何卒ご容赦ください。
皆様のイメージと著しく乖離することがあります。
ごめんなさい。
「浦原商店」の看板が掲げられた古びた店内に、二人の影が滑り込むように飛び込んだ。
背後で引き戸が閉まる音と共に、佐藤カズキは膝をついて激しく肩を揺らした。
「……ハァ、ハァッ……。よ、夜一……速すぎますって…」
「喜助! おるか、喜助!」
夜一の鋭い声が響く。
店の奥から、カポ、カポと気の抜けた下駄の音が近づいてきた。
緑の縞模様の帽子を深く被り、甚平を羽織った男——浦原喜助が姿を現す。
「おやおや、夜一さん。ずいぶんと派手に霊圧を垂れ流しましたねぇ。これじゃあ技術開発局に捕捉されかねませんよ」
「ふん、背に腹は代えられなんだ。それよりカズキを隠せ。わしの霊圧を感知された可能性がある以上、追っ手がここを特定するのも時間の問題じゃ」
「そうしたいところなんですが……アタシもいろいろ立て込んでましてね。まさか、夜一さんが霊圧を解放するとは思ってもなかったっスから」
軽薄そうに笑う浦原喜助の表情は帽子の陰によってよく見えないが、只事ではない雰囲気を漂わせていた。
「わしのせいと言いたいのか…喜助」
不機嫌な声で浦原喜助に対する感情を隠そうとしない夜一は呟く。
「いえ、そうではなく…このタイミングでの虚の出現に少し引っかかるんっスよ」
「愛染の奴が関係していると?」
「憶測の域を出ない程度ですがね……まあ、立ち話もこれくらいにして地下に行きましょうか、黒崎さんのこともあるっスから」
聞き馴染みのない愛染や黒崎という名にカズキの中で謎が生まれたが、どうにも浦原喜助にそれを聞ける雰囲気ではなかった。
カズキ達は浦原に案内されるまま、店の地下にある広大な修行場へと降りた。
梯子を下りきったカズキは、思わず息を呑む。
そこには、地上の住宅街を丸ごといくつも飲み込んでしまえるほどの、圧倒的な広さの空洞が広がっていた。
「……なんだよ、ここ……。地下にこんな場所があるなんて……」
天井は遥か高く、見上げても闇に溶けて境界が定かではない。
驚くべきことに、そこには「空」があった。
地上の夜とは違う、淡く発光するような白磁色の空だ。
本物の太陽はないはずなのに、空間全体がうっすらとした朝靄のような光に包まれ、地面は、どこまでも続く赤茶けた岩石と砂地で覆われている。
「広すぎる……。商店の地下どころか、空座町が丸ごと入るんじゃないか?」
カズキが歩き出すと、踏みしめる乾いた砂の音だけが静寂に響く。
端が見えない。
遠くには霞んだ岩山のシルエットが幾重にも重なり、まるで別惑星の荒野に放り出されたかのような錯覚に陥る。
空気は乾燥しており、かすかに「霊子」の密度が高いせいか、肌がピリピリと震えるような独特の圧迫感があった。
地下の壮大さに感心しているのも束の間、浦原喜助が話を切り出す。
「カズキさん…アタシはこれから夜一さんと今後のことで相談することがありまして…申し訳ありませんが少しここに居てもらいます」
「すまんの、カズキ」
一般人の俺には話に割り込む隙などあるはずもなく、二人はそそくさと何処かへ行ってしまった。
「愛染とか黒崎とか、俺の知らないこと聞けなかったな…」
仲間外れにされた疎外感を受け入れられず、されど今の自分に出来ることもない現状に、カズキはただ広大なこの地下をわけもなく歩き回ることしかできなかった。
あても無く歩いていると、死覇装を纏い、身の丈程の大剣を背負ったオレンジ色の髪の少年が立っていた。
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