僕のテラリアアカデミア   作:独りのテラリアン

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祝!テラリアver1.4.5実装


プロローグ

 俺は転生者。名前は寺野里亜太と言う。ちょっと女々しい名前だけど立派についている。

 

 元々はただのサラリーマンの社畜だったのだが、ある日突然知らない女の人に背中を刺されて死んだ。なんか『これでずっと一緒だよ、リョウタくん…あれ?誰この人?』とか聞こえたので、どうやら人間違いで殺されたらしい。ふざけんな。

 

 今でもまだ思うところはあるが、今は吹っ切れて第二の生を歩んでいる。

 

 この世界は前世とは全く違う場所だ。

 

 ほとんどの人が個性という超能力を持っていて、それを悪用して犯罪を行う人をヴィラン、そのヴィランを止めるための職業として、ヒーローが実在する。そんなアメコミ風の世界。それがこの世界だった。

 

 さて、そんな世界での俺の個性はというと、その名は『ゲーム』である。

 

 一言でいうとハンターハンターのグリーンアイランドやソードアートオンラインのように、実際に中に入ることができる仮想空間を生み出してそこに入って遊ぶことができるという個性。

 

 仮想空間を作ってそこに自由に行き来することができる個性の父親と、夢の内容を決めることができる個性の母親の間に生まれた俺は、両方の個性を引き継ぎ、更に発展進化した個性を得ることになった。

 

 いつでもどこからでも入ることができる仮想空間。割と強力な個性だとは思うが、同い年の子どもたちからは『ヒーロー向きじゃねーな、お前の個性!』みたいに言われることもある。ヒーローに向いているかどうかで序列が決まるような雰囲気があるのだ。

 

 まあ、実際そうだから特に文句はない。ヒーローにもあまり興味はないしそこは良いと思ってる。

 

 で、その件の個性のゲームの内容なのだが…まんま『テラリア』と呼ばれるゲームと完全一致している。

 

 テラリア…それは2D版マイクラと呼ばれることも多い、サンドボックス型のクラフトサバイバルゲームのこと。ただしその実態は剣も魔法も銃も使い魔も存在するし、ボスモンスターも十種類以上用意されており、マイクラと比べてRPGや戦闘要素に特化したゲームとなっている。

 

 もちろんテラリアそのままというわけではない。2Dサンドボックスではなくどこにでも行けるオープンワールドになっているし、見た目もピクセルではなく普通に現実のそれと変わらない。どちらかというとテラリアというゲームの法則を適応した異世界といったほうがいいか。

 

 とはいえ法則は完全にテラリアを踏襲しているため、夜中になればゾンビが襲ってくるし洞窟に入れば宝箱やハートクリスタルが落ちてる。ちなみにその世界がテラリアの世界だと分かったのは、この宝箱から出てくるアイテムがまんまテラリアだったからだ。

 

 自分の個性がテラリアだと分かった時、俺は本当にうれしかった。俺の転生特典はこの個性だったのだと確信するくらいには、俺にとって最高の個性だったのだ。

 

 何を隠そう、俺は前世では生粋のテラリアンだったのだ。総プレイ時間は余裕で四桁に突入している程だった。

 

 つまり、知り尽くした世界をこの手でもう一度遊ぶことができる。しかもその世界に実際に入り込んで遊べるのだ。これ以上最高なことは無い。

 

 

 

 

 

 という訳で、現在5歳。人よりもちょっと遅れて個性を発現させた俺は、早速『個性』の攻略に乗り出したのだった。

 

 難易度はもちろん最高難易度のマスター、世界の大きさはラージ。生粋のテラリアンである俺にとってはこれくらい朝飯前だ。

 

 と意気揚々とゲームの世界に入った俺だったのだが。

 

「ぐぼああああ!?ちょまっ、スライムつよっ…ぎゃあああああ!」

 

 始まりの草原で、その辺にポップしまくるスライムにやられ(リスキルされ)まくって俺は一瞬で挫折を味わったのだった。

 

 スライム。それはどこにでも湧くテラリア世界で最もポピュラーなモンスター。

 

