比企谷八幡は呪いへ堕ちる。   作:NewSankin

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【18-4】三者戦への移行と轟武玄

「その前に、確認しておくべき人がもう一人います」

 

八幡が新たな作戦の骨組みを頭の中で組み立て始めていると、牧野が冷静な声で促した。

 

「……轟か」

 

「はい。紙屋が死んだ以上、この愛知コロニーで残る最大勢力は、美甘井燈二と、轟武玄の二人だけです」

 

八幡は再びコガネを呼び出し、短い命令を下した。

 

「コガネ。轟武玄の情報を出せ」

 

『りょーかいっしょ!』

 

ディスプレイが切り替わり、新たなテキストが表示される。

 

轟武玄

得点 85点

ルール追加回数 0回

滞留結界 愛知コロニー

 

「八十五点……燈二よりは少ないな」

 

「比企谷くん、得点の多さは、そのまま絶対的な強さの順位ではありません。得点はあくまで、誰をどれだけ殺したかの結果でしかない」

 

「分かってるよ。相性の問題だろ」

 

牧野の事前の説明によれば、純粋な真正面からの物理的な戦闘において、轟武玄は燈二にとって最悪級の天敵だ。

そこで、八幡はある面白い、そしてひどく不気味な事実に気づいた。

 

「百二十七点も持ってるあの変態野郎が、八十五点の轟を今まで殺せてねえってことか」

 

数字の暴力性だけで言えば燈二の方が圧倒的に上だ。だが、現実の盤面上では、燈二ですら轟との直接対決を避けていたからこそ、これまで愛知コロニーは三すくみの膠着状態を保っていたのだ。

その事実が、八幡の中で『轟武玄』という男の戦力的な格をグッと引き上げた。

 

「これまでは、燈二、紙屋、轟の三すくみでした」

 

牧野が、八幡の思考を代弁するように言葉を継ぐ。

 

「ですが、あなたが紙屋を倒したことで、その均衡は崩れた。現在のコロニーは、燈二と轟の二極対立……その間に、あなたが強制的に割り込んだ状態になっています」

 

「嬉しくねえ昇進だな。平社員からいきなり取締役の泥沼派争いに放り込まれた気分だ」

 

八幡は肩をすくめ、小さく舌打ちをした。

愛知コロニーの勢力図の、明確な一角。それが今の自分の立ち位置だということに、八幡自身も少しの恐怖を感じていた。

俺はただ、小町を助けに来ただけの一介のシスコン大学生に過ぎない。それなのに、三十五点を抱え、紙屋を殺し、二人の本物の怪物から認識される側に立ってしまっている。

燈二を直接釣るのが正解か。轟の好戦的な性格を利用するか。あるいは、一時的にでも轟と組んで燈二を叩くか。最悪の二人がぶつかるように誘導するか。

 

考えられる手はいくつかある。だが、まだそれを決断するための材料が足りない。それに何より――。

 

「考えているところ申し訳ありませんが、少なくとも朝までは休んでください」

 

牧野が、戦術家から一人の保護者のような顔に戻り、八幡に強制的な休息を命じた。

 

「……またそれか。俺はまだ動けるぞ」

 

「またです。動けることと、戦えることは違います。これ以上傷が開けば、本当に取り返しがつかなくなる」

 

牧野の静かだが譲らない言葉に、八幡は少しだけ毒気を抜かれたように息を吐き、壁際の瓦礫に深く背中を預けた。張り詰めていた空気が、ごくわずかだが緩むのを感じながら、八幡は痛む身体を休めることにした。

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