ダンまちで百合が書きてえ。そう思いましたが筆者的にかけそうなのがこの人しかいません。ノリと勢いで書いてます。解釈違いだったら許して下さい。お願いしますセンセンシャル。

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ノリと勢いで書いてます。原作既読前提で書いてあるところがあります。


一言だけ言わせてください。筆者は倒錯した百合カップルが大好きで候!!!(魂の咆哮)


それは遥か昔日の妖精達の話

これは今から900年以上も前の(そいつ )の話。

どこにでもあるような白の同胞たちが集う妖精里で気が付いた時には存在していた黒の(そいつ )

まるで白い紙にただ一点存在するかのようなただ独りの黒妖精(ダークエルフ)

禁忌だと罵倒され、里の恥のように扱われ、隔離され虐待されていた。

だからだろう自我を持ってもすでに何も感じれなくなっていた。

それでも感じ入るものがある。

【熱】だ。

どれほど虐げられても思考を鈍らせる【熱】が頭の裏に蔓延する。

そしてある日、一段激しく体を壊され、片目を欠損した時ふいに疑問に思った。

頭の中を支配するこの【熱】を目の前の白の同族にぶつけてみたらどうなるだろうか?

試してみた。悲鳴(こえ)が聞こえた。何も感じなかった。

だから何度も試した。

気が付けば森には自分以外誰もいなくなり赤く染まっていた。

ただ、最後に運よく殺し返すことができた里一番の戦士。

その戦士との戦いでは今までと異なる【熱】を体感した。

傷つけられ、肉が火照(ほて)る。そのやり取りの中でそのやり取りの中で生まれ【熱】こそ、初めて背筋を震わせる感覚---生きていることを実感できた。

(そいつ )は世界の中心である迷宮都市(オラリオ)に赴き【熱】の正体を」探った。

『あぁ、君、()感症ってやつだよ』

(そいつ )を拾った、女神アレクトはそう言い放つ。

曰く先天的なのか後天的なのかは分からないが、苦痛も快感も感じない体質になっていると。

それに伴って感情も生まれづらく、感動とといえるものも味わえないと。

己の主神の言葉を聞いても、感じ入るものはやはりなかった。

それでも【熱】への疑問は止まらず、唆される形で意地の悪い神の眷属となり【熱】の正体を探った。

答えは生存本能。

それが己が唯一受信できる信号で己の生を色づかせる方法。

だから【熱】を求めた。

つまり闘争を。永劫に戦い続けられる力を

戦い続ければ【熱】を感じ、快感を感じることはなかったが【不快】は分かった。

それしかなかったから、それが自分の行動指針となった。

(そいつ )は力を好んだ。

だってそれがあればより強い【熱】を生じさせることができるから。

心と体が悲鳴を上げるような、ひりつくような闘争を味わうために。

 

闘争を求めるうえで戦うのは迷宮の化け物だけじゃない。

他派閥の屈強な冒険者たち。

特に男神(ゼウス)女神(ヘラ)

あの時代、その中でも抜きんでて強かった眷属どもとよく衝突した。

奴らは強かったが、それ以上に(そいつ )に苛立ちを覚えさせた。

いかなる時でも技と駆け引きを駆使し、勝利する勝負強さが、仲間と罵りあいながらも笑いあい肩を組む姿が。『英雄の歌』なんていう咆哮が

何故かはわからないが怒りを覚えさせる。

いつかはいつかはいつか。

ずっと勝って下してやる。そう思って戦い続けた中で奴はいた。

女神(ヘラ)の眷属。自分たち邪なる破綻者だらけの眷属とは違う、善神の眷属。

凄まじい女傑たち。その中に独りいた。

肌の色こそ違うが同じ妖精。

ある日奴と(そいつ )は出会いを果たした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

ある日、(そいつ )は奴を襲撃した。

仲間達と気が合わない一匹狼。

むしろ気が合わなければ、同派閥の眷属同士だろうと殺し合いに発展し本当に命を奪っていた。

だから一人でのうのうと出歩いていた奴を当然の如く自分独りで襲撃した。

だが奴は女神(ヘラ)の眷属の一人。強かった。

当たり前かのように襲撃は失敗し、返り討ちに会った。直剣で体を切り裂こうとしたが技と駆け引きで剣を取り上げられ返す拳で空き家に叩きつけられた。

苦痛は感じなかったが心肺機能に影響が出る。

呼吸が止まる。視界が暗転しかかる。

そんな無様を晒す(そいつ )の前に奴はなんの警戒心もなく近づいてきた。

 

『君、名前は?』

 

『…?』

 

『君の名前が知りたいんだ』

 

奴は(そいつ )に興味を持ったらしい。

だから自分の名前を尋ねてきた。

邪なる眷属、本来敵対していていますぐ殺さねばならない(そいつ )に。

いいだろう。知りたければ教えてやる。

息を整えた私《そいつ 》は

 

『レヴィナス・ダルダだァ!!…グッゥ!?』

 

自分の名前と引き換えに、同じく片目の一つでも奪ってやろうとしたが顔面を鷲掴みにされ雑に地面に叩きつけられ昏倒した。

石畳みを粉砕し一撃で昏倒させた同じ妖精である奴は

 

『レヴィナス・ダルダ…レヴィナス・ダルダね…覚えておくことにするよ』

 

そうけらけら笑いながら去っていく奴を視界の隅に置きながら意識を手放した。

いつか見返してやる。いつか勝って殺してやる。そう誓いながら。

 

 

 

◇◇◇

 

 

(そいつ )を打倒した女神(ヘラ)の眷属にして冒険者である奴の名前はシエラ・L・バーランド。二つ名は聖婦。容姿は塩みたいに漂白された白髪色にアクアマリンのような瞳を持つスタイルの良い美女の白妖精(ホワイトエルフ)

白妖精でありながら戦斧(ハルバード)を使いこなし白兵戦を得意とし、遠距離戦では風属性の超短文詠唱の魔法を使いこなす女神(ヘラ)の幹部の一人。

奴の特徴の中で特筆するものを上げるとするなら戦闘能力じゃない()

 

婚姻を司る女神の眷属でありながら、奴は誰とでも寝るのだ()

 

同胞たる妖精どころか、神、人族(ヒューマン)小人族(パルゥム)、獣人、アマゾネス、挙句の果てに種族的にも相を入れないはずのドワーフどもすら一夜を共にする始末。そして同じ奴と二度と夜をともにしない。

 

さらには声をかけてきた相手なら女子供であろうと問わない色情魔。

 

妖精というにはあまりに低すぎる貞操観念の低さ。

 

過去にはこの股の緩さを利用して暗殺を企てた闇派閥(イヴィルス)もいた。

だがどういうわけか情報網が厚いのか、企てた実行犯は血糊となりはて消え去った。

 

