第23話
ライブを受けたのは実は恋空での撮影期間だった。
「実はね。キングの武道館でのライブが決まったわ。」
「…へ?」
ミヤコさんから星野家どうでしょうの打ち合わせという名目で呼び出された。
「…マジっすか?」
「えぇ。びっくりしたかしら。」
「いや、びっくりするも何も……武道館ってそんな簡単に初ライブで使っていいものなんですか?」
「いいわけないでしょ。普通あり得ないわよ。初ライブが武道館なんて……それも単独でよ。」
「ですよね。」
俺は苦笑する。俺が聞く限り武道館でのライブは一万人超えとなる。
「でも何で武道館なんですか?普通ならもっとライブハウスとか劇場とかあったんじゃ。」
「ライブハウスとか数千人規模の劇場は倍率が高くなりすぎることから拒否されたわ。」
「…そんなに需要あるんですか?」
「何でないと思うのよ。最年少で単独での武道館ライブ。……スポンサーもキングの名前を聞いて何なら予算は倍以上に集まっている。……苺プロにとってあの事件以来の大きな仕事よ。」
事の重大さが分かる。元より武道館でライブできる人は限られてる。
「何時間の予定ですか?」
「二時間よ。アンコール求めるなら二時間半までなら取れるわ。」
「……最低後10曲ですか……」
「アイさんの曲も合わせてもそれくらいは欲しいわね。夏休み期間になるから」
「……なら『ありがとう』を2つとも入れたいなぁって。それと夏だし夏に関連した曲は入れたいなぁ。」
「……ホントあんたは緊張というのはないのかしら?」
「演技であんな失態を初手やらかしたら案外吹っ切れますよ。なんならちょっとだけ楽しみ……」
「ホントに頼もしいわね。」
その言葉にミヤコさんは笑う。
ついでにありがとうはSMAPといきものがかりの両方があるし、夏の曲は結構あるから固めても良さそう。
アカペラでの歌唱は既に俺の歌では十八番になっており、メロディーなしで歌をネットに上げるほどの人気コンテンツである。
「……でも、いいんですか?歌っても。」
「えぇ。ホントならもう少し我慢させたかったけど、もう貴方には大丈夫だと思ってね。」
「大丈夫ですか?」
「えぇ。……友達できたって聞いたわよ。それも2人も。」
「……えっと、それは誉められるんですか?貶されてるんですか?」
「あら、アイさんなんて未だに友人って呼べるのは一人だけでしょ?なんならアクアも友達といるところ見たことがないわよ。」
そういえばそうだった。うちの家庭はルビー以外人間関係に問題ある人ばっかりだった。
そのルビーも兄弟、母さんにべったりだし、ホント俺がいうのもなんだけど人間関係に難がある人ばっかりなんだ。
「……楽曲もそうだけど、うちにはバンドマンも外部から頼まないといけないのよ。できればピアニストも欲しいわね。」
「……そこら辺コネないですもんね。それに口が固くないと楽曲が漏れる可能性もありますし。」
「えぇ。匙加減が難しいのよ。壱護や元B小町の人たちも協力してくれてるけど……。」
「そこら辺は俺は苦手だからなぁ。」
「そうね。……一応こういうことがあって早めに決めたんだけど……まぁ成功失敗は別にいいから楽しみなさい。貴方はまだ若いんだから。」
というのがその頃のやり取りであり、着々と準備してきた。アルバムを製作して来たこともある。
……正直オーディションや声変わりは完全に予想外だったからちょっとだけ焦ったがそれでもゆっくりと準備を進めてきた。
「…ママ歌相変わらず上手いなぁ。」
「えっへん。そうでしょ!」
「そうでしょって。てか、キングの曲もいいよな。アイドルって感じではないけど。」
「……まぁな。」
やっぱりCV高橋さんと考えたら合う曲目茶苦茶あるんだよなぁ。ついでに今流れてるのはいきものがかりの『ありがとう』。元々俺が歌う曲だったがややこしいとのことなので母さんが歌っている。
そして歌が終わると司会からCMの合図がある。
そしてそのときがきた
『♫』
