***回想***
あれは、わしが10兆円シェルターを手に入れた翌日の夜だった。
亀有寮の部屋。
畳の上に1万円札を並べながら、わしは腕を組んでいた。
目の前には死神リューク。
リンゴをボリボリ食っている。
「うーむ……」
わしは唸った。
「よくよく考えるとこの10兆円、通帳に預けるのもやばい……」
リュークが言う。
「やばいのか?」
「当たり前だ!」
わしは机を叩いた。
「銀行はな!金の流れを全部見ている!」
「いきなり10兆円預けたら即税務署!警察!金融庁!」
「三連コンボだ!」
リュークが笑う。
「人間って面倒だな」
わしは新聞を指差した。
「そこで競馬だ」
「競馬?」
「競馬の掛け金を調べたらな」
「上限1000万円だった」
リュークが頷く。
「なるほど」
わしはニヤリと笑った。
「そして1000万円を万馬券に賭ける」
「万馬券は倍率100倍以上」
指を立てる。
「つまり」
「1000万 × 100倍」
「10億円だ」
リュークが言う。
「そんな簡単に万馬券当たるのか?」
「普通は当たらん!」
わしは胸を張る。
「だがな」
「わしには10兆円がある」
リュークが目を丸くする。
「……まさか」
「ああ」
わしは言った。
「当たるまで万馬券を買い続ける」
「金が足りなくなったら」
デスノートを見せる。
「また誰かを殺す」
リュークは爆笑した。
「雑な作戦だな!」
「しかし合理的だ!」
だがわしは首を振った。
「いや」
「もっと完璧な方法を考えた」
リュークが聞く。
「なんだ?」
わしはニヤリ。
「有名YOUTUBER 光金(ひかるきん)に1000万円送った」
「え?」
「そして提案した」
【1000万円万馬券チャレンジ】
視聴者参加型企画。
1年間で誰かを億万長者にする。
1000万円を万馬券に賭ける。
ただし――
顔出し禁止。変装必須。
リュークが笑う。
「なるほど」
「森の中に木を隠す」
「そうだ!」
わしは指を立てた。
「これで日本中に1000万円万馬券チャレンジャーが出てくる!」
「その中にわしと本田が混ざる!」
リュークが感心した。
「頭いいじゃないか」
「さらに」
わしは続ける。
「わしは通帳に金がない」
「だから現金1000万を競馬場に持っていく必要がある」
リュークが聞く。
「どうする」
わしは言った。
「本田だ」
本田速人。
最初は拒否した。
「先輩!怪しすぎます!」
「1000万円の現金運べって!」
だがわしは言った。
「成功したら1%やる」
本田は即答。
「やります!」
リュークが笑う。
「安い買収だな」
わしは胸を張る。
「こうして試行回数を稼ぐ」
「合法的なお金が手に入る」
わしは立ち上がった。
「これを!」
「令和のデスノートロンダリングと名づける!」
ワハハハハハハ!!!
さらにわしは続けた。
「そしてな」
「わしは顔を出す」
リュークが驚く。
「顔出す?」
「そうだ」
「YouTubeの広告収益」
「本の印税」
「講演」
「これが入る」
「副業は禁止だろ?」
「バカ言うな!」
わしは指を立てた。
「警察官でも本を書いたり講演するのはOKなケースがある!」
「ちゃんと申請すればな!」
リュークが呆れる。
「お前そこまで考えてるのか」
わしは笑った。
「さらにだ」
「わしが10億当てたことを公言する」
「そうするとどうなる」
リュークが考える。
「豪遊しても怪しまれない」
「そうだ!」
「そして」
「定期的にシェルターの金を銀行に移す」
「それも不自然じゃない」
わしは腕を組んだ。
「金を捨てて」
「大金を得る」
「これが真の資本主義だ!」
ワハハハハハハ!!!!
***現在***
そして――
わしの調子は
完全にエスカレートした。
【月曜日】
銀座で寿司100万円。
「大将!マグロ全部くれ!」
「そんな注文初めてです!」
【火曜日】
中川とフェラーリ試乗。
「先輩これ6000万円ですよ」
「安い!」
【水曜日】
麗子とブランド店。
「この店買う!」
「先輩それ百貨店です!」
【木曜日】
部長に札束ビンタ。
「部長!有給1ヶ月!」
「ダメだ!」
「じゃあ派出所改装する!」
【金曜日】
YouTube生配信。
タイトル
警察官 両津勘吉が1日100万円使ってみた
同時視聴
200万人。
【土曜日】
亀有商店街で100万円ばらまき。
「祭りだーー!!」
【日曜日】
温泉旅館貸切。
派出所全員招待。
部長も来た。
部長が言う。
「両津……」
「金は人を変えるな……」
わしは笑う。
「ワハハ!」
「金は世界を変えるんだ!」
銀行残高
10億円。
シェルター残高
9兆円。
わしは完全に無敵だった。
――だが。
わしは知らなかった。
この派手な成功の裏で
デスノートの存在に気づき始める者が現れていることを。
それは
警察でも
税務署でもない。
もっと
恐ろしい存在だった。