地底の底、地霊殿の空気はいつもより重く、そしてどこか「異質」だった。

 古明地さとりの胸元にある「第三の眼」が、かつてない不協和音を奏でている。
 読み取れるのは、地霊殿に住まうペットたちの平穏な思考ではない。
 もっと遠く、境界の向こう側……本来なら「否定され、忘れ去られたもの」たちが住むはずの外の世界から、強烈な『魔法』の奔流が流れ込んできているのだ。

「……結界が、溶けている?」

 さとりは窓の外を見上げた。
 地底の空を覆う不変の闇に、見たこともない紋章のような光が走る。
 科学が支配し、神秘を切り捨てたはずの外の世界。
 その理(ことわり)が崩れ、どこかに秘匿されていた「もう一つの魔法」が、幻想郷の理と混ざり合おうとしていた。

 そして、その混乱と時を同じくして、最も愛すべき「無意識」の気配が消えた。

「こいし……? どこにいるの、こいし!」