エゴイストの成長を見届けたかった   作:miyata

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再始動編

 

 

【Side:ミヒャエル・カイザー】

 

 

懐かしい夢を見た。

あいつと出会った頃の事だ。

 

 

『よ、一緒にサッカーしようぜ』

 

 

あいつはいきなりボールを蹴ってきて、俺はそれを蹴り返す。あの出会いは確実に、人生におけるターニングポイントでもあった。

 

あれから、もう何年経っただろう。

今後も一緒にサッカーしよう。これからも、ずっと────

 

 

『…ッ?!』

 

 

ここは何処だ?

周りを見渡す。青い監獄内の俺のベッドだった。そうだ、昨日試合が終わって今日は帰るんだった。いや、確か俺はケイに会って、それで────

 

 

『あ、起きましたか?カイザー』

 

 

『ネス!!!!ッケイは何処だ』

 

 

『ケイ…?え?』

 

 

鈍いネスに、江戸川はケイだと伝えると、彼は驚いていた。ネスとは未だ会っていないのか?

その後、ノアや絵心に聞いたが、ケイは既に監獄を出ていたということが判った。

 

 

『電話がつながらない…』

 

 

ケイの携帯に電話をかけても繋がらない。元からあまりかけても繋がらなかったが、今は早く連絡が取りたかった。

暫くして、ノアがBMの幹部陣に確認したところ、BMの幹部陣は事情を知っているようなのだが、

 

 

『詳細は近々報告するから待て、と』

 

 

『…はぁ?』

 

 

今まで一貫して情報が降りてこなかったのに、近々何かを教えてくれるらしい。

本来俺は速攻帰国する予定だったが、滞在期間を伸ばした。どうやらケイは日本にいるとのことだった。

 

 

『…あいつに会うまでは戻らない』

 

 

そこから、衝撃的な報道があったのは5日後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[バスタード・ミュンヘン 有馬ケイとの契約終了を発表

ドイツのサッカーチーム バスタードミュンヘンは 有馬ケイ選手との契約を

双方合意の上で終了した と発表した]

 

 

 

 

『は…?んだよこれ』

 

 

ネットニュースに掲載されている画面を見ながら、どういうつもりだ、とノアに問い詰める。

ノアもこの事については知らなかったらしく、幹部陣と連絡を取っているようだった。

それから1日後、幹部陣からノアに連絡があった。

 

 

『カイザー、来い』

 

 

『は?どこへ────』

 

 

『有馬のところだ』

 

 

 

あいつにやっと会える────

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

白い部屋にベッドが真ん中に一つ。

包帯でグルグル巻きにされ、様々な管に繋がれたあいつが横たわっていた。

 

 

『峠は超えましたが、目覚めるかは判りません』

 

 

こんな状態になっていることが、受け入れられない自分がいた。もっと、一緒にサッカーをやっていたかった。でも、それを一番強く願っていたのはアイツ自身なのだ。

隣にいてくれるだけでいい、それはフィールド上ではなくとも、かけがえのない友人として日常の傍らにいてくれるだけで嬉しかったんだ。

それを、しっかり伝えられていれば、アイツをここまで悩ませることもなかったのではないだろうか。

 

 

今はただ、見つめることしか出来ない。

 

無情にも、ドイツへ帰る時間になってしまった。

 

 

『…もっと一緒に話したかった。

ッ俺の活躍を見届けるんだろ、待ってるからな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:・・・】

 

 

 

新英雄大戦は、日本サッカー界、延いては世界サッカー界に多大な影響を齎した。

サッカーの次世代を担う英雄たちが、サッカー界の根底を押し上げる進化を見せたのだ。

 

その熱冷めやらぬままま、日本で行われた新英雄大戦から約50日後────。

2019年5月。

日本でU-20W杯が開催された。

 

新英雄大戦を勝ち上がった上位23名のU-20日本代表はグループトーナメントを勝ち上がり、潔達は決勝トーナメントへ駒を進めていた。

 

一方、ミヒャエル・カイザーはU-20W杯ドイツ代表に選ばれ、再び日本の地を踏んでいた。

グループリーグも順当に勝ち上がり、決勝Tへ出場も決まったとある日。

 

 

『ケイが目を覚ましたらしい!!』

 

 

マネージャーから連絡があったカイザーとネス、ケイと親交のあった面々ははそのまま病院へ向かった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

有馬は、あの時のままの「無」の表情だった。

 

 

『…よぉ、ケイ。久しぶりだな』

 

 

話しかけていても、反応はない。目線も合わず、何処を見ているのかわからない。

こちらの声が聞こえているのかも怪しい。

廃人。

このような状態になってしまうのは、予め医者から説明は受けていた。

 

 

(…もっと、しっかり話したかった)

 

 

部屋に備え付けられているテレビには、U-20W杯のダイジェストが放送されていた。U-20日本代表に焦点を当てた番組のようだった。

どういう形であれ、観ていてくれている。それだけで嬉しかった。

 

