〜ww 暇なら俺らと素敵な時間をトゥギャザーしない〜?」

 

 

「あ、あのぉ〜 私たち急いでるので」

 

「それに彼方ちゃんたち暇はしてないので〜」

 

 

 

 なんとなんと、我らが大天使ことエマ先輩と彼方先輩が駅前でクソ野郎にナンパされていたのである。この人混みの中で先輩たちに目をつけた審美眼だけは認めてやらんこともないが、下賎の者の分際で女神に声をかけるなど不届き千万。傲慢無礼。

 

 

 ……そろそろ狩るか♥

 

 

 俺はチーターもビックリな速度で事件現場へと駆け寄り、不届きな変態男から麗しの女神を隠すように仁王立ちする。

 

 

「えっ、零士くん!?」

「わぁ〜偶然だねぇ」

 

 

「おうおうおう! 兄ちゃんよぉ! 誰の許可を経てこのお方たちに声かけてんだオォン!?」

 

「ひえっ、なんだコイツ!?」

 

 

 激おこぷんぷん丸と化した俺が般若の形相で詰め寄れば、男は怯んでゆっくりと後ろに下がり距離を取る。そのままバックして駅の改札くぐってどっか行っちまえ馬鹿野郎。

 

 

「俺の中の修羅が暴れ出す前にとっととケツ向けてここから立ち去るんだな! ほらあと数秒もしたら出てくるぞ? 俺の中の修羅が修羅っちゃうよ? 修羅パンチで顔が凹んじまうぞ?」

 

「な、なんだコイツ…! やべぇ奴じゃねぇか! ちっ! 邪魔しやがって! 別にいいぜ! そんなガキ共に興味なんてねぇからな! ちょっと遊んでやろうと思っただけだからなっ!」

 

「おい訂正しろ! お前のその変なピアス引きちぎって鼻ピアスにしてやんぞ!」

 

 

 この野郎、エマ先輩と彼方先輩がガキだと? その腐った目ん玉をぶっ叩いて修理してやろうと思ったが、男はすたこらと駅の改札の向こうへと走り去って行った。

 俺はすぐさま後を追おうとしたが、後ろからいい匂いのする柔らかい何かがギュッと俺の体を包んできた。

 

 

「まぁまぁ零士くん。あの人もうどっか行っちゃったから大丈夫だよ」

 

「彼方ちゃんたち気にしてないから全然平気だよ〜?」

 

 

 顔を後ろに向けると、エマ先輩が俺を引き止めるようにギュッと抱きついてきていた。ということはさっき背中に感じた柔らかい感触の正体はヴェルデ山脈ということで……

 

 

 

 

「……ご馳走様です」

 

「?」

 

 

 

 ふぅ……さっきの感触は一生忘れないように俺の脳内フォルダに保存しておこう。間違って消してしまった時の対策にちゃんとバックアップも取っておこう。これ大事。

 

 

「ありがとうね零士くん。彼方ちゃんたちのこと助けてくれたんだよね」

 

「いえいえ、彼方先輩たちを助けるためなら、ヤンキーだろうが熊だろうがライオン相手だろうが守り抜いてみせますよ!」

 

「熊とかライオンが相手だったら一緒に逃げようね? でもありがとう」

 

 

 あぁ〜^ 荒んだ心が浄化されていくんじゃ〜^ やっぱり先輩たちはこの荒んだ世の中に癒しをもたらす一服の清涼剤なんですわ〜^

 

 

「そういえば先輩たちは何してたんですか?」

 

「今日は練習がないから彼方ちゃんと一緒にお買い物してたんだよ。服とか雑貨とか……」

 

「そろそろ夏だから水着とかね〜」

 

「なん……だと……?」

 

 

 水着……水着……水着かぁ。

 

 エマ先輩は可愛らしいワンピースタイプの水着とか似合いそうだよなぁ。いや、ここは敢えて攻めのビキニということもあり得るかもしれん。エマ先輩に似合いそうなのは……緑だな。緑のビキニ姿の先輩……そんなんもうエマメロンじゃないですか。

