早速もらった船を使って新たな大陸へとやって来たナイン達。
霊の気配を察知して、全寮制の学校エルシオン学院へと足を踏み入れる。
「ようこそエルシオン学院へ。あなた方が探偵の方で?」
「「はい」」
「さあ、中で詳細を話しましょう」
「ちょっと二人とも?探偵ってナニさ」
「まあまあ、中に行ってみよう」
「ココ、絶対何かあるわ」
案内されて一室に落ち着く二人プラス一。サンディの姿は学長には見えていない。
「実はまた一人ウチの生徒が姿を消してしまいまして。これ以上問題が起これば学院の信用は失われるばかり。探偵の方が来てくださったからには事件は解決したも同然ですな!」
「あはは」
「ふふっ」
「お若い方で良かった、新入生が来ると話してあります、是非生徒から情報を集めてください」
『いつの間にこんな依頼受けてたのさ?事件あるとこに果実アリ。パパっと解決しちゃお!』
こうして二人の学院生活が始まる。
校庭に出ると、授業をサボっている生徒達が話し込んでいた。
「ったく納得できねーぜ。オレらの仲間ばっかさらわれるとか。おかしくねーか?」
「あれってマジか?幽霊がさらうってヤツ」
「あんなのただの噂だって。そんなんでビビんなよ!」
「それよりモザイオ、次の標的はお前かもよ!誘拐犯が来たらどうする?」
制服を着崩し、髪を金に染め逆立てた生徒が答える。
「やれるモンならなってみろってんだ。そんなヤツ返り討ちだ!」
そのモザイオと呼ばれた生徒の背後に、年配の男性の霊が見えた二人。
「今の見た?予感的中!」
「サチの勘は侮れないね。行ってみよう」
「ねえキミ達。ちょっといいかな?」
「何だてめぇら、新入りか。文句でもあんのか?あ、それとも仲間に入りたいのか」
「うん、それもいいねー♪」
「サチ待って。その前に、さっき話してた幽霊って何?」
「そんなのいる訳ねえ!今時ガキんちょだって信じてねーよ」
「でもさっき、キミの後ろに…」
「ああ?何お前ら。ひょっとしてオレがビビってるとでも?なめんな!何なら幽霊が出るか試してみるか?」
深夜0時に天使像の額を触ったら幽霊が出るそうな。それを試す事となった。
「んじゃ、後で学院のホールに来いよ」
そんな訳で、二人は指定された時刻に学院へとやって来た。
そこにいたのはモザイオだけではなかった。
『夜中にくだらん悪さをしおって。何というふざけた生徒だ…貴様には教育が必要だ。私の教室へ連れて行ってやる…その腑抜けた精神を鍛え直してやろう』
「うわーー!やめろ、入ってくんなーー!…僕は、ろくでなし。ろくでなしはエルシオンの恥、厳しい教育を…」
陰から様子を見ていた二人は、異変に気づいて顔色を変える。
「様子が変だ、あの生徒に幽霊が憑りついた!」
「ナイン声デカいっ、どこかへ向かってるみたい。気づかれないようについて行くわよ!」
後を付けるとそこは墓地だ。
その一角に地下へと続く階段がある。
「あそこに降りて行ったよ。幽霊が大勢いるのかな…」
「とにかく行ってみよう」
恐る恐る降りて行くと、そこは教室のような空間が広がっていた。
そこで教師の霊が生徒達に怒号を浴びせている。
囚われていた一人の生徒がナイン達に気づいて叫ぶ。それはモザイオであった。
「ダメだお前ら逃げろ!お前らも出られなくなるぞ!」
『ろくでなしは黙っておれ!』
こんな言い草に、珍しくナインがキレる。
「キミがどんなに偉いのか知らないけど、生徒を、人をそんなふうに言うのはいけないよ!」
『貴様、私に歯向かうのか?教師に口答えするとは!その反抗的な態度、学院のウジ虫だ!』
霊は突如魔物に変身した。
『私の名はエルシオン。この学院の創立者にして真の教育者!覚悟しろ、たわけ者共に説教など不要。お仕置きだ!』
「ここは僕にやらせて。そっくりそのまま返すよ!えーい!」
ナインの呪文により、勝敗はあっさり決まった。
『私が、いなければ…この学院は、不良の巣、に…』
こうつぶやきながら、魔物は女神の果実となった。
「どういう事だろう?」
「見て、さっきの霊がまた現われたわ」
『…私は一体何を…。ここは?私の教室ではないか。キミ達はエルシオンの生徒か。…どうしたというのだ、そのようなやつれた顔をして』
霊は幻の教室に集められた生徒に向かって尋ねる。
一番精気が残っていたモザイオがすぐさま答えた。
「ふざけんな、テメーが何日も閉じ込めたからだろ!」
『そうか…。思い出したぞ、私は才能あふれる若者達に、どうしても更生してもらいたい一心で果実に願ったのだ。まさか魔物になろうとは…正気を失っていた』
教育への熱意が行き過ぎて暴走した結果であった。
『キミ達は命懸けで学友達を助けに来たのだな。誇りに思うぞ!こんな素晴らしい生徒もいる…。私も安心して眠れる。心配する必要などなかったのだな…』
そして霊は消えて行った。
気づけばその場は元の墓地に戻っている。
「まさかこんな目に遭うとはなぁ。お前ら、何者か知らねえが、助けてくれてありがとよ」
「どういたしまして」
「衰弱してるみたいだけど、皆無事で良かった」
生徒達はすぐに元気を取り戻すだろう。
今回の出来事が薬となり、更生してくれる事を祈るばかりだ。
こうしてナインとサチの学院生活が終了した。
「何はともあれ、果実が手に入って文句なし!あのやんちゃボーイ君、イイ顔になったじゃん?」
「うん。僕もそう思ってた」
「あのキンパツは似合ってなかったからねー。願わくは黒髪に戻ってほしいかな」
「サチってば髪型重視?アタシは断然顔っ!」
「そんな事言ってない。お師匠のイザヤール様はスキンよ?でもステキなんだからっ」
「キャーッ、アンタ侮れないわね、お師匠とまさかの?!禁断の恋っっ」
「誰も恋なんて言ってないでしょ!ナインも何とか言ってよ」
「…そういう話、僕に振らないでくれるかな」
女子のコイバナにはついて行けないナインであった。