助けた女の子に「…責任を取りなさい」と迫られてる件 作:萩月輝夜
また文章長くなった…本当にすみません。
あと真夜様とのイチャつき少なくて申し訳ない。
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場所は変わって一校選手団が宿泊するホテルの一室。
「達也…本当に?」
「十文字先輩達がこんな手の込んだ嘘を言うと思うか?」
「言わないよね…はあ」
十文字一校上層部の前に引っ張り出され強制的に”モノリスコード”に参戦する事になりその後達也達が宿泊するツイン・シングルの部屋へ移動していた。
その後の説明のために引っ張ってきたのだが…朔也は不満そうに幹比古とレオは備え付けのソファーに腰掛け真夜とエリカ、美月がベッドに腰かけていたのは朔也達以外は関係の無い人物なのだが「お約束」だろう。
突如として自分が抜擢されたことに驚き戸惑い、怖じけ着いている幹比古を他所に冷静な朔也が達也へ言葉を掛けた。
「それで?達也。俺を巻き込んだ理由を聞いて良いか?」
立ち上がり腕を組んでいつもの微笑を浮かべる朔也だったがその言葉は少しだけトゲがあったのは真夜とのデートを邪魔されてしまったからか。
「朔也くん~…顔が怖いよ~」
「朔也さん…怖いです」
女子二人が少しビビっているが気にしないことにした。巻き込んだ、というより片棒を担いでいる筈の真夜は何食わぬ顔で膝に乗せている”ブレイドラ”のお腹をふにふにと撫でている。達也は臆せずに説明する。
「選ばれてしまった以上負けるわけには行かない…となれば確実に勝利出来る人員を選んだ。それだけだよ」
可愛げの無い甥だ、と思いながらも期待されているのを裏切るわけには行かず成り行きだが真夜がみている前で敗北する事は許されない…それに無様を晒したくないと自分の中でそう決めていた朔也は普段のような柔らかい雰囲気へ戻った。
「…仕方がない。分かったよ。だが指示は達也が出してくれ。それに俺が乗っかろう」
飾り気の無い言葉…恐らく達也は自分だけが苦労をしたくないが為巻き込んだのだろうと思い当たり朔也は諦めたように頷いた。
「でも、僕たちCADはおろか装備類も持ってきていないよ?」
しかし、幹比古は未だに腹を据えかねているようだったので朔也が少しだけ強めに言いはなった。
「腹を決めろ幹比古。決定事項をうだうだと嘆いていても無意味だぞ?そこに関しては達也が用意…というか生徒会が準備してくれるさ。
巻き込んだのはお前なのだから責任を取れよ?と視線を向けると降参するように口を開いた。
「ああ。CADに関しては一人一時間で仕上げてやる。俺のは十分も掛からんからな。だが時間的な余裕はないんだ」
「えっ?」
予想外の返答にエリカが驚くとレオ達は顔を見合わせて「なんでもあり…いや達也なら大丈夫か」と納得していたが最後に達也が弱音を漏らしたところでエリカが呆気に取られた。
そう、時間的な余裕が有るわけではない。練習時間もフォーメーションの確認も取ることが出来ずぶっつけ本番であり、達也が弱音を吐くのも理解できたため、美月は黙ったまま成り行きを見つめている。
「…市原先輩と中条先輩が道具準備をしてくれている間にフォーメーションの話をしよう」
そこからフォーメーションの話に変わる。
達也がオフェンス、朔也がディフェンス、そして幹比古が遊撃という役割になる。ここはレオの立場が朔也に変わるだけで原作と差異はないのだが…。
ここで達也が賊が侵入した際に助言した言葉を再度確認を込め達也へ投げ返すと、これもまた同じように現代魔法と古式魔法の利点と短所を説明し、幹比古の諦め掛けていた燻っている闘志に種火が投げられたようだ。
(うんうん…良いことだ。たしか幹比古は竜神?を降ろした際に感覚が鋭敏になりすぎて遅い、って感じていたんだっけ…?)