 最高難易度のマスターモードだと、プレイヤーを2撃確殺してくるモンスター界きっての屑野郎。

 

 もちろんゲームだと、行動AIを知り尽くした俺の敵ではなかった。ぴょんぴょん跳ねて追いかけてくるだけのスライムなんぞ、木の剣だけで余裕で完封できたのだが。

 

 俺の個性により作り出された『テラリア』は、360度動くことができるオープンワールドと化していた。つまり世界観や設定はテラリアだが、ゲームジャンルが横スクロール2Dから大きく変化し、フルダイブ型オープンワールドの世界と化していた。

 

 つまり俺のゲームプレイのノウハウ…その中でも特にモンスターの行動AIについての知識が一切通用しない。複数のスライムに囲んで跳ね飛ばされ続けてやっとその事に気付いた俺は間違いなく馬鹿そのものであった。

 

 違うのはそこだけじゃない。ゲームのテラリアではプレイヤーは最初から数m以上のジャンプを可能にする程の身体能力を持っている。当然この世界に入った俺にもそれは適応されるのだが、現実世界の俺の身体能力とこっちの世界の俺の身体能力があまりに違いすぎて俺の意識が肉体についていけていない。

 

 思えばゲームのプレイヤーは数mのジャンプもそうだが鉄球を振り回したり巨大なハンマーを投げたりとかなりの怪力だ。

 

 まずは身体の動かし方から学ばなければならない。そうしなければ俺は逃げも隠れもできずにスライムやゾンビに殺される。ソレが俺が5歳の時に知った現実だった。

 

 

 

 

 というわけで俺はマスターモードの攻略からいったん手を引き、まずはクラシックモードをクリアすることにした。ジャーニー、クラシック、エキスパート、マスター、というのがテラリアの難易度設定だ。

 

 ジャーニーモード…マイクラで言うクリエイティブモードは個性では実装…というか、存在がなかったので、実質クラシックモードが最低難易度だ。世界の大きさもミディアムに変更。汚染バイオームは気持ち的に不浄にしておいた。真紅がリアルになったらどんなスプラッタな映像が流れるのだろうかと思うと、あとに取っておきたい気持ちになったのだ。

 

 早速スポーンし、草原に降り立つ。突き抜けるような快晴と、まっすぐな木々がまばらに聳え立っている草原。見晴らしがよく、奥には雪山が見えたり砂漠が見えたりと早速いろいろなバイオームがこちらをチラ見していた。

 

 自分の身体を見下ろすとそこには現実世界と瓜二つの自分の身体が。この個性、見た目の変更だけはできないようになっているのだ。ちなみにキャラクター難易度もクラシックにしている。

 

「よし、堅実に立ち回るか」

 

 初期装備として配布された銅の短剣と銅の斧、銅のピッケル。アイテムスロットのそれらは感覚で取り出すことができる。俺はすぐに斧を取り出して近くの木を切り倒し、スポーン地点の周囲に拠点を作ることにした。当然テラリアの世界なので建築も可能なのだ。とはいえ3Dになっているので、感覚で言うとマイクラに近い。

 

 いそいそと家を立て始めた俺。そんな俺に近づいてくる影があった。

 

「やあ、リアタ君」

 

 そいつはにこやかに俺に話しかけてきた。

 

「今度のワールドはクラシックかい?マスターモードの時は何度も何度もやられていたから心配だったけど、懲りたようで何よりだよ。僕は変わらずガイドとして君の手伝いをするから、なにか知りたかったら遠慮なく言ってほしいな」

 

 現れたのはNPCのガイドだった。前の世界でも会っていたが、まさか別ワールドの記憶を引き継いでくるとは思いもしなかった。とはいえまた初めましてのあいさつからやらなければならないのは面倒だったので、ありがたい仕様変更だ。

 

 ちなみに、マスターモードの時にもろともスライムに殺されたこともあったので知っているが、ゲームではNPCは死んだら名前が変わって復活するが、この世界では『ガイド』という役職がそのまま名前になっているようで、死んで復活しても名前は変わらず同一人物のままらしい。当然記憶も引き継いでいた。