その曲が流れる。俺の一番のヒットソングと言える曲の『世界に一つだけの花』を皮切りに『キセキ』のサビが流れる。
『キング、ファーストアルバム夢へ6月20日発売。』
そして暗転したった一言
8月20日武道館ライブ決定
と書かれていた。
「……へ?」
「どうした?皆。」
「……もしかしてあんた話してなかったの?」
「ん?何のこと?」
「ホントあんたは家族に関してはこういうこと好きよね。」
「……かなちゃんは知ってたの?」
「はい。私と黒川さんはアルバムの件も知ってました。私はゲスト出演ってことになりますけど。」
「キセキ歌おうかって。お互いに恋空が分岐点になった作品だし、味がしなくなるまではお互いに擦り続けようって。」
「…擦るって。」
「今後も共演作は多々ありますし、私たちの代表作になりましたから。」
「正直、あの演技以上をできるのは暫く無理だろうなぁって。でも、ライブが終わったら俺も演技再開するよ。」
「そうなの?もう少し音楽の仕事やるんじゃないんだ?」
「ちょっと黒川さんやかな先輩の演技見てたらやりたくなっちゃった。」
正直俺も結構演技を楽しめているので、久しぶりにやりたくなったのだ。
「……でも、凄いね。私たちでも武道館ライブってホントに最後の年くらいしかやれてないのに…」
「そのことなんだけど、スポンサーがかなりついちゃったらしく、……生半可なライブ会場は取れなくなって……一応何だけど、正直チケットも関係者席も幾つか取れる予定だけど、二桁は取れないことが確定してる。取れたの一日だけだし。」
「……スポンサーそれほどついたの?」
「五十は確定してる。殆どが関わってきた会社だから断りづらくて。レギュラー番組で共演させてもらった会社の殆どだけど、有名どころだったらコラコーラや第一観光とか?後は疾風ホテルとかは第一観光と疾風ホテルで俺が番組で食べた料理を食べてからライブツアー的な奴をやるらしいし。」
「あの、疾風ホテルってあの疾風ホテルだよな?」
疾風ホテル。この世界でも芸能界どころか政界でも来賓として使われるホテルで有名なところだ。そのときのホテルのシェフが俺のレギュラー番組で料理を食べられることがあり、泊まったことはないものの、かな先輩と食べに行く際に真っ先に使ってる。…何なら何故か俺専用のスペシャルルームがあり、何かあったら何時でも泊まっていいことになってる。というよりもビュッフェが売り上げ倍になったらしい。
「うん。多分思い浮かんでいるやつで間違いないよ。ミヤコさんがライブやりますって言ったらこれでもスポンサーある程度減らしたっていうくらいにはついてる。」
「規模が違いすぎるんだけど……私たちのデビューは小さな劇場だったのに……」
「私も最初は営業で歌ったくらいです。」
「規模が大きければいいって理由は無さそうだぞ。結構荒れてるし。」
俺はエゴサ結果を見せる。するとかなり賛同派とアンチで割れていた。
「……まっこうなるよね。」
「…ママは分かってたの?」
「だって、元々露出可能な限り減らしてたからね。それにキングって女子受けはいいけど男性ファン層ってかなり低いんだよね?」
「アニメや漫画を見てる人を除いてだけどね。」
「……あ~そういや、アニメの主題歌歌ってたっけ?」
「恋空も元々原作は漫画だよ。何なら俺は原作者と交流あるし。」
元々漫画好きであることを公表しているのも幸いしている。
「まぁ、実際はどれくらい売れるかによるんじゃないか。幾ら関係者から好かれてても売れなければ今度からはできないだろ。」
「…まぁそうなんだけど。気楽ね。」
「まぁ、気は楽かな。音楽は趣味で、ここまで大きな舞台に立てるのだからね。……例え客が入らなくても最年少で武道館でライブしたことには代わりはないだろうしね。それに、一度だけで終わらせる気はさらさらないから。」
作曲も作詞も人任せだけど。歌に関してはこの世界で誰よりも上手く歌ってみせる。
まぁ、その前にアルバムが売れるかなんだけど……ネット全盛期で売れるのか。そんなことを心のなかで思っていた。