「朔也…あれは精霊魔法…なのかい?」
「うん?ああ、あれか…(お前完璧にマスコットになってるじゃん…)」
話を進めていると幹比古がベッドに腰かけている女子三人組の方を一瞥し真夜が膝に乗せている”ブレイドラ”を撫でたりお腹をふにふにとしている。精霊が見える美月は撫でたりお腹を触ったりして顔を綻ばせエリカも女の子だからか少し緩い精霊に触れて突っつき反応を見て楽しんでいる。
「わぁ…触っても良いですか?」
美月が触れる許可を真夜へ出すと快諾した。
「ええ。構わないわよ。朔也さんが私の護衛で呼び出した精霊だから。噛まないわ」
「わぁ…ふふふ…可愛いですねぇ」
「精霊なのに触れるんだ…わっ、すごいモチモチ。何かの生き物じゃ…本当に精霊?」
触れられることに幹比古は驚いた表情を浮かべている。
「?ああ。膝に乗ってるあれか…式神とはチョッと異なるが精霊魔法だな」
「古式魔法の心得があるの?」
「多少は…と言っても俺と幹比古との系統が違うからアドバイスは出来ないぞ?」
きっぱりと断ったのは変な希望を持たれないためとソコまで魔法に詳しくない、という理由があったためだ。
現に”ブレイドラ”達は”召喚”しているのであって”使役”ではない。
「その、実は…」
その場面で幹比古は口を開く。
嘗て竜神を降臨させた影響で、嘗ての神童の名を欲しいままにしていた彼が実力を発揮できなくなった…という話を聞かされたのだ。
少しだけアドバイスと言うわけではないが助言をして見せた。
「だけどまぁ…俺の魔法も現代魔法に沿って改良してるからな。何事も柔軟さが大切さ。伝統を重んじるのも良いけど対応できない奴は廃れる、俺はそう思っているよ。きっと幹比古。お前は現代魔法に触れたせいで自分の家の魔法が
その言葉で何かに気付かされたのか先ほどまでの怖じ気づいた雰囲気は消え去っていた。
「”完璧な魔法”…!そうか…有り難う。朔也」
「”魔法”は生き物…か」
達也は達也で感慨深そうな表情を浮かべる。
感心されたような言葉と表情を向けられて少しだけむず痒くなる。この言葉も尊敬する人物の受け売りだからだ。
「…別に感謝されるようなことは言ってないよ。やるからには絶対に勝つ。”モノリス”は団体競技だ。全員が力を合わせる必要があるからな。手を抜くなよ?」
「勿論だよ」
幹比古が力強く頷いたのを見てエリカと美月が口を開いた。
「…朔也くんって焚き付けるの上手よね」
「人聞きの悪い…アドバイスしただけなんだけどな…」
「でも…吉田くん良い表情になってます」
一先ずやることが決まって準備へ動き出す。達也は宣言通り幹比例の古式魔法をCADで発動できるように調整していたが…そのタイピング速度と丁寧さを丁度道具一式を持ってきたあずさが目撃し目を丸くしていたのは他のメンバーも一緒だった。
◆ ◆ ◆
翌日。新人戦五日目は困惑の空気と共に訪れた。
前日の悪質なルール違反により選手が負傷、試合続行が不可能になり、第一高校は通常であれば残り二試合を不戦勝…となる筈だったが、大会運営本部の裁定により、代理チームの参戦を認め順延が認められた。
裏で十師族が大会運営に圧力を掛けたことを一般の観客席知らない…がそれでも一校が決勝まで勝ち残るには全てを勝ち残らなくてはならない。手を抜いても八百長だと騒がれるため負けるわけには行かなかった。
「…と言うわけで八方を丸く治めるにはうちが二試合敗退すれば丸く収まるだろうけど」
「出る以上は勝ちに行きますよ。当然でしょう?そもそも負けるのでは特例で別チームを出す意味がありませんし」
「それもそうね。余計な心配だったみたい…頑張って!」
「勿論です」
と一校天幕内で真由美と達也が言葉を交わす。
選手メンバーが発表となり一校代打選手のラインナップを見て他校は困惑の種となっていた。
実力者トップテンを揃えているメンバーから選ばずに実技スタッフと一科生だが変哲もない生徒と補欠扱いの二科生。
各校は警戒した。まさかの”モノリスコード”の隠し球なのか?と思ったが一方でだったら尚更最初に何故登録していなかったと困惑し一校の意図を図りかねていた。