 

『…また来る、俺の活躍を見届けろ』

 

 

ずっとここにいても、約束を果たせない。足を止めるわけにはいかない。

カイザーは力強く足を踏み込んで背を向けて出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:・・・】

 

 

 

3週間にも及ぶU-20W杯が閉幕し、約1年後。

202X年オリンピックが開催された。

サッカーはこれまでにない程盛り上がりを見せ、とあるドイツの試合日。

関係者席にケイは、車椅子に乗った状態でやってきた。

 

どうやら専属マネージャーを雇っていたらしく、

自分が目を覚ましたら、観に行きたいので連れて行って欲しいとお願いしていたらしい。

 

相変わらず、変化の無い表情。置物みたいだと感じさせるものがある。

 

 

"頑張って"

 

 

カイザーは、遠くから見て、有馬の口がそう動いたように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:・・・】

 

 

 

 

青い監獄が始まってから4年後の2022年。

短いようで長い月日で、サッカー界には様々な出来事があった。新しく上へ登り詰める者も、サッカー界から去る者もいた。平均26歳で引退する世界であるが、この数年で名を馳せては、入れ替わることがサッカー界の普通であった。

ブルーロックでオファーを獲得した者は、それを糧に更なる躍進を続けていた。年齢に関係なくより高みへと上り詰めることで、価値を引き上げ続けていた。

 

スペインのレ・アールでは糸師凛、そしてバスタードミュンヘンから移籍したミヒャエル・カイザーが新たに所属し、世界一のクラブに相応しい活躍を残し続けていた。

冷静沈着な糸師冴は、糸師凛が加わったことで、兄弟らしいコンビネーション抜群な仲睦まじい姿が観れると期待されていたが、暴言の応報が放映されるとSNSでその切り抜きがバズりまくっていた。それに加えて、ミヒャエル・カイザーが二人を煽り倒すのもよく見られる光景であった。ただし、休日は仲睦まじく一緒に遊びに出かけている様子が目撃され、そのギャップに驚いたファンも多かった。

CLを優勝し、不敵な笑みで”クソ跪け”とインタビューで語ったミヒャエル・カイザーは、その年の”サッカー選手で結婚したい選手”1位に選ばれたとか何とか。過激な女性ファンがあまりにもしつこいことで、一時は女性を徹底的に避けていたり。チームメイトや、沢山の人と交流をしてきたことで、自身にとってかけがえのない人物もそれなりに出来たらしい。

 

バスタードミュンヘンでは、注目の新星として潔世一が加入した。ノエル・ノアのワンマンシステムから、潔世一を加えたダブルスタンダードの流れになったが、それに的確に対応するアレクシス・ネスも、チームに欠かせない存在となり、高く評価されることとなった。

ネスはカイザーとチームが離れることにはなったが、カイザーの良さを引き立てることのできる”良きライバル”となれるために、鍛錬を積んできていた。

PIFA規定でノエル・ノアがバスタードミュンヘンを離れてからは、チームの弱体化が懸念されていたが、勢いを落とすことはなく、潔世一の躍進が続いていた。ドイツ国内リーグではバーサーク・ドルトムントの國神と良い勝負をしているとか。

 

他にも、マンシャン・Cの千切やユーヴァースの馬狼も現役で躍進を続けている。スナッフィー率いるユーヴァースは欧州五大リーグ制覇を達成したが、スナッフィーは未だ現役でいた。

FCバルチャに加入した蜂楽も、自分と近いインスピレーションを持つ沢山の選手と出会い、特にチームメイトのバニーを心から笑わせようと躍起になっていたり。

AJAJAXに加入した雪宮も、現役で走り続けていた。病気に向き合い続けながら、着実に進化しキャリアを積んでいる。

 

才能の原石達がブルーロックで獲得したオファーは、ほんの足掛かりに過ぎない。あの時から、各選手は見違えるほどに磨かれてきたのだ。

 

 

 

 

そして、今年のW杯では、現在決勝ドイツVS日本の試合が行われていた。

過去最高にレベルの高い予選リーグを勝ち上がり、遂に行われた決勝の盛り上げもピークに達していた。

サムライブルーが特徴のユニフォームを着た日本代表と、黒・赤・金のカラーが採用されているユニフォームを着たドイツ代表が、熱い試合を経てフィールド上で汗を流していた。

 

 

[さて、ドイツの青薔薇皇帝、ミヒャエル・カイザー選手が先制点を決めたことで1-2で終わった前半戦でしたが、これから日本もまだまだチャンスはありますからね]

 

 

[そうですね、本大会で日本代表はブルーロック始動時のメンバーが殆どを占める状態ですが、彼らは如何なる困難でも突破する姿を幾度となく見せてきました]

 

 

[ドイツはカイザー選手に注目が行きがちですけれども、アレクシス・ネス選手も注目ポイントです。今大会アシスト数1位ですからね!]

