バスで寝過ごしたら遊園地に着いた。 作:癒トリ素引き侍
「俺も、混ぜてくれないかな?」
ゆっくりと、実に優雅に。
人の良い笑みを浮かべて、なにやら怪しげなイケメンがメリーゴーランドへと近づいてくる。
「(……なんだこのみるからに黒幕っぽいイケメンは)」
このイケメンもブラックアウトのメンバーなのか? ……いや、こんなキャラの濃い人がメンバーだったら絶対紹介されてるだろう。少なくとも説明の一つぐらいはあるはず。
となると普通に考えれば可能性は2つ。メグミ達の知り合いがここに用があって尋ねに来た。もしくはブラックアウトの噂を聞きつけたファイターが挑戦を仕掛けにきた、そのどちらか。
「ジンキさん!」
「やぁ、羽根山さん。久しぶりだね」
「はい、お久しぶりです!」
「この前ユニフォーマーズに来てくれた時には会えなくて残念だったよ。……ここだけの話、最近は俺も少し忙しくてね。あそこに顔を出す事も少し減っているんだ」
会話の内容を聞く限り、どうやら前者らしい。しかしこのウララちゃんの嬉しがり方から見て、相当な信頼関係が見て取れる。ウララちゃんの後ろに見えないシッポがブンブンと揺れている様に見える。見えないけど。
「ユニフォーマーズの総大将が1人でここに来るなんて、少し前の事を考えれば穏やかじゃないわね」
「そこを突かれると耳が痛いな。加賀の絶叫花嫁とは、今後もいい関係でいられると嬉しいんだが……」
「あら、それはそっちの行動次第ねぇ」
「これは手厳しい」
当然と言えば当然なのか、ウララちゃんだけではなく他のメンバーとも顔見知りの様だ。
……なんというか、他の人達はパッと見歓迎ムードじゃないのか? 何人かのメンバーからは警戒の表情が見て取れる。トマリの言い方からして、過去に通常の交流以外にも何かあったのだろうか。
「さて……改めて大倉メグミさん、新リーダー就任おめでとう! 一度は同じ道を歩いた者の1人として、心からの称賛を贈らせて欲しい」
「……同じ道を歩いたかどうかは微妙な所だけど、ありがと。色々あったけど、あの一件は私の中の大切な物を気付くきっかけにもなったから、一応感謝はしてる」
「そう言ってくれるのなら、俺達がユニフォーマーズを作りあげた甲斐があった。むしろ感謝するのはこちらの方さ」
元から蚊帳の外だったが、いよいよ話についていけない。
『一度同じ道を歩いた』……『ユニフォーマーズ』、『あの一件』……どうにも話が見えてこないが、さっきメグミの話していた顔を出しづらくなっていた時期、と言う話と関係があるのかもしれないが。
と言うかユニフォーマーズってなんだよ、やっぱりどこかのファイター達のチームなのか?
「それで? まさかそれを言う為にわざわざここに来たんじゃないでしょ?」
「……そうだね。俺もサプライズは大好きだが、クドくなるのは好きじゃない。早速本題に入らせて貰おう」
そう言ってジンキ……さんは、懐から数枚の封筒を取り出した。
それと同時に周囲の雰囲気が、少し変わる。
「それって……!」
「その通り。俺が来た要件はただ一つ」
目を見開くメグミの反応を、待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべるジンキさんは、掲げる封筒達をゆっくりとブラックアウトの面々に差し出した。
「『第二回デラックス』……その招待状を届けに来た、という訳さ」
手にしている封筒は3枚。白い封筒が、ブラックアウトの黒い真夜中によく映える。
「一つ目は、前回のデラックスBest8でありブラックアウトの新リーダー、大倉メグミ」
「ッ……」
「二つ目は同じくBest8、そしてあの日最高のファイトを見せてくれた羽根山ウララへ」
「っ私もですか!?」
話を聞く限りは、おそらく手渡されているのはヴァンガードの大会の招待状だろうか。
1枚、また1枚と渡されていく招待状。
1人は神妙な面持ちで、もう1人は驚きと興奮に包まれた表情で。
「そして最後の1つは……」
そして、残った1つを掴み取ったのは……。
「お、俺ぇッ!?」
『ッヤマザキがぁ!?』
向けられた視線と招待状にガクガクと震えながら困惑する、差し出された本人が一番信じられないという表情を浮かべたヤマザキだった。
「な、なんで俺が……っていうか、トマリやザクサは!? もっと適任がいるだろう、俺以外で!」
「Best8という結果を残した2人以外で言うのなら、今回の選出ではそこに居る2人よりも君こそが相応しいという事さ」
「っいや、だって……はぁ?」
ジンキさんの言葉を聞いても、当の本人であるヤマザキの表情は未だ晴れない。