 

 こんなふうに土台がテラリアとはいえ結構変更があるので、初めて触るMODをプレイしている時のように何が起こるか分からないのがこの世界だ。

 

 などと現実逃避をしつつ。

 

 俺はガイドの顔を見つめて苦笑いを浮かべた。

 

「あー、うん。ありがとう…」

「君、僕の顔を見るたびに何か言いたそうな顔をするけど、実際何か気になることでもあるのかい?」

「いや、何でもない。ほんとごめんな。ごめん」

「謝られても困るんだけど…?」

 

 そう言われても、俺はもしかしたら取り返しのつかないことをしてしまったかもしれないんだよ…。

 

 目の前のガイド。そいつは原作テラリアのほうでも存在するNPCで、話しかけるといろいろな知識を教えてくれたり、素材で何がクラフトできるのかを教えてくれる、要はチュートリアル的なNPCだ。

 

 だけど目の前のコイツは原作と大きな差異があった。

 

 肩のところで切りそろえた金髪ボブカット。整った顔立ち。無地のシンプルなシャツとジーパンを身に着けた身体は、出るところは出て引っ込むところが引っ込むモデル体型。

 

 そう、この世界のガイドはなぜか女体化していた。

 

 心当たりはある。というのも俺が前世でテラリアを最後にプレイしていた時、ちょっとしたスパイスを加えるつもりでゲーム内のテクスチャを変えるリソースパックを導入して遊んでいたのだ。

 

 そのリソースパックが、NPCや一部モンスターを美少女化させるもので、このガイドの見た目はまさしくそのリソースパックのソレと特徴が完全に一致している。

 

 自認も完全に女になっていて、本人も全くと言っていいほど気にしていない。

 

 ちなみに俺の認知がおかしいだけで向こうは自認男だったりしないかと思って一度性別について尋ねてみたことがあったが、どうやら本人からしてみれば自分は最初から女という認識で、違和感も一切覚えたことはないらしい。

 

 で、問題なのはリソースパックを変更する手段が俺にはないということだ。

 

 個性で設定できるのは世界とキャラの難易度だけで、ゲームの時にはあったこまごまとした設定画面については存在しないのである。つまり、俺はこの先一生この萌え化リソースパックによって変わってしまったテラリアで遊ばなければならないということになるのだ。

 

 まあ、こうなったらもうどうしようもないし、考えたら負けな部分ではあるんだろうけど、俺の気紛れの所為で性別が変わってしまったことに関しては罪悪感を覚えてしまう。転生した際、赤ん坊の身で自分の身体が男か女か分からず『男であれ!』と祈りまくった身としては特に気にしてしまう。

 

 …とはいえこれ以上引っ張ることでもないな。本人たちに言っても困惑されるだけだろうし、この問題に関しては墓場の中にもっていこう。まあ、この世界死んだら実際墓石がドロップするんだけど。

 

「よし、やっと吹っ切れた。仲良く一緒に死んだ後で言うのもなんだけどこれからもよろしくな。一緒にこの世界を攻略していこうではないか」

「あ、うん。そう言ってくれるのはありがたいんだけど、なんか急に態度が変わって困惑気味だよ僕」

 

 細かいことは気にするない。

 

「よし、壁を張り終わったぞ。これで外からの侵入は防げるはずだ」

「お、凄いね。これならスライムやゾンビも入ってこれないよ」

 

 そうこうしているうちにスポーン地点を中心にぐるりと囲むように小高い壁を張り終えた。

 

 ちなみにこの世界、ゲームの頃は許されていた空中にブロックを置くような、いわゆる物理法則に反する置き方はできないようになっているようだ。空島を攻略するときは苦労させられそうな要素で今からすでに不安であった。

 

 と、後は中に小屋とか建てていって、手狭になったら拡張してを繰り返すつもりだ。

 

 とはいえ今は建材も無ければクラフトテーブルの種類も少ない。豆腐小屋でも作っておくか。

 