一方で最終的に決勝で当たる三校の将輝と真紅郎がお手並み拝見、と言わんばかりの言葉を向けると他校も同じく視線を達也に集中していたのは担当した競技を全て上位を独占した忌々しいスーパーエンジニアが遂に参戦したことに注目を集めその特異な
一方で全くの無名と言って良い二人は逆に動きやすい状況である。
(達也が注目されてるなら好都合…だな)
達也に視線が集中してることを把握し速攻で終わらせる形を取ることにした。
達也が調整した特化型CADをレッグホルスターに納められているのを確認し、試合開始のブザーを待った。
◆ ◆ ◆
一校VS八校の試合は”森林ステージ”が選択された。
試合開始のブザーが鳴り響く。
双方スタート地点…モノリスが置かれた場所から直線距離にして八百メートルに位置し、それをプロテクションスーツと装備を含め十キロを背負い木々の間を抜けていくのだが、接敵するまで木々を潜り抜け警戒しながら進むため時間が掛かる…八校は野外戦闘に重きを置いており、この場所は彼らにとってホームグラウンドである。ステージはランダムで選ばれるのだが、特別措置を講じた一校以外の九校に配慮してだろう…と薄々感づいていた、がそれを見ていた観客席の真夜は呆れるような独り言のように呟いた。
「森林ステージ…明らかに対戦相手に有利なステージを選んだわね大会運営は」
応援席に一緒に座る深雪が隣の真夜へ声を掛ける。
「運営の忖度があるように思えますが…」
「無理矢理捩じ込んだ形ですから仕方が無い事ですわね。一校を除く八校を納得させるならこうするしかないですわね。ですが…その程度で私の朔也さんが止められる筈がありません」
クスり、と笑みを浮かべ口元を覆うのはまるで運営の悪足掻きを嘲笑う…ではなく子供の悪戯を見て微笑ましいモノを見て笑みを浮かべているようだった。だがその運営の悪足掻きを捩じ伏せるというか正面から突破する朔也の実力を信じて疑わなかった。
事が動き出したのは八校のモノリス付近にて。
試合開始から五分も経過しない内に障害物が覆い森林ステージで動きがあり八校モノリス付近での戦端を開いたのは達也だった。
その姿は選手が違反していないかを確認するためのチェイサーが追跡し、空中に浮かぶ大型ディスプレイに投影されており、ソコには八校ディフェンダーの前に躍り出る。
試合を観戦していた真紅郎と将輝が「早い…!」「加速術式か?」と呟くが、実際は魔法は使っておらず体術のみであり、通りすぎると同時に短銃型のCADで八校のディフェンダーの体勢を崩し、モノリスへ駆け寄った。
たまらず、と八校選手は達也へ単一魔法を放とうと向けたが、いつの間にか抜いていた達也へ向けていた短銃タイプCADが、発動しようとしていた魔法を想子の塊を吹き飛ばす光景が映し出される。
「何時の間に?」
「今のはまさか…”
「
起動式を無系統魔法”
「どうしてモノリスを目前にして撤退するの?」
共に応援席にいる深雪が補足を入れ真夜が追記する。
「いくらお兄様でも戦闘中に五百十二文字は打ち込めないわ」
「しかも扱いが面倒なウェアラブルキーボードでは、幾ら達也さんといえども打ち込みには数分を有するわね。幾ら想子の爆発で怯んでいる、と言っても直ぐに体勢を建て直すわ。ほら」
「そうか…ディフェンスを無力化する前に鍵を使うのを初めて見たから」
そう真夜が説明し、雫が言い訳の様に呟くと怯んでいた八校のディフェンダーが木々に飛び込んでいった達也を追いかける様子が映し出されている。
そして直ぐ様八校のオフェンスが左右へ展開し、内一人が一校のモノリス陣地へ到着した。
(ん…来たか。思ったよりも早い。たしか八校は野外戦闘がホームグラウンドだったな)
しかしモノリスを守る朔也は自然体で前に立っているだけで構えもしていない。敵が到着した事を”星魂魔法”で察知しており、敢えて無防備な姿を取っていたのだが、それをチャンスと感じ取った八校のオフェンスが短銃身CADを抜いて木陰から飛び出し魔法をぶつけようとするのは、モノリスを開くよりディフェンスを倒そうとするのは明らかだった。
