比翼暴征木樵無欠宣誓婚連理 作:蘇民将来
エーデルワイス関係および諸々過去時系列およびキャラ崩壊注意・・・
※主な場面は原作4巻のあたりに相当します
私の異能は因果干渉系の「
簡単に言えば、ある種の魔術的な契約が我が
突き詰めて言えば約束をすること────自他問わず、約束の履行を強制させる力。
だからこそ、この剣を構えての宣誓は相手の打倒を強固に、私に強いることになります。
「
だから私の
すなわち我が剣は、初手最大にして誰も追いつくことが出来ぬ神速と怪力を強制される────
いえ、いえ、より正確には、私の最強の剣士というパブリック・イメージを損ねる=制約違反となるため心臓が死ぬほど痛くなるので、それを回避するために私自身が必死こいているだけですけど、大した違いはないでしょう。
決して善人ではない私ですので、そこは、当然のことです。
「我が名は『比翼』のエーデルワイス」
この名が世界に轟き、制約が確固たるものとなってから早何年か……、いえ、いえ、考え出すと
目の前の少年は、すでに死地への覚悟をし終えた、
どれほど強がれど
それでもなお、覚悟をもって、
逃げるも良し、私に道を明け渡しても良いはずの問答も、否と答えた時点で、この後の展開は判り切ったものでした。
「幼き少年よ────世界の広さを知りなさい」
右に握る装飾剣────テスタメント・エゴ。
左に握る装飾剣────テスタメント・トゥ。
一対たる双方ともに私の
それでも戦意を失っていないのは、評価してあげなくもないです。
男の子はそうでなくては、と、ほんの少しだけ楽しくなります。
……いえ、いえ、男の子と言いましたけど、破軍学園に所属している以上は
飛び級制度って
あれ? いえ、でも、東洋人ってこう、みんな幼く見えるというか。
感覚的に十歳ちょっとくらいの顔立ちに見えたのでそう言ってしまったんですが、今から言いなおすのは不自然ですかね?
いえ、いえ、
醜態をさらして下手に
下手にそんな形で生命の危機が訪れると、私の性質上パワーアップしかねませんもの。
そんな意味不明な方法で強化したと知られたら、リュカ=ルチアに爆笑されます。
いかに夫婦といえどそれは心外ですし、屈辱。
「
「────ッ! 斬撃が、見えな……、クッ!!!!」
いえ、いえ、まあ? 私が最強な事実に揺らぎはありませんが。
こればっかりは世界の真実というか、真理みたいなものなので揺らぎませんもの、ええ、ええ。
かつて剣の
極めることで師匠が使っていた流派のとある奥義を完封することが出来るようになるという技なのだそうですが、私の
身体全体をバネに見立て、限界点まで捻り、絞り、そこからの復元する反動、全身の骨や筋肉すべての力を合わせて音すら叩き斬る速度の一撃とする。
それすらも
でも私はその術理を、自分の身体の動かし方に取り入れました。
すなわち。
加速ではなく、斬ったという結果だけを自分の意思で世界に押し付けるような……、うん、私好みの術理です。
全力全開、を地で行くにも拘らず、一瞬のみの制御でその負担を負わないなんて、世界相手に詐欺を働いてるみたいでとんだ最強の悪女みたいですし。
要するに、とてつもなく素早く動いて相手を斬ってるだけってことなんですけどね。
気合を入れれば摩擦熱を利用して、それこそ「
さすがにそこまでは、魔人になる前はちょっと難しかったんですけど。
この速度で動けば、いかに勇敢な子といえどすぐさま斬り伏せることができる。
今までもそうでしたし、そこに何の疑問も差しはさむ余地はありません。
けど────、あら、あら?
私のテスタメントの、エゴとトゥの動き。
気のせいでなければこの少年、視えてますね?
しかもそれだけじゃなく、こちらに燕返ししてくる速度も明らかに、単純な人間の反射速度を超えています。
この子も全力全開────意思、魂による生命の全エネルギーの開放を行えると?
