「――ここは、幻想郷です」
「幻想郷? ……聞いたことないわ。プッチ、あんた分かる?」
徐倫が眉をひそめる。
隣のプッチ神父は静かに首を振った。
「いや……聞いたことがない。建物の様式には見覚えがあるものもあるが、これほど大きな寺院なら知らないはずがない」
聖は穏やかな笑みを浮かべたまま答える。
「それも当然です。幻想郷は“外の世界”から隔離された場所ですから。普通の人間が知ることはありません」
「隔離された世界……?」
徐倫は周囲を見回した。
見慣れぬ山々。奇妙な静けさ。空気そのものが違う。
「そんな場所が本当に存在するなんて……。だが待ってくれ」
プッチが聖を真っ直ぐ見据える。
「君は何者なんだ? あの力、あの硬さ……普通の人間ではないだろう」
「私は魔法で身体能力を強化しているだけですよ」
「……は?」
徐倫が思わず声を裏返した。
「魔法!? そんなもの本当にあるの!?」
聖はくすりと笑う。
「ここには魔法使いだけではなく、妖怪や神様もいますよ」
「もはや何でもありだな……」
徐倫は呆れたように肩をすくめた。
だが内心では、「あんたも十分その枠だろ」とプッチに言いたかった。
しかし、それを口には出さない。
プッチは短く息を吐き、話を戻した。
「ここがどういう場所かは理解した。だが……私たちは元の世界へ帰れるのか?」
「おそらく、霊夢さんなら分かると思います」
「霊夢?」
「博麗神社の巫女です」
徐倫はまだ状況を飲み込みきれていない顔で尋ねる。
「その“霊夢”って人なら、私たちを元の場所に返してくれるの?」
「はい。帰れると思いますよ」
「“思う”ってところが不安なんだけど……」
乾いた笑いを浮かべる徐倫。
プッチが一歩前へ出る。
「すまないが、その博麗神社まで案内してくれないか」
「ええ、もちろんです。それでは行きましょう」
「助かるよ。本当にね」
三人は寺の石畳を歩き始めた。
――その時だった。
不意に。
世界が、途切れた。
「…………」
プッチの足が止まる。
今、何かがおかしかった。
耳鳴りのような違和感。
視界の焦点が一瞬だけぶれた感覚。
まるで“途中”が抜け落ちたような――
気づけば、徐倫と聖は少し先を歩いていた。
「……?」
プッチの背筋を冷たいものが走る。
反射的に周囲へ視線を巡らせた。
木々。石段。風。
何も変わらない。
だが確かに、“何か”があった。
C-MOONを出そうとして、寸前で止める。
(駄目だ……こんな場所で能力を使えば被害が出る)
徐倫が振り返り、不審そうに眉を上げた。
「プッチ? 何ぼーっとしてんのよ」
「……気づかなかったのか?」
その声には、僅かな緊張が混じっていた。
「今、何か起きた。ほんの一瞬だが……妙な感覚があった」
「妙な感覚?」
「説明はできない。だが確かに……時間が飛んだような――」
そこまで言いかけ、プッチは口を閉ざす。
自分でも何を言っているのか分からなかった。
聖も不思議そうに首を傾げる。
「私は何も感じませんでしたよ?」
「聖さんまで……」
プッチは目を細めた。
(私の気のせいか?)
脳裏に、数々の記憶がよぎる。
世界そのものを変えようとしたあの体験。
常人なら決して触れない領域。
(……神経が過敏になっているだけかもしれない)
ここへ来る前からも、常識外れのことばかりだ。
精神が疲弊していても不思議ではない。
プッチはゆっくりと息を吐いた。
「……すまない。忘れてくれ」
徐倫と聖は顔を見合わせる。
だが、それ以上は追及せず歩き出した。
プッチだけが最後にもう一度、背後を見る。
誰もいない。
木々が揺れているだけだ。
「……本当になんて世界だ」
どうだったでしょうか面白かったらコメントなどお願します m(_ _)m最近ジョジョの公式配信を毎日見てダウンロードしてるのに今回忘れた(´;ω;`)