「あっ!朔也くん敵が来てるよっ!」
「朔也さん頑張って!」
応援席で見ていた女子生徒の叫びも虚しくオフェンスの魔法が発動する。
しかし放たれた魔法は朔也を捉えることが出来なかった。攻撃が放たれた瞬間に手を突き出す。
「何ッ!?」
『
ここで八校のオフェンスが放った魔法が”エアブリット”の空気圧縮が白(物理・空間)を対象とした魔法に該当する為朔也へダメージを与えることが出来ず霧散してしまう。攻撃してきた八校選手へ向け手を伸ばす。
「一方的はあまり好きじゃないんだけど…悪いね」
続けて放たれる”エアブリット”が見えないヴェールに阻まれ届かないことを理解すると、体勢を整えようと距離を取る八校オフェンスだったが、既に遅かった。
「なぁ!?い、何時のまっ…がくっ…」
『
撤退を選択した八校選手は
「何が起こったんだ…!?」
「一校のディフェンスはモノリス付近にいた筈だろ!?」
「瞬間移動…?」
「でもモニターには”二人”映ってるぞ…!?」
「なんだあの魔法は…?」
困惑する観客席を他所に一角に集まっている深雪達の座席は驚きに染まっているが真夜は薄く笑みを浮かべている。
「さ、朔也さんが…二人!?」
「…あら、朔也さんその魔法を使ったの。まぁ余興には十分すぎる魔法ね」
「…狐坂さん今の魔法は…何?」
興味深そうに質問する雫へ真夜は快く返答した。
「文字通り
そう指差すと倒れている八校選手の側に立っていた”朔也”が光となってほどけ消えていきモニターにはモノリスを守っている本物の朔也が映っていた。
「想子を利用してって…で、でも狐坂さんの言う通りなら想子が尽きちゃうんじゃ…」
ほのかが心配そうな声を上げたが問題ない、と一蹴した。
「心配いらないわ。朔也さんは常人の百倍以上の想子保有量を保持しているから数百回売ったところでガス欠にはならないの。それにあの分身を作ったのは彼の有り余る余剰想子を利用…そして情報体を処理できる演算能力がある彼にしか扱えない魔法で他の魔法師には絶対に真似できないわ(原理的には”パレード”に近いのかしらね)」
彼を褒め称えるその言葉に、ほのかは達也とは別ベクトルの天才であることを確認していた。
「でもそれだけ魔法を扱えるのにどうして定期考査での成績が悪い…いや手を抜いていたの?」
歯に着せぬ物言いに深雪の顔が強ばるが、真夜は気にしなかった。
「手を抜いていた、というのは語弊ね。実際に座学は苦手で魔法を直感と感覚で使うから達也さんに比べたら劣るわ。それにあの人は名誉とか名声とかに興味がある訳じゃない…どちらかと言えば穏やかに過ごしていたいタイプだから。今回の”モノリスコード”も達也さんに頼まれたから参加しているだけよ」
真夜の言葉に全員が納得する。
普段から物腰柔らかく争い事を嫌う彼が、こう言った魔法での戦闘があるのは苦手そうだと思ったからだ。
(恐らく、というか叔母様がお願いしなかったら参加していないと思います…)
一方で深雪は達也が、ではなく真夜がお願いしたから参戦していることを思い浮かべ苦笑する…そして彼が本当に大切な者を守る為だけに本気で戦う、ということを知っていた。
戦いが苦手と言うが、その圧倒的な魔法で八校選手を打ち倒して息切れ一つ起こしていない余裕な姿を見せる朔也を見て、観客席と応援席が盛り上がっていた。
「………」
一方で二手に別れたもう一人の八校選手は木々の間をさ迷っていた。
自生林であるが練習用のフィールドで迷うことは決して無いのだが、八校選手は現にさ迷い四方八方からやってくる不快な超音波を無力化するために魔法を発動する。
敵陣モノリスへ向かっていた筈だが辿り着く事は出来ず苛立ちを剥き出しにした声で喚く状況を幹比古は”木霊迷路”と呼ばれる超周波音波と超低波音波を交互にぶつけ三半規管を狂わせ、八校選手は自らの方向感覚を狂わせ術者である人物の姿を見失って人工林をさ迷わせるのだ。魔法の座標を見つけたとしても、それは術者本人が発動した魔法ではなく、精霊が漂う座標でしかない。これが達也が認めていた古式魔法の”奇襲力”だった。
