Muv-Luv OPERATION:LAST KISS   作:ババンババンバン

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【日帝新聞号外】
佐渡島奪還!!
人類、歴史的大勝利!!
2004年1月17日未明、日本帝国軍、国連軍、ロシア軍、第三帝国軍、統一中華戦線軍の五軍による大規模統合作戦が成功裡に終了した。
長年に渡り日本本土を脅かし続けていた佐渡島ハイヴは完全制圧され、作戦に参加した将兵たちは、未曾有の激戦を突破しながらも多数が生還。
各国軍を通した衛士生存率は約70%を記録しており、これは過去のハイヴ攻略戦と比較しても極めて高い数値である。

人類は敗北しない!
戦場となった佐渡島では、我らが戦術機部隊がBETA群を圧倒。
砲火と鋼鉄の嵐によって敵を駆逐し、ついに“奪われた土地”を取り戻した。
これは単なる一勝利ではない。
人類が再び反攻へ転じられることを証明した、歴史的転換点である!


編集者メモ:
討伐艦隊については、その所属体系や指揮権系統が既存国家軍と大きく異なるため、正式に“各国軍”へ含めるべきか判断が難しい。
また、同艦隊の戦果および投入兵器の影響力があまりにも大きく、報道内容次第では他国軍の功績や奮戦が霞んでしまう恐れがある。
そのため、各方面への政治的配慮も踏まえ、討伐艦隊の名称や詳細戦果を必要以上に強調しない方針とする。


騒ぎ

佐渡島ハイヴ攻略が達成された翌日。

作戦に参加した各国では、その戦いの様子が新聞やニュースを通して大々的に報道され、世界中を大いに賑わせた。

従来のハイヴ攻略戦は、“参加した時点で死を覚悟する作戦”とまで言われるほど絶望的な戦いだった。

だが今回の作戦では、常識外れとも言える各国軍の総力戦によって、多くの兵士たちが生還を果たしている。

それは前線だけではなく、兵士たちの帰りを待ち続けていた人々にも、大きな希望を与えた

帰還報告を聞いた家族たちは涙を流し、抱き合い、生きて戻った者たちの無事を心から喜んだという。

しかし、事態は喜ばしいことばかりではなかった。

アメリカ合衆国による三発のG弾投下問題。

佐渡島ハイヴ内部で採掘されるG元素の配分問題。

さらに、討伐艦隊に対する各国からの技術提供要請。

歴史的大勝利の裏側では、既に国家間の政治的駆け引きと利害対立が静かに動き始めていたのである。

 

 

◇◇

 

 

 

AD.2004.01.18

【日本帝国/国会議事堂】

現在、国会議事堂では、アメリカ合衆国によるG弾使用問題、佐渡島ハイヴから採掘されるG元素の配分問題、そして討伐艦隊に対する技術提供交渉など、戦後処理に関わる複数の重大案件について対応会議が行われていた。

だが、それぞれの問題には各国の利害や政治的思惑が複雑に絡み合っており、議場内では怒号と怒鳴り声が絶えず飛び交うなど、会議は収拾がつかないほど荒れに荒れていた。

 

「アメリカには断固抗議すべきだ! あの連中、許可も無しにG弾を三発も持ち込んだ上、実際に投下したのだぞ!」

「しかし、アメリカは我が国にとって最大級の物資輸出国でもある。下手に刺激して、逆上した向こうに輸出を止められでもしたら、今度はこちら側が立ち行かなくなるぞ!」

「G元素の埋蔵量についてですが、香月博士のレポートによれば、超重光線級建造に伴うエネルギー備蓄用と思われるG元素が大量に発見されたとのことです...」

「それほど埋蔵量が多いのであれば、各国が妥協可能なギリギリのラインを探って配分を調整するしかないだろう」

「だが、こちらが出し渋っていると判断されれば、強硬な抗議に発展しかねん。多少は色を付けてでも各国を納得させる必要があるぞ」

「討伐艦隊の技術は、我々が優先的に確保すべきだ! 今この戦争においても、そして戦後においても、技術的優位を握れれば政治的アドバンテージは計り知れん!」

「それは他国も同じことを考えている。こちらだけが独占しようとすれば、各国が良い顔をするはずがない...」

 

