旅の仲間は家族となりて   作:氷ユリ

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第110話:不良更生の薬

 

 

 早速もらった船を使って新たな大陸へとやって来たナイン達。

 

 霊の気配を察知して、全寮制の学校エルシオン学院へと足を踏み入れる。

 

 

「ようこそエルシオン学院へ。あなた方が探偵の方で?」

「「はい」」

 

「さあ、中で詳細を話しましょう」

 

 

 

「ちょっと二人とも?探偵ってナニさ」

「まあまあ、中に行ってみよう」

「ココ、絶対何かあるわ」

 

 

 案内されて一室に落ち着く二人プラス一。サンディの姿は学長には見えていない。

 

「実はまた一人ウチの生徒が姿を消してしまいまして。これ以上問題が起これば学院の信用は失われるばかり。探偵の方が来てくださったからには事件は解決したも同然ですな!」

「あはは」

「ふふっ」

 

「お若い方で良かった、新入生が来ると話してあります、是非生徒から情報を集めてください」

 

 

『いつの間にこんな依頼受けてたのさ?事件あるとこに果実アリ。パパっと解決しちゃお!』

 

 

 

 

 

 こうして二人の学院生活が始まる。

 

 

 校庭に出ると、授業をサボっている生徒達が話し込んでいた。

 

「ったく納得できねーぜ。オレらの仲間ばっかさらわれるとか。おかしくねーか?」

「あれってマジか?幽霊がさらうってヤツ」

「あんなのただの噂だって。そんなんでビビんなよ!」

 

「それよりモザイオ、次の標的はお前かもよ!誘拐犯が来たらどうする?」

 

 

 制服を着崩し、髪を金に染め逆立てた生徒が答える。

 

「やれるモンならなってみろってんだ。そんなヤツ返り討ちだ!」

 

 

 そのモザイオと呼ばれた生徒の背後に、年配の男性の霊が見えた二人。

 

 

「今の見た?予感的中!」

「サチの勘は侮れないね。行ってみよう」

 

 

 

「ねえキミ達。ちょっといいかな?」

 

 

「何だてめぇら、新入りか。文句でもあんのか?あ、それとも仲間に入りたいのか」

「うん、それもいいねー♪」

「サチ待って。その前に、さっき話してた幽霊って何?」

 

「そんなのいる訳ねえ!今時ガキんちょだって信じてねーよ」

「でもさっき、キミの後ろに…」

 

 

「ああ?何お前ら。ひょっとしてオレがビビってるとでも?なめんな!何なら幽霊が出るか試してみるか?」

 

 

 深夜0時に天使像の額を触ったら幽霊が出るそうな。それを試す事となった。

 

 

「んじゃ、後で学院のホールに来いよ」

 

 

 

 

 

 そんな訳で、二人は指定された時刻に学院へとやって来た。

 

 そこにいたのはモザイオだけではなかった。

 

 

『夜中にくだらん悪さをしおって。何というふざけた生徒だ…貴様には教育が必要だ。私の教室へ連れて行ってやる…その腑抜けた精神を鍛え直してやろう』

 

「うわーー!やめろ、入ってくんなーー!…僕は、ろくでなし。ろくでなしはエルシオンの恥、厳しい教育を…」

 

 

 陰から様子を見ていた二人は、異変に気づいて顔色を変える。

 

「様子が変だ、あの生徒に幽霊が憑りついた!」

「ナイン声デカいっ、どこかへ向かってるみたい。気づかれないようについて行くわよ!」

 

 

 

 後を付けるとそこは墓地だ。

 その一角に地下へと続く階段がある。

 

 

「あそこに降りて行ったよ。幽霊が大勢いるのかな…」

「とにかく行ってみよう」

 

 

 恐る恐る降りて行くと、そこは教室のような空間が広がっていた。

 

 そこで教師の霊が生徒達に怒号を浴びせている。

 

 

 囚われていた一人の生徒がナイン達に気づいて叫ぶ。それはモザイオであった。

 

「ダメだお前ら逃げろ!お前らも出られなくなるぞ!」

 

 

『ろくでなしは黙っておれ!』

 

 

 こんな言い草に、珍しくナインがキレる。

 

「キミがどんなに偉いのか知らないけど、生徒を、人をそんなふうに言うのはいけないよ!」

 

 

『貴様、私に歯向かうのか?教師に口答えするとは!その反抗的な態度、学院のウジ虫だ!』

 

 霊は突如魔物に変身した。

 

『私の名はエルシオン。この学院の創立者にして真の教育者!覚悟しろ、たわけ者共に説教など不要。お仕置きだ!』

 

 

「ここは僕にやらせて。そっくりそのまま返すよ!えーい!」

 

 ナインの呪文により、勝敗はあっさり決まった。

 

 

『私が、いなければ…この学院は、不良の巣、に…』

 

 こうつぶやきながら、魔物は女神の果実となった。

 

 

「どういう事だろう?」

「見て、さっきの霊がまた現われたわ」

 

 

『…私は一体何を…。ここは?私の教室ではないか。キミ達はエルシオンの生徒か。…どうしたというのだ、そのようなやつれた顔をして』

 

 霊は幻の教室に集められた生徒に向かって尋ねる。

 

 

 一番精気が残っていたモザイオがすぐさま答えた。

 

「ふざけんな、テメーが何日も閉じ込めたからだろ!」

 

 

『そうか…。思い出したぞ、私は才能あふれる若者達に、どうしても更生してもらいたい一心で果実に願ったのだ。まさか魔物になろうとは…正気を失っていた』

 

 教育への熱意が行き過ぎて暴走した結果であった。

 

 

『キミ達は命懸けで学友達を助けに来たのだな。誇りに思うぞ!こんな素晴らしい生徒もいる…。私も安心して眠れる。心配する必要などなかったのだな…』

 

 そして霊は消えて行った。

 

 

 

 気づけばその場は元の墓地に戻っている。

 

 

「まさかこんな目に遭うとはなぁ。お前ら、何者か知らねえが、助けてくれてありがとよ」

「どういたしまして」

「衰弱してるみたいだけど、皆無事で良かった」

 

 

 生徒達はすぐに元気を取り戻すだろう。

 

 今回の出来事が薬となり、更生してくれる事を祈るばかりだ。

 

 

 

 

 こうしてナインとサチの学院生活が終了した。

 

 

 

「何はともあれ、果実が手に入って文句なし!あのやんちゃボーイ君、イイ顔になったじゃん?」

 

「うん。僕もそう思ってた」

「あのキンパツは似合ってなかったからねー。願わくは黒髪に戻ってほしいかな」

 

 

「サチってば髪型重視?アタシは断然顔っ!」

「そんな事言ってない。お師匠のイザヤール様はスキンよ?でもステキなんだからっ」

 

「キャーッ、アンタ侮れないわね、お師匠とまさかの?!禁断の恋っっ」

 

「誰も恋なんて言ってないでしょ!ナインも何とか言ってよ」

 

 

 

「…そういう話、僕に振らないでくれるかな」

 

 

 女子のコイバナにはついて行けないナインであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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