悟飯「ボク、秀知院に通いたいな」 作:親子孫
インフルエンザB型で一週間以上寝込みます
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テストが十二教科くらいあるのを、テスト期間ほぼなしの過密スケジュールで受けます
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部活で試合があります
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肋骨が疲労骨折してて療養します←イマココ!
更新が遅れた理由は上記のとおりです。大変申し訳ない
それと手前学生身分ですので、所謂受験期に突入するので更新頻度はめちゃくちゃ落ちます。大学に受かったら多分戻るから、首長くしてお待ちを……
「で、なんでジェットフライヤーが必要なんですか」
悟飯は操縦席に乗り込もうとするブルマに、呆れ顔で尋ねた。トランクスと悟天はすでに後部座席で遊んでおり、あとは悟飯が乗り込めば発進するというところだった。
これはカプセルコーポレーションの最新型のジェット機。ブルマがいつかのタイムマシンの浮遊システムを現行のジェット機の機構に組み込み、素早い離陸と高い機動性を得ることに成功した逸品である。その速度は驚くなかれ、向こうまで僅か一時間半。悟飯の通学時間の六倍の時間で海を渡ることができるのだ。
「そりゃあ、向こうの店に行くからでしょー」
「だから、それがなんでなんですか!別に都にお店がないわけじゃないんですよね」
そこまでで言葉が途絶え、ブルマがジェット機のエンジンをかける。仕方がないので悟飯が助手席に乗り込むと、揺れが大きくなり始め、いよいよ飛ぼうとしているところとなる。
「こっちのスマホ、向こうだと使えないのよ。周波数が合わなくてさ、向こうのスマホならこっちの電波も拾えるし、お得なのよ」
「な、なるほど」
「ま、正直どっちでもいいんだけどね。どーせ私が改造するし。いろいろ機能がついてた方が悟飯くんも嬉しいでしょ?」
(そんな勝手に……)「ええ、まあ、そうですね」
勝手に改造することを宣言したブルマに、悟飯はふたたび呆れ顔を向けた。保証の対象外になるんじゃないか、とか、法律的にヤバいんじゃ、とか悟飯は考えるが、こうなったブルマは止められないと知っているので口に出すのはやめておいた。
背中が浮く感覚がする。ついにジェット機が地面と離れ、浮遊する。ブルマがハンドルを動かして向きを調節し、機体の速度を上げていく。高度を上げながら加速していく機体は、気付けば街といくつかの山々を超え、海の上に入ろうとしている。その景色を悟飯はボーっと、窓から眺めていた。
「ねえ兄ちゃん」
そんな悟飯の背後から声がかかる。トランクスと持ってきたおもちゃで遊んでいた悟天である。トランクスが退屈になって寝てしまったようで、今度は悟飯に構ってもらいたそうな目線で、こちらを見ていた。
悟飯の弟、孫悟天。父がセルとの戦いの前に残していった忘れ形見である。姿形はその父の幼少期と瓜二つであり、悟飯とは十ほど歳が離れている。
「どうした悟天」
「今乗ってるコレってさ、兄ちゃんの学校のあるとこに行ってるんだよね?」
「そうだぞ。向こうはパオズ山より面白いものがたくさんあるし、おいしいものもいっぱいだ。楽しみにしてろ〜」
「兄ちゃんの友達には会える?」
「そ……れは、難しいんじゃないかな、タブン」
悟飯がそう答えると、悟天は「そっか」と呟いて、窓のフチに両肘を寝かせ悟飯から興味を失った。自分で空を飛べない悟天は、反応がイマイチな悟飯より、見る機会のあまりない空からの景色の方が面白くおもった。
(悪いけど悟天、お前をみんなに会わせちゃ何がバレるかわかんないからな)
悟飯の反応が悪かった理由は、悟天と友人たちが会ったら、悟天が何をしでかすか想像していたからである。悟天に悟飯の立場の危うさを理解してくれというのも酷な話であるが、もし「兄ちゃん今日は空飛ばないの?」などと言われたらオシマイだ。
