刻を廻る双子の話   作:もく 

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そろそろ原作開始まで行かせて戦闘シーンとか入れたいですね。毎週投稿が厳しくなってきたので今後は2週間に1回になるかもしれません。


19話 始まりの季節

想定よりも早く終わりを迎えた京都校への交換留学。しかし、その3週間ほどの期間、照と月詠の二人はほとんどの時間を東堂葵の狂気的な対応に割かれることになり、精神的にも肉体的にもボロボロになって東京へと帰還した。

 

高専の敷地に入った瞬間、待ち構えていた五条がいつもの調子で手を振る。

 

「お、おつかれ~! 京都はどうだった?」

 

月詠は死んだような目で五条を睨みつけ、地を這うような声で答えた。

 

「もう行きたくねえ」

 

「その様子じゃ葵にやられたか~……おもろ!」

 

ケラケラと笑う五条に、月詠は冷酷な視線を突きつける。

 

「やっぱお前、土産なしな」

 

「えぇー!? そんな殺生なー!」という五条の叫びが響き渡る中、照は苦笑いしながら、出迎えてくれたみんなにお土産の紙袋を渡していった。

 

「いろんな術式を知れておもしろかったよ。……あれ、お土産は6人分って聞いたけど?」

 

目の前にいるのは、真希、棘、パンダ、憂太の四人。五条を含めても五人だ。照が不思議そうに首を傾げると、真希が面倒そうに顎をしゃくった。

 

「ああ、それか」

 

すると、校舎の陰から、少し気まずそうな表情を浮かべた一人の少年が姿を現した。ツンツンと逆立った黒髪が特徴的な、まだ幼さの残る少年だ。

 

「遅いぞ、恵」

 

「すみません」

 

真希に促されて歩み寄ってきた少年――伏黒恵は、真希の隣に立つ照の姿をじっと見つめ、ぽつりと口を開いた。

 

「……その人が、禪院先輩の彼氏ですか」

 

その瞬間、真希の顔がカッと赤くなる。

 

「名字で呼ぶな、あと彼氏じゃねえよ!」

 

すかさず隣からパンダがニヤニヤしながら肩を揺らした。

 

「……認めろよ」

 

「うるせえ!」

 

いつものように大刀を振り回して喧嘩を始める二人を、照は優しい笑顔で見守りつつ、隣の憂太に問いかけた。

 

「それで、この子は?」

 

「4月から入学する新入生。五条先生がかなり前に見つけたんだって」

 

「ふーん。……僕は天野照、よろしくね」

 

「伏黒恵です、よろしくお願いします」

 

伏黒は丁寧に頭を下げる。その律儀な態度に、照はしみじみと時の流れを感じた。

 

「もう二年生か……。新入生は何人?」

 

「伏黒君だけかな」と憂太が答える。

 

そこへ、五条にがっしりと腰を抱きつかれ、それを引きずりながら月詠が歩いてきた。鬱陶しそうに五条の頭を小突こうとしながら、月詠が伏黒を見る。

 

「秤みたいに手合わせしねえの?」

 

「やらないよ?僕はあのゴリラ二人とは違うからね?」

 

照が苦笑する。いつの間にか五条は月詠の手からするりと離れ、伏黒の肩に手を置いた。

 

「まあ、この二人がこの前話した特級の先輩ね。みんな、後輩いじめちゃダメだよ?」

 

「僕たちをなんだと思ってるんですか」

 

一年生(+伏黒)は、(絶対後輩をいじめるタイプだったんだな……)と心の中で確信するのだった。

 

 

 

 

---

 

 

 

 

それからしばらく経った、ある日の午後。

高専のグラウンドで一人、術式のイメージを練っていた照は、背後から声をかけられた。

 

「天野先輩」

 

「ん? あ、照でいいよ」

 

振り返ると、そこには真剣な眼差しをした伏黒が立っていた。

 

「俺の術式について、聞きたいことがあって」

 

「なんで僕?」

 

照が不思議そうに指をさすと、伏黒はため息混じりに頭を掻いた。

 

「五条先生が……」

 

『とりあえず照に聞けばいいよ~』

 

脳裏に容易に再生される担任の軽い声に、照はがっくりと肩を落とした。

 

「言いそう……。とりあえず、やれるだけのことはするよ」

 

「ありがとうございます。式神と戦うにあたって、戦闘のパターンがほしくて」

 

「なるほどね……。とりあえず、鵺出してみて」

 

伏黒が影で手形を結ぶと、黒い影から電撃を纏った大きな鳥の式神『鵺』が飛び出した。

 

「おー、バチバチするね」

 

照は物怖じすることもなく、鵺の頭を優しく撫でる。鵺も照の手の心地よさに、心なしか大人しくなった。

 

「今はどんな感じ?」

 

「調伏している式神が多くないので、組み合わせ次第ってところです。メインは鵺、玉犬、大蛇。蝦蟇と脱兎は相手に応じて使っています」

 

「今二級だっけ。いろんな戦い方ができて、いい術式だと思うよ。あとは……体術かな」

 

「体術……」

 

予想外の単語に、伏黒が怪訝そうに復唱する。照は鵺から手を離し、真面目な顔で伏黒を見据えた。

 

「式神使いは本人を叩くのが一番いいからね。でも、本人が強くなれば話は別。真希に教わるのがいいと思うよ」

 

「なるほど……」

 

納得したように頷く伏黒だったが、照は顎に手を当てて考え込む。

 

「でも、この程度のことなら五条先生も言ってそうだし……」

 

 

 

「お前の術式がヒントじゃねえの?」

 

 

 

不意に、グラウンドの隅の木陰から月詠がふらりと現れた。

 

「月詠?」

 

「式神使いなんだろ? 他の術師よりも判断の速さ、反射神経がいる。お前の『加速』で伏黒を鍛えろってことなんじゃねえか?」

 

月詠の指摘に、照は一瞬目を見開いた後、心底うんざりしたように天を仰いだ。

 

「なんであの人、そんなめんどくさい性格なの?」

 

わざわざ自分で教えず、特級である照の能力を後輩の育成に利用しようとする五条の計算高さに、照は呆れるしかない。

 

月詠はそんな兄の様子に、短く鼻を鳴らした。

 

「知らね」

 

春の柔らかな風が吹く高専のグラウンド。新たな後輩を迎え、双子の新しい一年が、静かに始まろうとしていた。

出てきてほしいキャラ、絡みを見たいキャラを教えてください(複数の場合は感想に加えてください)

  • 九十九由基
  • 東堂葵
  • 七海建人
  • 伏黒恵
  • 京都校メンバー
  • ドブカス
  • 秤、綺羅羅
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