ですが、まだ練度が足りていないですね。
そもそも少年の超高速の斬撃は、超高速の斬撃というだけでそれ以上に洗練がない。
いえ、いえ、相当の努力の跡が見てとれる剣術をしているのは一目でわかっているのですが。
おそらく一撃必殺すぎて、その斬撃を正面から打ち合うという経験が不足しているのでしょう。
少しだけ面白くなり、わずかばかり剣に力がこもります。
すぐさま少年の顔が苦悶に歪み、そして、私、少しだけ気分が良くなります────彼我の実力差を再認識してもなお、意思が折れる気配がなく。
途中、ちょっと手が滑って彼の額を斬ってしまいましたが。
視界が制限されようとも、こちらの剣気────剣閃が向かう先を、視界に頼らず知覚だけで補っていますし。
ですが、そう、まだ意図が透けて見えますね。
上手くは言えないのですが、彼の動きは
理のために型が出来上るのが剣術ですが、そのすべてを必ずしも正しい場所で発揮できるわけではありません。
当然、その理というものには想定されてる事象というものが制限として存在します。
だから彼の剣は、技の類。
理よりも果を残すことを意図した一発一発のもの。
私の
だから、わかってしまうんですよ。
私の剣に対して、こちらが絶対的に上であるが故に技を避けず受けるのを狙っての、浸透勁のダメージによるノックアウトなりを狙ってるのでしょうが────。
幼い子供を見るような微笑ましさと同時に、舐めるな、という敵愾心が沸きます。
「────
だからこそ、現在の私の基本性能で放つ剣技としての月読でもって、彼の一撃をそっくりそのまま返します。
こちらは師匠の使っていた月読を、私なりに発展させたもの。
相手の動きを
わかりやすく言えば、相手の一撃を超える一撃を相手にそのまま返す技になります。
基本的には打ち合いでの使用を想定してる動きになりますが、分かる相手であればどれほど心を折る一撃になるかということですね。
少なくとも、あなたが積み上げてきた経験なんてわずか一瞬見ただけでも返される程度のものでしかないのだという、
それこそが、この技の目的といえます。
「なのに……、まだ続けますか」
全身傷だらけで。
今の打ち合いでさらに深まったダメージで。
まだ一分にも満たないというのにこの特別濃厚な剣のやりとりをもってして、全力全開もそろそろ限界でしょうに。
力の差はまぐれですら超えられないのはわかっているはず。
彼の妹だって、別に殺すつもりで私はここに立っている訳ではありません。
だいたい、だいたい、そもそもいい加減子供だって世間一般ではいないと色々アレな実年齢になってきているというのに世界情勢が全く落ち着かず中等学校時代に1月ほど短期留学した日本での恩師への義理も含めた助力やら何やらで何度も何度も何度も何度も妊娠の機会の芽を何度摘まれたこと……、いえ、いえ、ちょっと話がそれすぎですね。
当然こんなことを表面には出しませんが、頭の中はそれくらい余裕があります。
余裕があるだけ、私と彼との実力には差があります。
それでも────。
「貴女をこの場で通せば……、足止めせずに助力を乞えば、妹を助けてもらえるかもしれません。でも、妹の、僕の友達は助からない!」
「…………あの少年は闇の世界の咎人です。その末路も致し方ないことかと」
なによりそれは、目を見れば大体察せます。
私と違い、事情があった末にそう呼ばれているだけという訳でもありません。
自分の生き方を環境に強制され、歪まざるをえなかったことに恥じ、どうしようもない絶望がそこにあります。
彼の事前情報も知っていますし、少しだけ観察もしましたから、間違いないはずです、ええ、ええ。
……いえ、いえ、まあ今更ですけど
個人の主義主張にとやかく言うつもりはありませんし。
…………夫たるリュカ=ルチアだけは別ですけど。
私のそんな内心なんて当然知らずに、少年は、私という力の摂理に正面から吠えます。
「でも、妹はそれを望まない。だからここに来た!