強硬派と穏健派の意見が激しく飛び交い、会議は紛糾するばかりで、一向に進展する気配を見せていなかった。

 

「静粛に!!」

 

突如、議場全体へ響き渡った怒声に、騒然としていた会議室が一瞬だけ静まり返る。

進行役を務める老議員は、険しい表情のまま議場を見渡した。

怒鳴り合っていた議員たちも、流石に口を噤み、それを見た進行役は深く息を吐き、机を軽く叩いた。

 

「まず、G弾問題についてだ」

「アメリカ合衆国への抗議は行う。ただし、全面対立は避ける」

「現状、我々は物資・兵站の多くをアメリカへ依存している。感情的報復は国益にならん」

 

数名の強硬派議員が不満げな表情を浮かべるが、反論は出ない。

「次にG元素配分問題」

「各国への配分割合は、投入戦力・損耗率・戦後復興支援を基準に再計算する。香月博士の調査班にも追加調査を依頼し、埋蔵量を正確に把握しろ」

「独占は認めん。ただし、日本側の取り分も最大限確保する」

「そして...討伐艦隊の件だ」

「あの技術群は危険だ。あまりにも強力すぎる」

「だからといって、力尽くで囲い込めば各国間の火種になる。最悪の場合、討伐艦隊そのものが敵に回りかねん」

 

実際、佐渡島攻略戦を見た者ほど、討伐艦隊の異常性を理解している。

 

「技術提供交渉は行う。ただし、段階的かつ共同研究形式を基本とする」

「独占ではなく、“協調”を建前に進めるのだ」

そこまで言い切ると、進行役は議場全体を見渡した。

「以上だ。事我々に至っては、勝利に酔う時ではない。この勝利の後始末をしなければならんのだ」

 

 

 

◇◇

 

 

 

AD.2004.01.18

【日本帝国/佐渡島・臨時拠点】

 

佐渡島では十分な安全確認と残存BETA反応の掃討が行われた後、ハイヴ周辺へ仮設された臨時拠点にて、作戦へ参加した各国軍による交流会が開かれていた。

交流会の案が発表された際、各国の上層部としても討伐艦隊とのコネクション確保に加え、自軍の士気向上という大きな利点があったため、この予想外の提案には二つ返事で参加を決定した。

この交流会は、イングラハムがジェイドへ提案していた案が正式に承認されたことで実現したものである。

討伐艦隊側は、保管されたまま処理待ちとなっていた消費期限間近の保存食を大量放出。

さらに、ヘイムダル級およびヨルムンガンド級へ搭載されていた食品調理システムへ合成食品素材を投入し、味や栄養バランスを最大限まで引き上げた特別食も振る舞われていた。

 

「な、なんだこれは...!」

 

湯気を立てる料理を前に、一人の衛士が呆然と呟く。

スプーンで掬ったシチューには、しっかりとした肉の繊維感があり、香辛料の匂いまで漂っていた。

 

「嘘だろ!? ちゃんと味がするぞ!?」

「パンが柔らけぇ!!」

「おかわり! おかわりまだあるか!?」

 

各所で歓声と笑い声が上がる。

戦場帰りの兵士たちは、まるで祭りの屋台でも回っているかのように料理へ群がっていた。

さらに、“信じられないほど美味い飯が出ている”という噂を聞きつけた病床送りの兵士たちが、包帯まみれのまま医務室を抜け出して乱入してくるという騒ぎまで発生した。

討伐艦隊の調理員たちも、予想以上の反応に思わず苦笑する。

その様子を見ていたイングラハムは、思わず破顔する。

 

「よう、イングラハム! ずいぶんな大盛況じゃねぇか!」

「ああ、武さん。ええ、皆さんに喜んでいただけて何よりです」

 

武は紙皿へ山盛りにされた料理を片手に、賑わう会場を見渡した。

各国の兵士たちが入り乱れ、笑い合い、食べ物を奪い合うように群がっている。

つい昨日まで死線を潜っていたとは思えない光景だった。

 

「おい待て!その肉は残しておいてくれ!」

「患者は安静にしろって言ったでしょうが!!」

 

