闇エルフのお忍びグルメ   作:常夏鳳梨

9 / 12
副題:ファストフードは永遠に

どうも、常夏鳳梨です。
今回はタイトルの通り、オルクセンでは国民的ファストフードに関する話です。
あと──よくよく考えてみたら、カレー粉って万能食材じゃね?
というか、その国独自のファストフードって良いよね。


カリーヴルストドックとクラフトコーラ

オルクセン王国──もとい、オルクセン連邦で映画が文化として普及してから数十年が時が流れた。

 

かつては白黒で無声だった映画も、今となっては色鮮やかな色味や魅力的な音楽が流れるだけではなく、一昔前は物珍しい方の技術であったCGでさえ、もはや当たり前のように受け入れられていた。

何だったら、CGを使えばドラゴンを含めた生物を再現できるとあってか、最近はその技術も精巧なモノになりつつあったとか。

 

そして、その映画の中でも特に人気なのは──星欧大陸における歴史や史実を基にした映画で、最近では第二次星欧大陸での戦争時のキャメロット・グロワール軍が実行した作戦──通称、【撤退作戦】についての映画がヒットしていたとか。

 

そんな中、特にヒットを飛ばしていたのは──第二次星欧大戦にて、国内に居た六芒教を信仰していた特定の人種に対し、迫害を推進していたあの悪魔が現代に復活した末に、再び独裁者として脚光を浴びていくという映画であった。

その映画はいわゆるブラックなコメディに近い映画だったのだが、その当時を知る人々にとっては他人事には思えなかったらしく

 

「──どれだけ時が経とうとも、奴の考えに同調する者は現れるということか」

 

ヴィルトシュヴァインのとある映画館にて、最後まで映画を見終わったディネルースはそんなことを呟いていた。

 

その脳裏には、キャメロットやグロワールでの移民問題や伴う労働環境の変化。

それから、移民に対する抗議デモ──と言った具合で日に日に移民への不満が高まりつつあったため、多くの魔種族が共存する形で暮らすオルクセン連邦も他人事ではないと思ったのか、ディネルースは上映室を後にしつつもそんなことを悶々と考えていた。

 

彼女はかつて、グスタフ亡き後にオルクセンという国の象徴たる女王として、悪魔が統治していた頃のアスカニアのことを覚えていた。

第二次星欧大戦時のアスカニアでは、六芒教の信者への迫害の末の虐殺に、生命の泉という名の優秀な子供の選抜──などなどのことがあったからか、その当時のディネルースはこれらのアスカニアの所業に対し、その惨さのあまりに絶句していたのは言うまでもないことであった。

 

更に言えば、彼の登場に対して言葉を失っていたグスタフの姿ですら覚えていたためか、彼女自身は悪魔と称されるその男のことを未だに忘れられずにいた。

 

そのため、一応は多くの魔種族が共存する国の女王であるディネルースは、この映画のことを誰よりも現実的な映画だと評価していたようで、とても他人事とは思えないような心境になっていた。

何だったら、映画館のグッズ売り場に並んでいる映画関連のグッズに対し、それをコメディとして受け止められる今の時代はまだマシだなと思ったとか。

 

「しかし──まさか、あの男が主役の映画が作られるようになるとはな」

 

悪魔と呼ばれた男がこの世から消えてから数十年が経ったとは言え、未だに独裁者としての知名度を誇るその男に対し、複雑な思いを抱くディネルース。

 

そういえば、何故グスタフは彼が台頭し始めたことに対し、あそこまで恐れていたのだろう?

ディネルースはそんなことを一瞬だけ思った末に、もしかすると彼の世界でも同じような存在が──?と思ったのだが、その考えは彼女の目の中に入ったとある食べ物の存在により、すぐさま消え去ったのだった。

 

それは、オルクセン連邦での食べ歩きグルメの一つであるカリーヴルストだったのだが──ただのカリーヴルストではなく、ホットドックのようにパンに挟んであるタイプだったため、ディネルースは分かりやすく興味を示していた。

 

「ほぅ、カリーヴルストをパンに挟んだのか」

 

映画館の近くにあるキッチンカーのメニューを見つつ、そう呟くディネルース。

その顔には、その料理への興味を示しているかのような様子であったのは言うまでもない。

 

ディネルース自身は、まだグスタフが王だった頃に夫婦としてお忍びで出かけた際、カリーヴルストを食べたことがあった。

スパイスの芳醇な香りが漂うカレー粉と甘酸っぱいケチャップ、脂の乗ったソーセージの味。

それらをグスタフと共に食べた記憶が蘇ったのか、その顔には懐かしいと言わんばかりの顔つきになっていた。

 

そういえば、最近はカリーヴルストを食べてなかったな。

そう思ったディネルースは、そのキッチンカーを営んでいるであろうオークに対し、こう声を掛けていた。

 

「すまない、この【カリーヴルストドック】とドリンクのセットメニューを注文したいんだが──」

「はい!!【カリーヴルストドック】とドリンクのセットメニューですね!!ドリンクの方はどうしましょうか?」

「そうだな──とりあえず【クラフトコーラ】を頼む」

 

そういうわけで、【カリーヴルストドック】と【クラフトコーラ】を購入した後、そのままキッチンカーの近くにあったベンチに座るディネルース。

その顔には、美味しそうだという言葉が今にも口から溢れそうな様子だったとか。

 

【カリーヴルストドック】

その名の通り、ホットドッグ化したカリーヴルスト

欲望のままに頬張るべし!!