他にも気持ちいいからという理由で風呂上りに全裸で迷宮都市(オラリオ)を爆走し神々にその姿を目撃されたという。なおゼウスはその姿をガン見し続けて、ヘラにしばかれたらしい。

 

 

そんな同胞どころか同族とも呼びたくない女に。

 

(そいつ )は目をつけられた。

 

それは最初の襲撃(であい)から数週間が経過した別の日。

奴はこちらを逆に襲撃に来た。

 

『ヤッホーレヴィナスちゃん。遊ぼうゼッ!!』

 

まるで顔見知りの友人の元に遊びに来たような、そんな親愛と友好さを言葉ににじませながら闘争を仕掛けてきた。

 

『ック!?何しに来た!聖婦!?』

 

『だから言ったじゃ~ん。遊ぼうゼッ!!』

 

『貴様本当に何を言ってるんだ!?』

 

驚愕とも呆れともとれる返答をした(そいつ )に奴はケラケラ笑いながら戦闘を開始する。

直剣と戦斧(ハルバード)との交差により起きる剣撃音。その合間に起きる拳と足技による体術の応酬。

その繰り返しの中先に疲弊するのはもちろんLvの低い(そいつ )

そもそもこちらから先に襲撃するから格上殺し(ジャイアント・キリング)の可能性が万が一にもあったのだ。

それが先方からの逆襲撃。そんなものをされたらすべての前提として圧倒的不利である。

 

『戦うの好きなんでしょ?目を見ればわかるよ。だからこのシエラ様が付き合ってあげちゃうよーん!!』

 

『ぬかしたな貴様!。いいだろうなら私が今日ここで殺してやる!!』

 

ヘラヘラ戯言をほざく奴に対して心の底から(そいつ )は怒りの感情を覚えた。

腸が煮えくり返る。

脳内を強く染め上げる【熱】に身を任せながら直剣で切りかかる。

 

『Lvを考えても技と駆け引きの点数は100点中14点てとこかなー。うっわ赤点じゃんwww』

 

『馬鹿にしやがって!!あと赤点ってなんだ!?』

 

やつの憎たらしい笑顔から放たれる言葉が理解できない。口からペラペラ出される単語一つ、一つが腹正しい。

このふざけた今ここで殺してやりたい。

だができない。

理由は単純明快で、奴の方が強いから。

今の(そいつ )では殺せない。なんなら瞬殺されてもおかしくなかった。

だというのに奴は私を絶対に殺そうとしなかった。

そうして弄ばれるだけ弄ばれて日が落ちかけたころ先に限界を迎えたのは(そいつ )だった。

 

『クソがァッ!』

 

体力が底を尽き倒れ伏し動けなくなった。せめてもの抵抗で顔上げ怒りのまま奴を片目しかない顔でにらみつける。

いつか絶対殺してやる。お前だけは(そいつ )の自らの手で。

視線に意味を持たせながらにらみつける(そいつ )を見た奴は予想もしない言葉を繰り出した。

 

『終わっていると思ってるとこ申し訳ないけど、まだ付き合ってもらっちゃうよん。』

 

そう真顔で言い放つと奴は(そいつ )をかかえてどこかへ駆け出した。

まるで赤子でも抱き上げる様に軽々ともちあげながら。

どこかへ目指し歩みを続ける。

 

『離せェ貴様!!私をどこへ連れていくつもりだァ!?』

 

『敗者は勝者に従うものでしょ?』

 

『イヤナヨカンシカシナイ!!!』

 

最早キャラ崩壊しかけながら連れ込まれたのは安宿だった。

 

思い出したくもないので結果だけ言おう。

 

(そいつ )は奴に貪り喰われた。それはもうあますとこなく。感じるはずがなかった無感症の肉体に肉の快楽を叩き込まれた。

貪るだけ貪った後、奴は意気揚々と安宿を後にした。

羞恥と快楽と悔しさを覚えながら体を震わせ腰砕けになった(そいつ )を一人宿に残しきっちり二人分の料金を払って。

 

数時間後、漸く立てる様になった(そいつ )はガッタガタになった腰を無理やり持ち上げながら奴に復讐を誓った。

 

だから独りで迷宮(ダンジョン)に潜り続けた。

強くならなければならない。奴に受けた屈辱を返し、傷つけられた自尊心(プライド)を回復させる。

そう誓いながら【熱】の赴くまま迷宮に住まう化け物共や他の冒険者に暴力を開放し続けた。

 

そうすると確かに強くなった。恩恵を更新するたび身体能力が上がり、魔法も火力を増していく。

確かに強くなった。

 

だが少なくとも100年君臨し続けた奴の属する派閥(ヘラ・ファミリア)はそんな歩みを亀の歩みだと評せざるを得ないほど化け物ぞろいで。

そんな中派閥内闘争を繰り広げる奴は私以上の速度で強くなり続けた。

 

なにより腹立たしいのは、私が窮地に陥ったとき()、|ふらりと現れ私を助け出し迷宮第一階層に放置した《》。

 

 

『雑ァ魚♥雑ァ魚♥クソ雑魚レヴィナスちゃん♥役立たずの黒妖精(ダークエルフ)!』

 

『煽り散らすなァ貴様ァッ!!あとなんなんだ、予定が何もかもうまくいかないが死にはしないみたいなそのあだ名はァッ!!』

 

奴は(そいつ )が奴自身の存在を忘れかけたころ、決まって襲撃を掛けてきた。

まるで自身の存在を忘れることは許さないなんて言うように。

そうしてふとした瞬間に表れて、毎度の如く蹂躙され体を貪り喰われ続けた。

ならばと寝屋でスキを見せた瞬間隠し持っていた刃物で突き刺してやろうと思ったが、そんなのとっくに分かってたというようにいともたやすく小指で打ち払われた後、結局肉体に快楽を刻み付けられた。

 

だが今にして思えばこれは奴なりの洗礼だったのだろう。寝屋での行為は絶対趣味だろうが。後で知ったが奴は(そいつ )と行為に耽るようになって以降、他人と寝なくなったらしい。いい迷惑だ。

 

ともかくとして奴に蹂躙され貪り喰われ続ける内、一つの事実に気づいた。

(そいつ )は奴と寝たときは快楽を得られるが、独りや他の誰かと体を重ね合わせても快楽を得られない。

ある時、邪なる主神に許可を得て迷宮都市(オラリオ)を一時的に脱出し娼婦のふりをし男と一夜を共にした。

…ともにしたが、何も感じるものはなかった。

ならばと金にものを言わせ女と寝てみても結果何も得られなかった。

奴だけだ。奴だけがこの身に【熱】と不快以外の快楽を教えられるのは。

 

