トイ・ストーリーを紐解くことで型月の根源に到達できる説 作:ちっちゃい深淵
原作:Fate/
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「はじめの一つは全てを変えた」
真夜中の僻地の廃倉庫で、紺のコートに身を包んだ男が語る。
もったいぶって、悠然と。かつて読んだフレーズを演者のように口ずさむ。
「つぎの二つは多くを認めた」
「ちくしょうッ! ふざけんな!! こんな、こんなところで終われねェんだよッ──!」
男の前には拘束され、口答えしか許されていない者がいる。
「受けて三つは未来を示した」
返す言葉は返答ではなかった。
淡々と、ただ男は自身の考えを口から漏らしているだけだ。それは独り言でしかない。
「繋ぐ四つは姿を消した」
だからひたすらに、網に絡み取られて転がされている者は男が語る言葉を聞き届けるしかなかった。たとえこの男を暗殺に来たことが間違いだったと自省しても、拷問されるでも殺されるでもなく、現状が意味不明なまま維持されていても、今は聞くしかないのだ。
「そして終わりの五つ目は、とっくに
「糞ッ……」
コツコツと露骨に足音を立て、コートを揺らめかせながら男が寄ってくる。暗殺者は肩を跳ねさせて、男の動向、一挙手一投足にまで目を見張る。
芋虫みたいに這いつくばっている暗殺者には、その一歩一歩が死神の足音に聞こえて仕方ない。
「『三つ目で終わっていれば良かったのに』と誰かが言った」
鼻と爪先がぶつかりそうな距離まで近づいてきて、男が立ち止まる。
歴史において断頭台に立たされた罪人は、きっとこのような感情を抱いていたのだろうと、暗殺者は今、如実に感じていた。
「ここから先は、完全に俺の考察になるんだが──」
そう言って、男は初めて暗殺者と視線を合わせる。
もはやここまでかと、暗殺者は目を瞑る。視界から消したところで本当にいなくなるわけでもなし。それはただ恐怖から心を守る現実逃避でしかない。
かつて噂に聞いた『魔術師殺し』に憧れた。そこには少なくない魔術師への憎悪があった。だから男はある意味ではなるべくして汚れ仕事に身をやつした。
そうして初めての依頼が舞い込んで、どうだ。暗殺は無様に失敗し、どころか反撃まで許して、いざ自身の死を前にして怯えてしまった。
暗殺者は唱える。アジャラカモクレン、依頼を受けなきゃよかった、テケレッツのパー。うっすら目蓋を開けてみる。当然、彼の死神はそこにいた。
そして、ついに独り言しか発しなかった男は、暗殺者に対して語りかける。
「これって、トイ・ストーリーだよな?」
「……は?」
意味が分からなかった。
同意を求められているのか。意見を求められているのか。そもそもトイ・ストーリーとは何か。魔術師の専門用語か、隠語か、符丁か。
何も、男の行動の何一つとっても分からなかった。
けれど、困惑する暗殺者など彼は気にも止めなかった。
「はじめの一つは全てを変えた。つまり、『トイ・ストーリー』における根幹。“人が見ていないところではおもちゃが動いている”という世界観の植え付けだ。第一作目にして、それは
「何を」
「つぎの二つは多くを認めた。これは『トイ・ストーリー2』のことだ。ジェシー、ブルズアイ、ピザ・プラネットのリトル・グリーンメン。たくさんのおもちゃたちが出てきたな。思えばバズ・ライトイヤー同士の邂逅も、ある意味では並行世界の考えを示唆していたのかもしれない。
そしてタイトルを『2』というナンバリングにすることによって、今後も続編ができるかもという可能性を生んだ。事実、続編は出た。『トイ・ストーリー2』が、いや、『トイ・ストーリー2』も一作目同様に売れたからだ」
あたかもそれが当然であるかのように語る。知っていて当然だと、前提知識が同然だと、語る相手を置き去りにしている事実が見えていないかのように男は続ける。
「受けて三つは未来を示した。『トイ・ストーリー3』だな。アンディが大学生の大人になって、おもちゃをどうするかという問題提起にあたる話だ。だが、この作品はおもちゃたちの新たな未来を示した。
そう! 紆余曲折ありつつも、アンディはウッディたちをボニーという女の子に譲ったんだ。おもちゃたちの物語はこれからも子どもと共にある。そんなお話だった」
「知らねぇやつの知らねぇ話をされてもわかんねぇよ」
大人しく話を聞いていた暗殺者は、けれど内容を理解するには至らなかった。何かしらの創作を語っているのだろうことは検討つくが、ではそれがどうしたという話だ。
ぼやくも男は無視するのだろうと半ば諦めていた。むしろ今ならば何をしても無視をされるのではとさえ思っているほどだ。
「繋ぐ四つは姿を消した。これは『トイ・ストーリー4』の話だ」
「……なんかナンバリング多くねぇか?」
「それだけ人気だったんだよ」
「そうか。──!? おい、会話できんじゃねぇか!」