包帯だらけの兵士たちが医療班に追い掛け回されながら突撃してくる。

しかも片腕を吊ったまま大皿ごと肉料理を抱えて逃げていた。

 

「絶対に離さんぞ! これだけは!!」

「昨日腹に大穴開けといて何を言うか!」

 

周囲から爆笑が起こり、武も思わず吹き出した。

 

「...なんつーか、平和だな」

「ええ...だからこそ、この光景を守らなければなりません」

 

その時、武とイングラハムに声がかかる。

 

「タケルー!イングラハムさーん!こっちこっち!」

 

遠くから美琴が大きく手を振る。

 

「このアイスクリーム、美味しですよっ!一緒に食べましょう!」

「...とても美味しいです」

 

珠瀬と霞に至っては、アイスクリームを前に完全に目を輝かせている。

霞は両腕でアイスクリームが入ったカップを両腕に沢山抱え、嬉しそうにうさ耳(ヘッドセット)をぴょこぴょこと揺れさせる。

 

「はは...みんな普通に楽しんでんなぁ」

「それだけ、生きて帰れたことが嬉しいのでしょう」

「戦場では、“次の食事”すら保証されませんから」

 

武はその言葉を聞き、少しだけ表情を緩めた。

"生きて帰る"。ただそれだけのことが、こんなにも嬉しい。

そんな当たり前を噛み締めるように、武はイングラハムを連れ再び賑やかな輪の中へ歩いていった。

 

一方その頃。

兵士たちによる交流会で大いに盛り上がる臨時拠点とは別に、仮設指揮所奥では、ある意味“最前線”とも呼べる空間が形成されていた。

各国から派遣された政治家、軍上層部、外交官たちによる会食――もとい、探り合いの場である。

 

「今回の作戦における貴艦隊の功績には、我が国首脳部も大変感銘を受けておりまして────」

「G元素配分についてですが、我々としては――――」

「ぜひ今後は、より“優先的”な協力関係を築ければと考えております────」

「我が国としても、最大限の便宜を図る用意がありますので────」

 

政治家は柔らかな笑みを浮かべながら、意味深に言葉を濁す。

別の軍高官も、ワイングラスを片手に続けた。

 

「いやぁ、貴艦隊の防御技術には驚かされました」

「もし共同研究という形で一部でも共有いただければ、我が国との軍事連携はより強固なものになるでしょうな」

 

さらに外交官が割って入る。

 

「もちろん、“特別なパートナー”として相応の待遇は保証致します」

「補給、寄港権、資源供給...可能な限り柔軟に対応させていただきます」

 

どいつもこいつも言葉こそ柔らかいが、要するに――"自国を優先しろ"そう言っているのと何ら変わらなかった。

 

『...はい、今後の参考にさせていただきます』

 

ジェイドは笑顔を崩さず応じる。

だが内心では、既に疲労が限界へ達していた。

超重光線級へ突撃する方がまだ気楽だったと、本気で思えるほどである。

その横で夕呼が、小声で囁いた。

 

「あら、随分と人気者ですね」

「やめてくれ...頭痛が酷くなる」

 

だが次の瞬間には、また別の外交官がにこやかに近付いてくる。

 

「ところでジェイド提督、“今後の技術交流”についてなのですが――」

 

ジェイドは一瞬だけ天を仰いだ。

この戦場は、まだ終わりそうになかった。

 

AD.2004.01.19

【日本帝国/横浜基地・戦術指揮所】

 

佐渡島攻略戦の熱気も冷めやらぬまま、横浜基地では早くも様々な作業が始まっていた。

夕呼にブリーフィングルームへ呼び出された武は、部屋へ入った瞬間、思わず目を丸くする。

 

「やっ、タケル!」

「おはようございます!たけるさん!」

 

そこにいたのは美琴と珠瀬だった。

 

「あれっ?確か今お前ら帝国軍に増援部隊として出向してたろ?なんでこっちの基地にいるんだ?」

「なんか急に辞令が出てさー。“本日付で横浜基地へ再配属”だって!」

「さ、再配属?」

 

武が首を傾げた、その時───

 

「その通りよ」

 

背後から聞こえた声に、一同が振り返ると夕呼がいつもの白衣姿のまま、資料端末を片手に部屋へ入ってくる。

 