 

だからだろうか。いつしかその快楽に抗えなくなったのは。

 

 

『あるぇー?最近レヴィちゃん寝る時全然抵抗しないじゃーん?』

 

『………敗者は勝者に従う。これは貴様の言った言葉だ。腹立たしいが今はお前の方が強い。私は強さを求めている。だから今は我慢して従ってやる。だが忘れれるな!!貴様は必ず私が殺す!!』

 

『何々新手の誘いマゾ?いいよいいよ乗ってあげる。私は優しいからね。このシエラ様がイけるだけイかしてあげちゃうゼ!!』

 

『!?おいやめろ。気持ち悪く指をわしゃわしゃ動かしながらこっちに近寄るな!おい本当にやめろ!あ、あ、アァーーーーーーーーッ!♀』

 

口に舌をねじ込まれ、その日、(そいつ )は連続で達することの疲労感と充足感を初めて知った。腰は相変わらずガッタガタだったが。

気づけば奴は(そいつ )をあだ名で呼び始めた。

聖と邪の眷属の関係だというのに。

本来敵対し秩序の維持と混乱と崩壊という本来混ざり合わない目的意識を持つ派閥同士だというのに。

奴は(そいつ )に付きまとい続けた。(そいつ )は奴を殺そうとつけ狙い続けた。

 

 

『シエラ!!今日こそ貴様を殺してやる!!』

 

『今日は別件で忙しいのでゼスティウムアッパァァァ!!』

 

『…グハァ!!』

 

直剣で切りかかろうとしてカウンター気味に下顎部に拳による突き上げた一撃を喰らい意識が闇に沈む。

ムカつく。奴を殺そうと挑み続ける内、(そいつ )は奴を二つ名ではなくシエラと本名で呼ぶようになった。

決して友人と呼ぶことができない奇妙で絶対に相いれない関係性。

だというのに体を重ねる爛れた関係性。

それがレヴィナス・ダルダとシエラ・L・バーランドだった。

 

そんな生活が10年も続いていく。相も変わらず男神(ゼウス)女神(ヘラ)の眷属どもは他派閥を蹂躙し続けた。

男神(ゼウス)の問題児なクソ馬鹿どもが問題を起こし、女神(ヘラ)の性格と行動基準が終わっている女傑どもが主神の如く高周波をあげながら『狩り』を始める。それに善悪かかわらず私達(そいつら )はその大災害抗争(アポカリプス)に巻き込まれる。傍迷惑だ。

そんな中、奴はいつもケラケラと笑いながら『狩り』を行っていた。ちょっとは自重しろ馬鹿。

今も脳を支配する鈍い【熱】は走り、衝動の赴くまま奴らに挑みに行き衝突した。

 

 

だがこの身に宿る強さは確かに顕在化していった。

奴らがよく使う技、飛ぶ斬撃なんてものを賊の如く盗みだし己がものとした。

ようやく己がものとし使いこなせるようになったこの技を初めてぶつけるのは無論、奴。

 

『…その技…』

 

『そうだ私が貴様らから奪い取った技だ!、今日こそシエラ、貴様を切り殺してやる!!』

軽く試し切りで繰り出した技に奴は目を丸くする。驚きに満ちた表情をしながら。

そうして奴に直剣を振りかぶり奪い取った飛ぶ斬撃を叩きつける。今日こそ殺す。そう何度でも思った怒りの感情をこめ【熱】のなすままに。

だというのに奴は(そいつ )が繰り出した斬撃なんて言うものをまたケラケラ笑いながら軽々と躱す。

 

『あー私達の技盗んだんだ。いっけないんだー、泥棒じゃん!…でもね…』

 

(そいつ )に奴は面白いものを見せてくれた感謝をふざけた言動に乗せて語り掛ける。

そして自身が持っていた戦斧(ハルバード)を振りぬいた。

 

『練度が甘いよレヴィちゃん、使うならちゃんと極めないと』

 

鳴り響いたのは建物が倒壊するほどの轟音。散乱する木々と土埃。そして倒れ伏す(そいつ )

こちらが繰り出した飛ぶ斬撃を自身が繰り出した飛ぶ斬撃で消し飛ばしそのままこちらを切り飛ばす。

そしてその余波で周りの建造物を破壊する。言葉の通り練度が違い過ぎた。

極まっていた。自身が盗み奪い取った技が稚児の業としか思えないほど。

 

『駄目だよレヴィちゃん使えるだけのままなんて、だったら魔法か魔剣でいいじゃん』

 

『糞が!!シエラ貴様いままでわざとその技使わなかったな!舐め腐るな!!』

 

『だって今までレヴィちゃんに使う理由なかったし』

 

使えなかった君に見せてもしょうがないでしょと。こちらに冷ややかな見下す視線を送る。

だから君が最低限出来る様になったから見せてあげたと。

見下されていた。実力が相も変わらず違いすぎる。

男神(ゼウス)女神(ヘラ)の眷属どもはこんな化け物ばかりなのか。

同じ邪の派閥内(アレクト・ファミリア)でも己が一番強くなったというのに。

他派閥の眷属とも鎬を削るほど力をつけたというのに。

屈辱の泥なんてもの噛みしめながら震える体を奴は掴み引きずり出した。

一撃を喰らった自身の肉体が一瞬呼吸を忘れ、気絶しかかるのを無理やり意思の力で縫い留める。

 

ああまただ。また奴の褥に引きずり込まれる。

この10年ずっとそうだった。

最早こいつと夜を共にすることに抵抗感も薄れてしまった。

だがこの10年で奴…シエラ・L・バーランドという女に気づいたことがある。

 

おそらくこいつは子が産めない不能者であると。

子供ができないからこそ、性行為という子をなす行為が手段ではなく目的になってしまった女。

それが誰とでも寝ると噂される貞操観の緩さの真実。

 

それを寝屋にいる時暴露と罵倒したら、奴は泣きも笑いもせずただ真顔でそうだと肯定した。

ただ不興を買ってしまったのか、その夜は朝方まで寝ることを許されないほどの激しく攻められた。

 

『前々から思ってたが正義(ヘラ)の眷属が、敵対する闇派閥(イヴィルス)の眷属と夜を過ごすのどうなんだ!?』

 

『私が誰と夜を過ごそうが、私の自由じゃーんwww』

 

『……体裁というものがあるだろうに』

 

『ダイジョブダイジョブ!秩序の維持とか世界の救済とか、きっと他の誰かがやってくれるよ。頭のいい小人族(パルゥム)とか、高貴な王族妖精(ハイエルフ)様とか、とっても強い獣人やドワーフとか、後金髪ロングエルフスキーで英雄に憧れたとっても優しいルベライトの赤い瞳と処女雪みたいな真っ白な髪を持つ英雄の生まれ変わりかもしれない人族(ヒューマン)の少年とかが何とかしてくれるよ』

