頭がバケモノな勇者部 作:たこ焼きたこ焼きたこ焼きたこ焼きたこ焼き
忙しいゴールデンウィークが終わってくれたので初投稿。
有明浜に来て知人のオッサンを見かけたので近付いたら攻撃された件について。
うん、現状説明完了。
なんか三好が浜辺で素振りしてまして。めっちゃ虚空に攻撃したり謎回避したりしてたから、声をかけようとした次第でして……戦国かな、ここは。頭が甲冑のオッサンだし。
はて、そも。ここまで嫌われていただろうか。先日、屋上に拉致られて以来話してもいなかったのだが……女心は難しい。先輩くらい単純なら自分も接しやすいのに。
投げられた木刀は受け止めれたので大事は無いが、気をつけて欲しいものだ。勇者に変身したらバリアで弾けるのだが……でも精霊はアプリを起動していなくても出てくる。ならば、精霊バリアも有効なのだろうか?まあ、試そうとしたら必然的に命懸けになるのでやらないが。
どちらにせよ、どうでも良い話だ。
取り敢えず三好を見掛けてから気になっている事を聞いてみる。
子供会はどうしたのか、と。勇者部は子供会の手伝いに行っているハズだ。自分はサボったし、そもそも数日間部室に顔すら出していないので、三好が入部した事くらいしか分からないのだが。
「……別に。私がわざわざ参加する必要もないでしょ?私はアンタ達と馴れ合いたいんじゃないの。勇者部に入ったのだって、アンタ達を監視する為なんだから」
監視されるほどサボり魔集団に見えるだろうか……うん、自分が原因ですよね。反省はしないけど申し訳なくは思う。
自分としても無理に彼女と仲良しこよしをしようとは思わないのだが、易々と勇者部の活動をサボられては困る。三好には自分の分まで働いて、補ってもらう予定なのだ。行く行くは自分が完全に幽霊部員になる為にも、三好には期待しているのだ。
「てかアンタだってサボってるじゃない!」
下を見るな、上を見ろ。あの人がサボってるから私もー、じゃなくて。あの人が頑張ってるから私もー、って言える人間になろうね。
三好は向上心の塊みたいな人間に見えるから忠告も不要だとは思うが。兎に角、勇者部の貴重な労力になってもらわないと困る。
「このっ…!ダメ人間!!自分がそうしなさいよ!!」
人の振り見て我が振り直せ。三好、三好が自分の見本となる為にも。もっと頑張りタマえ、働きタマえ、応援は任せタマえ。
「だ、駄目だコイツ…!根っからひん曲がってるわ……ッ!!」
伊達に親戚からも、両親の一族の悪い所全部詰めだとか言われてないし。でも勘違いするなよ?自分が曲がってるんじゃない。他が猪突猛進すぎるのだ。やれやれ、少しは自分の柔軟さを見習って欲しいモノだ。
「…………………」
そもそも、三好は他人のダメな部分に敏感すぎるのだ。良い所を見よう。もっと。マイペースな所とか、自由な所とか、沢山寝て沢山育ちそうな所とか。
ふむ、なんなら三好も見習ってくれても良い。大きく深呼吸をしよう。そして心の中で復唱しよう――明日には明日の風が吹く、と。
「…………………ッ!!」
うん?三好の様子がおかしい。運動のし過ぎで疲れたのだろうか……完成型勇者ともなれば常人よりもON OFFがハッキリとしているのだろう。運動した直後にスイッチオフは普通に怖いけど。
十秒程の沈黙。もう帰ってやろうか、と思案していると――
「……………誰かが……叩き直さない、と…」
はい?なんかブツブツ言ってない…?
「わたし…?私が、やるしかない……?」
三好?みよっしーさん?目が据わってるよ?待って怖い怖い、オッサンが据わった目でにじり寄ってくるんですケド。事案発生だよ、警察は何やってるんだよ。
恐怖で竦む足。オッサン勇者が自分の肩を両手で掴んで離さない……や、普通に離して欲しい。オッサン趣味はないんだよ。
「聞きなさい」
やだ。
「アンタ、このままだと社会不適合者になるわ」
一定の社会性はキープしているつもりだが。えっ、部活サボっただけでそこまで言われる?体感二割五分は出ているつもりなのに。
「ええ、ニートは全員そう言うわ」
ニートじゃねぇよ。未来ある学生だよ。しかもニートに対する偏見ヤバない?
