虹ヶ咲学園の恥晒し 作:種子島
アニメ彼方ちゃん回
「でよ、昨日寝ずに考えてたんだよ。最強の弁当は何かって。でもやっぱり唐揚げ弁当だと俺は思うんだよな」
「ちゃんと寝てくださいよ」
放課後、俺は同好会の部室で雑談を交わしていた。雑談の輪に入っているのは俺とカッスとしずくと宮下と果林先輩の5人。
そして俺が唐揚げ弁当最強説を意気揚々と語っていると、それを聞いていたしずくからちゃんと眠れよとお叱りを受ける。
「で、考えてたら唐揚げ食いたくなったから今日は唐揚げ弁当作ってきたんだよ」
「え、零士先輩が自分で!?」
「あぁ、揚げ物作るの初めてだったんだけどコレが中々難しくてな。もう上半身が火傷で真っ赤っかだぜ」
「ナチュラルに上裸で揚げ物してるのなに?」
俺が作ってきた唐揚げ弁当の写真を見せるとカッスが驚きの表情を見せる。そしてついでに油はねで負った上半身の火傷の写真も見せると、宮下はジト目でツッコミを入れてきた。
仕方ねーだろ? 俺は家に1人でいる時は割と裸族なんだよ。人間は産まれた時はすっぽんぽんなんだからそれが1番自然体なんだよ。
「美味しそうですねぇ……かすみんにも今度作ってきてくださいよ〜」
「別に構わねぇけど、食ったら美味すぎて服弾けとぶぜ?」
「そんな某グルメ漫画みたいな現象は現実では怒らないんですよ」
「えっ」
マジかよ。美味いもん食ったら服が弾け飛ぶのってフィクションだったのかよ。つくづく現実ってのはロマンがねぇよなぁ。
「あぁもう…! そんなショボくれた顔しないでください! かすみんのコッペパンあげますから!」
「おぉ、悪いな。じゃあ遠慮なく……ッ!」ビリビリビリィッ
「えぇっ!? 先輩の服が弾け飛んだ!?」
「……どういう原理なのよ」
カッスお手製のコッペパンを食った俺はその美味さにおはだけしてしまう。弾け飛んだシャツを見た果林先輩はドン引きしながら小さく呟いた。
「ふぅ、美味かったぜカッス。俺のグルメ細胞に適応する食材だったぜ」
「すみません、何のネタなのか分かりません」
「マジかお前ト◯コ呼んでねぇのかよ。今度貸してやるから絶対読め!」
名作だよなぁト◯コ。菜々に布教した後しばらく2人でよく語り合ったもんだぜ。ちょっと男臭い作品だからカッスにハマるか微妙ではあるが。
「どうでもいいけど早く服着なさいよ。ほら、その……
「あれ? 果林先輩にはちょっと刺激が強すぎましたか?」
「その火傷の痕しばき倒すわよ」
「別に刺激とかじゃないけど、零さん意外とムキムキなんだね」
「細マッチョが女子にはモテるって聞いたからな。それを知った日から1日たりとも腕立て腹筋を欠かしたことはない」
「その努力をほんの少しでも勉強に向けられてたら……」
サラリと失礼なことを吐くしずく。失礼だな、それじゃあ俺が全く勉強してないみたいじゃないか。俺は常に勉強してるんだぞ? どうやったらモテるかとか筋肉についての勉強とか……数学?英語? 何それ美味しいの?
「でも頭のいい人も私は素敵だと思うわよ」
「……はぁ、果林先輩。そんな言葉に俺が踊らされるほどバカだと思ってるんですか?」
「あら、私は本当にそう思って言ったのよ」
「ったく……さて、別に果林先輩の言った事とか関係ないけどそろそろ日課の勉強でもしますか。別に果林先輩にかっこいいと思われたいとかじゃないけど。あー勉強楽しい」
「嘘つかないでくださいよ! 絶対日課で勉強とかしてないですよね!」
俺を甘く見たなカッス。俺はな、女子にモテるためなら自分をいくらでも曲げられるんだぜ? 仮に果林先輩が家庭的な人が好きだと言うのなら今からでもライフデザイン科に転入することすら厭わないんだぜ。
「どう?遥ちゃん、これが彼方ちゃんたちの同好会だよ〜 皆仲良しでいつも楽しくやってるんだ〜」
「………へ、へぇ〜」
愛しの彼方先輩の声が聞こえたので部室の入り口に顔を向ける。そこにはさっきまでの雑談にいなかったメンバーともう1人見知らぬ女の子が若干引き攣った笑みを浮かべて立っていた。
「し、新キャラか!?」
「彼方さんの妹さんですよ。今日見学に来るって言ってたじゃないですか」
「え、まじ?」
「さっきからずっと私たちのこと見てたわよ」
しずくと果林先輩が呆れたような視線を向けてくるが、記憶にないものは仕方がないだろう。それにしても彼方先輩の妹さんか……よく見たらちょっと似てるような気がする。
すると、妹さんが俺のことをじっと見ていることに気がついた。なんだ、まさか惚れたか…?待ってくれ俺には彼方先輩が…!
