ニンジャ・スーパースシ・エンカウント 作:腐りかけのシュールストレミング
1話目よりも難産でしたね…マジでね
みんな大好きワイルドハント=サン回です
ここはマッポー都市ネオサイタマ
騒がしい広告音声が鳴り響き雑多なネオン看板が照らす街中を1人の男が歩いていた。
男の名はワイルドハント。キョートを拠点とするニンジャ組織『ザイバツ・シャドーギルド』のネオサイタマ支部長である。
先日ザイバツの最高幹部、グランドマスターであるイグゾーションがキョートに持ち帰ったスーパー・スシはザイバツ中を震撼させた。
ザイバツの最高幹部たるグランドマスター達がそのあまりのウマさに感激した、だけではない。
常に車椅子で移動し、自らの足で歩けぬほど弱っていたロードがそのあまりのウマさ、そして最大限に引き出されたニンジャ回復力によってクララめいて立ち上がったのだ!
グランドマスター達は驚愕し、パラゴンは感動の余り滂沱の涙を流した。
『スーパー・スシをザイバツにもたらした功績を讃えロードよりイグゾーション=サン、そしてワイルドハント=サンに茶器を進呈するッ』
読者諸君の中にはご存知の方もいるだろうが、その時代の支配者より与えられる茶器には数百キロの加工ゴールドインゴットよりも遥かな価値があり、かつてはエド・徳川やソガ・ニンジャ、カツ・ワンソーがキンボシ・スゴイオオキイをした部下に与えたとされている。無論現在のザイバツ・シャドーギルドにもその風習は残っているが実際に賜った者は数えるほどしかいない。
加えてワイルドハントには今後のネオサイタマ侵攻の助けとなるように直属の部下が与えられ、予算の増額に何人かのグランドマスターが自身の部下をネオサイタマへの増援へと派遣した。
そんな僻地への左遷から一躍大出世を遂げた男、ワイルドハントの顔はというと……疲れていた。
(「キョートへのスシの輸送量を増やせ」だと? 何も知らずに言ってくれる!)
ワイルドハントはつい先程までUNIX通信によるキョートのザイバツ本部との会議によってパワハラめいた要求を喰らっていたのだ!
実際ワイルドハントの業務は多岐に渡る。 能力や人格に問題ありとみなされ僻地ネオサイタマへと送られた『左遷組』及びスーパー・スシが見つかって以降格送られてきた派閥の異なる『派遣組』をまとめ上げ指揮してのソウカイヤとの抗争、スーパー・スシを購入し輸送、各派閥へ問題が出ないように振り分ける。そしてしょっちゅう視察やお忍びで来るようになったグランドマスター達の接待….いずれも多少の不満は出つつも無難に捌いてゆくのは限られた人員と予算をやり繰りしてきたワイルドハントだからこそ成せるワザマエであろう。
(スーパー・スシは金があればあるだけ買えるという物ではない!無闇に買い占めればネオサイタマ中からムラハチにされるのだぞ!?)
スーパー・スシに購入制限はないがだからと言って無制限に買えるというわけではない。もし他の客が買えなくなるまで買い占めてしまえば常連たちからムラハチにされ、囲んでボーで叩かれるであろう。当然その常連の中には暗黒メガコーポやソウカイヤの重鎮達もいる。
『多忙ゆえネオサイタマまで来れない上司や同僚がいる』という話を聞いた店主が融通を利かせてくれるものの、ザイバツ全体に行き渡るにはまるで足りない。ワイルドハントがなんとか調整して乗り切っているのが現状だ。
(もういい…もう疲れた。面倒なことは明日の自分に任せよう。)
面倒ごとを先送りにしながら、ワイルドハントは『スーパー・スシ』の看板が掲げられた店に入る。
「イラッシャイマシ」
「一人だ」
「おひとり様ですね。カウンター席へご案内します。」
オイラン・ウェイトレスの案内に従って席に座る。
店内にはモータルの他にソウカイヤと思わしきニンジャも何人か客として来ているがイクサを仕掛けたりはしない。店に迷惑はかけたくないし万が一出禁にでもなれば大変だからだ。向こうもそれが分かっているのかコチラをチラリと見た後はすぐに食事を再開している。
「ご注文は」
「タマゴとマグロ、後は…サケを」
「ハイヨロコンデー」
注文を終えたワイルドハントはマグロめいた眼差しでボーッと店内を眺める。ネオサイタマでありがちな下品な広告ポスターもなく落ち着いた雰囲気の店内はキョート出身である彼にとって好ましかった。
「お待たせ致しました。タマゴとマグロ、サケです。」
「ああ、ありがとう」
暫く店内を眺めているとオイラン・ウェイトレスが注文したスシとサケを持って来た。
ワイルドハントはお礼をいうと早速とばかりにスシを食べ始める。
「イタダキマス」
最初に手を伸ばしたのはタマゴだ。混ぜ物でかさ増ししていないオーガニック鶏卵をふんだんに使ったタマゴは彼の好物だ。
本来、オーガニック鶏卵を使ったタマゴは目玉が飛び出るほどの高級品なのだがこの店、スーパー・スシではコケシマートで売られているような鶏卵未使用のタマゴ・スシと同額、あるいはそれよりも安く購入することができる。
タマゴだけではない、マグロ、イクラ、ウニ…あらゆるスシがこの店では安価に購入することができるのだ!ネタもシャリも、ショーユやワサビでさえもフルオーガニックのスシが、他の店で売られているどんな最上級オーガニック品よりも美味いスシが、マケグミサラリマンでも購入できるほどの金額で!
