徳川の手によって現代に蘇り、数多の強者と死闘を繰り広げた剣豪
宮本武蔵。
戦いの果て、辿り着いたのは――
呪いが渦巻く異世界だった。

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宮本武蔵 呪術を斬る。

禪院家にて、ある少年が産まれる。

その少年には、身に剰るほどの呪力が与えられていた。

 

だが、それは祝福ではなかった。

 

むしろ──

 

災厄に近い。

 

生まれた瞬間から、少年の身体には呪力が満ちていた。

 

いや。

満ちている、という表現では足りない。

 

溢れていた。

押し寄せていた。

 

まるで、容量の足りない器に無理やり水を流し込むかのように。

 

膨大な呪力が、少年の身体を内側から圧迫していた。

 

普通ならば。

 

肉体は壊れる。

精神は潰れる。

 

それほどの量。

 

だが、少年は生きている。

ただし──

苦しんでいた。

 

来る日も来る日も。

己の身体の内側を暴れ回る呪力に。

 

常に。

休むことなく。

苛まれていた。

 

呪術において、このようなケースは珍しくもない。

 

所謂──天与呪縛。

 

この世に生まれた者の中には、

生まれながらに強大な力を得る代わりに、

何かを強制的に犠牲にする“縛り”を持って生まれてくる者達がいる。

 

その強制的な犠牲。

そして、それによって成立する力。

それらの総称が──天与呪縛。

 

なのだが。

 

少年に、その強制的な犠牲と思われる要素が見当たらない。

 

痛覚がないわけでもない。

嗅覚がないわけでもない。

 

視覚、聴覚、その他の感覚も正常。

身体機能にも欠落はない。

 

特にこれといった犠牲を払っていない。

──にも関わらず。

 

縛りで成り立っているとしか思えないほどの莫大な呪力量。

 

だが、少年にとっては。

その呪力は“力”ではなかった。

 

正に重荷。

扱いきれない。

制御できない。

 

ただ、身体の中で荒れ狂うだけの力。

 

だから少年は。

鍛えた。

 

ひたすらに。

己の肉体を。

拳を振り。

走り。

骨を軋ませ。

筋肉を裂き。

 

それでもなお、鍛え続けた。

理由は単純。

 

耐えるためだ。

 

己の中に渦巻く呪力に。

身体が壊れないように。

 

呪力に押し潰されないように。

 

だからこそ少年は。

 

肉体を作った。

 

まるで、何か巨大なものを収める器を作り上げるかのように。

 

禪院家の術師たちは、そんな少年を見て呟く。

 

______一体、なんなんだ。こいつは。

と。

 

しかし

 

誰が予想出来ようか

少年が耐え続けているその呪力も

少年が鍛え続けているその肉体も

 

すべてが──ある存在のための“器作り”であることを。

 

その天与呪縛が。

 

『身体が完成次第、人格が別の者に上書きされる』

 

というものだということに。

そして

その“別の者”こそ。

 

剣を極め。

戦を生き。

そして異界の闘争すら経験した男。

 

剣の怪物が。

禪院家の肉体の中で。

 

静かに

再び、現世へ目覚めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都の山奥。

古社。

 

苔むした石段を上がった先に、白砂で整えられた広い境内があった

そこに、呪術界の名家が集まっている

 

禪院家

五条家

 

互いに言葉は少ない

理由は単純だ。

 

今日の試合が――ただの余興ではないからだ。

 

境内の中央。

 

白砂の上に立つ一人の少年。

長身

白髪

黒いサングラス

 

五条悟。現代最強の異能。

 

このような場に置かれた彼には珍しく、"退屈している様子は無かった"

 

理由は明白だ。

 

奥から現れる者の噂を______

 

約四百年も前から囁かれている噂の人物が___

 

 

現世に降り立ったというのだから

 

 

 

 

 

禪院家の列が割れ、そこから砂を踏む音が聞こえてくる

 

一歩。

また一歩。

ゆっくりと歩いてくる。

 

 

「‥へぇ。」

 

 

外見の見た目は五条と同じくらいだろうか

 

だが、六眼越しでなくてもハッキリと分かる

 

その歩き方。

重心。

気配。

それらすべてが一般人と____

 

否、それら全てが普通の術師とは一線を画す。

 

なんと言ってもだ。

 

歩いてくる彼と目線を合わせた際に感じるもの

 

その眼こそ、長い戦場を潜り抜けた獣の眼そのものだった。

 

 

「術式は無し。でも呪力量は悪くない。

そんでこの立ち振舞とその眼。」

 

「こりゃ驚いたな。"モノホンの宮本武蔵だ"」

 

 