「お、お姉ちゃん……あの変な人は…?」
「ん? 零士くん? 同好会のマネージャーだよ〜」
「へ、へぇ〜」
「そして未来の君のお義兄さんでもある。よろしくな」
「はい!?」
……? 何かおかしなことを言っただろうか。俺の将来のお嫁さんである彼方先輩の妹ということは、俺の将来の義妹ということになるだろ。今のうちから友好な関係を築いておかないとな。
「お姉ちゃん大丈夫なの!? こんな人といつも一緒で変なことされてない!?」
「こんな人て君」
「だ、だって! さっきから見てれば! パン食べて服が弾け飛んだり!年上の先輩にデレデレしてたり! 謎にムキムキだったり! 変態的要素しかありませんよ!」
「……それ誰のことだ?」
「貴方に決まってるじゃないですか!!!」
なに!? お、俺は確かに変態かもしれないが女子の前では常に紳士に振る舞ってるはずだが!? 隠された俺の変態性を一目で暴くとは……やるな未来の義妹よ。
「大丈夫だよ遥ちゃん。零士くんは面白くていい子だよ〜」
「え、えぇ……」
「それに男の子っていうよりは……そうだねぇ、例えるなら凄く懐いてくれる大型犬みたいな感覚というか」
「お、大型犬…?」
「おい聞いたか宮下、絶対に脈ありだろこれ」
「さりげなく人じゃなくて獣扱いされてるのはいいの…?」
「彼方さんが望むなら俺は何者にもなれる!」
彼方先輩に首輪を繋がれて一緒に散歩して、ご飯を食べさせてもらって一緒にすやぴして……素敵なことやないですか。そんな生活も悪くないのかもしれないね。
「大型犬じゃなくて変態犬にしか見えないんだけど……」
「え〜? とってもいい子だよ? 零士くんお手」
「わん!」
「零士さんにヒト科としてのプライドは無いんですか?」
菜々がドン引きしたような顔で見てくるが今の俺にはそんなことは関係ない。例えお遊びや冗談だとしても彼方先輩がお手と言ったらお手をするんだよワォン!!
「よ〜し、じゃあお座り」
「きゃん!」
「ふせ」
「へい!」
「ちんちん」
「いいんですか?」
「え?」
「いいんですか?」
「スト〜ップ!!! 誰かあの変態犬を止めろッ!!」
「やっぱり変態犬じゃないですか!!」
俺は彼方さんに言われた通り芸をしようとしただけなのに、侑を筆頭に何人かのメンバーに強制的に掃除用具入れのロッカーの中へと押し込まれた。
「はぁ……はぁ……は、遥さん! さっきの人は気にしないで、普段の練習を見学してください!」
「……は、はい」
侑に背中を押されて義妹ちゃんが部室の外へ出て行く。それに続いて他のメンバーも外へ行ってしまい俺は1人取り残された……と思ったのだがゆっくりとロッカーの扉が開いた。
「はぁ、もう出てきていいですよ」
「菜々」
1人だけ部室に残った菜々が、俺が押し込められたロッカーを外から開いて解放してくれた。菜々は腰に手を当ててジト目で俺のことを見上げている。
「まったく……お客さんの前なんですから変なことはしないでください」
「包み隠さず普段のままの俺たちを見てもらった方がいいだろ?」
「……なんか正論っぽくてムカつきますね。とにかく、今後は大人しくしててくださいね」
「へいへい」
説教が終わったので俺も部室から出て皆の元へと向かおうとしたのだが、すれ違いざまに何やらモジモジとしている菜々が声をかけてくる。
「……れ、零士さん」
「ん?」
「……お、お手」
「は? なんで?」
「っ……! も、もういいです!」
顔を真っ赤にしてぷりぷりと怒る菜々は俺を置いて走り去って行ってしまった。
「……何だ今の」
…………
「うぉぉぉぉぉ!!!」
義妹ちゃんに見学される中開始した同好会の練習だが、今日は彼方先輩のやる気が違う。今はランニングをしているが、信じられないことにあの宮下の前を彼方先輩が走っている。
「お姉ちゃんがあんなに早く走るなんて……」
「彼方先輩はいつも頑張ってるぜ、遥たん」
「うわでた。ていうかその呼び方やめてください」
「人を化け物みたいに」
「零士くんはある意味化け物みたいなもんだから間違ってないよ」