「でもね、感謝なさい!なんたって……この私がいるわ!!完成型勇者よ!!」
帰ってどーぞ。
「今から私の家に来なさい。本当は物理的に叩き直したいけど、まずは内側からよ。腐った精神に真の勇者としての心意気を教えてあげるわ」
既に勇者なので大丈夫です。あー、世界護りてぇー。あー、魔王鏖殺してぇー。マジで心がユーシャユーシャしてるわぁー。
「………そういう所よ、アンタ」
その後、めちゃくちゃ引き摺られて三好の家に拉致られた。
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「まずは写経よ。勇者って文字を五万回書きなさい」
写経を拷問か何かと勘違いしてない?数書いたら効果あるわけじゃないよ。もしかして現実の勇者を経験値システムと思ってらっしゃる?
「終わったら瞑想よ。日付が変わるまで」
それは迷走してるよ。時間も長けりゃ良いってワケじゃないでしょうに。さっきから極端だな。
「次は日が昇るまで座禅ね!」
せめて瞑想と同時にしてくてる?分ける意味ある?
「……アンタねぇ、文句しか言えないワケ?そんなんだから駄目人間なのよ」
駄目じゃない人間がさっきの苦行をした末のバケモノなら、自分は駄目人間のままで結構なのだが。というか、そろそろ縄を解いて欲しい。ここまで連行されたのも、竹刀袋を縛っていた縄で腕を拘束されていたからだ。
三好も三好で、よく知人程度の男を一人暮らしの部屋に拉致できるモノだ。自分には三好がオッサンにしか見えないが、三好には自分含めて勇者の皆が普通の人間に見えている。なので余程異性として意識されていないか、単純に頭が緩いのか。
「縄?……別にいいけど、逃げるんじゃないわよ」
逃げない逃げない。限界だったら勇者に変身して窓から逃げるけど、態々伝える事でもないだろう。
わりとキツめに縛られていた縄が緩くなり――刹那、自分は駆け出した。修行なんてしてたまるか。自分は帰って自室でゴロゴロしながら惰眠を貪るのだ。
然し誤算かな。玄関はしっかりと鍵とチェーンがかけられていた。普通なら解くのに10秒も要らないのだが、今だけは致命的だ。
逃げ出して3秒後、自分は三好に捕まった。組み伏せられた。遺憾なり。
「このっ!逃げるんじゃないわよ!!」
離せ!乱暴しないで!!自分を傷モノにしたら東郷と友奈が黙ってないぞ!!
「なぁにが傷モノよ!!バカ言ってないで大人しくしろ!そういう所も叩き直してあげるんだから!!」
ぴえん。酷すぎぴえん。
「ぴえんって……何百年前の言葉よ」
300年くらいだろうか。
この後、すごく写経(ノートとシャーペン)してすごく瞑想兼座禅をしながら三好と寝落ちした。
5時間後。
――ピンポーン、と玄関チャイムが鳴る。自分と三好は睡眠学習と瞑想の併用化について議論し、実行実験している最中だった。つまりは寝ていた。
鈍い頭で窓の外を眺めると、紅く染まる空。夕方を物語る風景に、妙な一日を実感した。学生は帰る時間なのだが、どうせ一人暮らしだ。どうせなら三好と晩御飯でも食べてから帰ろうか。
とは言え、まずは来客の対応だ。自分の家なら居留守するが、人の家でそれは不味い。
ベッドの横で腹を出して寝てる三好の肩を揺すり、来客を知らせる。
「……んっ、ふあぁ……誰か来たの…?」
三好の部屋なので三好が対応するべきだが、難しいなら自分が出よう。そう提案すると、三好はかぶりを振って起き上がった。
フラフラと危ない足取りで玄関に向かって行く。三好も一人暮らしのアパート暮らしなので一軒家ほど広くはないが、学生のひとり暮らしにしては広い。部屋を出てリビングを経由し、玄関に向かって行った。自分は自分で、一人で部屋に居るのも気まずいので欠伸をしながらリビングに出る。
