両津勘吉がデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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第9兆円:恐怖政治

夜の事務所は静かだった。

 

カウカウファイナンス。

亀有の裏通りの雑居ビル三階。

 

昼間は借金の相談。

夜は回収と計算。

 

机の上には帳簿。

灰皿には吸い殻。

 

そしてその横に――

 

黒いノート。

 

デスノート。

 

最初は冗談だと思った。

だが、もう違う。

 

俺はその力を知っている。

 

名前を書けば死ぬ。

それだけの話だ。

 

簡単すぎる。

 

だが、簡単なものほど使い方で差が出る。

 

俺は椅子に座ったまま言った。

 

「とりあえず」

 

「カウカウファイナンスはデスノートで天下を取る」

 

部屋の中にはカウカウファイナンスのメンバーたち。

 

そして死神。

 

レム。

 

レムは壁にもたれてこっちを見ている。

 

人間じゃない。

だが、もう慣れた。

 

俺は言った。

 

「デスノートで一番やっちゃいけないこと」

 

「なんだと思う?」

 

柄崎が腕を組む。

 

「びびって使わないことですか?」

 

俺は首を振った。

 

「ちげーよ」

 

タバコに火をつける。

 

「それなら人生何も変わらない」

 

「マイナスにならねえ」

 

煙を吐く。

 

「一番ダメなのは――」

 

「正義感」

 

柄崎が眉を動かす。

 

俺は続けた。

 

「犯罪者裁き」

 

「時間を奪われる」

 

「金は手に入らない」

 

「そして」

 

「いずれ逮捕される」

 

レムが静かに聞いている。

 

俺はノートを指で叩いた。

 

「割に合わねえ」

 

「デスノートって名前だ」

 

「正義のノートじゃねえ」

 

その時、新入りが口を開いた。

 

新入り

 

まさる。

 

まだ若い。

だが頭の回転は悪くない。

 

「つまり」

 

「殺しまくって」

 

「莫大な財産や権力を手に入れるってことっすね」

 

俺は少し笑った。

 

「分かってんじゃねーか」

 

煙を吐く。

 

「気に食わねえ奴は殺す」

 

「ダチでも殺す」

 

「利益になるなら殺す」

 

机を指で叩く。

 

「今の日本の法律じゃ」

 

「俺たちはパクれねえ」

 

「やったもん勝ちだ」

 

柄崎とまさるを見る。

 

「お前らもノート触った」

 

「レムも見えてる」

 

レムがこちらを見る。

 

「共犯者だ」

 

少し間を置く。

 

「絶対裏切るな」

 

そして言った。

 

「俺についてくれば」

 

「幸せにしてやる」

 

それから俺たちは

 

計画的に人を消した。

 

闇金の敵。

 

半グレ。

 

ヤクザ。

 

だが適当に殺さない。

 

殺し方にはルールがある。

 

まず

 

事故。

 

交通事故。

 

転落。

 

急性心臓発作。

 

それも

 

アリバイが完璧なタイミング。

 

俺たちが旅行中。

出張中。

警察署の前。

 

完璧だ。

 

さらに

 

連鎖。

 

例えば闇金グループ。

 

リーダーが死亡。

次の日ナンバー2死亡。

三日後会計係死亡。

 

組織は崩壊する。

 

残った客は

 

全部

 

カウカウファイナンスに流れる。

 

金が集まる。

 

さらに

 

恐怖を植える。

 

「カウカウに逆らうと死ぬ」

 

噂を流す。

 

事実だから広がるのも早い。

 

金はどんどん増えた。

 

だが

 

俺は分かっていた。

 

金が増えるほど

 

命を狙われる。

 

だから俺は

 

政治を作った。

 

江戸幕府と同じ仕組み。

 

親藩。

譜代。

外様。

 

まず

 

親藩。

 

亀有の中心。

 

昔からカウカウと繋がりのある闇金。

 

ヤクザ。

 

信頼できる連中。

 

次に

 

譜代。

 

周辺の区。

 

足立。

葛飾。

荒川。

 

金で支配する。

 

そして

 

外様。

 

さらに外。

 

新宿。

池袋。

川崎。

 

信用はしない。

 

だが利用する。

 

この三層構造。

 

変な奴は中に入れない。

 

裏切れば

 

ノートに書くだけ。

 

シンプルだ。

 

ボディガードも雇った。

 

元傭兵。

格闘家。

元ヤクザ。

 

金で人は動く。

 

そして俺は

 

投資を始めた。

 

IT。

不動産。

海外ファンド。

 

表の金を増やす。

 

裏の金は

 

さらに増える。

 

結果。

 

数年後。

 

ニュースが流れた。

 

「日本の資産家ランキング」

 

「第3位」

 

丑嶋馨

 

元闇金。

 

現在

 

投資会社社長。

 

資産

 

数兆円。

 

だが。

 

その裏で

 

何人死んだか。

 

誰も知らない。

 

事務所で

 

レムが言った。

 

「人間」

 

「ここまで来るとは思わなかった」

 

俺は答えた。

 

「まだ途中だ」

 

窓の外を見る。

 

東京の夜。

 

金の匂いがする街。

 

俺は言った。

 

「天下は」

 

「まだ取ってない」

 

そして

 

机の上には

 

まだ黒いノートがある。

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