「佐渡島戦で得られた実戦データを精査した結果、アンタたちの連携性能は予想以上だったわ」

「特に白銀を中心とした状況対応能力と戦術適応速度は、実戦運用に十分耐え得ると判断された」

 

夕呼はそこで一度言葉を切り、不敵に笑う。

 

「だから、上層部に掛け合って新部隊を編成することにしたの」

「新部隊?」

 

武、美琴、珠瀬が顔を見合わせる。

 

「白銀を中心に、実戦経験豊富な衛士を再編成して運用する。アンタたちはその初期メンバーってわけ」

「へぇー! なんか本格的!」

 

美琴が目を輝かせる。

だが珠瀬は少し不安そうだった。

 

「あ、あの...私たちで本当に大丈夫なんでしょうか...?」

「今さら何言ってんのよ」

 

夕呼は呆れたように肩を竦める。

 

「いくら討伐艦隊とその他の大戦力がいたとはいえ、ハイヴ攻略戦を生き残った時点で、アンタたちは十分“異常側”よ」

「褒め言葉なんですよねそれ?」

 

夕呼は、深々とため息を吐いた。

 

「ほんっと、美琴と珠瀬を引き抜くのには苦労したわよ~。“ハイヴ攻略経験者を引き抜くとは何事か”って、帝国軍の御偉方が散々文句を言ってきてね」

「でもまぁ、どこぞの提督殿のおかげで戻ってきた権力をフル活用して、全部黙らせてきたけど」

「「「えぇ...?」」」

 

三人の声が綺麗に重なった。

 

「それと、部隊人員はアンタ達だけじゃないわ」

 

その言葉を合図に、戦術指揮所に一人の少女が入ってくる。

小柄な体躯、腰近くまで伸びた白髪、どこか獣を思わせる鋭い瞳孔と、琥珀色の双眸。

そして、拘束具を連想させる黒色のジャケット。

部屋の空気が一瞬張り詰める。

夕呼はそんな反応を意に介した様子もなく告げた。

 

「紹介するわ。今日付けでアンタたちの部隊へ編入されることになった────」

「あの決戦兵器、ジェリコ・トランペットのパイロットよ」

 

その言葉に、美琴が思わず声を上げる。

 

「えぇぇぇ!? あのヤバい波動砲の!?」

「ちょ、美琴ちゃん声大きい...!」

珠瀬が慌てる横で、少女はオイルの切れたロボットのような動きで敬礼した。

「ハジ、メ、マシテ」

「ハンドレット、デス」

 

短く、それだけ。

だがその声には、妙な不気味さを思わせるような重みがあった。

武は少しだけ緊張しながらも、前へ歩み出る。

 

「えぇっと...白銀武だ。よろしくな」

 

少女――ハンドレットは、僅かに目を瞬かせ、そしてぎこちなく、どこか作り物めいた笑みを浮かべてから小さく頷いた。

 

「ていうか、この子は決戦兵器のパイロットですよね?なんでそんな機密の塊みたいな子が俺たちの部隊に配属されたんですか?」

 

武が困惑気味に尋ねる。

武の当然の疑問に、夕呼は一瞬だけ視線を逸らした。

 

「...色々と事情があるのよ」

「絶対ロクでもない事情ですよねそれ」

「察しが良いわね」

「その子、人造人間なの」

「身体のメンテナンス負担や、時間経過による身体機能劣化へ対処するために、普段は凍結処置による封印管理をされているみたい」

「ただ、短期間での連続凍結は流石に身体へ深刻な負担が掛かるのよ」

「だからといって封印を続けるわけにもいかない。かと言って別施設へ隔離すれば、今度は精神面への負荷が問題になる」

 

夕呼は小さく肩を竦めた。

 

「...なら、持て余すくらいなら討伐艦隊の次に安全なここで働かせてみよう――って、向こうと私の判断でこうなった訳」

 

そして、彼女はいつもの不敵な笑みを浮かべる。

 

「ま、安心しなさい。私は大天才だから、万が一この子にトラブルが起きても対処できるしね」

「...いやいやいや、待ってください先生」

 

武が頭を押さえながら声を上げる。

 