(少し冷たかったかな。でも、ああ言うしかなかったし)
ひとりでモヤモヤ考え込んでいた悟飯は、気付けば両瞼が落ちてきていた。隣と後部座席で、すやすやと眠る子供たちを見たブルマは、黙ってエンジンの出力を上げた。
◆◆◆
「へ〜〜、最近のスマホってこんなのあるんだ、おもしろいわね」
「あのブルマさん、感心してないで一緒に話聞いてくださいよ」
都内某所、ケータイショップ。悟飯は店員にスマホの説明をされていた。自分そっちのけで店内を物色するブルマを自分の隣に呼び戻しながら、よくわからない単語のオンパレードな説明を四苦八苦しながら聞く。悟飯の脳内はパンク寸前であった。
「だ、大丈夫ですかお客様」
(ま、まいったな……なにいってるのか全然わからないぞ)
「あー!そのまま進めちゃってください。たぶん何もわかってないだけなんでウチの子」
悟飯が頭からケムリを出していたその頃、ひっついてきたトランクスたちはというと。ブルマ達が話をしている間は店の外に出られないというので、店内の興味を引くものをいじくり回していた。
「スゲーぞ悟天!このタブレットのサンプル、ゲームできるぜ」
「レースゲームも出来るよ!やろうやろう」
店内のタブレット端末のサンプルに、遊ぶことのできるアプリケーションがインストールされていることに気付いた二人は、やがてそれらで暇を潰すようになった。
そうやっているうちに、30分ほどの時間が過ぎた。ブルマたちの方は悟飯がようやく話についていけ始め、前のめりになって店員の話に相槌をうっていた。逆にトランクスたちは飽きが来始め、店内の子供エリアにあるソファーに体重を預け、ぼーっと、忙しなく動く店員を眺めていた。
「ヒマだね」
「ママたちは何を話してるんだろーな。これならウチにいた方がマシだったかも」
悟天が体を起こして、立ち上がって子供エリアから出る。トランクスがどこへ行くのか尋ねると、トイレと答える。すでに何周も歩いて見慣れてしまった店内の端末サンプルエリアを抜けてトイレへと駆け込む。
「?」
その一瞬、悟天に違和感が走る。誰かに見られたような、敵意を孕んだ視線のようなものを感じたのだ。驚いて振り返るが、特に変わったものはない。遠目から見えるトランクスも相変わらずぼーっとしているのみであり、悟天は首を傾げながら、トイレにふたたび走っていく。
その違和感は、気のせいではなかった。
(……バレた?視線だけで、あんな子供に)
このケータイショップ内に思惑を持つものがひとり。遠ざかる悟天の背中を一瞥しながら、話を聞いている悟飯たちを遠目から観察している。
『早坂愛』───四宮家幹部の娘であり、四宮かぐやの近侍。幼い頃から四宮に仕える、かぐやの懐刀である。なぜ彼女がこんなところにいるのかは、悟飯がスマホを買う決心をした日まで遡ることとなる。
◆◆◆
「早坂、今週末、スマホについて調べておいて」
呼び出された途端に、主人がそう言いつけてきた。
早坂はここで表情を変えるほど素人ではない。自分はあくまでも使用人。そう心の中で唱えながら、主人の次の言葉を待つ。
「じゃ、よろしくね」
「いやいやいや、待ってくださいよ。なんですかいきなり」
そう思っていたところ、それだけを伝えて席を外させようとする主人に待ったをかける。いつもならある程度指令の意味を伝える四宮が、こんな丸投げな命令をしてくるとは考えにくかった。
不思議に思って早坂は四宮の顔色を窺おうとする。それを察した四宮が顔を背け、両手で頰を覆うと、早坂はなんとなく、曖昧な命令を下してきた理由を感じ取った。
主人のこの手のワガママには慣れている。映画を白銀の一緒に観に行きたいと言われた際も駆り出され、白銀の行動の監視をさせられた。さっきの反応などから考えるに、これが白銀絡みの指令だということは簡単にわかった。
「今日、生徒会でスマホの話があったの」
「白銀会長がスマホ買ったんですよね」
これは早坂も知っている。白銀にスマホを持たせる四宮の策略のために多くの人間が動員されたのは記憶に新しい。四宮家のコックにケータイショップの店員を装わせてスマホの販促を行わせて、四宮家の庭師と早坂にスマホでの通信をしている風の行動をとらせて白銀にスマホの利便性を訴え、理解させる。