「君の実力は以前のハロナとのファイトやデイブレイクとの配信で見させてもらった。自身の運に頼りながらも、最後まで諦めずに喰らい付いていくファイトは実にエキサイティング!」
身体を大袈裟に動かしながらも、心底楽しそうに話すジンキさん。その表情や態度からは、嘲りや誤魔化しは一切感じられない。
「ブラックアウトという強豪チームの陰に隠れがちだが、君の実力は君自身が感じているよりもずっと高い。デイブレイクとの勝負では早々に退場してしまったが、あれは噛み合いが悪かっただけさ。ハロナが対戦で君を指名したのは俺の指示でね、あのファイトで改めて君の実力を把握したかったからだ」
「あの時の……あのファイトが?」
「そして今回、君はその運と実力で第二回デラックスの出場枠を勝ち取った! 是非、この招待状を受け取って欲しい!」
「俺、が……っ!」
語り続けるジンキさんの言葉を聞いて、それでも迷いを見せるヤマザキだったが、その迷いを切り崩す様に差し出された封筒を見て、最後には意を結した様に、ヤマザキはしっかりとその手に招待状を握った。
「わ、わかった……やってやるっ!」
「……ありがとう」
招待状を見つめながら、そう決心を吐き出すヤマザキを見て、ジンキさんは嬉しそうに微笑んだ。
「実はまた断られるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしていたんだ。受け取ってくれて本当に嬉しいよ」
「断られたって……誰に?」
「君達もよく知る、あの近導ユウユにね」
「ッユウユが!?」
メグミの疑問に答えるジンキさんが出した名前を聞いて、一同が驚きの声を上げる。
また俺の知らない名前が出てきた、そろそろお話についていけなくて泣くぞ俺。
「そう。前回王者である近導ユウユにも是非今回のデラックスに参加して欲しかったんだが、今の彼には他にやりたい事があるらしくてね。残念ながら断られてしまったんだ」
「そう、だったんだ……ユウユが……」
「その次の候補である幻のフロントファイターにも打診したんだが、同じく参加を見送られてね。現状参加枠が1つ空いている状態なのさ」
そう言って、懐からメグミ達に渡した封筒と同じ物を出すジンキさん。
……フロントファイターってなんだっていう質問はダメなのだろうか。
「君はどうかな、石亀ザクサ? ……いや、謎のファイター『シロガネ』」
「さて、誰の事かな。そんなファイター、俺は知らないね」
「……やれやれ、存在しないファイターは招待出来ないか。実に残念だ」
まるでとぼける様にいつもの表情を浮かべるザクサの態度に、ジンキさんは肩をすくめる。
シロガネってなんだ、ザクサのリングネームか何かか? 知らないわけないだろそんなわかりやすそうなセリフ吐いといて。頼むから後で誰か説明してくれないかな。
……が、そんな様子をさっきからじっと見ていたからか。長らく蚊帳の外だった俺と、怪しげな招待状を送っていたイケメンの視線がようやく重なった。
「……新しいメンバーの人かな?」
「っいや、メンバーって訳じゃないですけど」
「……っえ? それは本当かい、ギィ? ……へぇ」
急に話しかけられて少しテ驚いてしまったが、俺の言葉に反応するよりも前に、ジンキさんは俺から視線を話して1人でに会話を始めた。
誰かと話している? ……誰と、どうやって?
しかし、意味深な笑みを浮かべたジンキさんの次にとった行動に、俺はさらに困惑する事になる。さっきのヤマザキと同じ様な、あるいはそれ以上に驚いて。
「ーーーそれじゃあ、お近づきの印に」
「…………は?」
そう言って、まるで駅前でテッシュを配る様に自然に。しかし、逃げ場を与えない様に毅然と。
「受け取って見ないかい? この招待状を」
なんでも無いかの様に、手に持つその封筒を俺に差し出した。
「いや、無いでしょ(いや、無いでしょ)」
いやん、本音出ちゃった⭐︎
Q.なんでこの主人公、心の中だとテンション高いの?
A.最初は寝過ごしてやらかしたと思ってるからテンパってる。異世界転移発覚後は自暴自棄になってはしゃいでいないと可笑しくなりそうだから(無自覚)。
ハロナがヤマザキと戦ったのはジンキの指示だった→予想
ジンキがユウユに参加を断られた→予想
その次にカゲツさんに参加を求めたけどそれも断られた→予想
1枠余った→予想
できるだけ無理のない範囲で予想を立てて勝手に話を進めてますけど、無理があったらごめんなさい。
黒幕風イケメン「へい◯iri、この人誰?」
なんかすごいAI『なんやこいつどこ探しても情報出てこんぞ』
黒幕風イケメン「なにそれめっちゃおもろいやん、招待状渡しとこ」
主人公「いらんわ」