 

『適当すぎるだろ貴様!!。後最後だけなぜやけに具体的なんだ!?。頭おかしいんじゃないか!?』

 

『……私の頭がおかしいのは否定しないよ』

 

なぜだか最後の頭のおかしさを問う質問に、ただ黙って肯定した。

 

 

全く変わらない関係性。蹂躙され、貪られ、朝を迎える。今日も又そうだと思ったが、変化が訪れた。

 

それは一頻り貪られた後の出来事。(そいつ )は壁に腰かけて休んでいると奴から質問が飛んできた。

 

『ねえレヴィちゃん。君はどうして強くなりたいの?』

 

『…ゼウスとヘラの眷属(きさまら)が蹂躙するからだろうが…』

 

『それは後付けの理由でしょ。わたしが言っているのは最初の理由』

 

つまり原点。恩恵を刻み冒険者になろうとした原初の願い。

それを問いかけている。

 

『邪神の派閥だったら、欲望の限りを尽くしたい。混沌をもたらしたい。もっと単純に人を壊したいって人が多いけど、君はちょっと違うように私は思う。だから知りたいんだ君の来歴とか願いとか』

 

『貴様に私を語れるほど深い付き合いをした覚えはない。だが…そうだな…』

 

癪に障る女だが奴に己の真実を教えることにした。

己が白の里で唯一の黒妖精だったこと。

禁忌だと罵倒され、里の恥のように扱われ、隔離され虐待されていたこと。

自我を持ってもすでに何も感じれなくなっていたこと。

(そいつ )は真っ暗な脳内を支配し、思考を鈍くする【熱】に基づいて行動していると

闘争の中で傷つけ傷つけられるやり取りで肉体が火照る。生存本能に結び付いた。

主神にすら無感症と評されるほど何も感じない己の肉体で唯一受信できる信号。

そして強くなればより強い【熱】生じさせるのができること。

それを目の前の白妖精にすべて打ち明けた。

 

全てを聞き届けた奴は幾ばくか考えるそぶりを見せた後、いつも浮かべているケラケラとした笑顔を止めていた。

そして口を開く。

 

『…レヴィナス気づいてないの()?』

 

いつものふざけ倒した気配を消しいつものあだ名ではなく(そいつ )の真名を口にする。

本当に何もわからないのかと問いかけながら。

だがこちらからしても何が言いたいのか分からない。

 

『貴様は一体何が言いたい』

 

『このまま君の言う【熱】の赴くまま行動し続ければ、君はロクでもない最後を迎えるよ。間違いなくね』

 

そしてそのまま言葉を続けていく。

曰く、(そいつ )が【熱】と呼ぶものは魂が愛を知る前に知る前に死んではならない、愛して貰えない行為に走ってはならないという魂の警告であると。

己は来歴上、誰にも必要とされなかった、隠され覚えてもらえなかった、誰にも愛されなかった。

ゆえに生きるために無感症となった君は本当に他者から愛を内心で切に切に欲していると。

だから独りで戦う君は徒党を組むゼウスとヘラ(わたしたち)に嫉妬も混じった苛立ちをおぼえてしまう。

だから【熱】の衝動のまま行動すればただ独り誰からも記憶されず無様な最期を迎えてしまうと。

そう奴は語った。

 

『…それが本当だったとして、私はどうすれば良いんだ?…』

 

滔々と告げられる受け入れがたい己の真実に困惑した。

頭の名が錯綜する。答えが見いだせない。

 

『簡単だよ、愛を知ればいい』

 

悩みだす(そいつ )を目の前にした奴はあっけらかんと回答をだした。

至極単純明快だとでもいうように。

 

『私が君を愛してあげるし、必要だって言ってあげる』

 

うつむき悩む(そいつ )を前に下から覗き込みながらやさしく語り掛ける。

まるで最愛の恋人を前にしたかのように。

悩みだす(そいつ )を宝物だとでもいうかの様に。

 

『抱きしめてあげる、だからね……レヴィナス・ダルダ、私をちゃんと見てね』

 

こちらの唇に指を押しあてると、今度は両手を顔に添えて。

 

『私も君だけを見続けるよ。女神(ヘラ)の眷属らしく』

 

それを聞いて出した(そいつ )の返答は……

 

『……分かった……』

 

 

(そいつ )は大人しく、捧げられた最愛を受け入れることにした。

心の底で魂が欲していた真の渇望を。

里の白妖精と主神、同じ邪なる眷属ども(アレクト・ファミリア)、冒険者、市民の誰もがくれなかったソレを。

 

今日この日、この瞬間を持ってレヴィナス・ダルダとシエラ・L・バーランドは恋人となった。

本来敵であるはずの聖と邪の眷属でありながら。

本来絶対なってはならない関係を持ってしまった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

端的に言おう。闘争が激化した。

今までの戦闘が撫でられていたと評せざるほどの激闘。

今までの戦いが洗礼と蹂躙だとしたらこの戦いは本当の殺し合い………否殺し愛。

片耳が千切れる。肩がえぐれる。体に走る激痛。だというのに(そいつ )と奴は笑っていた。

 

そして視線を混ぜ合わし、

 

---私だけを見て---

 

---私だけを見ろ---

 

 

---君だけを見てる---

 

---お前以外いらない---

 

それは彼女たちにとって血の逢瀬だった。

互いが互いを壊そうとしているのに、恋人同士だと語り合ったのに。

それなのに矛盾なく好意が同居する異常事態。

 

飛ぶ斬撃……後の時代で『斬光』なんて呼ばれるものを互いに繰り出し傷つけあいながら愛をささやく。

魔法で消し飛ばす、武器で鍔迫り合いをする、四肢で殴り蹴り合う。

あまりにも倒錯した愛の形。

そんな破滅的なデートを繰り出すレヴィナス・ダルダ(そいつ)の脳内から【熱】は消えていた()

思考を鈍くさせるソレはもうない。

視界が冴えわたる。シエラに執着……否愛着が持てる。

世界が色づく、ああなんて世界は美しく素晴らしいものだろう初めて思えた。

だからこれは(そいつ )なりの奴への献身。

 

 

だが凄惨極まる現場を見て私達(そいつら )を見て介入を企てる者達がいた。

 

片方は仲間が襲撃されていると勘違いし助け出そうとする善なる女神の眷属(ヘラ・ファミリア)

 

もう片方は疲弊した女神(ヘラ)の幹部の首級を上げようとする悪なる女神の眷属(アレクト・ファミリア)

 

だがせっかくのデートを邪魔されるなど本人たちからすればたまった物ではない。

 

