「芸能人格付けチェック! お正月スペシャル!」
お正月の恒例番組である芸能人格付けチェック。
収録自体は年内に行われているが、気分を正月に調整して収録に臨んでいた。
「皆様、一流の芸能人ですからまさか落ちていく人なんていないですよね? この番組、ホンマにみんな見てますから、こいつバカなんだと思われないよう頑張ってくださいね」
司会者である小浜さんの前振りが、スタジオのマイクを通して朗々と響き渡る。
「まずは、〝チームプライベートAI〟!」
最初に呼ばれ、俺と朝香、井田さんの三人が横一列に並んで頭を下げた。
プライベートAIは、現在続編の繋ぎである特別ドラマの撮影も行っている。その宣伝も兼ねて、今回の格付けチェックに呼ばれていた。
「井田寛です。まあ、今日は若い二人の力を信じて任せますわ」
「いや、井田さんも頑張ってくださいよ!」
「翼もデカくなったなぁ……なんかおっちゃん泣きそうや」
小浜さんはどこか遠い目をしてそんなことを呟いた。
そういえば、小浜さんも何かと俺のことを気にかけてくれてたっけ。
「あ、去年消えた朝香ちゃんもおるやん」
「あたしの扱いひどくないですか!? まだ一流芸能人ですよ!」
ちなみに、朝香は去年も出演していたが、見事に映す価値なしまで落ちていた。
「あたしは、今年こそ一流のまま終わらせるつもりです!」
朝香が堂々とした調子でそう言い切ると、小浜さんが茶化すように片眉を上げた。
「その自信、去年も聞いた気ぃするけどなぁ」
「うっ……そ、それは去年のあたしの話です。今年のあたしは一味違います!」
「毎年違うって言うとる奴、大体同じとこで転ぶんやけどなぁ」
容赦のない一言に、井田さんが横で肩を震わせて笑いを堪えていた。
その後、改めて俺と朝香の自己紹介も終わったので、次のチームにスポットが当てられる。
「次、〝チームエコドル〟!」
ルナと共に出演しているのは、ECHO DOLPHIN最年長の佐波四音さんだ。
「ECHO DOLPHINの斎藤ルナです。よろしくお願いしますー」
「同じくECHO DOLPHIN、佐波四音です」
「おっ、鯖読んでるのバレたアイドルもおるやんけ。おかげで正々堂々、酒飲めるようになってよかったなぁ」
「ぎゃー! その話はやめてください!」
佐波さんはオーバーリアクション気味に悲鳴を上げる。
主にルナが被害を受けた今田朱代の裏垢騒動。
その際、被害を受けたのはルナだけではなかった。
佐波さんは年齢を鯖読んでいたことが発覚し、ルナと同様に炎上を経験していたのだ。
そんな事情もあってか、周囲は積極的に彼女の年齢をいじるようにしていた。
エンタメに昇華できれば、火消しまではあっという間だからである。
「ま、ルナちゃんの保護者として頑張ってな」
「同じメンバーですから! 誰が授業参観に来たお母さんですか!」
「いや、言ってない言ってない」
気合を入れる佐波さんに対して、ルナは楽しそうに笑っていた。
「次、〝チーム声優〟!」
萌絵と秋毫さんにカメラが向く。
一見、セミブレードコンビのように見えるが、この二人は他作品でも共演しており、中堅と若手声優の中でも地上波でも知名度がある。昨今の声優人気も追い風になっているようだ。
「声優の川越萌絵でーす! よろしくお願いします!」
「秋毫乃々未です。お酒大好きなので楽しみです!」
秋毫さんが早々に自己申告すると、小浜さんが笑う。
「せやろな、顔に書いてあるわ」
「えっ、本当ですか? メイクさん、ちょっと直してください!」
冗談交じりの慌てぶりに、スタジオが沸いた。
「そして最後、〝チーム大御所〟!」
その瞬間、スタジオ全体の空気が一気に締まった。
千三郎さんと、酒寄さんの二人が、ゆっくりと挨拶をする。
「皆様、あけましておめでとうございます。両賀千三郎です」
「酒寄正臣です。あけおめー!」
軽い新年の挨拶をする。
それだけなのに、スタジオの緊張感が一段跳ね上がったのがわかった。
「俺ァ、今年も目指すは一流芸能人。後輩たちには背中を見せていかねぇとな」
千三郎さんが、開口一番そう言い放った。
「そうやなぁ、千さん去年も同じこと言うて、カメラから消えてたもんなぁ」
千三郎さんに、小浜さんが声を上げて笑った。
酒寄さんが横で静かに肩を揺らしながら、千三郎さんの肩をぽんと叩いた。
「千三郎さん、フリだけは達者なんだから、もー」
「なぁに、あんたっていう巨匠が付いてるんだ。今年こそはいけるさ」
「いや、あなたが外したら一流ではいられないのよ?」
二人のやり取りに、隣の朝香が小さく息を呑んでいる。
「さすが師匠、開始前から前フリが立派に成立してるわ……!」
「いや、アレは素だろ」
「お約束ってやつだな」
照明が少し落ち、テロップに大きな文字が浮かび上がる。
「さて、全チームお揃いのところで、最初のチェックはこちら! ワインです!」