 

【クラフトコーラ】

ヴァルダーベルク産で作られた美味しいコーラ

ピリリと辛いスパイスの風味がクセになる!!

 

「うむ、これは中々に美味そうな料理だな」

 

そう呟いた後、本能と欲望のままに【カリーヴルストドック】を一口食べるディネルース。

 

パリッと良い音を響かせつつ、ソーセージから放たれるのは肉の旨みと脂。

そして、それと同時に食欲をそそるカレー粉の風味と絶妙な甘酸っぱさのケチャップの味付けに、それらを包み込む程よい硬さと柔らかなパンの食感と相まってか、彼女の目は分かりやすく輝いていた。

 

更に言えば、その美味しさのあまりディネルースはもう一口とばかりに大きな口を開ける形で食べていた。

ちなみに、その様子を見ていたオークやコボルト達は良い食べっぷりだなと思っていたとか。

 

「──カリーヴルストとパンはここまで相性が良かったのか」

 

そう呟きつつ、【カリーヴルストドック】を食べ進めていたディネルースは、そのまま【クラフトコーラ】を一口飲んだ。

 

【クラフトコーラ】は【クラフトコーラ】で、カレーとはまた別のスパイスの香りが漂っていたものの、それ以上に清涼感のある甘みが【カリーヴルストドック】との相性が良かったため、その美味しさのあまり思わず目を見開いていた。

そして、ディネルースは【カリーヴルストドック】と【クラフトコーラ】を交互に飲み食いしつつ、映画が終わった後の食事を楽しんでいた。

 

「市販のコーラも美味いが、私としてはこの【クラフトコーラ】の方が好みだな」

 

そう呟きつつ、ディネルースは美味しそうに【クラフトコーラ】を飲むと、再び【カリーヴルストドック】との組み合わせを楽しむとばかりに一口食べていた。

その脳裏には、オルクセンの地にてコーラが普及し始めていたことを思い浮かべていたのか、そういえばあんなことがあったなという顔つきになっていた。

 

オルクセン連邦──もとい、星歴890年代のオルクセン王国にセンチュリースター経由でコーラがもたらされた時、案の定オーク・コボルト・ドワーフ達達はもちろんのこと、闇エルフ達も衝撃を受けていた。

ただ、諸事情によってコーラの存在を知っていたグスタフだけは違った反応を見せていたらしく、たまにヴィルトシュヴァインの市場でコーラを買ってはディネルースと共に飲んでいたのである。

 

その当時のディネルースは、酒にしては独特な味がすると思っていた。

しかし、数十年も経てばコーラの味にも慣れてしまったようで、今となっては酒を飲む容量でグビグビと飲んでいた。

 

ちなみに、グスタフはコーラを使った煮込み料理をたまにディネルースに対して振る舞っていたとか。

 

「グスタフ──どうやら、この世界はお前を恐怖へと陥れたあの男を喜劇として描く程に平和になったらしい」

 

そう呟くディネルースの顔には、どこか平和でどこか物騒なこの世界に対する複雑な感情が映し出されていた。

 

今の彼女には、数十年前のグスタフのような絶対的な影響力はない。

けれども、今まで何度も戦争という悲惨な出来事を見てきた闇エルフとして、この平和を維持できるようにしていきたいと思ったのか、そう思いながら【カリーヴルストドック】を食べていた。

 

「──ほぅ、ピクルスが入っていたのか」

 

ちょうどその時、【カリーヴルストドック】のほんの僅かな爽やかさの正体がピクルス──正確に言えば、きゅうりのピクルスだったのだと気がついたのか、これは中々に美味しいなとばかりにフッと微笑んでいた。

 

その結果、ディネルースの食欲のスイッチは更に入ったようで──結局、彼女は【クラフトコーラ】と交互に飲み食いする形で【カリーヴルストドック】を完食したのだった。

 

「──程よく腹が満たされたな」

 

お腹いっぱいとばかりにそう言った後、キッチンカーの近くにあったベンチから立ち上がったかと思えば、そのままそこから立ち去るディネルース。

 

面白い映画に、美味しい食事。

それが楽しめて満足したのか、ディネルースは街中を歩いていたのだが

 

「──全く、そこまでしなくも良いものを」

 

今度は自身の警備をこっそりと行なっているであろう闇エルフ、そして白エルフの姿を目視したからか、呆れた様子でそう呟いていた。

 

そう思うのと同時に、彼女達もあの映画を見たのか?とディネルースは思ったようで、後で聞いてみるかと軽いノリで考えていた。

ちなみに、その闇エルフと白エルフ達はというと──映画鑑賞をしているディネルースをこっそり盗撮していた輩をとっ捕まえていた模様。

 

そんなこんなで、映画を楽しんだディネルースはメッセージアプリ経由でシュヴェーリンに対し、その映画のことを伝えたとか。

なお、その映画を見たシュヴェーリンは二つの戦争に参加した当事者だからか、よくもまぁこの男をネタにしたなと思ったらしい。

 

何だったら、その映画はオルクセン連邦内でも話題になったのだった。

 

@YamiDonguri

今日は映画館に行ったついでに【カリーヴルストドック】を食べたよ!!

一緒に飲んだ【クラフトコーラ】との相性が抜群だから好き好き大好き

#オルクセン飯




【本日のメニュー】
☆カリーヴルストドック
☆クラフトコーラ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。