「ながら作業で悪いけど、ガイドさんや。この世界の基本についてもう一度教えてくれないか?前回は途中でスライムの襲撃に遭って聞きそびれてたしな」

「もちろんいいよ。まずこの世界はねぇ」

 

 と、話しかけると嬉々として説明を始めるガイド。どうやら自分の存在意義を全うできるのが嬉しいらしい。その辺はNPCなんだな。

 

 話をまとめるとこうなる。この辺はゲームとの差異も含んでいるのでそこも加味する。

 

 まずこの世界は大きな島で出来ていて、周囲は海で囲まれている。

 

 島には中央に草原が、そして周囲を取り囲むように斑模様のように点在するような形で様々なバイオームが存在する。

 

 地下も広大で、一番底には地獄があるのはゲームと変わらず。

 

「ボスを倒すとちょっとした報酬が与えられるから、積極的に挑戦してみてね」

 

 と締めくくった。

 

 ま、それは言われずとも挑戦するけど。難易度的に報酬袋が出ないのがちょっともったいなく感じる。とはいえ今の俺にはエキスパートの攻略すら荷が重いのだから仕方ない。

 

 と、そんなところで俺の豆腐建築が完成した。窓すらないプレハブ小屋といった感じ。実際にリアルで見る豆腐建築は、流石にこれは後で装飾を付け足したくなるほどだ。

 

 中は机と椅子があり、隅の方にクラフトテーブルの一つである作業台が置いてある。そして壁に松明が掛けられていてそれが唯一の光源。ゆらゆらとオレンジ色の光が揺れている。

 

 これらのアイテムは全て作業台でクラフトしたものだ。素材さえあれば後は作業台の前に立つだけで今作れるアイテム一覧が見れるので、簡単に作成することができた。

 

「わー、ジミー」

「文句があるなら使わなくてもいいんだぞ」

「えへへ、よく見ると落ち着くいい家じゃないか」

 

 ガイドに拍手されながらそう言われてチクリと刺したら、わざとらしい態度で家の中に入りながら椅子に座ってテーブルの感触を確かめ始めて足をプラプラさせ始めた。

 

 だがそんな殊勝な態度もすぐに落ち着いて落ち込み始めた。

 

「やっぱ窓くらいは欲しいかも…」

 

 それはそう。

 

「砂漠行くまでの我慢だな…」

 

 砂がないんだよ、砂が。というかそもそもかまどすらないし。

 

 っと、始めたころは朝だったが、もう昼頃になっていた。時計を持っていないので感覚的な話になるが、もう6時間程度は経ったか。

 

 だが、現実世界ではまだ5分ほどしか経っていないはずだ。なぜならテラリアの一日は現実世界での20分なのだ。その法則がこの個性でも適応されるようで、このテラリアの世界で24時間生活しても現実世界では20分しかかからないのだ。

 

 これに関しては俺も認める。かなりのチートである。保育園から帰ってきて、飯を食って風呂に入って歯を磨いて、その後寝るまでの間のたった1時間か2時間、俺はその時間の中で、テラリアの世界で3日、6日は遊んでいられるのである。

 

 マルチプレイができたら親を呼んでちょっとしたバケーションを披露できると思うのだが、この個性はソロ専用、そんな機能は存在しないのがちょっと残念だ。まあ、モンスターもいっぱいいるし、リスポーンできるとはいえ死ぬ可能性がある危険な世界だ。例えできたとしても慎重になったほうが良いと思うが。

 

 さて、閑話休題。そろそろ外の探索に行くとするか。と、その前に武器と防具を作っておく。

 

 『木の剣 攻撃力7』と『木の防具一式 防御力3』。その性能に関しては…まあ、ないよりかはマシなはずだ。

 

「ガイドさん、一緒に行く?」

「こんなか弱い女の子を冒険に連れて行くなんてとんでもない。あ、ちなみに地下世界にいるサラマンダーを倒したらポテチが手に入ることがあるからもし手に入れられたら欲しいな!」

「図々しいにもほどがある」

 

 そんなこんなで、俺のテラリア生活が始まりを告げたのであった。

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