どうせ、宅配でも来ているのだろう。
軽い気持ちでリビングのソファに腰を下ろしていると、微かに三好と誰かの声が聴こえた。
「何よー?疚しいコトでもあるわけ?」
「違くて……い、今は不味いの…!あの……アレよ、散らかってるのよ!!」
「あ、じゃあ私たちで片付けよー!」
……煩い。ドア越しだから詳しくは聞き取れないが、とにかく五月蝿い。
友達でも来ているのだろうか?或いは不審者でも出たか。どちらにせよ、困り事なら手をかそうと思い。仕方なく玄関に向かうと――
「せ、先輩!?なんで夏凜さんの家に居るんですか!?それに……腕に、縄の痕が……!」
「…………アンタ達……そういう、関係…?アブノーマルなの…?」
うん?なんで木頭目玉伽藍堂後輩と黙れ小僧系な駄犬先輩が……?後ろには他の勇者部メンバーも居るし。百鬼夜行かよ……てか、もう三好の家に遊びに来るくらい仲良しだったのか。
邪魔するのも悪いし、そもそも帰ろうか。散歩していただけのハズだったのに、随分と時間を喰われたモノだ。
「ち、違っ…!偶然会ったから、その……色々あって…!別に変な事はしてないから!!」
……嫌がる自分を縛り付けてイロイロとさせたクセに。めいっぱい睨みつけてやる。陰険一族のエリートを舐めないでもらおう。
「い、色々ぉ!?見たら駄目よ樹!不純なんちゃらこーゆーよ!?」
「東郷さん、どーゆー事?」
「ふふっ、友奈ちゃんは知らなくても良いことだわ。でも……私も気になるかも。少し、お話しないとね」
別に構わないが……急に三好の家に拉致られた辺りからで良いだろうか。
「アンタは少し黙ってなさい!!」
念の為に、先輩達にも忠告しておこう。こいつは(気性が)荒くて激しくて、(勇者関係には)見境がない獣だ。もうやめてと泣いても続けるし、調教云々とか言って聞かないし。
「語弊しかないわよ!?」
「ミッ゚」
「東郷さん?東郷さーん?……気絶しちゃった…」
「このッ…淫獣め!!」
「誰が淫獣よ!アホ吠埼アホ!!」
……今日はもう、色々あって疲れたし帰りたいのだが。犬とオッサンが喧嘩している横を抜けて、玄関を出る――
「どこに行くの?」
が、牛鬼こと友奈に止められる。帰って寝る旨を伝えるが、不思議そうに首を傾げるばかりだ。はて、何か忘れているだろうか?
「今日は夏凜の誕生日だよ?レクリエーションが終わったらみんなでお祝いに行こーって話だったけど……あれ?その為に居たんじゃないの?」
とても初耳。部活に顔を出してないしグループチャットも溜まってたからまとめて既読を付けただけだし。よく分からないが、誕生日ならめでたい。
何かプレゼントでもしようか、とポケットを探るが……
アホ吠崎アホ先輩と取っ組み合いになってるオッサンに近付いて、握り拳を差し出す。
「な、なによ…?」
プレゼント。ハッピーバースデー。
「…………はぁ!?えっ、ちょっ……急に何のつもりよ…ッ!誰にも教えた覚えはないんだけど!?」
「夏凜ちゃんの入部届けについてたよ?それよりも!何貰ったの?」
「何って………鍵?何よコレ、部室の鍵とか?」
我が家。
「なんで!?距離の詰め方エグいわよ!?」
一緒に寝た後に言う?
なんでと聞かれましても。先輩以外はみんな持ってるし、溜まり場みたいなモンだから。要らないなら適当に処分してくれても良い。どうせ家の中の物で無くなって困るものは無いし、何か盗まれても実家のお力を借りて地獄の底に叩き落とすだけだし。
「アタシにも渡しなさいよ。えっ、てか樹も持ってんの?」
「持ってるよ?えへへ……
「ギルティ…デスペナルティ……!」
殺されそうなので帰ります。三好に、暇なら偶に家に来ても良いと伝えてから外に出る。変なやつだと思ったけど、結構仲良くなれそうなバケモノだった。アタマは相変わらずバケモノだけど。