『邪魔しないで、萎えるでしょ』

『邪魔するなァッ!殺すぞォ!!』

 

まさかの本人たちが自派閥に介入を禁止する始末。

 

後にまさかの善なる女神(ヘラ)悪なる女神(アレクト)の間に協定が設けられた。それはシエラ・L・バーランドとレヴィナス・ダルダの戦闘に互いの眷属の干渉を禁ずるという内容だった。

 

 

そして日が傾くころ、先に倒れ伏していたのはやはり(そいつ )だった。そんな(そいつ )を自分の身も襤褸屑と化している奴は治療院に連れていく。

そして互いが傷つけた傷が消えたころその火照りに任せ互いの体を貪りあう。無感症だったからだはもうない。

 

『ねえレヴィナス、【熱】はちゃんと消えた?』

 

『……あぁ、消えたよシエラ』

 

どんなに倒錯して愛であろうと、捧げられた愛を受け取った一人の黒妖精は幸福だった。

 

 

これを週に6度繰り返し、残り一日は普通の恋人らしく過ごす。

溢れ出る充足感。発見した未知。

どうやら(そいつ )は演劇なんてものが好きだったらしい。

 

時折血の逢瀬を味わっている最中に他派閥の襲撃に会うことがあった。

 

シエラは女神(ヘラ)の眷属、レヴィナスは嫌われ者。

襲撃者からすれば理由なんてそんなもので十分だった。

 

だが二人は強かった。まして互いに積極的に殺しあう仲。

 

連携なんてものは息をするように出来てしまうほど私達(そいつら )は深くつながっていた。

もしかしたら900年後に表れる同じ邪神の恩恵を刻まれたエルフの姉妹が及びも着かないほどかもしれない。

 

だから襲撃者たちはあっさり返り討ちに会った。

 

 

そしてある日、己の主神である邪神が恩恵を更新しながらこんなことを言った。

『レヴィ。愉快(ゆかい)で最ッ高に意味のない魔法()が生えたけど、知りたいかい?』

何か不穏な空気感を感じ取れた。

明らかにただならぬ雰囲気を。

『呪文は教えておくから、本当に危ない時になったら唱えてみなよ。きっと君に新しい感情を教えてくれるよ』

 

そうして動きを止めたかと思うと、今までに見たことが無い薄い笑いを張り付けた。

 

『レヴィ、君はとっても強くて、必要な眷属だけど、こっちの末路()の方が最ッッ高に痛快だと思うから……私は君を助けないし、愛さないことにするよ』

 

それは今まで見たことないほどの不気味な笑みだった。

 

『止まることなく、進み続けるんだよ?私の眷属らしく』

 

……だったらその魔法とやらを使う相手はとうに決まっているも当然だった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

ある日(そいつ )は邪神に教えられた魔法とやらをシエラに使うことにした。

 

武器を持たない片腕を死神が鎌を持ち上げる様に上げた。

 

ちょうど手のひらを前に突き出し見せる様に。

 

そうして魔力を蠢動させ呪文を唱えようとしたとき、シエラは武器を放り投げ(そいつ )を抱きとめ詠唱を止めさせる。

 

『駄目だよレヴィナス。それは今使っちゃ駄目。』

 

今使ったら取り返しがつかなくなる。そう視線に込めながら普段のマイペースぶりが嘘の様。

あまりにも見たことが無い程焦った姿を見せていた。

そうして抱きしめた腕を開放し距離をとり告げる。

 

『……でも、使わないと君は自覚できなさそうだから付き合ってあげる。だから君も私に付き合って。最初は私』

 

そう言うと今度は逆にシエラの方が武器を持たない片腕を持ち上げ手のひらをみせた。

膨大な魔力の片鱗があふれ出す。

いつもの風魔法かと思ったが明らかに雰囲気が違う。

そうして奴は今まで一度も聞いたことのない呪文を唱え始めた。

 

『【武器も言葉も魔法も人を傷つける】』

 

 

聞いたことが無い。情報として覚えがない。シエラが使えるとされる魔法は2つ。

風の杭を放出する超短文詠唱の攻撃魔法と風の障壁を展開する同じく超短文詠唱の加護兼防御魔法

 

『【生を掲げろ、死を忘れるな。自覚しろお前独りで為す物は何もない】』

 

だというのにこの詠唱はどちらでもない。

明らかになる3つ目の奇跡。まったくの未知だった。

 

『【幻想(ゆめ)縛鎖(ばくさ)。生とは争乱。求めし物は全霊の終焉】』

 

滔々と述べられる詠唱文は彼女が主神以外にひた隠しにしてきた歪みきった願望の表れ。

奴は絶対これを仲間たちの目の前で絶対に使おうとしなかった。

なぜなら自身の本当の願いが狂いに狂ったものだと知っていたから。

シエラは自信を達観している。どうせ自分の本質を理解できるものが目の前に現れたとしても共にしてくれるはずなどないから。

そんな呪詛(カース)を。

そんなものを(そいつ )

 

『【礼賛しろ(むくろ)の交わりを。その果てに至上至高の結末(未知)が現れる】』

 

『【ニア・二ヴルヘイム】』

 

具現化したのは輪郭のみの無色の鎖。そんなものがこちらに目掛けて突き走る。

当然攻撃魔法だと思い込み、避けようとするが無駄だった。

こちらに近づくたび、鎖が加速する。

金属音を咆げながらこちらに近づく鎖についに補足され体を貫かれる。

しまったと焦りの表情が容貌に現れるが、貫かれたというのに不思議なほど痛みがなかった。

 

『なんだこれは……』

 

魔法というには殺意がない。呪詛(カース)というには怨念がなさすぎる。

隠せない疑問の数々、隠せない困惑の表情を浮かべ自身の両手のひらを見ていると。

 

 

『私の呪詛(コレ)は使ったからってすぐには影響は出ないよ。何もしなければ何も起こらない()。』

 

そうなんてことのないように同じく鎖が突き刺さったシエラがこちらに近づく。

何事もなかったかのように目の前まで来てこちらの顔を覗く。

 

『さあ、今度は君の番。使いなよ、ソレ』

 

そう先ほど止められた、邪神から教えられた魔法とやらの使用を促される。

困惑は消えなかったがすすめられるまま使うことを決めた。

またしても蠢動する魔力。うでから赤い光条(スパーク)が発生する。

 

『【代償は死。意思をここに---】』

 

『【テスタルス・ルーイン】』

 

実際に起こったのは魔法の行使による魔力の氾濫ではなく、呪詛(カース)による呪力の禍々しい呪力の渦が爆ぜる。

そして発動して魔法と偽られた呪詛(カース)の発動条件と効果を知ったとき、(そいつ )は真実絶望した。

その呪いはつまり、シエラに警告された心と体の悲鳴そのものだった。

 