 

 彼方先輩はふわふわでふりふりしたフリルのついた水着とか似合うよなぁ絶対。いや、そもそも似合わない水着がないんだけどね? 下はゆったりとしたパレオとか着てそう。でもそのパレオからチラリと覗くむちっとした肉付きのいい太ももに俺はもうノックアウト寸前……

 

 

 

 

「……くっ! えっちすぎる…!」

 

「え?」

 

「こらこら、そういうのは本人の前で言うもんじゃないぞ〜」

 

 

 ポカーンとしてるエマ先輩と、嗜めながらも柔らかい笑みを浮かべる彼方先輩。しかし2人の水着と聞いてえっちな想像をしてしまうのは思春期の健全な男子なら仕方がないことなのです。

 

 

 

「それで、零士くんは何をしてたの?」

 

「俺ですか? 俺はちょっと家具とかを見に」

 

「わ〜いいねぇ〜」

 

 

 エマ先輩の質問に対して答えると、先輩は手をパンっと合わせて目を輝かせる。でもぶっちゃけ俺としてはこのまま先輩たちとどっかへ遊びにでも行きたい気分だ。買い物はいつでもできるけど、女神2人と一緒に遊べるなんて2度と無いかもしれないからな!

 

 

「まぁでも予定はあくまで予定なんで、もし先輩たちが良ければこのまま何処かへ……」

 

「それって、私たちも一緒に行ってもいい?」

 

「え?」

 

「ねっ、彼方ちゃん。いいよね?」

 

「うん、家具とか普段見ることないし、ちょっと楽しそう〜」

 

 

 

 ……ふぅん、これはつまりそういうことか?

 

 

「いつか俺と新居を探す時のために今のうちから予行練習をしとこうという訳か!?」

 

「飛躍しすぎだぜ〜」

 

 

 ま、まぁ確かに。いつか一緒に暮らすならインテリアの好みとかは一致してる方がいいよな。まぁ俺は例え好みでなくてもお二人が欲しい物ならどんな物でも気にしないけど。

 

 

「じゃあ、一緒に行きますか! 俺たちの将来のために!」

 

「……? よく分かんないけど、レッツゴ〜だよ〜」

 

「零士くんは元気だねぇ」

 

 

 テレレテッテッテ-!! エマと彼方が仲間になった!

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 エマ先輩と彼方先輩と一緒に歩くこと数十分、俺たちは大手家具屋チェーンの店へとやってきた。棚はどの辺に売ってるのかと店内マップを見ていると、エマ先輩が俺の肩をツンツンと突いてくる。

 

 

「零士くん、零士くん。すっごい沢山の家具があるよ〜! 広いね〜!」

 

「そうっすね。こんだけ広けりゃ大抵のもんはここで手に入ると思いますよ」

 

「そういえば、零士くんは何を買いに来たの?」

 

「何かいい感じの棚っすね。色々と置いておきたいもんがあって」

 

「なるほどねぇ」

 

 

 彼方先輩からの問いに答えると、先輩は俺の隣にやってきて店内マップを覗き込んだ。フワリと香る彼方スメルに頬が緩むのを我慢していると、先輩は不思議そうな表情で俺を見上げた。

 

 

「どうかしたの?」

 

「な、何でもないっす!」

 

「そう? ちょっと顔が赤いよ?」

 

 

 ぺたっと彼方先輩の手が俺の額に当てられる。これもう完全に脈アリだろ……と言いたくなる気持ちを抑えそのまま先輩のスベスベの手の感触に浸っていると、何かに気がついた先輩が声を上げた。

 

 

「あれ? そういえばエマちゃんがいないね」

 

「なにっ!? まさかまたさっきの不届き者みたいな奴がナンパを…!?」

 

「うーん……あっ、あっちのベッド売り場の方にいるよ?」

 

 

 彼方先輩の指さす方向に顔を向けると、ベッドが売っている場所の付近をフラフラと歩いているエマ先輩がいた。自由奔放な先輩も素敵だぜ。

 