そして僕はあの子の望みに付き合うと約束した!」
だからここは死んでも譲れない、と。
少年は私に、そう叫びます。
剣を合わせたから、私にはわかります。
彼の剣にどれほどの死ぬような覚悟と、野心と、その果てへの渇望が存在するのかを。
それをこの場で捨てても構わないというのか────命を落としても良いのかと問えば。
少年は、少しだけ苦笑いしました。
「はじめて……なんですよ。
ずっと心配ばかりさせて、兄らしいこともできずにいたのに自分を愛してくれた家族を。
そんな妹の初めての自分のための願いなんて、命を懸けるのなんて十分すぎる理由だと。
「だから────僕の
なんでしょうかねぇ、その。
そういう泥臭い覚悟というか、その。
いえ、いえ、こう、上手くは言えないのですが懐かしいものを見た気がします。
かつてのリュカ=ルチアが宿していたような、勇ましさと言いますか。
「少年。名を、教えていただけますか?」
「……黒鉄、一輝」
クロガネ、黒鉄────。
ええ、そうですか。
剣術の癖が欠片も遺伝していませんが、そうですか。
感じた意思は、それが乗った剣だけは、受け継がれたと。
何とも数奇な運命といいましょうか、ええ、ええ。
思わず苦笑いしてしまいましたが、これくらいは私のパブリックイメージを損ねないでしょうし、良いでしょう。
すぐさま表情を引き締め、そして、言ってあげましょう。
「今までの非礼を詫びましょう────若き侍よ」
あなたのお孫様は、立派にこうして、一人の戦士としてこの場に立っていますよ。
だからこそ、この胸の内に沸く母性のような温かな気持ち故にこそ、一切の手を抜かない。
いまだ子供ではある。
しかし、一人の剣士として全力をふるうに値する男なのだと。
一瞬脳裏を過った夫の顔にちくりと胸を痛めながらも。
「この私の
故にこそ────踏み倒しはなし。
「────
ほんの一瞬でも、使うと自覚すれば、多少なりともダメージは残りますが。
故にこそ、一切の容赦なく振るった私の
「……まさか見稽古で、私の
苦笑せざるをえない。
テスタメント両刃でもって両足と両腕を斬り飛ばそうと動けば。
こちらもまた今までのタイミングでの動きから見切れない速度で────0から100に一気に動き、自分から踏み込み攻めてくるとは。
さすがに
故にこそ、私の鈍ったその刃は彼の四肢を斬り落とせず、結局は先ほどの
良いですね。
強い意志を持ったまだ幼い侍────その美しい在り様は。
ちくり、と。
何故かリュカ=ルチアの顔が脳裏を過り。
わずかに胸が痛みますが、この程度は許容範囲でしょう。
「……ここで意地を張って倒れた貴方に手を出せば、恥をかくのは私の方ですしね」
守勢に回らされた苛立ちはありますが。
だって、それこそ、そんな無様なことをしたらパブリックイメージが悪くなりますし、ええ、ええ。
膝枕などして介抱したりするのが、あれだけ打ち合えたことのご褒美のような気もしますが……、まあ、それはちょっと、私も変に母性が暴走してますね。
やっぱり早く赤ちゃん欲しいんですけど。
世の中、上手くいかないものですとも。
私、子供それなりに好きですのに。
と、そんなことを考えているとお孫さんである彼を呼ぶ声。
振り返れば、そこには黒いスーツ姿の……。
ええっと、
ええと、ええと、いえ、確かあの人って結婚して姓が変わってたはずだけど、ええっと……。
とりあえず忘れましたので、
彼女は私を全力で警戒して、今にも怒りで殺そうとしてきますね。
クロガネ・イッキの面倒を見てるのは彼女ですか……。
「落ち着きなさい────」
「────ッ、チッ!!!!」
下手に言葉を重ねても逆に焦って攻撃してきかねないので、言葉と一緒に殺気を飛ばしておきます。
いまだ
バケモノめ、とか毒づいてきますけど、ひどい物言いです。
せっかく久しぶりに会ったというのにご挨拶じゃないですか。
お互い立場もありますし、久しぶりだとか何か言うようなことも、お茶をするような空気でも何でもないですけれど、もはや。
「安心しなさい。まだ生きています」
「……! ほ、本当か!」
「嘘をつく必要もありません。……生かすつもりはなかったのですけどね」
お陰で未だに、私の心臓はキリキリと悲鳴を上げている。
魔力強化で無理やり痛みをごまかしていますけど、それだけ
「ど、どこへ行くエーデルワイス!?」
「帰るのですよ。もともと、私はこの一件は部外者ですから」
……もう少し色々話したりしたいのですが、そろそろ痛みが限界なので帰りましょう。
自宅以外の場所で、リュカ=ルチア以外の相手を前に「痛い! 痛いです!」とか泣いちゃったら、イメージ棄損が加速してもっと心臓が痛くなっちゃいますもの。
というより彼女、せっかくだからエーデと昔みたいに呼んでくれれば良いのに……。
いえ、今の苗字がわからないからと
ただそう、伝言だけは頼みましょう。
「そこの、黒鉄イッキが目を覚ましたら、伝えておいてください」
次は好敵手として相まみえることを願っています、と────。
それだけでもきっと、おそらく。
彼は奮い立ってくれると期待して。
……やはり胸の内から湧き出るこの母性的な感情をどう処理したものかと、一度エーデルベルクに戻るまで少し悶々とすることになるのでした。
※ ※ ※
「あら? あらあらあらあら? ええ、ええ、いえ、いえ、はい、はい! やはりリュカ=ルチア! さすがリュカ=ルチア! あなたはいつだって、私にとって
「言葉の使い方間違ってない? いや、エーデさん」
「
「無茶言うなよ」
でもまた
ええ、ええ、大変けっこう。
キバ・ヨシカズとか言いましたか。
リュカ=ルチアを
ええ。
良い子良い子、と、私の膝の上で頭を撫でられている……、7歳くらいの男の子な姿となってしまったリュカ=ルチアは、それはもう、ええ、大変可愛らしいことこの上ありません。
色々と謎の母性のようなものを抱えたまま、約1日は機上の人になってた私ですが。
山頂に帰宅して早々、もうテンションはアゲアゲですもの、ええ!