ようやく自覚した。

 

誰かに必要とされたい()覚えていてもらいたい()本当は愛されたかった()----シエラはこのことを言っていたのだ。

 

そんな根底で自覚ができていなかった望みが歪み切って出来上がった【紅い遺言】がこのものの正体。

代償は命という、取り返しのつかないものを捧げてようやく発動できる。

効果は【遺言遺書(テスタメント・カース)】。

対象に深紅の光を浴びせ、防御不能回避不可能、何物にも防ぐことが出来ない"魂の共鳴"を引き起こすだけの代物。

 

勿論その光が向かう先は目の前のシエラ。

おどろおどろしい光と音に取りつかれ、彼女の視界は血染めのような深紅に染まる。

 

目の前にいるはずなのに後ろからレヴィナスから抱きしめられた気がした。

魂が共鳴し彼女が今まで過ごした人生を追体験させられる。

 

 

そんな呆然と座り込むシエラを見ながら(そいつ )は絶望し続けていた。

 

おのが真実(ほんとう)を知り、代償として死にゆく体を前に激しく後悔した。

 

いやだ死にたくない。やっと自分の本当が解ったのに。欲しいものは手に入っていたのに。

 

そう思いながら必要としてくれた、愛をくれたシエラを前に生涯で初めて涙が零れ落ちる。

意識が闇に落ちる。ああ死んでしまう。

邪神はこうなることを予見して愛そうしなかったのだろう。

 

意識が途絶えかけたその時

 

『グゥゥゥ、ガァァァア!!!!』

 

座り込んだシエラの口から苦悶の声が上がる。

彼女に突き刺さった鎖から何かを吸い取られていた。

当然その行きつく先はレヴィナス。

 

『……ッハ!!』

 

本当に死ぬはずだった(そいつ )は意識をはっきりさせ周りを見渡す。

なぜだ?死ぬはずだったのに?なぜ生きている?

止まらぬ疑問をシエラにぶつける。

 

『…いま私と君は同じなんだ』

 

臨死世界(ニア・二ヴルヘイム)

その呪詛(カース)の効果は単純明快、命の共有化。

躊躇い傷の分かち合い。痛み分け。

鎖につながれた片方が傷ついたのなら、もう片方から魂を吸い上げ傷をいやす。

逆もまた叱り。生命の等分化をなし互いの魂をゆっくり摩耗させていく。

強者であろうと弱者であろうと絶対に相打ちに持ち込める。そして絶対に相打ちになってしまう。

 

そんな無意味なもの。

 

だからこそレヴィナス・ダルダはシエラ・L・バーランドの本性が解ってしまった。

 

こいつはヘラの眷属らしく自分の伴侶を探していたのだ。

 

死の婚姻。それにつきあってくれる恋人(だれか)。文字通り死が二人を分かつとも。

 

そしてシエラ・L・バーランドにレヴィナス・ダルダは見初められた。

 

彼女が誰とも夜を過ごしそして一度しか寝ないのはその実、伴侶を探していたのだろう。

 

二度以上を共にしなかったのは誰も自分の願いに付き合ってくれないと察してしまったのだろう。自身の盛大な心中に。

 

女神ヘラが二人の戦いに干渉を許さなかったのはシエラにとってそれがハネムーンだったから。

 

【……私の頭がおかしいのは否定しないよ】

 

ああ確かに頭がおかしい、どうかしている。

愛をささやいておきながら私と共に死んでくれと自滅に付き合わされるなど。

 

 

無感症であったがゆえ生を実感するために死に近づく黒妖精。

 

不能であるがゆえ死を充足させるために生を謳歌する白妖精。

 

死を代償に相手へ己が人生とは何だったのかを刻み付ける紅い遺言(テスタルス・ルーイン)

 

生を代償に己が自滅に他者を巻き込む臨死世界(ニア・ニブルヘイム)

 

愛を知らず、誰かに必要とされたかったレヴィナス・ダルダ。

 

愛を知り、共にする誰かを必要としていたシエラ・L・バーランド。

 

なんとも見事な鏡写し。終わり散らかしている逆しま。

 

シエラと体を重ねた時だけ肉の情動がわくのも当然の理。

 

死に近づかねば何かを感じれないというのなら、死に酔ってるコイツの近くいれば快楽を感じるのは当然の理屈だった。

 

(そいつ )から本能的に自分の対極の資質を持つことを悟ったのだろう。最初の襲撃(であい)から

 

そして(そいつ )は無意味な死などもう送りたくない。

 

だから

 

『……だから言ったでしょ。私は頭がおかしいって』

 

『……ああ。頭おかしいぞお前。それに付き合えるのは飛びぬけた馬鹿だけだ』

 

『……そう……だよね……』

 

シエラは解っていたような、顔をそむけ残念そうな表情をする。

そうだ、こんな狂ってる望みに付き合ってくれる者など居はしない。

そんなことはとっくに解ってたという失望を帯びていた。

 

『だがどうやら、その飛びぬけた馬鹿だったらしい。いいだろうお前のためだ最後まで付き合ってやる。』

 

『…!』

だがいい。乗ってやる。お前と共に死んでやる。お前は私を必要だと言って愛してくれたから。

驚きの表情をこちらに向けるシエラ。そしてありえないものを見たかの様に。

ようやく探していた者はみつかった。

 

『ありがとう』

 

だから今は最愛(シエラ)が浮かべた花の様な笑顔を胸に刻もう。

 

例え約束された破滅であったとしても。

 

死の比翼連理、断崖の先への飛翔。

 

二人は比翼、独りじゃどこへも飛び立てない。

 

だから二人で飛び、死へと突き進む。

 

私達(そいつら )はともに消え果て愛を世界に刻む。

 

そう思った。

 

そう思っていた。

 

そうなるはずだったのに()………。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

その日(そいつ )はギルドへ向かって走っていた。

風の噂で聞いた深層での怪物たちの大反乱(モンスター・パニック)

それ自体はいい。ありふれた出来事だ。

問題なのはその数日前にゼウス、ヘラの合同遠征が行われていたということ。

そして部隊長としてシエラが一小隊を率いていたということ。

そして怪物たちの大反乱(モンスター・パニック)が起きた階層に居合わせたという事実を掴んでしまったこと。

 

 

『頼む………。杞憂であってくれ』

 

脳内に鳴り響く嫌な予感を打ち払いながらギルドの中までかけていく。

目の前で人にぶつかったところで知ったことかというように走る。

邪魔な様なら押しのけてまで。

 

そうしてギルドの入り口にたどり着いてしまった時見てしまった。

 

他のヘラの眷属が輪の様に囲む中心。その真ん中に。

布があった。ちょうど人独り覆えそうな大きさのものが。

そして隆起していた。輪郭的に女性に見える。

 