策が成就したからこそ白銀がスマホを買う決断に踏み切ったのだが、もしや不手際があったのか。そんな想定をしながら、早坂は四宮の言葉を待つ。
「ラインってあるじゃない」
「え?はい。ありますね」
「それで、ちょっと……」
「……もしかしてかぐや様、ラインを交換しようとしてしまったんですか!?かぐや様ガラケーなのに!」
「してない!ギリギリしてないわよ、しようとしただけ」
顔を真っ赤にして自身の言葉を否定する四宮を見て、早坂は頭を抱える。
白銀にスマホを買わせるという策略を立て始めた時点で、早坂は嫌な予感を感じていた。四宮のガラケーは相当の年代物で、四宮が幼稚園の頃に買い与えられた、企業用仕様のものである。メールを送るのにも数円かかり、そんなオンボロで「会長と校外でも連絡を取り合える」というのは幻想でしかない。
「はー……、スマホを買わせたいとか言い始めた時点で止めるべきでした」
「そうよ!なんであのとき止めてくれなかったの」
「だってかぐや様が『誰も口を挟めないような完璧な作戦よ、必ず成功させなさい』って言うもんですし、あっと驚くような考えがあるのかと」
「うー、とにかく!これ以上スマホで恥をかきたくないから、今週末に調べておいてちょうだい。わたしがいつ買い替えても困らないように」
「でしたら一緒に行った方がいいんじゃありませんか?スマホに買い換えるのなら、かぐや様のケータイもあった方が」
「え?まだ買い換えるつもりはないわよ」
四宮がそう言うと、早坂は予想が外れて疑問の声をあげる。早坂はてっきり白銀と連絡を取り合えるようにするため、スマホを手に入れるために調べさせようとしていると思ったのだが。
「はい?買い換えるからスマホを調査するのではなくて?」
「もうスマホについての知識不足で恥をかかないようにするためよ。このケータイは幼稚園から使ってるし、今更変えられないわ。会長のメアドと番号交換は出来たし、買い換えるのは別の機会でいいから」
簡単に言う四宮に、早坂は言葉を失った。
早坂は思う。どうせ買い換えるつもりのないスマホの情報をなぜ、自分の休日を使ってまで調査しなければならないのか。自分で行けばいいのに、なぜこちらに行かせようとするのか。この主人は自分をなんだと思っているのか。
しかしそんなマイナスな雰囲気は一切外に出さない。早坂はプロである。感情を押し殺し、ワガママをいう主人に頭を下げて言う。
「承りました、かぐや様」
◆◆◆
早坂は不機嫌ながらも、主命を果たすためケータイショップに訪れていた。趣味のパソコンいじりに通ずるところもあり、スマホの機能の情報を仕入れるのは彼女にとって苦ではない。ただ命令されてやらされているということは、やはり彼女を不機嫌にさせる要因となっていた。
(全く、かぐや様は最近ポンコツが過ぎる。第一パソコンで調べればいいものをなんで私に………それにしても最近のスマホは凄いですね、Type-CどころかQi充電もできるし4KでHRD対応も───って)
「HRD対応!?へぇー未来ー!」
早坂は心の中で毒づきながら説明書をめくる。スマホは一年ごとに新機種が発売されることも多く、今を生きる早坂にも知らない機能、未知の進化が盛りだくさんである。
それを眺めて、サンプルを手に取って操作してスマホの進化を体験することは彼女にとって存外に楽しく、入店直後の不機嫌さは徐々に薄れつつあった。
早坂の入店から約一時間後。あらかたの情報の頭に入れた彼女は、最後に見ていたサンプルを元の場所に戻して、移動の支度を始めた。早坂の予定では残り三店舗の調査が残っている。たった一店舗の調査をしただけでは、主人のワガママに対応できない可能性が高いと考えた為である。
しかし、入り口に向かおうとした矢先に彼女は足を止める。自動ドアが開き、元気よく二人の子供が駆け込んできた。その後に続いて入ってきた男の顔が、とてもよく見覚えのあるものだったのだ。
(あれは……孫庶務?)
