手に持つのはショットガン。見つけた獲物は逃さない。
方や痕跡も残さず超長期的に連続殺人事件を続ける極悪殺人鬼、シビュラ。

手の届く範囲は世界にまで及ぶ。逆らう者も逆に操る。
方や巨大薬物販売シンジケートの裏ボスとまで言われる薬物売人、シャンティ。

終わってる二人組が組んでるコンビネーションの話である。

※wotaku様のボーカロイド楽曲、『シャンティ』と『シビュラ』を基に勝手に作らせていただいております。運営さんから怒られたり何かまずかったら消します。

※思いつきかつ単発です。ある程度のプロットとかは作れてますが、続くかどうかは知りません。

※私の解釈から書いておりますので、解釈違いは許容してください。お願いします。

※ぜひ原曲を聴いてください。もっと言うならwotaku様の別の曲もたくさん聴いてみてください。ちなみに私の一番好きな曲はジェヘナです。いや、今回使わせて頂いている二曲もめちゃくちゃ好きですし、snoozeとかヸシュヌという線も……合作もアリならLindenbaumも捨てがたい……
↓素敵な原曲様
『シビュラ』
https://youtu.be/B8DEBwvkfbM?si=b3fRKgtp0iHzEZ64
『シャンティ』
https://youtu.be/POy0RvJeaqM?si=oP9pX03fVy3OEs1X

1 / 1
終わってるコンビ

足音が響く。

仰々しい四人の黒服黒帽黒眼鏡と、その前を歩くスーツ姿の男の五人組。

薄暗い空間の中、彼の足が向かう先には似たような状態──すなわちボディーガードに身を固めた、あちらは四人組の男達。どう見ても堅気ではない。

 

何せ、彼らは違法な薬物を取り扱う犯罪者。とある違法薬物を下請けで販売している売人とそれを買う側の人間なのだ。だから邂逅場所もこんな人気のない山の中の廃病院なんてところになる。

 

『わざわざこんな所に、こんな時間に呼び出して何の用だ?追加の販売なら少し値は上乗せするぞ』

先に待っていた男が口を開いた。この国の言葉ではない──少し訛った英語だ。しかし、その言葉に後から来た男は眉を顰める。

 

『そちらが呼び出したんだろう。カマ掛けは良いからさっさと用件を言え』

こちらはかなり流暢な英語で返した。

しかし、元いた男は更に片眉を引き上げる。

 

『何?…まさか』

 

たぁん。

 

そんな音と同時にパッ、と紅華が咲いた。

元いた男のボディーガードの3人のうち、2人がその身体が赤黒い液体で生け花にされていた。

 

売人は状況を把握しようと動揺を落ち着かせ、周囲の情報を探ろうとするが早いか、ふわり、と予兆もなく風の音が降りた。

あまりにこの場に──血と薬と暴力という裏社会の象徴に溺れた、そんな会場には似つかわしくない、白黒のエプロンを身に纏う桃色の髪が舞った。

 

『な、っ…!?』

 

驚いたような声を最後に。

 

にぃ、と三日月が歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィランネーム「シビュラ」。

10年ほど前から動いているヴィランであり、超凶悪な連続殺人犯。殺し方は様々だが、刺殺や銃殺と言った外傷による殺人行為のが多く、毒殺などのどちらかというと暗殺的な殺し方はほとんどしない。

警察とヒーロー、双方が全力を挙げて捜査を続けているにも関わらず、姿形や性別、個性、何もかも掴めていない謎に満ちた凶悪犯だ。

かの仲が悪い(片方が敵視しているだけとも言う)で有名なNo.1ヒーローであるオールマイトとNo.2ヒーローのエンデヴァーが協力しつつ捜査してもなお見つかってすらいないという時点で、かのシビュラの証拠隠滅能力や逃避能力は凄まじいことが伝わるだろう。

既に被害件数は1000を優に超えており、ここまで来るともはや警察の威信も地に落ちつつ世の中の恐怖指針は跳ね上がりそうだが…しかし、案外そうはなっていない。

というのも、この超長期的連続殺人事件の被害者は全て中〜重犯罪を犯しているヴィランであり、市民からするとヴィジランテ的な立ち位置のように思われているのだ。

また、オールマイトとはまた別のベクトルでの治安維持にも加担しているのでは、というような声も上がっており───

 

 

 

パサ、とボロボロのテーブルの上で開きっぱなしになっていた雑誌が閉じられた。

 

「あーぁ」

山奥のとある山荘の中。あくび混じりのそんな声が上がった。

一部の天井が抜けていたり、白いレンガの壁に苔が蒸していたりと廃屋のような場所にはあまり似つかない、のんびりとした声。あまりにも場違いだ。

更に、彼女の見た目も違和感を余計に際立たせている。

桃色の髪と目によく合った白黒のメイド服のエプロンにはべっとりと赤黒い染みが付いており、白い靴下とローファーにも飛び散っている。また黒い革製の手袋には華奢な彼女の体格には合わなそうなドイツ製の散弾銃が握られている。

 

そしてそんな彼女の周囲には、血に溺れた人影、人影、人影、人影──他でもない。ここは先ほどまで殺戮劇が行われていた場所だ。

 

「〜♪」

機嫌良さそうにアップテンポな鼻歌を歌いながら手入れを終わらせ、最後に手に持った散弾銃をケースにしまってふらりと室内を見渡す。

コツ、コツ、とローファーの音が響き、一つの人影の前で止まった。

 

