「解」
その瞬間、プロペラが後方へ飛び羽場が落下していく。
「髪の毛を変化するって…髪の毛ないとどうなるんかな」
純粋に疑問を漏らしただけであったが、気まずそうに立ち尽くす甘井が「さ、さあ…」と相槌を打つ。
(さてどうするか…色々と考えなきゃいけないことは多いが…)
本来の自分の内にいるはずの両面宿儺、この時代の虎杖悠仁が未来へと飛ばされたのならば今、この世界に宿儺は居ないことになる。
(そりゃあんな奴居ない方が良いに決まってるけど…この状況がどんな影響を与えるか分かんないよなぁ…)
羽場が落ちていった先を見ながら何を優先すべきか考える。
「このあと日車のところ行ったんだよな」
未来からきた虎杖にしてみれば70年ほど前の記憶だが、このあたりの出来事は今でも容易く思い出すことができる。
「い、虎杖」
声をかけるかどうか悩んでいた甘井が何かを決心したかのように声を掛けてきた。
「俺知ってるぜ、日車って奴のこと」
「あーごめん。日車の居場所は分かってるんだ」
日車との出会いは特に印象深く、鮮明に覚えている。宿儺との死闘を共にした戦友のグレた姿をもう一度見にいくのも面白いな、などと考えるが結局1番無難な答えに辿り着いた。
(適材適所、ってやつだよな)
「じゃあな、甘井。死ぬなよ」
「あっ、ちょっ…!」
空気を面で捉えることができる老虎杖はそのまま空中へと駆け出した。
「新宿新宿…まだ綺麗な街だな…」
自分の慣れ親しんだ街と見比べながら、目的地を目指す。
「日車? 残念ながら俺はレジィだ」
羂索と契約して呪物となって時を超え、受肉した過去の呪術師。レジィ・スターは新宿にあるマンションを拠点に麗美が誘い込んだ泳者を狩っている。
伏黒恵はここまで案内をしてきた麗美に視線を向ける。
「なにその顔、全ッ然怖くないんだけど」
麗美は悪びれもせず言葉を続けようとしたが、伏黒がそれを遮る。
「時間の無駄だ」
玉犬を呼び出し戦闘体制に入る。玉犬を見たレジィはおもむろに拍手をし言う。
「いやー合格合格」
「あ?」
「もういいよ分かったから、その式神相当だ。君強いでしょ、弱けりゃカモって殺して終わりなんだけど。いいよ君、仲間になろう」
1人で話し続けるレジィに対し伏黒はその意図を測る。レジィは死滅回遊について語り始めたが、伏黒にとって重要なのは100点を得てルールを追加することが最優先事項である。
「オマエらとその仲間の得点を合わせたら100点いくか?」
「……そりゃあね」
それがどうしたと言わんばかりにレジィは両手を広げて答える。
「近々ルールが追加される。泳者間での点の移動を可能にするものだ。オマエらの点、全部よこせ。そうしたら仲間になってやらんこともない」
「交渉決裂♡」
その言葉を合図に伏黒の後方から1人の男が飛び出してきた。