ハリエットポッターと一つ上のお兄さん   作:鉄鯨

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言い訳します。
最近本当にやらなければいけない事多くて。
今年は人生を左右する一年になるんです。
完結させる気はありまくるので見捨てないで下さい。


テスト──それは学生の天敵……の筈なんだけどなぁ

 ハリエット達が罰則で禁じられ森に出向く事になり、心配したセスタがついて行こうとしてマクゴナガルに一晩中ぬいぐるみに変えられたり。

 セスタがスリザリンの五年生と喧嘩して決闘をする事になったり。

 セスタが魔法薬学の授業中に事故で女の子になってしまった事件があったり。

 そうこうして時は進み今学年の終わりが見えてくる。つまり夏休みが近づいてくるのだ。

 しかし、夏休みを楽しみにする学生の前に立ちはだかる魔物がいた。

 学年末テストである。

 学年末テストの足音が聞こえてくる様になるとホグワーツの学生もハリエット達の減点組へのやっかみをするどころでは無くなってしまう。

 セスタは常に予習と復習をしている優等生なため余り焦るような事は無あのだが、ホグワーツのみんながみんなそんな生徒な訳がない。

「あ゛あ゛あ゛」

「あー」

「う゛ー」

「ゔぁー」

 学生の本分を忘れ、遊びに耽っていた者達の呻き声がホグワーツのそこら中で上がる。

「あははは愉快」

「うふふふ爽快」

 それを眺めてセスタやシャルロットなどの予習復習完璧組は愉悦に浸る。

 哀れとは思わない。やるべき事をしていなかったのが悪いのだ。

 普段なら同級生位なら救いの手を差し伸べていたかもしれないがハリエット達に敵意を向けた一件もあってセスタ達は放置しておく事にした。

 それでは、自業自得の動く屍達を肴にお茶でもしばこうか──とは残念ながらならなかった。

 それもこれも我らがグリフィンドールの優等生、最近目的の為なら学校の規則を破る事を躊躇わなくなった秀才ハーマイオニー・グレンジャーのせいである。

 ハーマイオニーという少女は世にも珍しい勉強が大好きだという人間だ。

 新しい事を知るのが楽しくて仕方がない。わからなかった事がわかるようになるのが嬉しくて仕方がない。

 余り性根がよろしない人間からはガリ勉と呼ばれるような人種だ。

 しかし彼女は大多数のガリ勉とは違う。

 彼女の根幹は勇気のグリフィンドール。

 わからない事をわかるようにする為の情報源に本だけでなく人を選択できる人間なのだ。

 彼女は物怖じせずに歳が近いと言っても上級生であるセスタ達にも質問をしてくる。

 その質問の内容が問題だった。

「ハナハッカエキスとトコロテンガンを混ぜたらどうなるの?」

「マンティコアを初めて討伐した人の名前って何て言うの?」

「ゴブリンの大犯罪者ランロクを倒した人の情報ってどこでわかるの?」

「まち針をみみずにする時のコツってある?」

 そんな問題今回のテストに出ねーよ、どころかそもそも一年生の範囲を超えて二年生で習う範囲を超えた質問をしてくるのだ。

 二人して一個歳が上なだけだから! 何でも知ってると思うなよこの可愛い子ちゃんめ! と叫びたくなる。

 問題の難しさを考えるとパーシーなどの上級生にパスした方が良い案件だ。

 しかし、二人にそんな選択肢は無いと言っても良かった。

 セスタはグリフィンドールなのだ。

 シャルロットはグリフィンドールなのだ。

 騎士道のグリフィンドール。

 かっこつけたがりのグリフィンドールなのだ。

 可愛い後輩に頼られてごめんわかんないパーシー助けてー、本人達的には格好が悪すぎる。

 故に二人の勉強はキープどころな加速する。

 授業が終われば色んな誘惑を振り切って図書室へ直行してテストには絶対出ないがハーマイオニーが気になってそうな知識を片っ端から吸収しておく。

 同じくハーマイオニーも図書館に入り浸っているのだが彼女は自分の勉強以外にもハリエットとロンの勉強の面倒も見ているので二人よりは図書館にいる時間は少なく、何とか見つからずにすんだ。