『もしもーし、生きてるよね?』

流暢そうに──とはいえ、どちらかというとカタカナ的な英語で朗らかに、その場に全く合わない様な声色が飛び出した。

 

『…あれ?()()()殺してはないはずだけどなぁ…えい』

直後、えい、なんて気の抜ける掛け声と同時に、躊躇いなくその男の太ももに鋭い刃物が突き立てられた。

散った血液が彼女の手を濡らす。

 

『ガ、ッ、ぐああぁぁ!?』

 

『あらやっぱり生きてた』

 

『な、んで、なんだ、お前は…ヒーローが…!?ジャパンでは、ヒーローが殺人をするのか…!?』

のたうち回る男を尻目にうんうんと頷いていたが、男のその声にピク、と動きが一瞬止まった。

 

『…?あー、私ヒーローなんかじゃないんだよねぇ。シビュラ、名前だけなら知ってるんじゃない?』

にー、と笑う彼女はさらに続ける。

反対に、ただでさえ失血で青白くなっていた男の顔が、さらに土色に変わる。

 

『別に悪人をとっちめるためにこんなことしてるわけじゃないしー、私は人を殺したいからこういう事をしてるわけ』

曰くそれは強迫観念にも近しいデストルドー。笑い、機嫌良さそうに開示が進む。

 

『悲鳴、動揺、混乱…その間で零れ落ちる命──』

 

『血液から肉片まで、人間が死ぬ時は必ず同じ末路を辿る」

 

「良いよね…良いよねぇ…!!あははは!」

興奮が限界まで達したのか、いつの間にか言葉はヒートアップし、繕っていた英語は嬌声の混じった日本語になった。桃色の目の瞳孔は開き、彼女は紅潮した頬で刺さったナイフを握りそのまま捌くように、

 

力を───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シビュラ、そう呼ばれている彼女はヴィランである。

このご時世においてヴィランというのは、「個性」と呼ばれる異能を駆使し罪を犯す犯罪者のことを指す。その罪の重さや軽さには関係せず、個性を使っていれば大体ヴィランと呼ばれている。なんなら犯罪を犯す際に個性を使っていない人なんてほぼいないため、実質犯罪者=ヴィランみたいにもなっている。

 

彼女も、シビュラもそんなヴィランの一人である。しかし、他のただの()()()()ヴィランとは一線を画す凶悪ヴィランである。

 

活動域、日本全土。なんなら一部外国にも及ぶ。

殺害人数(キルスコア)3000超え。判明しているだけで、である。

関連していると考えられる事件発生件数1000件超え。こちらも判っているだけでこの件数である。

取り逃した──彼女から生き延びた人数、0。ゆえに情報が集まらない。

警察やヒーロー──個性を以てヴィランを制圧する資格を持った準警察達に捕捉された件数、0。ゆえに足取りの一つも掴めない。

日本において発生している犯人不明の殺人事件の8割以上は彼女が起こした事件とまで言われている上、おそらく発覚していないだけで関連している事件が未だ山のようにあるはずだと言われている。

 

世間では、流石に捕まらなさすぎることや活動域があまりにも広すぎることから空間に干渉するタイプの「個性」を保持していると考察されているが、確信にまでは至っていない。

 

不幸中の幸いなのは…彼女が一応ヴィランしか狙わないようにしていることだろうか。彼女とて世の中を無闇矢鱈と恐怖と混乱のどん底に陥れたいというわけではないらしく、その狙い通り、世間ではヴィランはヴィランでも犯罪者しか手にかけないヴィランとして広まっている。

後に「ヒーロー殺し」と呼ばれるヴィランの、狙う相手がヴィランになってるバージョンである。

 

シビュラ、という名前は昔どこかで殺した人間がダイイングメッセージみたいにそんな言葉を残していたらしく、その名前が通名として世間に広まっている。

 

 

そんな彼女は、事を済ませると速やかにねぐらにしている廃工場の屋上に戻ってきていた。しかし事を起こしたのは山奥も山奥。なんなら県もまたいでおり、そんな数時間で戻ってこれるわけがない…のだが。彼女は個性を使ってそれを可能にしていた。

 

カツカツと階段を降りていくと、二階に置かれたソファの上で一人の男性がタバコをふかしながらシビュラを赤い目で見据えた。

服装は豪華そうでいかにも金持ちという様子。黒髪を小さくかき上げて目だけを彼女の方に向けた。

 

「よう、()()()()()()()()()()()()

 

「うん、最高。やっぱりイイねぇ…」

上機嫌で彼女は、彼のもとに足を運ぶ。

 

「けど良かったの?そこそこの()()だったんじゃ?」

 

「あの程度の客なら山程いるしな。それならお前とのコミュニケーションに使った方が賢明と判断した」

あの二組は、男の傘下の者たちだった。

薬物の販売、商売として男が呼び出し、それをシビュラが襲ったのだ。あらかじめ邂逅場所も人数もある程度分かっていたが故に、今回はいつもより好きなようにできた、らしい。

らしー、とからからと笑いながらシビュラはソファの縁に腰かけた。それを見て男は眉を顰める。

 

「おい血は拭え。汚れるだろ」

 

「いーじゃん別に減るもんじゃなし」

 

「少なくとも椅子の価値は減る」

 

「椅子一つでつべこべいうようなタマじゃないくせにー」

 

「否定はしないが」

くくく、あはは、と軽口を叩き合いながら二人は小さく笑う。

 

違法薬物売人、シャンティ。

凶悪連続殺人鬼、シビュラ。

 

終わってる二人組が手を組んでいる現場であった。




続け。

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