超かぐや姫!に一瞬登場するワイン兄貴側からの感情はきっとこうなんじゃないか? というところを書きたくて作った短編です。
ワイン兄貴の描写はほとんど作者による創作のため公式とは何のかかわりもありません。

映画本編でさらっと重要な働きをしてるけど語られなかったワイン兄貴に幸あれ。

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本編でやちよの記憶に出てくる最後の友人、通称ワイン兄貴。
年代的にギリ生きていてもおかしくない、というところから書き始めました。


ある男の軌跡

この国に男が降り立ったのは世界大戦と呼ばれた凄惨な戦いが終わり戦後と呼ばれるようになってしばらくのことだった。

 

敗戦国であるこの国において様々な情報を収集し本国へと送ること、それが男に課せられた密命。

 

男は優秀だった。

 

男のこの国で活動していたが仕事は常に順調で、民衆の間でも排外的な感情が残っている中でなおスパイであると疑われないほどに。

 

そんな男に帰国の命令が下された。

 

男に新しい仕事が割り振られたのだ。

 

男もその命令に別段不服はなかった、しかし。

 

男は帰国までの最後の時間で、上層部には黙って一仕事をした。

 

この国で唯一男の隠してきた秘密を語った小さな友人のたっての願いを叶えたのだ。

 

厳重に警備された宝物庫からある品を鼻歌交じりに盗み出した。

 

空港で最後の別れの時、男は友人に訪ねた。

 

「一緒に来ないか」

 

短いが真剣な言葉だった。それは友情であり、あるいはまだ名づけられていない感情だったのかもしれない。男にとって今までにない特別な感情だった。しかし

 

「約束があるの」

 

友人はそう答えた。

 

その答えは予期していたものだ、だから心の中で「このまま攫って行ってしまおうか」という悪魔のささやきが聞こえてきたことに男自身驚いた。それほどにこの友人に執着があったことに。

 

宝物を人質に無理やり連れだせば友人は抵抗もできない、飛行機に乗せてしまえば次に降り立つのは異国の地、さあやれ、心の望むままに。

 

黒々とした衝動が沸き上がる。

 

しかし、男は言葉にしなかった思いをしまい込み片方の口角をあげ癖のある笑みを浮かべていった。

 

「極上のワインは時間が経つほどに深まる。悪いことばかりじゃないさ」

 

そういって迎えの飛行機に歩き出した。

 

自分の心がどれほどに望み叫んだとしても、友人の心を踏みにじることをどうしてできるだろうか。

 

それは男のしたいことではない。

 

友人との別れはこれでよかったのだと後で胸を張れるように。

 

遠い星を目指して進む彼女をこそ■■(アイ)したから。

 

男は最後まで友人として別れたのだった。

 

 

 

────────あれから半世紀がたった。

 

 

 

老人は安楽椅子に揺られながら暖炉の火を眺めていた。

 

歳をとると昔のことをよく思い出す。

 

傷つきながらあきらめず、遠い星を目指して進み続けた友人との思い出を。

 

それは老人にとって心の中の宝箱にしまった大切な宝物だった。

 

そんなゆったりとした時間に割り込むように、ブーーとブザーが鳴った。

 

「はて?」

 

今日は来客や宅配の予定はなかったはずだがと老人は首を傾げた。

 

繰り返し鳴るブザーに急かされ玄関に向かう。

 

のぞき穴から外を見ると外には身なりの良い長い金髪の少女と、黒髪のおそらく日本人の女性が立っている。

 

「はて?」

 

もう一度老人は首を傾げる。まったく見覚えのない初対面の二人。

 

記憶力のよい老人は黒髪の女性の顔は科学雑誌でみた覚えがあった。

 

たしか日本の有名な科学者だったはず。

 

何にしろ強盗などではなさそうだ。

 

老人は玄関の扉を開けた。

 

「やあ、なにかごようかな?」

 

「ひさしぶり! なんていっても、さすがにわかんないか・・・わたしだよ、かぐや、ねぇ憶えてる?」

 

その名前を老人は知っている、とても大切な古い友人の名前だから。

 

かつての姿とはずいぶんと変わったが、そういうこともあるのだろう。

 

老人は二人が驚くほどあっさりとその変化を受け入れた。

 

「やあ久しぶりだねかぐや、どうやらすべてうまくいったようじゃないか。ぜひ詳しい話を聞かせてほしい。

 

そちらの女性についても一緒にね」

 

そういって老人は二人を部屋へ招き入れた。

 

老人はセラーに保管してあるとっておきのワインを開ける時が来たことに心からほほ笑んだ。

 

 

 

 

この時に飲んだワインを後に配信で写真付きで自慢したかぐやはワインの値段を知って驚愕することになるとは。

 

高くて古いワインの値段は信じられないぐらい高くなる。そんな法則をかぐやが知っているわけもなく。

 

「だってワイン一本にそんな値段が付くと思わないじゃん!? すごい気軽な感じであけたからそういうものだって思うじゃん!? まさか●●●●万円とか絶対思わないじゃん!? わたし悪くない絶対悪くない! でもワインはおいしかったです」

 

この配信は話題となり、SNSのトレンドに「かぐや ワイン」と並ぶことになったとさ。

 

おわり




ワイン兄貴がかぐやをどう思っていたのか、そこにアイはあったのか、ウミウシの見た目なのに恋するとかありえない? そうかなそうかも。でもそうじゃないかもしれない。
そういう思いで書きました。
空港で別れた後かぐやが一人でどうにかできたのはワイン兄貴が手をまわしたんだろうな、でないとどうにもならないことが多すぎるし。
献身的な行動、やっぱアイでは?

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