─準備している姿を見られたくない

─スマートな姿を見てて欲しい

 二人のその姿を後に同じ学年のレイブンクロー生であるチョウ・チャンはこう語る。

「考え方可愛いかったけど、怖かったわ。にっぽん風に言えばオニが宿ってた、間違いなく」

 

 そんな二人のかっこつけるための努力は確かに成果はあった。

「過剰回復で逆に傷が大きくなるヤベェい薬になる」

「実を言うとマンティコアを最初に殺したと言う記録は魔法使いじゃなくてマグルの戦士のジャスタウェイって名前の人なんだよ」

「ミス・レガシーと呼ばれる人だな。名前に魔法をかけてるのか本名はわかってないんだがホグワーツに在校してた時期がダンブルドア先生と被ってたらしくてもしかしたら先生なら色々教えてくれたぞ!」

「変身術はねぇ、ひたすら細かいイメージをできるかだから観察あるのみかなぁ。他の変身でもそうだけどスケッチとかしてみたら良いよ!」

 セスタとシャルロットは何とか可愛らしい後輩の期待に応える事ができた。

「セスタ、シャルロット、教えてくれてありがとう!」

 ハーマイオニーのご両親の教育の賜物だろう。人との距離感を学んでいる最中の彼女は遠慮知らずな面もあるが、感謝を忘れない。

 一つ下の可愛らしい後輩の笑顔とセットのありがとう。

 それはかっこつけだがりの一つ上の先輩達のかつこつけた澄まし顔を剥ぎ取りニコニコのにやけ面を晒させるのに充分な威力であった。

 

 

─こんな簡単で良いのか……!

 元からそこまで苦では無かったテストだが、余りにも簡単に解けてしまった。

 羽ペンが止まらなかったどころか加速し続けた。

 セスタとシャルロットのテスト開始から彼らが問題を全て解き切るまでノンストップで続いたカリカリ音は他の生徒を恐怖の感情を覚えさせただろう。

─え、ちょっ、怖、え……怖い! メッチャ難しくしたんだけどぉ⁉︎

 生徒のみならず教師まで恐怖に陥れていた。

 これこそハーマイオニー効果。滅茶苦茶難しい筈のテストをノンストップで解いて周りを怖がらせましょう。という奴である。

 

 セスタ達の最後のテストは闇の魔術に対する防衛術だった。

 グリフィンドールの二年生達はクィレルのにんにく臭と何か焚かれている変な匂いのお香のマリアージュの中で思考力を削がれながらテストを受ける事になった。

 刺激臭が脳が思考を回すのを妨害し絶妙に温められた空気が眠りの世界へとグリフィンドール生達を誘う。

 テストが終わると生徒達はわっと歓声を上げその場から立ち去った。テストの成果の良し悪し関係なくみんなこの空間から少しでも早く抜け出したかったのだ。

 生徒達は成績が発表されるまでの少しの無敵時間で何をしようあれをしたいとテスト中の静寂と打って変わって喧しく騒いでいる。

 ケイティは箒に乗りたい。

 リチャードは肉を食いたい。

 サリエリはゴブストーンゲームがしたい。

 シャルロットは猫と戯れたい。

 コーマックの自慢話は無視された。

「おい!」

 楽し気な笑いの渦が広がっていた。

 その渦の中にセスタはいなかった。

「あの、少しお時間良いですか」

「どっ、ど、どうしたのかな? らららランパード君ッ」

 セスタは試験監督でもあった闇の魔術に対する防衛術の教師であるクィレルに話しかけていた。

「先生さ、何か最近体調大丈夫?」

 クィレルへの用事はセスタの善の心からなら気遣いであった。

 セスタの目から見て、クィレルは最近オカシイ。

─ハリエット達が森へ罰則に行った後くらいか?