「美味い…本当に美味い」
タマゴの優しい味わいと豊富な栄養がワイルドハントの全身に染み渡り、疲れた身体と心を癒していく。
タマゴを食べ終わると即座にグラスに注がれたサケを飲み干し今度はマグロを食べる。
スシの王道を超えた王道、マグロはタマゴに並ぶ彼の好物だ。一般的な人気ではトロに譲るものの確かな旨みと深いコク、そしてトロよりも親しみやすいアトモスフィアを漂わせるマグロがワイルドハントは好きだった。
サカナ!スシ!すなわちマグロ!!先ほどのタマゴの優しい味わいとは打って変わって力強い味と食感、エネルギーが海中を泳ぐマグロの如く肉体を駆け巡っていく。
「アーイイ…遥かにイイ」
スーパー・スシの補給によって急速に高められたニンジャ回復力がフル稼働、カロウシ寸前だったワイルドハントの身体が急速に回復していく。今ならヨコヅナとオスモウしたって勝てそうだ。
「うおォン 俺はまるでニンジャ火力発電所だ」
誰に聞かせるわけでもなく呟くとワイルドハントは追加のスシとサケを注文しては食べていく
「ふーっ良かった…ゴチソウサマデシタ。店員よ、お勘定だ。それからテイクアウトでネギトロ・スシセットと1つとパーティ・スシセットを5つ」
「ハイヨロコンデー」
ひとしきりスシを楽しんだワイルドハントは会計を済ませ、支部のメンバーへのお土産用にスシをテイクアウトする。
1人でスシを楽しんだ挙句こういった気遣いを忘れてしまえばムラハチからのケジメもあり得る。
そういった心配りを欠かさないのが度々の越権行為が目立つワイルドハントをマスター位階まで登らせたのであろう。もちろん彼の高いカラテのワザマエあってのことだが。
「それからいつものだが…」
「はい、テイクアウトのパーティ・スシセットを並、上、特上。それぞれ100人前の予約ですね」
「ああ、3日後に取りに来る」
キョートへ輸送するスシの注文も忘れない。もし忘れる様なことがあれば即座にケジメを通り越してカマユデに処されるであろう。
「ご馳走になった。また来る」
「アリガトウゴザイマシター」
お会計とスシの予約を済ませたワイルドハントはお土産のスシを手に帰路につく。
スーパー・スシを持って道を歩くというのは実際危険な行為でありスシに引き寄せられたヨタモノや店を出禁にされたニンジャ達が襲いかかって来る。半端な実力では即座に殺されてスシを奪われてしまうだろう。
だがワイルドハントほどの実力者にとっては気にするような手合いではない。むしろ良い腹ごなしだと喜んで迎え打つ心持ちである。
「腹ごなしの運動ができる上にシツレイな出禁ニンジャを殺して店の役にも立てる。アブハチトラズだ」
「お土産、インペイルメント=サン達喜ぶだろうな」
「明日もガンバルゾー!」
などと呟きながらワイルドハントは夜道を歩く。
明日からも仕事を頑張るために、より一層ザイバツに貢献するために、ワイルドハントは気合いを入れ直すのであった。
余談ですが新しくネオサイタマに送られて来たニンジャの中には左遷された落伍者と見下す者や蹴落として自分がネオサイタマ支部長の座に就こうと考える者も多くいましたが、ダークドメイン=サンが視察で訪れて以降は完全にいなくなりました。
現在ではむしろワイルドハントを助けて恩を売り、自派閥が受け取る分のスシを多くして貰おうとしています。