裏社会の片隅に存在する、時代から取り残された雑居ビル。
そこに掲げられた看板はただ一つ――「榧守探偵事務所」。
この事務所は、裏社会の存在にとって不可侵領域として認定された場所であり、一度“依頼”が投函されれば、その座標は書かれた時間の間“管理者”から絶対の守護を受ける。
言葉を発さず、感情を示さず、ただ完璧な「清掃」を行うメイド服の女。
侵入者は館の一部となり、血も悲鳴も、記憶さえもこの世界から拭い去られる。
彼女にとって、命も未練もすべては“ノイズ”であり、世界とは手入れの行き届かない「庭」に過ぎない。
これは、まだ彼女の運命が変わる前の物語。
世界を拒絶されながらも問い続ける者たちと出会う、その前夜まで――
完璧に機能し続ける、
最も静かで、最も狂ったエリアキーパーの日常を描く。
清掃は、今日も滞りなく完了している。