早坂はとっさに悟飯からの視線を外せる位置に移動し、様子を伺う。万に一つもないだろうが、もし悟飯に『秀知院の早坂愛』だとバレるわけにはいかない。一方の悟飯はそんな動きには全く気付かず、初めて訪れたケータイショップを興味深そうに見渡していた。
そんな悟飯の様子から早坂はすぐに意識を外す。それよりも、悟飯の隣を歩く人物に視線が移っていた。それが予想もしていなかった大物だったためである。
(隣はカプセルコーポレーション社長のブルマ……!? 何故こんなところに)
世界一の大富豪、ブルマ。彼女の存在に気付いたときの早坂の驚きはひとしおではない。途端に早坂の周りの空気が冷え切る。ヒールの靴音がコツコツと聞こえてくるたび、背中に嫌な脂汗がふき出るのを感じる。
ブルマはそんな気ひとつもないのだが、その存在の重さを知るものにとって、そこに存在するだけで大きなプレッシャーが放たれる。まさに早坂はその謎の冷圧に気圧されていた。
(孫悟飯はしょせん親戚筋、わざわざケータイを買いにくる程度でブルマ社長が出向くような間柄ではないはず。そもそもこの日本の、こんなちっぽけな通信代理店に来た理由は?何が目的?
まさか、孫悟飯がブルマの実子?でも隠し子のようなものならば、こんな人目につくような場所で一緒に行動するはずがないけど)
いくら早坂が考えても、それらしい答えは見つからない。ただ早坂の目の前に、孫悟飯とブルマがいるという事実だけがそこにある。
その二人は入店してすぐ、店員の案内を受けて移動していった。早坂もそれに伴って、視界に入らないように慎重に二人を追う。二人が席について店員と話し始める。
(四宮、いやかぐや様に手土産でも持っていくか)
早坂はここで、彼らを探るという選択に出た。
この状況は早坂にとって好機であった。国外の大富豪であり、四宮グループが超えるべき最大の敵、カプセルコーポレーションのトップが、護衛もなにもつけずにこんなところにいる。
四宮家内でのカプセルコーポの評価は最低であった。格式高く、古くから日本の経済を主導してきた財閥、四宮。それに対して、革新的な新技術の開発により世界一までのし上がったカプセルコーポレーション。
四宮家からすれば、社長が女、成り上がり、四宮以上の実力、という気に入らない要素の塊であり、四条グループと並ぶ最大の敵なのである。
(ここで何か情報のひとつでも掴むことができれば、かぐや様の強力な武器にできる)
そんな目の敵のような存在のトップが、この場にある。彼女の弱み、情報を握ることができれば、それは四宮の大きな武器になりうる。そしてその武器をかぐや派閥が握っていれば、四宮家内の力関係に少なくとも変動が起こる。
早坂の狙いはそれだけではなかった。
(孫悟飯も、あれはあれで素性の知れない存在だし、探る価値はある)
悟飯の外向きのプロフィールは、ブルマの親戚であるということになっている。保護者が出席しなければいけないときはブルマが素性を偽ってやりすごし、カプセルコーポレーションが国外のものということで、その大胆なウソは意外にバレてはいない。
バレてはいないのだ。たとえ四宮家がかぐやの身辺を調査しても、悟飯がパオズ山の田舎者だということは。悟飯が国外の存在で、舞空術や筋斗雲での通学により跡をつけられないこととブルマのサポートにより、四宮家でさえ悟飯の正体を知ることはできていない。
早坂は息を整えながら、じりじりと、ブルマたちの会話が聞こえるギリギリの距離まで身を寄せる。ブルマの情報と悟飯の正体を丸裸に出来れば、休日を使ったということよりもお釣りがたんまり来る。
(ごめんなさい孫庶務。これもかぐや様のためだから)
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遅れたぶん、一話にまとめる予定だった話を二話構成にして先出しします。後半は出来るだけ早く投稿したいなぁという所存