リゼロEx ナツキ・ぺトラ   作:[email protected]

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第5話 ドライブ

 ペトラには二~三日に一度の楽しみがあった。

 それはスバルと一緒にスバルの愛竜パトラッシュに乗って『どらいぶ』する事である。

「つっても、一応、村の周囲の見回りも兼ねてるから純粋なドライブとは言い難いけどな」

 いわば「定期パトロール」とも言うべきものじゃないかとスバルは思う。

「いいのよ。スバルと一緒にパトラッシュちゃんの背中で風になれるなら、私にとっては『どらいぶ』なの」

 愛する夫に無粋な事を言われ、少しだけ頬を膨らませるぺトラ。

 

 ちなみに地竜は「風除けの加護」で走ってる際の風圧の影響を受けないため、パトラッシュに騎乗してる二人も風圧を受けることなく、いつもの調子で会話できた。

 付け加えると、パトラッシュは賢いので村人と事故を起こさないよう速度を調整している。人の通らない場所では風のように走るが、人が通りそうな場所では速度を抑えるし、速度を上げる時も周囲に注意しながら走ってくれている。

 なおパトラッシュの手綱を握るスバルの背中にしがみつく形でペトラが乗り、そしてスバルの前には小さな大精霊ベアトリスがちょこんと乗ってるので、厳密には三人でのドライブであったが、ベアトリスは空気を読んで指摘しなかった。

 

 かつてアーラム村は、魔獣の脅威に襲われ、当時はロズワール邸の使用人であったスバルが魔獣に呪いをかけられたり、ペトラを含む村の子供たちが誘拐されたり、大変な事態になった。

 さらにヤバかったのが魔女教の襲撃で、危うく村の人間が皆殺しにされるところだった。

 むろん、あんな大事件はそうそうあるものではないが、警戒は必要だろうとスバルは考えていた。

 なにせ旧ロズワール邸が燃えて、新しいロズワール邸は結構離れた別の場所で、もう領主である辺境伯のお膝元じゃなくなったアーラム村は、なにか物騒な事件が起きても、すぐさま鬼強いメイド姉妹が駆け付けたり、道化のような格好をした国一番の魔法使いである領主様が飛んできてくれたりはしないのだ。

 

「村の近くの森の魔獣は全部メィリィが支配下に置いて、人を襲わないように厳命したらしいけど、油断はできないからな。よその土地から魔獣が移り住んでくるかもしれないし、盗賊とかが村一番の美女を狙って襲ってくるかもしねぇ」

「それって、私の事? スバル、私の事を心配してくれてるんだ?」

「そ、そんなの当たり前だろ。ペトラは俺の愛する村一番、いや世界で一番の嫁さんなんだからな」

 気恥ずかしさに少し赤くなりながら、それでもスバルは言い切った。

「わーい。スバル、ありがとう! 愛してる!」

 スバルの背中に頬ずりし、大きな胸を押し付けるペトラ。

「俺も愛してるよ、ペトラ」 

 と、手綱を握ってるので抱き返すことはしないが、スバルも愛の言葉を返す。

 自分の背中でイチャイチャされて、さすがにパトラッシュが鬱陶しそうな鳴き声を漏らした。

 「気持ちはわかるのよ、パトラッシュ。でも、この年中バカップル夫婦はベティーたちが支えてやらんと危なっかしいから我慢なのよ」

 ベアトリスはパトラッシュの背中を撫でながら、そんな愚痴とも励ましともつかない言葉をかけた。

「でも、村の青年団でも見回りはしてくれてるんだよね?」

 ペトラの疑問に、スバルは「まあな」と肯定する。

「別に青年団のみんなを信用してないわけじゃないさ。ただ、こういう事は注意し過ぎて悪い事はないからな。大精霊のベア子やメチャ有能な地竜のパトラッシュ、それに陽魔法の使い手のペトラじゃないと気づけないような何かがあるかもしれねぇ」

「まあ、大船に乗ったつもりで、この大精霊のベティーに任せるかしら」

「うん、私も頑張る」 

 ベアトリスは小さな胸を張り、パトラッシュも「任せなさい」とばかりに威勢良く鳴いた。

 

 スバルたちは村の各方面の入口やその周辺を見回り、魔獣や怪しい者が村に近づいた痕跡が無いか調べて回った。

「ふう、今日も何もないか」

 パトラッシュの鼻、大精霊のベアトリスの知識や感覚、そしてロズワールの直弟子であるペトラの陽魔法や知識で調査し、結果、異常なしという結論が出た。

「毎回の事だけど、拍子抜けかしら」

「い~や、ベア子。何事も無いってのが確認できたってのは意味のある事だぞ。ベア子のおかげで今日も村は平和だって証明されたんだ」

「うん。私もスバルの言う通りだと思う。これで私も村のみんなも安心して暮らせるんだから十分に意味があるよ。ありがとう、ベアトリスちゃん」

 ぼやくベアトリスに、スバルが労いの言葉を、ペトラが感謝の言葉をかけた。

「もちろんパトラッシュもな。ありがとうよ」

 スバルが愛竜の首の下を撫でると、パトラッシュは嬉しそうに鳴いた。

「さて。それじゃあ、帰るか」

「うん。帰りは本当に『どらいぶ』だね」

「ああ、そうだな」

 愛妻の笑顔での言葉をスバルは否定しなかった。

 そもそも最初から、スバル自身にも、そういう気持ちがないわけではなかった。

(村の警備が半分で、残りの半分はペトラにドライブを楽しんでもらって、役目を与えてベア子の自尊心を満足させ、パトラッシュの運動にもなるってところだからな)

 ペトラはスバルと一緒にパトラッシュに乗るのをとても楽しみにしてくれてるし、平和な村での生活で大精霊の能力とプライドの高さを持て余してるベア子に良い役目を与えてやれるし、パトラッシュを運動不足にせずに済む。

 むろん、村の平和を守るためのパトロールも本心だし、スバル自身だってペトラと一緒にパトラッシュの背中で風になるのは至福だ。

 スバルなりに色々と考えてのパトロール兼ドライブであった。

 

 お利口で可愛くて、その上に足の速い地竜の背中で、ペトラは愛する夫のたくましい背中にしがみついていた。

「今日も平和だね」

「そうだな」

「でも、その平和はスバルのおかげなんだよ」

 スバルが体を張って、命懸けで頑張ってくれなければ、ペトラは魔獣に殺されていた。仮にそこでは運よく助かったとしても魔女教徒に殺されていた。ペトラの両親や友達も、他の村人も、みんな魔女教徒に殺されていた。

「そしてスバルは今もベアトリスちゃんと一緒に村の平和のために頑張ってる。私はそんなスバルが大好きだよ。こうしてスバルと一緒にパトラッシュちゃんの背中で風になれるのも幸せだよ」

 スバルの体温を感じつつ、ペトラの視界の中で住み慣れた村の景色が流れていく。

 スバルと出会わなければ、こうして疾走する地竜の背中から村を見る機会も無かっただろう

 

「愛してるよ、スバル」

 ペトラは自分に色々な幸せを与えてくれる夫に、今日も心からの愛情と感謝を伝えた。 




どうも、お待たせしました
今回はスバルとペトラのドライブ回、楽しんでいただけたら幸いです

ちなみにスバルたちのドライブ兼パトロールが毎日ではないのは、服の仕立てや農業の仕事との兼ね合いからです。
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