「情報量が多すぎるんですけど!? 人造人間!? 凍結封印!? なんかもう、聞いちゃいけない単語しか出てないんですけど!?」

「今さらでしょ」

 

夕呼は涼しい顔で言い放つ。

実際、武は既に社霞(ESP能力者)や討伐艦隊総司令のイングラハム(副官)とも普通に接触している時点で、機密のど真ん中に立っている人間だった。

今さら多少機密事項が増えたところで、もはや誤差の範囲ですらある。

――本当に、今さらな問題だった。

 

「今更で片付けないでくださいよ!?」

 

珠瀬も困惑気味におろおろしていた。

 

「だ、大丈夫なんでしょうか...?」

「大丈夫だからここに連れて来たのよ」

夕呼はそう言うと、ふと思い出したように告げる。

「ああ、そうだ。白銀――アンタ、部隊長任命に伴って昇進だから」

「へ?」

 

武が間の抜けた声を漏らすが、夕呼は気にした様子もなく続けた。

 

「本日付で大尉。新設部隊の現場指揮官を任せるわ」

「いや待ってください先生!? なんでそんなサラッと爆弾発言するんですか!?」

「爆弾でも何でもないわよ。戦果と実績を考えれば妥当でしょ」

「そ、そうかなぁ...?」

「要塞級を細切れにしておいて何よその態度」

 

武が頭を抱える横で、美琴が肩を叩いた。

 

「おー、タケルちゃん隊長!」

「良かったですね、たける大尉!」

「タイチョー」

「やめろそのノリ!」

 

珠瀬と出会ったばかりのハンドレットまで嬉しそうに続く。

しかし夕呼は、ふっと真面目な表情へ戻った。

 

「冗談抜きで、アンタには期待してるわよ」

「佐渡島でアンタが見せた判断力と現場対応能力は、正直想定以上だった」

「討伐艦隊との連携も含めて、“あの戦場”へ適応できる衛士は少ない」

 

武は驚いたように目を瞬かせる。

夕呼がここまで真っ直ぐ評価を口にするのは珍しかったからだ。

 

「だから――ちゃんとやりなさい、白銀大尉」

「...了解しました」

 

武は少し照れ臭そうにしながらも、しっかりと敬礼を返した。

武の敬礼を見届けると、夕呼は満足げに頷いた。

 

「よろしい。じゃあ次、本題に入るわよ」

 

そう言って、戦術指揮スクリーンへ新たな資料を表示する。

そこには大きく、《TEAM R-TYPE》の文字が映し出されていた。

 

「これがアンタたち新設部隊の正式コードネームよ」

「R-TYPE...」

 

武が小さく呟く。

すると夕呼は、端末を操作しながら説明を続けた。

 

「この部隊は通常の戦術機部隊とは運用目的が根本的に違うわ」

スクリーンへ複数の項目が表示される。

 

・新型戦術機運用試験

・特殊環境下戦闘

・新戦術構築研究

 

「...うわ、嫌な予感しかしないラインナップ」

 

武が引きつった顔で呟いた。

 

「当然でしょ」

「アンタたちには“普通の衛士じゃ出来ない任務”をやってもらうわ」

 

画面が切り替わる。

そこへ映し出されたのは、見慣れない戦術機のシルエットだった。

 

「現在、横浜基地では討伐艦隊側技術を参考にした新型機動制御補助システム・新装備群の研究が始まってる」

「TEAM R-TYPEには、それらの実験運用部隊も兼任してもらうわ」

「つまり...テストパイロットってことですか?」

 

珠瀬がおそるおそる尋ねる。

 

「そういうこと」

 

夕呼はニヤリと笑った。

 

「もちろん任務はそれだけじゃない」

「今後、討伐艦隊と共同での特殊任務も増えるわ」

「ハイヴ深部偵察、重要目標破壊、、超大型種などの高危険種の出現時の初動対応...」

「状況によっては、通常部隊じゃ到達不能な戦域へ直接突っ込んでもらうわ」

「...なんていうか、便利屋みたいですね」

 

武が呆れ半分で言う。

すると夕呼は不敵に笑った。

 

「違うわよ、“切り札”よ」

「これから先、戦場は確実に変わる」

「討伐艦隊の存在。新型兵器。そして、人類側戦術そのものの変革」

 