 

 

[日本は負けている状況ですけれども、昨年開催されたU-20W杯で大活躍の潔世一選手がいますからね。後半の巻き返しが凄まじいことで知られていますからね。それと糸師冴選手と糸師凛選手のコンビも見所でしたが、試合中言い争っている姿も見受けられましたが…。ここをどう突破していくかが、日本代表の今後の見どころですかね…と…お、選手交代のようですね]

 

 

[ここで投入されたのは…!奇跡の復活を遂げた”サッカーの完成体(パーフェクトフォーム)”と呼ばれた若き天才…!長期の闘病生活の末再びこの舞台に戻ってきたーーー!

 

有馬ケイだ!!]

 

 

会場は歓声に沸く中で、有馬が登場する。

フィールド上で向かい合う、カイザーと有馬。

 

 

 

『よぉ、ケイ。再びお前とやれてうれしく思う』

 

 

『ミヒャ、俺も嬉しい。今まで沢山世話になったからね。見ていてね、俺を』

 

 

もう二度とサッカーのフィールドを踏むことなどないだろうと思われていた有馬が、再び参上した。双方どちらにとっても、この対決をずっと待ち望んでいた。叶わないと思われた夢だったが、有馬自身が驚異的な回復力を見せたのと、かけがえのない友人の支えがあってこそだった。

二人は微笑んではいたが、その瞳の中には、闘志に燃え滾る炎を宿していた。

 

 

「おーい、ケイ!ちょっと来てくれ、作戦なんだが────」

 

 

「おっけー潔!今行くよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────て感じで行こうと思うんだ」

 

 

「了解。…で、冴と凛はなんで互いにそっぽを向いているの」

 

 

「凛がどうしようもない奴だから────」

 

 

「クソ兄貴が────!!」

 

 

「あ~うん、落ち着いて」

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

過去最高の盛り上がりを見せたW杯決勝ドイツVS日本の試合の終わった後。

 

その女は待ち構えていた。

 

 

(やっと、目にする機会がなくなったと思ったのに…!)

 

 

かつて愛した人を想起させる容姿。活躍を聞くたびに憎悪が溢れ出た。

その女は、かつて女子フットボール界隈ではそれなりの名を馳せていて、

その流れでJFUに入社したが、あの男の活躍を聞く度に幾度も妨害してきた。あれの目の前に直接姿を見せて犯行を実行したこともあったが、自分が関与していることが表に出たことはなかった。

 

 

(許さない…!許さない…!)

 

 

バックヤードから出てくる奴を包丁で刺す。今度こそは失敗しないように、計画を立ててここまで進んできた。

愛した人を彷彿とさせる容姿は、見ていて鬱陶しかった。幼いころからまともに相手せず、勝手にくたばってしまうだろうと思っていた。それでも、しぶとく這い上がるものだから鬱陶しいことこの上なかった。

 

待ち構えていると、出てきた。奴は一人だった。

 

 

「ッかあ、さん」

 

 

「どうして、また出てくるの。…やっといなくなってくれたと思ったのに。ッお前なんか…!!お前なんか…!!!」

 

 

そう言いながら、女は手に持った包丁で刺そうとした。

有馬は、自分に対してこれまで嫌がらせを行ってきた人物が、自身の母親であることは気が付いていた。けれども、それを断罪しようという気にはなれなかった。もう殆ど覚えてはいないが、かつて幼き日には自分に愛情を向けていてくれた人物だった。

 

自分にとっては、サッカーで出会った友人の方がかけがえのない存在であるはずなのに。

どうして対処してこなかったのだろう、と後悔の念に駆られる。23年生きてきた中で、一番大事な問題を見謝っていたと思った。

もっと、これから先も彼らと一緒にいたかったのに────。

 

 

 

 

 

『────近づくんじゃねえ、カス』

 

 

「痛ッ」

 

 

包丁はカイザーの足で蹴り飛ばされた。

 

 

『ミヒャ…!』

 

 

『はぁ…ッあぶねえなマジで』

 

 

驚きで目を見開く有馬。カイザーは眉間に皺を寄せ、絶対零度の瞳でその女を見下ろす。

カイザーは、そのまま女を地面に押し付けて持っていたタオルで腕を拘束した。

騒ぎを聞き、駆けつけた警備員によって女は確保され、連れていかれる。

 

 

『ありがとう、助かった』

 

 

『…もう、あの時の二の舞はごめんだ』

 

 

『ミヒャがいるから、今の俺がいる。本当にありがとう』

 

 

ケイは笑顔でそう言った。

それに対して、カイザーは、微笑みながら言葉を返す。

 

 

『…お前がいてくれたからこそ、今の俺がいる。

────こちらこそ、ありがとう』

 

 

 

 

 

 

 

【完】




拙作ですがこれにて完結になります。


ここまでお読みいただきありがとうございました。



活動報告をこの後投稿する予定です。
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