(朔也、準備は整ったよ)
(…分かった)
準備が整いモノリスを防衛している朔也へ式神を使い連絡を取ると、サイオンを起動式へ通す。
幹比古の”視覚共有”の魔法で座標を確認し再び”ジェミナイズ”を発動させ、分身が敵背後へ出現する。
「くそっ…どこにいる!」
(戦場で大声を上げたら…ここにいるぞ、って自白してるものだぞ?と言うより幹比古の魔法凄いな…)
苛立ちを十分に含ませた声を上げる八校選手に呆れながら未だに気がついていない
同時に達也は八校ディフェンダーを迎撃し”共鳴”を用いて意識を奪うまでには至らなかったが、追う力を喪失させ自生する樹木の枝をバネ代わりに跳躍しモノリスへ到着、五百十二文字をシェルクラムのウェアラブルキーボードを応援席で八校生徒の悲鳴をBGMにして入力する姿が、吊るされた大型ディスプレイに映し出される。
程無くしてコードの入力を完了し受信され試合終了のサイレンが鳴り響いた。
一校の校旗が上げられると同時に一校の応援席の声が大きく大騒ぎとなった。
「勝った勝った!勝ちましたよ!」
「すごいすごいすごい!完勝ですよ完勝!」
「おめでとう深雪!」
「お兄さんやったじゃない!」
「朔也くんこんなに強かったの!?」
「おめでとう真夜さん!」
黄色い声ではしゃいでいるのは一年女子達。それはまるでもう優勝したかのような騒ぎだった。
深雪は達也に対して一息吐くような感情を覚えたが、隣にいる真夜は動じること無くその勝利が当たり前のものだと受け止めている。
「朔也さんの相手をするには実力が足りていませんわね」
「…それもそうですね。」
そう告げる真夜に同意していたが、何処か不満げな表情を浮かべているのを深雪は指摘できなかった。
◆ ◆ ◆
次の試合は第一高校と第二高校で三十分後に行われる。
インターバルが短すぎる気もするが、これもまた大会運営の忖度が働いていることを誰も指摘はしなかった。
恐らく(確信していた)決勝で当たるだろう三校の将輝は一校の損耗を歓迎すべきなのだろうが、一本木で情熱的な彼は相手の不利を狙っているように思えて卑怯だと思うが、その考えを振って先程の試合内容を参謀である真紅郎へ話しかけた。
「今の試合どう思う?」
「将輝が聞きたいのは今の総括じゃなくて”彼ら”の事だよね?」
省略した言葉を正確に補足されて苦笑を漏らした。
「そうだ。ジョージ…まさかあんな隠し球が残っていたとは…」
「紫ノ宮朔也…選手データに乗っていない正に”ダークホース”だね」
その言葉に将輝が同意した。
「今年の一校は”隠し球”が多すぎるな。無名の天才エンジニアに強力な魔法を使う実力者か…」
「うん。紫ノ宮選手が扱っていた八校選手の攻撃を防いだのは領域干渉防御…十文字家の”ファランクス”に類似した勝るとも劣らない防御力。”分身”は恐らく光波魔法の応用…僕や将輝でも再現できない術式だろうね。あれだけでも彼が凄まじい素質を持った魔法師だと思う。それに八校選手を一撃で戦闘不能にした”スパーク”…凄まじい魔法力を持っていると考えるべきだ。彼は死角を突くのが上手い…恐らく将輝も不意を突かれたら苦戦は免れないね」
はっきりと言い切る相棒に苦笑するがそれでも”負ける”と言わないのは彼が将輝を信じているからだろう。
一方で将輝も不敵な笑みを浮かべるのは強者との戦いに打ち震えているからなのか。
「そうか…彼と戦う場合は背後に気を付けろ、と言うことだな。司波選手は?」
「一方で司波選手は戦い馴れている感じがする。身のこなしに先読み、ポジション取り…魔法技能よりも戦闘技能に警戒すべきじゃないか、と思うよ」
「その魔法技能はどうだ?」
「そうだね…『術式解体』には驚かされたけど…彼は余り強い魔法を使えないんじゃないかな?先程の『共鳴』も不意の一撃だったけど完全に意識を刈り取るには至らなかった。その辺りに攻略の糸口があると思う。最初の加重系統も選手を転倒…ではなく片膝を着かせるだけに留まった…恐らくだけど普段は極めて高性能なスペックのCADを使っているから競技用の低スペックCADだと実力が出せないと思う」