夕呼はTEAM R-TYPEのロゴを見上げながら続けた。

 

「アンタたちは、その最前線を飛ぶことになるの」

 

武たちは自然と表情を引き締める。

 

「ま、そういうわけで――」

 

夕呼は資料端末を閉じる。

 

「今日からアンタたちはTEAM R-TYPE所属。数少ない“特殊戦術実験部隊”ってわけだからそこんところよろしく頼むわ」

 

もはや以前と同じ立場ではない。

武は小さく息を吐き、改めて仲間たちを見渡した。

明るく笑う美琴。

少し緊張した様子の珠瀬。

無表情ながらも興味深そうに周囲を見るハンドレット。

武は静かに口を開く。

 

「TEAM R-TYPE、任務を受領します」

 

その言葉に、皆もそれぞれ反応する。

 

「よーし!特殊任務頑張るぞーっ!」

「が、頑張りますっ...!」

「ニンム、リョーカイ」

 

三者三様の返答に、夕呼は呆れたように笑った。

 

「はいはい。まずは死なない程度に頑張りなさい」

 

こうして、新たな部隊《TEAM R-TYPE》はここに始動した。




この小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
佐渡島ハイヴ攻略戦も無事に決着し、交流会や新部隊《TEAM R-TYPE》の設立など、新たな物語が少しずつ動き始めました。
ここから先も、戦場だけではない様々な出来事やイベントを、できるだけ魅力的に描いていけたらと思っています。
今後とも、彼らの戦いと日常を見守っていただければ幸いです!

もし、

・「ここの設定は原作と違う」
・「この描写は少し不自然かもしれない」
・「誤字脱字がある」
など、お気付きの点がありましたら、ぜひ遠慮なく教えていただけると嬉しいです。
感想やご指摘をいただけるだけでも、とても励みになります。




◇◇◇◇


【機密指定資料《BW-100》】
個体識別情報
コードネーム:ハンドレット
正式識別番号:BW-100
性別:女性
年齢:幼体固定化処理を施している為肉体年齢は14~17歳に固定されている。精神年齢は10~12歳と推定。
所属:地球連合軍ベストラ研究所
担当機体:次元戦闘機《B-XX1A "ジェリコ・トランペット"》
危険区分:CLASS-A(バイド因子を埋め込んでいる為)
精神安定性:現在は安定

概要
BW-100、通称《ハンドレット》は、ベストラ研究所によって生み出された“バイド因子特殊適合者”であり、現時点においてバイド兵器を安定運用可能な数少ない個体である。
通常人員であれば精神崩壊・神経焼損・人格崩壊を引き起こす脳波直結式操縦に対し、極めて高い適性を示しており、その同期率は理論限界値を大きく上回る。
また、老化による身体能力および精神機能の劣化対策として、“幼体固定化処理”を実施。
これにより、肉体年齢を高水準の状態で維持し続けることに成功しており、操縦時における機体追従性や反応速度の大幅な向上も確認されている。
しかしその代償として、精神面には幼児退行や知能低下などの退化傾向が見られる。
さらに、身体組織・神経構造・脳波パターンには複数の異常性が確認されているが、詳細情報については地球連合側によって厳重な開示制限が設けられている。

身体的特徴
・白髪長髪
・琥珀色虹彩
・猫科生物に類似した縦長瞳孔
・極端に低い体温変動
・高負荷環境下での異常耐久性
・痛覚反応希薄
備考:
外見年齢に対して身体耐久性が異常に高い。
また、バイド汚染時に確認される身体変異が一部発現している。
複数回に及ぶ高G機動後においても、通常であれば発生する内出血や筋断裂反応は一切確認されていない。

要注意事項
・単独長期任務禁止
・連続運用の時間制限推奨
・定期的なバイド液の投与

ベストラ研究所・研究主任所見
「バイド兵器を安定運用可能な個体を、製造100体目にしてようやく完成させることができた! 高G機動や外傷に対して極めて高い耐久性を発揮する点は評価に値する」
「だが、その代償として知能低下傾向および精神性の不安定化が見られるのは問題だ。今後の改良課題とする必要がある」
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