 

「エマちゃん、ベッドが欲しいの?」

 

「ううん、そういう訳じゃないんだけど、このベッドすっごくフワフワだから果林ちゃんが気持ち良く眠れそうだなぁって」

 

「どれどれ? おぉ、確かに……これはすやぴが捗っちゃうよぉ」

 

 

 ベッドにごろんと体を預ける彼方先輩。サラサラの髪の毛をぶわぁっと広げて気持ちよさそうな笑みを浮かべている。

 

 ……このシーツだけ売ってくれないかな。別に匂いを嗅いだりしたいとかそんなことは思ってないけどね? 彼方先輩があまりにも気持ち良さそうだから欲しくなっただけだからね?

 

 俺がジーッとすやぴする彼方先輩を観察していると、隣のエマ先輩が顔を覗き込むようにして声をかけてくる。

 

 

「零士くんの家はベッド? それともお布団?」

 

「俺ん家もベッドですよ。まぁ今彼方先輩が寝てるような立派なヤツじゃないですけどね。あっ、丁度あれくらいのシンプルなシングルサイズで」

 

 

 エマ先輩に説明をしながら俺は売り物のベッドに背中から落ちる。

 サイズは同じくらいだが、俺の使ってるベッドよりもフカフカしていて上物だなこりゃ。気を抜いたらこのまますやぴしてしまいそうだぜ。

 

 

「……」ジー

 

「どうかしました?」

 

「このサイズで1人用なの?」

 

「え? まぁそうですね。シングルって書いてあるんで」

 

「でも、2人くらい全然寝れそうじゃない?」

 

「え?」

 

 

 何がエマ先輩の琴線に触れたのか分からないが、納得いってない様子の先輩はむむむと唸っていた。そして徐にベッドに背中を向けると、俺と同様にそのまま背中からゆっくりとベッドへと落ちてきた。

 

 ……つまり、ベッドに寝転ぶ俺のすぐ横でエマ先輩が仰向けになって寝ているという訳で。

 

 

 

「ね? 2人くらいへっちゃらだよ?」

 

「……」

 

「あ、でもやっぱりちょっと狭いかな? もうちょっとで肩と肩がぶつかっちゃうね。えへへ」

 

 

 

 瞬間、松本零士の脳内に溢れ出した、()()()()()記憶。

 

 

 

 

………

 

 

 

『ふぅ、そろそろこのベッドともお別れですかね』

 

『えー? 私は零士くんとくっつけるからこのベッド大好きだよ? ね? 温かいでしょ?』

 

『俺もそうなんですけど……ほら、ね?』

 

『……あっ、そっかぁ。ふふっ、私ったらすっかり頭から抜けてたよ』

 

 

 そう言ってエマは愛情の籠った視線を向けて、自身の膨らんだお腹を優しくさすった。

 

 

 

 

 

『もうちょっとで家族が増えるもんね。パパ♥』

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「3人でも4人でも一緒に寝れるベッドを買いましょうね、先輩!」

 

「え?」

 

「こらこら、戻ってこーい」

 

 

 目の前で揺れる彼方先輩の手が俺を夢の世界から引き戻す。いや、あれは夢なんかじゃない。そう遠くない未来の世界なんだ!きっとそうだ!

 

 

「エマちゃん。思春期の男の子をドギマギさせるようなことしちゃいけないよ〜」

 

「ドギマギ?」

 

「ほらほら、零士くん。棚を探すんでしょ?」

 

「はっ、そうだった」

 

 

 ベッドから起き上がった俺たち3人は気を取り直して棚の売り場へと向かう。しかしその途中、足を止めた彼方先輩が何かをジーッと見つめている事に気がついて俺も足を止める。

 

 

「先輩?」

 

「ん? あぁ、ごめんごめん。キッチン用品とかあるとついつい見ちゃうんだよね〜」

 

「家庭的で素敵ですね!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 

 彼方先輩は微笑みながらフライパンなどのキッチン用品を手に取って眺めている。普段から家で料理をしているとは聞いていたが、俺の贔屓目抜きにしてもやはり様になっている。

