インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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この度、引越し作業がある為、一時休載します。落ち着いたら、再開致しますので、お待ち下さい。


第三十七話 頂点に立つ者の視界

ショッピングモールの喧騒の中。

 

再び合流した一夏と山田真耶は、どこか不思議そうな顔をしていた。

 

「いやー、ごめんね織斑くん! 急に付き合わせちゃって」

 

「いえ……まあ……」

 

頭をかきながら答える一夏。

 

だが、その視線は自然と一花へ向く。

 

何事もなかったかのように、いつもの微笑みを浮かべている。

 

先ほどまで千冬と何を話していたのか――

 

それを感じさせるものは、一切なかった。

 

「買い物は終わったのか?」

 

千冬が短く問う。

 

「ええ、問題なく」

 

一花は自然に頷く。

 

その仕草一つにも、違和感はない。

 

「じゃあ、帰ろっか!」

 

山田の一言で、その場の空気は完全に日常へと戻った。

 

――――

 

帰り道。

 

夕焼けが街を染めていた。

 

並んで歩く三人の影が、長く伸びる。

 

一夏は途中で何度か一花の方を見たが、結局何も聞かなかった。

 

聞けなかった、という方が正しいのかもしれない。

 

一花は、いつも通りだったからだ。

 

あまりにも、変わらなすぎた。

 

そして――

 

一夏は、知らない。

 

隣を歩く少女が、

 

どれほどのものを背負い、

 

どれほどのものを握っているのかを。

 

――――

 

流星一花。

 

その名は、表の世界ではほとんど知られていない。

 

だが裏では――

 

『スターレイル社』CEO。

 

IS三大企業の一角にして、

 

ISスーツ開発の元締め。

 

現存するISスーツ開発企業は、すべてその傘下にある。

 

つまり。

 

この世界のISというシステム、その“根幹”を握る存在。

 

その頂点に立つ少女。

 

それが――流星一花だった。

 

超が付くほどの名家。

 

いや、それを通り越して、“世界を動かす側”の人間。

 

そんな彼女が、かつて通っていたのは――

 

織斑一夏と同じ、中学校。

 

ごく普通の学生が通う、何の変哲もない学校だった。

 

世界の頂点に立つ存在が、

 

なぜそんな場所に身を置いていたのか。

 

なぜ、一夏のすぐ傍にいたのか。

 

その理由は――

 

織斑千冬ですら、知らない。

 

そして。

 

当の一夏本人もまた、

 

何一つ知らされてはいない。

 

――――

 

夜。

 

自室。

 

シャワーの音だけが、静かに響いていた。

 

温かい水が、一花の身体を伝い落ちる。

 

長い髪が濡れ、肌に張り付く。

 

だが、その表情は――どこか思索に沈んでいた。

 

(……織斑千冬)

 

昼間の会話が、脳裏に蘇る。

 

あの問い。

 

――どこまで知っている。

 

一花は、目を閉じる。

 

(クラス代表戦)

 

あの時現れた、所属不明のIS。

 

その“出処”。

 

「……ウサギ」

 

小さく呟く。

 

水音に紛れて消える声。

 

(タッグマッチトーナメント)

 

ラウラ・ボーデヴィッヒの異変。

 

あれは、偶然ではない。

 

技術でもない。

 

「VTシステム……」

 

その名を、静かに口にする。

 

禁忌に近い領域。

 

人とISの境界を曖昧にするもの。

 

シャワーの水が止まる。

 

静寂。

 

タオルを手に取り、濡れた髪を拭きながら、一花は鏡を見る。

 

そこに映る自分の姿。

 

そして――

 

(臨海学校)

 

これから訪れる予定の行事。

 

だが、それはただのイベントではない。

 

知っている。

 

その先に、何が起こるのかを。

 

「……来るわね」

 

ぽつりと呟く。

 

静かに。

 

確信を持って。

 

「――また」

 

その言葉には、恐れはなかった。

 

むしろ。

 

どこか楽しんでいるような響きすらあった。

 

タオルを肩にかける。

 

そして、ゆっくりと微笑む。

 

「大丈夫」

 

誰に言うでもなく。

 

ただ、自分に言い聞かせるように。

 

「今度は、全部守るから」

 

その言葉の“全部”に含まれるものは――

 

一つしかない。

 

織斑一夏。

 

彼を中心に回る、この世界すべて。

 

静かな夜の中で。

 

少女は、確かに“次”を見据えていた。

 

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