「だがあれだけ新人戦で優勝を総舐めしたエンジニア技術があれば低スペックの競技用を改良する事も出来るだろう?」
「時間がないんだと思う。本当の事情は分からないし分かる必要も無いんじゃないかな。彼の『術式解体』と紫ノ宮選手の魔法力に注意すべきだ」
「正面からの打ち合いなら恐れるに足りない、と言うことか?」
「そうだね。どうやって力ずくの真っ向勝負に引きずり込むか…それが出来れば百パーセント将輝が勝つよ。対戦場所が『草原ステージ』なら九分九厘、此方が勝つ」
◆ ◆ ◆
次なる第二試合、一校対二校の試合は市街地ステージが選ばれた。
双方のモノリスが建物五階の中腹三階へ設置されており昨日の今日であんな事故があったに関わらず大会運営やこれらを運営する魔法大学も事務方も官僚主義なのだろう、と朔也は苦笑いした。しかし室内であっても屋外であったとしても関係無い…勝利は揺るぎ無いのだから。
試合開始直後に達也が気配を消して敵陣のビルへ飛び移り、待機させ定位置に着いたことを幹比古の魔法によって確認すると、事前に決めていた作戦を始動させる。
「幹比古。選手の位置は把握できたか?」
『大丈夫だよ…向こうの敵陣に一人はモノリスの場所だね。もう一人は達也の方向に近づいてる。もう一人は君の階層に近づいてる』
「了解。さて、と…」
精霊魔法を用いて敵の位置をトレースし発動させる対象へ朔也は二つの魔法を発動すべくブレスレッド型のCADに想子を流し起動式を瞬時に展開した。
『
発動した瞬間に二校の選手達へ精神的な疲労《睡魔や思考の鈍化》がダイレクトに脳と精神へ叩き込まれた。
「なっ…!?これは…」
「な、んだ…?ま、ほう…」
「きゅう、に…眠気が…くそっ…!?」
それぞれ行動していた三名の二校選手は突如として襲ってきた疲労にこれが敵の魔法だと気がつき対抗術式で対応しようとするが、脳の直接的な疲労による身体の怠さと朔也の魔法への抵抗するには領域干渉が圧倒的に負けていたのだ。しかし競技用のCADの為動き抵抗を見せるのを精霊魔法越しに見ていた朔也は、ホルスターからロングタイプの特化型を引き抜き想子を流し魔法式を展開する。
「悪いが…これも勝負でね」
再び”
競技用に調整されたCADだからこそこの程度で済んでいるが実戦しようならば”セフィロ・アリエス”によって
相手の精神を焼き付かせ痛みもなく安楽死、それでもまだ抵抗するのならば”アクア・エリシオン”の対象とする人物の空間そのものに直接作用させる”強制終了”によって全ての行動が阻害される…という”ロック状態”が発生し相手は半永久的に自分のターンが回ってこないことを意味するのだ。
低スペックのCADによって朔也もまた助けられていた。
そんなことを思いながら術を行使し続ける朔也は”モノリス・コード”のルール上メットを取り上げられなければ試合続行は可能なので実質生板の上の鯉状態…無力化されたの三名を他所に一校は幹比古の精霊魔法でモノリス位置を把握した達也が指示を出し敵陣へ突入、解錠させ素早くキーボードにコードを撃ち込み試合終了のブザーが鳴り響いた。事実上のパーフェクトゲーム一時観客その他を困惑させたが次第に熱狂の坩堝を産み出し盛り上がる。
そしてまたしても朔也は会場の観客と各校、そして大会運営を驚かせるのだった。
見たこともない”精神干渉系統魔法”と”事象領域魔法”…同じ国防軍の部隊員である山中少佐や藤林少尉が達也の試合の成り行きを監視と応援目的で見守っていたが、朔也の魔法を見てその見る目を変えていた。圧倒的な場を支配するその魔法は凄まじいものだ、と…。
「あれだけの魔法を実戦仕様のCADで発動した場合、とてつもないことになりそうだな。彼も達也と同じく”目”を持っているだろうか」
「達也くんのように特別な”目”は持っていない、と思います。恐らく達也くんの視覚情報を共有した…?」
「ともあれあの魔法力は…魅力的だな。あれは状況次第で”戦略級”に匹敵するぞ?」
朔也は要らぬところからの注目を集めていた。
一方で幹比古も幼馴染みであるエリカに顔色が変わったことを