……アゲアゲとかむしろ古いですかね? いえ、サイキョウさんがリーグ戦で使ってた気がするんですが、日本ではほかに誰もつかってませんでしたし、あれ?
いえ、そんなことはともかく。
考えてもみてください?
普段なら身長2メートルに迫ろうかという、私の頭1つより背の高い、まあまあ筋肉質で、赤毛がもっさりとボーボーで、なんとなく大型犬をイメージするようなオーバーオールの夫がですよ?
服のサイズが足りなくてトランクスタイプのパンツのゴムをしばって、何か着れるものはないかと上半身裸のまま、まだちょっと生意気そうな感じだけど基本的にお母さんとか大好きそうな感じの、赤毛を縛った感じの、私の足にしがみついてくるくらいの大きさの男の子になってるんですもの。
本人の
元気盛りな感じでたいそう愛らしく、思わずその場で暴走して
強制力は弱いので持続時間は一時間程度でしたけど……って、いえ、これも長いですね。
それだけリュカ=ルチアの子供時代の姿と今の私との間に隔絶した実力差があるってことなんでしょうが、それでも一時間くらい持続するってことは、どれだけ母性溢れてるんでしょう、今の私。
「エーデって
「誰が犯罪者ですかッ!」
「いや、公的には犯罪者だろエーデ」
「それもそうでした。……けど、小児性愛ではありませんよ! はい!」
まああれは所詮、権力機構側からの嫌がらせみたいなものだと理解していますので、大した話ではないんですが。
……いえ、いえ、タキザワさんが私と敵対的なことの原因の一旦にはなってると思うと、ちょっと思うところはありますが。
「リュカ=ルチアもこんな時代があったのですね」
「……あの、いい加減服、着せてくれないか? 流石に寒いというか」
「私がぎゅーってしているじゃないですか」
「エーデ、あんまり体温高くないよ」
ガーン、と。
ちょっとだけショックでした。
まあ、そんな話はちょっとだけおいておいて、真面目なお話。
「で、肝心のキバという男はいないと。……麓で仕事していた貴方を倒して私を呼び寄せる、ということで戦ったにも関わらず」
「まー、普通は近づけないだろ。ここ、高さの過酷さより
慣れてる俺とかは別にして本能的に警戒しちゃうんじゃないか? と、リュカ=ルチアらしくない甲高い声で言ってくるのが可愛らしく、思わず頭を撫でてしまう私です。
「でも、本当なんというか……」
「羨ましいです?」
「うん。そこは、素直に────
普通に実力だけ言っても俺より上だろ、と。
あっさり殺されてしまったが故に、リュカ=ルチアは自分を卑下します。
その目には暗い絶望が、絶望が、とにかく絶望が横たわっています。
とてもじゃありませんが、今の見た目には不釣り合いなほどの。
嗚呼。
だから。
だから、
そんな彼の姿を見てると、もう、どうしようもなく私の胸がどきどきします────。
────
決して善人ではない私ですから、そこは、当然の感情です。
だから、ぎゅーっとして、胸だって容赦なく押し付けちゃいますもの。
………あの、あの? そこで呆れた顔をされるのは納得がいかないのですけど。
「…………いや、水着とか買ってなかったからって戦闘用のその、
「そこは、ちょっと恥ずかしがるところなのでは?」
「
「ぬなっ!」
思わず羞恥心と、それをはるかに上回る怒りがこみ上げました。
侮辱や名誉棄損に対する私の反発精神、舐めてはいけませんよリュカ=ルチアは! もー!
「…………」
「えっ、何その顔? いや、ちょっと待てトランクスに手をかけるな、ちょっと、いや、本当に何を考えて────」
「いえ、いえ、
────色々忘れて無垢になりなさい、
「本気で何考えてるんだエーデルワイス・サーレマ!」
その後。
記憶を失って無垢で、年相応に
その後何がどうしてどうなったかというのは、秘密にしておきます。
別に、別に、アイリスから白い目で見られそうなことはしてないはず、です。
ええ、ええ、公的に夫婦なのですから。
ただ、一つだけ人体の不思議について知ったこともありまして。
なんと言いますか、ええと、どうやらリュカ=ルチア、
出る子もいるんですねぇ……、へぇ……。