 

 

「何か欲しいのがあるの?」

 

「んー、今は特に無いんだけど……大人になって働き始めてお金が貯まったら、色々と買ってみたいなぁ。それで彼方ちゃんだけのキッチンを作るのだ〜」

 

「わぁ〜素敵だね!」

 

 

 ……仕事から帰ってきたら玄関までいい匂いが届いてきて、腹を鳴らしながら家の中に入っていくとキッチンに立って料理する彼方先輩……素敵すぎてトキメキが止まらないよっ☆

 

 俺がその光景を妄想していると、俺のことをジーッと見ていた彼方先輩がニヤリと悪戯っぽく笑った。

 

 

「零士くんってばまた何か変なこと考えてるね〜?」

 

「へ、変なことじゃないっすよ! ただ、腹空かせて家に帰ってきて、キッチンで彼方先輩が料理してたら最高だなって思ってただけです!」

 

「お、おぉ……そこまでストレートに言われるとちょっと照れるぜ〜」

 

 

 彼方先輩は困ったように笑うと、髪を手で整えて料理をする手振りを始めた。

 

 

「とんとんとん♫ おかえり〜、今日は零士くんの大好きなハンバーグだよ〜? なんて、こんな感じ?」

 

「……うっ!」

 

 

 

 瞬間、松本零士の脳内に再び溢れ出した、()()()()()記憶。

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

『はい、零士くんの大好きなハンバーグだよ〜』

 

『やったぜ! いただきま〜す! ……うん、やっぱり彼方の料理は世界一だなぁ!』

 

『えへへ、ありがとう。零士くんが喜んで食べてくれるから作り甲斐があるよ』

 

『いやでも本当に美味くてっ! 今日もおかわりしてもいいですか!』

 

『もちろん。あっ、でも……』

 

『ん?』

 

 

 

 彼方はエプロンを脱いで、テーブルの上に置いてある俺の手に自信の手を重ねる。

 

 

 

 

 

 

『晩御飯の次は……彼方ちゃんも食べてほしいな♥』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「夜の無限おかわり編ですね!!!」

 

「彼方ちゃんが悪いとはいえ、また妄想の世界に行っちゃってるぜ〜」

 

「でも嬉しそうだからいいんじゃないかな?」

 

「ん〜、まぁそうだねぇ」

 

 

 この後、エマ先輩と彼方先輩の呼ぶ声で何とか現実世界に帰ることができた俺は、その後も先輩たちと楽しくショッピングをしたのだった。

 

 

 

 

 

「結局、零士くんの欲しい棚は見つからなかったねぇ」

 

「ごめんね? 私たちが色々と寄り道したから見る時間あんまり無くなっちゃったよね」

 

「全然気にしないでください! 先輩たちとデートできて最高に楽しかったですから!」

 

「初デートが女の子2人同時なんて、零士くんは悪い男ですなぁ〜」

 

 

 彼方先輩は俺を揶揄うようにツンツンと優しく指で胸を突いてくる。

 

 あふぅん♥ いやん、彼方先輩ってば無邪気な笑みしてテクニシャンっ! んほぉ!らめぇ!

 

 

「じゃあ私はそろそろ寮に帰るね」

 

「おっと、彼方ちゃんもお家に帰って夕飯の支度をしないと」

 

「「じゃあね〜零士くん」」

 

 

 

 手を振って去っていく先輩たち。俺はそんな先輩たちの姿が完全に見えなくなるまでその場で手を振り続けた。

 

 

 

 

「……ふぅ、いい一日だったぜ」

 

 

 

 

 

 この後、エマ先輩と彼方先輩が寝てたベッドのシーツだけ買えないかお願いしに行こうか数十分間迷ったが、流石にやめておいた。ちゃんちゃん。

 

 

 





おま◯け

せつ「そういえば、昨日のお休みは零士さんは何をしてたんですか?」

零「ふっ、エマ先輩と同じベッドで寝てた」(嘘は言ってない)

せつ「…………は?」

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