猛烈な嫌な予感は止まらない。横隔膜が震え、胃が裏返りそうになる。

あふれ出る嘔吐感を無理やりかみ殺して、震える足でその中心に向かう。

 

こちらに気づいた他のヘラの眷属どもは悼ましそうな目でこちらを見て距離を採る。

 

だが関係ない、そんなことはどうでもいい。頼む嘘であってくれ。

 

震える手で布をめくり、そこにあったのは最悪な結末。

 

片腕と両足を失い、体を鮮血で体を染め、光を宿さぬ瞳で虚空を見上げるシエラの遺体だった

 

事態を受けためきれなかった(そいつ )は彼女の体を抱きかかえ、残された片手を自らの頬にあてる。

 

あの交わした温かみなど疾うに消え去っていた。あったのは背筋が凍るほどの冷たさだけ。

 

『嘘だ……やめてくれ……シエラ……』

 

錯乱した(そいつ )はヘラの治療師(ヒーラー)だと思われる女につかみかかった。

胸倉を掴み何かを訴えようとするが、さすがに見過ごせなくなったのか他の眷属に取り押さえられる。

それでも叫ぶ。

 

『シエラを治せ!シエラを元に戻してくれ!頼むどうか……』

 

『…シエラの魂はもう天に返ってしまったわ。だからもう体を治したところで彼女は甦らない……」

 

心が急速に凍り付いてく。頭に空白ができ思考がままならない。

 

そんな(そいつ )を前にヘラの眷属達はシエラの身になにがあったか語りだした。

 

深層での怪物たちの大反乱(モンスター・パニック)を前に仲間を守るために殿になったと。

 

逃がした仲間たちが団長や幹部を含む増援を引き連れてきたときにはもう手遅れになっていたと。

 

ありふれた冒険者の末路だった。

 

高潔な妖精の生き様だった。

 

だけど伴侶を独り残して逝く最悪の死に様だった。

 

その後はよく覚えていない。荼毘に付され冒険者墓地に埋葬されたシエラを遠目で見届けた後、呆然自失のまま拠点(ホーム)に帰還する。

 

そんな様子の(そいつ )をみてゲラゲラ嘲笑いながらファミリアの主神の女神であるアレクトは囁きかける。

 

『ねえレヴィ。あそこでパルクス達が何か面白い話をしているみたいだよ。ちょっと聞き耳立ててみなよ、きっとおもしろいよ』

 

そう促されるまま部屋に案内されるまま扉の前に立ち聞き耳をたてる。

なにがしか話をしているようだったが最早何もかもどうでもいいから切り上げようとするが……。

 

『あれだけの人員と金と魔導製品(マジックアイテム )使って死んだの聖婦ただ独りかよ!!割に合わねえな!』

 

『まったくだ。せめてあと3人幹部格死んでりゃあ釣り合い採れねえぜ』

 

我慢できなくなった(そいつ )は激情の赴くままパルクス達に問いただす。

あれは偶々起こった怪物たちの大反乱《モンスター・パニック》による事故だったのではないか。

 

『あー最近テメェいなかったから知らねえか』

 

そういうとペラペラ真相を語りだす。

いわく他派閥と手を組みゼウスとヘラにモンスターをけしかけたことを。

そしてダンジョンのとある階層の出入り口を爆破し脱出を妨げたことを。

 

聞くたびに真相を知るたびに頭の奥が熱くなる。消え去ったはずの【熱】がぶり返す。

 

『まあでもテメェは聖婦を殺したがってたか。悪いな取っちまってよ』

同じ悪党なんだから許してくれよ。品のない笑みで語られ、肩に手を置かれる。

 

意識が飛んだ。

 

気づいたら周りはとても紅い鮮血に塗れた地獄の様相を呈していた。

 

己が手は血だらけとなり剣は血まみれ。そんな様子を見たアレクトはあの不気味な薄い笑みを携えながら話しかける。

 

『レヴィまた同じことを言うけど私は君を愛さないことにするよ。それでね……』

 

そして口を耳元に近づけながら最悪の言葉をささやきかける。

 

『君はもう誰から愛されないよ。よかったね、君はとっても強いけどもういらないや』

 

その言葉を聞き絶叫して拠点(ホーム)を飛び出す。

 

(そいつ )は誰からも愛されない。だって周りにいたのはどいつもこいつ愛など知らぬ破綻者だけ。

 

(そいつ )は誰からも愛して貰えない。愛して貰うにはこの手は血で汚れ過ぎていた。それでもこの手を取ってくれたのは最愛(シエラ)だけ。

 

彼女が消しさってくれたはずの【熱】が止まらない。

 

世界が理由にない悪意に溢れてるなんてことは自我を得たときからしっていたのに

 

結局(そいつ )あれ程、シエラから止められた【熱】の衝動の言いなりになった。

 

じゃないと耐えられなかったから。

 

だからだろう。ある時、迷宮の奥底で(そいつ )はあっさり死んだ。

 

片翼を失ったそのまま成すすべなく落ちるのは当然の事だった。

 

誰からも覚えてもらえず、必要とされず、愛されないまま。

 

なんともまあ、みじめで、滑稽で、つまらない、無様な末路だった。

 

---嫌だ。…死にたくない、助けてシエラ…。---

 

結局、死に向かいつつあるのに縋るのはもちろんいなくなった最愛(シエラ)

 

もう言葉なんてとっくに届かなくなっているのに。

 

---誰か…私を…---

 

愛して。そう最後の言葉を述べながら肉体から魂が遊離しかけた時。

 

『イイヨ』

 

結局(そいつ )穢れた精霊(あいつ)の悪魔の囁きに乗ることにした。

 

与えられた次愛に。

 

だから死にゆく体に魔石を突っ込まれ、それを七等分にされて。

 

適合する屍肉を見つけるたびそのひとつを注ぎ込み怪人(クリーチャー)生み出され。

 

自分の真名すらましてかつての最愛すら思い出せない穢れた精霊(あいつ)の触手であるレヴィスなんてものになり果てるのは当然の帰結だったのかもしれない。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

だから今、七つ目の(さいご)レヴィス(わたし)は思うのだ。

 

獣人の冒険者に魔石を割られ。

 

その死を利用し、呪詛を使って餞別がわりに剣姫(アリア)を道連れにして。

 

灰に帰りゆく体で穢れた精霊(あいつ)への別れの念と、母親とも娘ともとれる心内をない交ぜにした感謝の言葉を残して。

 

終われることへの安堵、まだ続けたかった心残り、未練、そんな思いを抱きながら

 

本当に意識が消える最後の一瞬、刹那。

 