 目に見えてと言う程ではないが体調が悪そうで、クィレルはそれを隠そうとしていた。

 実際大多数には隠せていた。

 それは殆どの生徒がまともな環境でまともな授業をしてくれない常に何かに怯えているような情けない教師に興味が無かったという悲しい現状が要因の一つであった。

 それでもセスタは気づけた。

 孤児院にいた時には人に迷惑をかける事を極端に怖がり熱が出ても隠そうとする子がいたのでセスタはそういう隠し事には敏感だった。

 そして、人が苦しんでいるのを知ってしまったからには何かしてあげたいのがセスタという少年だった。

 後は勘と言えばいいのか、セスタ自身にもわからないが何か嫌な感じがする。

「一回、誰かに見てもらった方が良いんじゃないですか?」 

 セスタのそれは医療的にマダムポンフリーとかに見て貰ったらいいのではないかという思いとダンブルドアみたいな人に魔術的に呪いとか掛けられてないか見て貰ったらどうかという二つの意味が込められていた。

 それを汲み取ったクィレルは幼く優しい少年に感謝した微笑む──なんて事は無かった。

「ランパード」

「え?」

 クィレルの顔は無だった。 

 喜びは無い。

 怒りが無い。

 哀しみも無い。

 楽しみは無い。

 常に何かに怯えていた男など最初からいなかったと言わんばかりに、クィレルは無だった。

 凪とは違う。平なのではない、穏やかなのではない。

 何もワカラナイ。

 ポッカリその空間に黒い穴ができたように感じる。

「あ……え?」

 突然のクィレルの変わり様に気圧されるセスタを放ってクィレルが続けた。

「君は優秀な生徒だ。私自身褒められたものじゃないと考えている授業をきちんと聞いている珍しい生徒だ。個人的にはその探究心の深さはレイブンクローでもおかしくなかったと考えている」

 クィレルはセスタを優秀な生徒であると言った。

「君は勇気ある者なのだろう。ハロウィンの夜、君はトロールと戦えていた。ただのトロールではない。私がこれでもかと言う程の悪意を詰め込み育てたあのトロールをだ。並大抵の魔法使いでは死んでいた筈だ。私の予定を狂わせたが、それは別として君の成した事は確かに偉業だ。それを認めなければならないだろう」

 クィレルはセスタを勇気ある者だと讃えた。

 今までの吃音は何だったのだと言いたくなる程の蛇舌さだ。丸で人が変わったかのような変様具合に怯えたセスタだが今しがた褒められた勇気が燃え上がった。

─先生が、育てた?

 聞き逃さない事をクィレルは言った。

 セスタ自身が殺されていたかもしれやいあの化け物、可愛い後輩達を殺していたかもしれない化け物。

 あいつをクィレルは自分が育てたと言った。ありったけの悪意を教えてやったのだと言った。

 よりによって、生徒達にそういう闇の怪物達から身を守る術を教える闇の魔術に対する防衛術よ教師が、そう言ったのだ。

「お前は、なにを「黙れ」」

 今まで持っていた敬意をかなぐり捨ててクィレルを問い詰めようとしたセスタだが、容易く口塞ぎの呪文で黙らされる。

「私は、君を評価している。私が教えている生徒の中で一番の才能を持っているかもしれないと」

「あぁ⁉︎ しかしだ! お前は、お前は、あのお方の邪魔をする! してしまう! してしまうのでだろう⁉︎」

「君は、お前は、正義の剣を振るうのだろぉ! 優しさの盾を掲げるのだろぉ! 勇気の旗をその心に宿すのだろぉ!」

 クィレルの言動は滅茶苦茶だ。

─正気じゃない……っ!

 ここでクィレルを止めなければならない。

 そんな焦燥がセスタを襲う。ここで止めなければ、誰かが涙を流す事になる。

 そんな気がした。

 しかしセスタの身体は動いてくれない。口塞ぎと同時に金縛りも掛けられていたらしい。

─こんな所であんたの実力を知りたくなかった

「私はお前を、殺さなければならない! お前は危険だ! あのお方の道を阻む。お前は勇敢すぎる!」

「あぁ、この素晴らしき生徒を、才能を、勇気を、私は殺すんだ!」

─くそ、何もできない

 万事急須。体内の魔力の動きまで止められてしまっているのだから本当にセスタは何もできない。

「ランパード、強い子だ。優秀な子だ。優しい子だ。安心したまえ、私は忌々しい恐ろしいマグルじゃない。痛く、苦しくはしない。ただ、眠りなさい」

 あんなに狂乱していたのに、最後は落ち着いて静かに、確かにクィレルはセスタに呪文を掛けた。

「ナイトメイトルトス」

 呻き声すら出せずにセスタの意識は闇の中へと堕ちてしまった。

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