「んだぁ…?このガキ……」
練習を見学する遥たんの横に俺と侑が立って皆をサポートする。この人本当にマネージャーだったんだ……みたいな目を向けられているのが心外だが寛大な俺はそれも受け入れる。
その後も彼方先輩は普段以上の気合いを見せて練習をこなしていく。練習の最後にストレッチを終えて今日のメニューが完了し、遥たんを交えての部室でのお茶会が開催された。
「改めまして、ようこそ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会へ!」
「わぁ……す、凄い…!」
テーブルの上に置かれた紅茶やクッキーやカッスお手製のコッペパン。乙女たちはそれを手に取って会話に華を咲かせていく。そして雑談もそこそこに、侑が遥たんへと今日見学してみての感想を投げかけた。
「今日一日見学してみてどうだった?」
「はい!皆さん凄く楽しそうで、それぞれの個性にあった練習もあってとてもいい同好会だなって思いました! 若干一名要注意人物がいるのが気にはなりますが…!」
「言われてるぜカッス」
「そっくりそのまま零士先輩にお返ししますよ」
ガタンッ
「えっ?」
その時だった。何の前触れもなく、彼方先輩は気絶するようにその場に突っ伏して寝息を立て始めた。のび太くん顔負けの眠りっぷりに遥たんは驚いたように目を見開く。
「大丈夫ですよ、枕もありますから」
「この枕、彼方ちゃんのお気に入りなの」
動揺する遥たんとは対照的に、しずくとエマ先輩は慣れたように枕とタオルケットをセットしていく。まさに至れり尽くせりというやつだ。
「あの、お姉ちゃんはよく寝ちゃうんですか…?」
「はい。私の知る限り彼方さんは寝るのが大好きですよ?」
「特に膝枕で寝るのが大好きだよね」
「俺もエマ先輩の膝枕で寝るの大好きです」
「してもらったことないくせに」
「今度してあげるね〜」
「シャオラァッ!!!!!!!」
「うわうるさっ」
「……お姉ちゃん皆さんに膝枕してもらうほど頻繁に寝てるんですね」
遥たんは何か気になったことがあるのか、途端に心配そうな瞳を浮かべてすやぴ状態の彼方先輩を見つめている。
「そういえば最近、確かにいつもより眠たそうにしてるような」
「この前も練習中に寝てた」
気がつけば、遥たんにつられるようにして全員が彼方先輩を心配そうに見つめていた。対照的に、彼方先輩はすやすやと心地よさそうに寝息を立てていた。
………
「………あれ?」
「目、覚めた?」
「くぅ〜! 遥ちゃんにお姉ちゃんの恥ずかしいところ見られてしまったぁ〜!」
「彼方先輩の恥ずかしいところ!?」
「零士くんステイ」
あれからしばらくして空も茜色に染まり始めた頃、目を覚ました彼方先輩は寝ているところを妹に見られたのが恥ずかしかったのか、悶えるような声を出して真っ赤な顔を枕に押し付ける。
「恥ずかしくなんかないよお姉ちゃん。いっぱい無理してるんだから疲れて当然だよ」
「無理してるって何を?」
「……お姉ちゃん、同好会が再開してからあんまり寝てないでしょ? 私、お姉ちゃんが忙しすぎて倒れちゃうんじゃないかって心配で今日は見学に来たの」
「そうだったの?」
真剣な表情で、ウチの同好会に見学に来た本当の目的を語りだす遥たん。姉を思う妹の優しさで涙が滲んできちゃうねこりゃ。
「でも、今日のお姉ちゃんは疲れなんか感じさせないくらい元気で楽しそうで……嬉しかった。いつも私を優先してくれたお姉ちゃんがやっと自分のやりたい事に出会えたんだって」
「遥ちゃん……」
「今のお姉ちゃんには同好会がとても大事な場所だってよく分かったの。だから私、決めたよ」
俺の義妹になることを決めたのか!?って言いかけた俺だったが、そんな軽口が吹き飛ぶような衝撃的な発言が遥たその口から飛び出した。
「私、スクールアイドルやめる」
「……ん?」
「「えぇぇぇぇ!!!!!!」」
予想だにしてなかった展開に、彼方先輩と侑の叫び声が部室の中で響き渡ったのだった。
意外と衣装の露出激しい系スクールアイドル近江彼方。