抱きとめた抱擁も。交わした逢瀬も。語り合った言葉も。

 

ましてや顔も声も何もかも思い出せないはずなのに。

 

出てきた名前と言葉に微かな疑問と悲しみを抱いて思いをはせる。

 

---嗚呼、シエラ。ようやく私もそっちへ逝けるよ…---

 

この思いを知る者はこの場に誰もいない。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

黄昏に輝く花園。幻想的な光景。

 

これ程きれいな場所は見たことがあっただろうか。

 

そんな場所で私は目を覚ました。

 

「…ここはどこだ?私は…」

 

目を覚まし自分が何者かを確認する

 

そう私はレヴィス……。

 

「…違う。私はレヴィナス・ダルダ!…だがどいうことだ?」

 

私は嫌われ者の黒妖精(ダークエルフ)レヴィナス・ダルダ。

 

だがおかしい。怪人であるレヴィスとしての記憶もある。

 

1から7つ目のレヴィス達の記憶が実感としてある。

 

なにより数百年過ごし壊死した感情も甦っている。

 

自分の黒い肌を持つ手を見ながらもう一つおかしい事実があった。

 

失われたはずの片目。それも取り戻している。

 

一体、どういうことなのだろうと困惑していると、

 

「やあ、レヴィナス。起きた?」

 

「……シエラ」

 

声をかけられた。ずっと忘れていた、ずっと聞きたかった声で。

 

視線を向けると奴はこちらに笑顔を向けながら座っていた。

 

ずっと待ってたんだよと言いたげな、泣きそうな瞳を我慢しながら。

 

塩のような白い髪。アクアマリンのような綺麗な水色の瞳。エルフにしては豊満な肉体。

 

もう会えないと絶望していた白妖精(ホワイトエルフ)

 

そんなシエラ(さいあい)が。

 

事態が呑み込めず、どういうことだと困惑が止まらない。

 

「いったい此処はどこなんだ?。というかお前はなぜ…?」

 

「いいよ全部教えてあげる」

 

困惑する私を前にシエラは言葉を語りだす。

 

ここはあの世つまり天界であること。

 

罪悪感を感じていたシエラはレヴィナスをずっと待ち続けていたこと。

 

レヴィスとして7分の1の魂が帰るたびソレを確保し、最後の魂が来た段階で統合しレヴィナス・ダルダとして元にの魂に戻ったことを。

 

そう教えられた。

 

「冥府の神々に交渉したら、とある一柱の神様がワタシハコジラセタレズップルガダイスキって言って許可してくれたんだよ。ホント神様って何言ってるか解んないよね」

 

そうケラケラ笑いながら自身の死後について語りだした。

 

君を置いて死んだことを悪いとおもったから数百年間孤独に待ち続けた。

 

最近まで処女雪のような綺麗な髪に深海の宝石の様に美しい青い瞳もつとっても優しい人族(ヒューマン)の女性に話し相手になってもらっていた。

 

その女性も待ち人である灰の髪を持つ美女な双子の姉と先に立ち去ってしまい、また独りで待ってたと。

 

なおその灰の髪の美女に出会い際、「私の妹に近づくなカス」とぶん殴られたらしい。時代は違えど同じヘラの眷属なのに。なんて暴君な。

 

そしてこちらに向き直ると

 

「ちょっとは悪いと思ってたから健気にこっちは待ってたのにさ。君何あんなキッショいのと浮気してんの?悲しいじゃん!!」

 

不倫なんて絶対許さないという怒りの視線をこちらに向けるシエラ。

 

ああそうだった。こいつもヤンデレ(ヘラ)の眷属の一人。生前は私が嫌われ者(ボッチ)だったからこんな姿を見せなかったんだろう。

 

コイツの嫉妬とか独占欲はあの女傑どもと同じく人億倍はあったらしい。

 

だがこっちにも言い分なんてものはある。

 

「…ならこちらも言わせてもらうが、お前が私を置いていったからだろう」

 

こちらも胡乱な視線を向けながら攻め返す。

 

だから穢れた精霊(あいつ)の愛とも知れぬ何かにすがるしかなかった。

 

というか大体、私を伴侶と呼ぶなら他の奴を踏みつけにしても生き残れよ。

 

何ちゃっかりいい空気吸いながら死んでるんだ。

 

私だったらどいつもこいつも犠牲にしてでも生き残ったぞ。…もっともアレクトの眷属(ごみども)を仲間と呼ぶのは死んでからもゴメンだが。

 

私の眼差しに図星を突かれ、目を丸くした後気まずそうな顔持ちでシエラは視線をそらす。

 

「…結局私は目の前の仲間を見捨てられるほど薄情にはなれなかったよ。悪かったと思ってる。だから今一番言いたいことを君に伝よう」

 

そういうとシエラに私は飛びついて抱きしめられる。いきなりの出来事で後ろに倒れこむことを拒否できない。

 

痛いほど、壊れ果てるほど抱きしめられる。もう絶対離さないとでも言う様に。

 

「…おかりなさいレヴィナス。私の伴侶。ずっと会いたかった」

 

お互い気が付かぬうちに互いの瞳から涙が出る。

 

そうだ私はこの抱擁をずっと待ち焦がれてたんだ。

 

「…ああ、ただいまシエラ。私の最愛。とても長い旅路だったよ」

 

だからこちらも痛いほど抱きしめ返す。

 

そうして一通り抱きしめ合った後、二人は立ち上がり指を絡めあいながら歩きだす。

 

生前伝えられなかった想いなんてもの語り合いながら。

 

一歩一歩、二人一緒にいられること幸せを感じ入りながら、言いたいことを語り合いながら黄昏の花園を抜けていく。

 

これはきっと--それは遥か昔日から約束された比翼の妖精たちの再会(であい)--

 

生まれ変わった彼女たちはきっといつか巡り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 




イキヲシテルダケデーオナジイタミヲカンジルダケデーホンノースコシーシアワセヲツミアゲルアイキヅイテシマッター


いかここから新時代コソコソ噂話

脳内設定だとシエラの冒険者としての才能は0.7アルフィアぐらい。

じつはシエラとレヴィナスの関係性の熱量は実はそこまで高くありません。
具体的に言うと英雄に憧れる白兎みたいな少年と黒い牡牛の異端児ぐらいの関係性と同じくらいしかありません。

後同じく白黒妖精のとあるサイコパス姉妹を見ると二人とも普通に軽蔑してきます。

シエラ「キッショ。近づかないでよカス」
レヴィナス「理解不能だ。周りをうろつくなゴミ」

サイコパス姉妹「ひっどーい!?」
シエラは普通に真っ当な倫理観を持ってるし、レヴィナスは主神がヤベー奴だと判断できるくらいには冷静だからしょうがないネ。
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