六眼を通しながら彼を見る五条に、今度は彼が口を開く。

 

 

「お主が立ち合い人か?」

 

「あぁ。名は悟 性は五条

人呼んで"呪術界最強の異能"って一応呼ばれてんだよね」

 

 

調子良さげに答える五条を、武蔵は見つめる。

 

 

「____なんと。」

 

 

武蔵の瞳に映し出された風景

 

それは、かつて見た強き人と並ぶ程の天へまで届く黄金の山

 

加えて、床にはかつて見た少年と同じようなかつてないほどに広がる御馳走。

 

 

「なんとなんと‥‥‥」

 

 

武蔵もまた、一目見ただけで察する

 

"この少年もまた、強い"と

 

 

「強いな。少年(ボン)

 

「ボン‥‥?‥‥あぁ、少年って意味ね。」

 

戦国時代と現代での言葉遣いのジェネレーションギャップに軽く笑いながら、五条は告げる

 

 

「多分、おっさんが思ってる何倍以上に

俺強いよ?」

 

「言うではないか。」

 

 

 

互いに準備が揃ったのを見計らい、御前試合の合図が鳴り響いた。

 

最初に動いたのは宮本武蔵。

 

砂が弾ける。

踏み込み。

 

一歩。

二歩。

三歩。

 

速い。

 

並の術師なら、目で追うことすらできない速度で刀が抜かれる。

 

だが、その銀の軌跡は五条目前にて静止する。

 

それをみた武蔵は心底感心したように見つめる

 

「凄い速い。でも残念。

俺には届かないみたいだね?」

 

「これが少年の妖か?」

 

「その通り。俺の術式の説明はおじいちゃんにはちょーっと難しいんだけど‥‥」

 

「まあ言っちゃえば俺に近付けば近付く程減速して、永久に到達出来ないって感じの術式なわけ」

 

軽く説明した後、五条は肩をすくめながら言う

 

「つまり、アンタの剣は俺には一生届かないってこと」

 

五条の持つ六眼からの情報から、宮本武蔵の持つ剣にはなんの呪力も込められていない。

 

つまり術式を乱す力や、術式の強制解除をさせるような力も備わっていない

 

五条からすれば、彼から出せる手は無いに等しかった。"はずだった"

 

 

武蔵は黙って聞いていた。

 

それから、ゆっくり刀を構え直す。

 

「面白い」

 

そして。

 

五条ではなく、空を斬った。

 

ヒュン。

 

風が裂ける。

 

五条の眉が上がる。

 

 

「‥‥‥?」

 

もう一度。

 

ヒュン。

ヒュン。

 

空を斬る。

 

観客がざわめく。

 

「何をしている?」

 

「空振りか?」

 

 

武蔵は静かに言った。

 

 

「少年」

 

「なに?」

 

「お主は、妖によって俺の刃を通さぬようにしおる。

お主を斬ろうとしても、目前で止まり届かぬ」

 

「その通り。わかってんじゃん、今のうちに降参でもしとけば?」

 

 

再び強く刀を握った武蔵は、まるでいたずらを画策した少年のように嘲笑う

 

「ならばだ。」

 

「お主の"()()()()()()()()"」

 

 

武蔵が踏み込むその瞬間。

 

空気が____

 

 

 

空間そのものが斬り裂かれた。

 

 

五条の頬を、刀が掠めた。

赤い線。

血が一滴、白砂に落ちる。

 

 

「‥‥‥‥‥は?」

 

 

 

境内が静まり返る。

誰も声を出せない。

五条はゆっくり頬を触る。

それは確かに自身の血で間違いなかった。

 

 

信じられない。

無下限は常に発動している。

触れるはずがない。

 

 

「斬れた。」

 

 

驚愕する五条とは対象的に武蔵は嬉しそうに笑った

 

境内がざわめく。

 

五条の口角がゆっくり上がるがその目は鋭い

 

武蔵は刀を肩に担いだ。

 

「少年」

 

そして言う。

 

「改めて言っておこう」

 

「お主が仕掛け人(チャレンジャー)だからな」

 

少し首を傾け、再度告げる

 

「儂に挑む側は」

 

「お主の方よ」

 

一瞬の沈黙の後、五条の呪力が爆発する。

 

「ハッ……」

「クソジジイが……!!」

 

目隠しの奥で六眼が輝く。

 

「いいよ」

「やろうぜ」

 

ニヤリと広角を上げ、構え直す。

 

「どっちが最強か」

 

武蔵は刀を構える。

 

「やるか 少年」

 

戦国時代最強の剣豪と現代最強の異能が今ここで激突する。




なんかありそうでなかったから書いちゃった

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