自信を失い燻っていた”天才少年”はこの”モノリス・コード”で再びその名を取り戻し欲しいままにしようとしている事に。
エリカは幹比古にその事を気がついて欲しい、と思い考えながら美月に話しかけられながら先の展望の事を思案する。
◆ ◆ ◆
決勝トーナメントの組み合わせが発表された。
準決勝は三校と八校、準決勝第二は一校と九校がぶつかることになる。
トーナメント開始は正午の為三校の試合を見逃すわけにはいかない、と達也が口にした為少し早い昼食をランチボックスを片手にホテルで取ることにしていたのは、天幕や出店での昼食をすることが出来ないほど騒ぎが大きくなっていたのだ。一足先に幹比古は自室に戻って避難している。
一方で俺もまた試合の影響を受けていた。
ランチボックスを片手に宿泊先のホテルへ戻るその前に天幕にて魔法大学からの試合中に使用した魔法の問い合わせを受けるがBS魔法である事で誤魔化ししたが他校から精神干渉系統の使い手だと勘違いされる事になる。またホテルへ向かう最中に国防軍の士官が近づいてきてきた。
「酷い目にあった…」
「随分と人気者ではなかったですか」
(他人事…だよな。そりゃ)
何気ない表情で食後の紅茶のカップに口をつける真夜へ少しだけ非難の目を向けるがケロり、としてどこ吹く風といった状態だ。この事態に引き込んだのは彼女だというのに…というのを飲み込むのは惚れた弱みというか男として彼女に良いところを見せたいというのが働いてるからだろう。
「魔法大学に関しては手を回しているから問題ないわ。貴方の本来の魔法が知られることは可能性としてはゼロよ」
思わず手にしていたティーカップを落としそうになったが寸での所で持ち直し苦笑する。
「手回しが良いね…」
「当然でしょう?ですが…国防軍は目敏く貴方に接触をしてきたみたいですが…問題ではありませんわ」
国防軍や魔法大学が接触を図るのはこの”モノリス”に出場する上で分かりきっていた。それを加味した上で出場に納得させたのは真夜もまた自分の恋人が凄い人なんだぞ、と言葉にこそしていないが見せつけたかった…と両者似た者同士であった。
「…それでも貴方を私の我が儘に捲き込んでしまったのは事実ですから…貴方の功績に免じて褒美を差し上げましょう」
備え付けの椅子に座っていた真夜はベッドに腰掛け直ぐ隣を手でポンポン、と叩いて見せた。
その事に疑問を浮かべる朔也。
「それって?」
「…見てお分かりになりませんか?」
少し頬を膨らませいじける姿を見て彼女の意図を理解する。
椅子から立ち上がり彼女の側に少しだけ距離を置いて降ろし体勢を崩し膝の上に頭をポフり、と落とす。
所謂”膝枕”の体勢になっていた。
「お加減は?」
「最高だね…」
そう問われ微笑で返すと微笑み返してくれた真夜の頬は少しだけ紅潮していたが指摘はしなかった。
「そう…連続の試合で疲れたでしょう。少し英気を養って準決勝、決勝を勝ち抜いてください」
膝に頭を乗せられているために真夜に見下ろされるその表情は愛しいものを見る目だった。
同時に彼が勝利することを疑わない表情でもあった。
「勿論…だよ。君が見てる前で俺が倒れるわけがないだろう?」
三校の準決勝試合を見逃すだろうな、とそんなことを思いながら愛する者の膝の感触を楽しみ重くなった目蓋を閉じる直ぐ様眠りへ誘われた。
「お休みなさい…朔也さん」
目蓋を閉じ寝息を立てる朔也の額に口付けを落とした。
その後三校の試合を見逃してしまったのだが…些細なことだった。
九校戦から真夜様を参加させるとしたらどの年代が良いですか?
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十二歳ぐらい(中学生ぐらい)
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十六歳ぐらい(主人公より少し上お姉さん)
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本編(よりは若二十代それで制服を…)