「『トイ・ストーリー4』はウッディとの決別だ。彼は子どものおもちゃとして生きることを止めた。アレだけ一緒にいたバズたちの前から消えたんだ。アンディの時代を惜しむファンはこれに相当の批判をしていた印象がある」
当時は炎上していたなぁ、と懐かしむように語る男は最早すっとぼけているようにすら暗殺者には見えた。
「『三つ目で終わっていれば良かったのに』と誰かが言った。そういう意見もある。名作は『トイ・ストーリー3』まで、『トイ・ストーリー4』は観なくていいという意見すら見たことがある」
男は頭を振り、残念がる。
「俺は『トイ・ストーリー4』も面白いと思うけどね。人なんて十人十色だ。きっと重きを置く場所が違うんだろう」
理解は示した上で、彼は続けた。
「そして終わりの五つ目は、とっくに
「訊くなよ、知らねぇよ、なんなんだよお前」
悪態をつくも、男は歯牙にもかけない様子でため息をする。
「そして六つ。これは何も分かっていない。逆説的に『トイ・ストーリー6』を知ることができれば、到れるかもしれないんだ」
「何にだよッ」
男が先ほどから語る『トイ・ストーリー』すら暗殺者は理解できていない。だのに、文脈からしてまた別の話にシフトチェンジしたと様子を察すると、ついツッコミを入れてしまった。
「何って、根源さ」
「こ……はぁッ!?」
なんてことはないように、男は言う。まるで今まで何を聞いていたんだと言わんばかりであった。
しかし暗殺者からしてみれば妙な話を通り越して、気味の悪い驚愕話だ。
芋虫みたいな捕まり方をしたとはいえ、これでも魔術師を殺すために魔術を修めた魔術使いだ。ともすれば魔術師が目指す根源のなんたるかを理解はしている。
だからこその驚愕。つまるところ、暗殺者の目の前にいるこの男は、先ほどまでベラベラと根源に到れるかもしれない内容を見ず知らずの相手に語ってみせていたわけだ。
普通は殺す。知識を独占するために。他者に教える意味がない。知られるわけにはいかない。だから普通は知られたから殺す、となる。にも関わらず、男は自ら語った。無知なる者に啓蒙するように。
「ふむ、理解していないようだ。ならもう少し噛み砕いて説明しよう」
まるで理解が遅れている生徒を導くかの如く、教師然とした態度で本来秘するべきだろう道筋を彼は口に出す。
「まず、根源に到達する方法はいくつかあるが、今回のアプローチの仕方は『魔法を取得して到る方法』だ」
「おい待て、糞ったれ。それを俺に聞かせる理由を何だ?」
恐怖がないと言えば嘘になるのだろう。けれど手に余るような話に歯止めが効かなかいまま聞かされることもまた恐怖でしかない。
だから暗殺者だった男は恐怖を噛み殺し、魔術師へと問い質す。
「アンディになってもらうためだが?」
「――あ?」
「?」
アンディ。どこかで聞いた単語だ。床に転がったまま、それを反芻するように思い出す。それこそつい先ほど目の前のイカれた魔術師が語っていた内容に出てきた気がする。そんな結論に辿り着いて、ならば付随して聞かねばならないことも増える。
「アンディ……ってのはアレだよな。といすとーりー? とかいうやつの」
「そう、ウッディの最初の持ち主だった少年だ」
「ああそうかい。で? 俺がその少年になれって? そもそも、その『といすとーりー』を知らねぇんだ。何だってそれが根源に繋がる?」
本来の魔術使いの男ならば、こんなことを訊いたりはしなかった。
根源を目指していない。目的のために魔術を使う。だから魔術使い。根源到達のために魔術を極める魔術師とは話が、見る先が違う。
だが死の瀬戸際に立って、いざ根源に到れるかもしれない道がそこにあったとして、どうだろう。憎たらしい魔術師が、喉から手が出るほど欲する根源到達への手段。それを横から掠め取れるのならば、さぞ痛快な話ではないだろうか。
「なるほど、そこからか」
だから暗殺者だった男は我慢をする。無性に腹が立つ納得顔をしたコートの男を相手に、さも従順ですといった捕虜を演じる。目的がある内はきっと殺されないはずだと冷静に考えながら。
「いいかい? 『トイ・ストーリー』とは『TOY STORY』と書く」
「玩具の物語ってか。それで?」
「これをアナグラムすると『ROOT』と『SYTY』に二分される。『ROOT』は言わずもがな、『根源』を指す言葉だ」
「……ぁー、おう。それで?」
「『SYTY』とはイニシャルだ。『Something Yet To Yield』つまり『まだもたらされていないもの』」
トイ・ストーリーのナンバリングは既に五つが制作されている。
暗殺者で魔術使いでしかない男には知る由もないが、根源に繋がる五大魔法、これもまた既に五つが席を埋めていた。
残るは“新たに創造されるべき五大魔法以外の魔法”。
「根源に関してまだもたらされていないもの。それは未だ誰も知らない、根源へと繋がる未知なる道。即ち――」
――第六魔法。
「名も知らぬ暗殺者くん。俺はね、トイ・ストーリーを無印から再現することで擬似的に『トイ・ストーリー6』を――ひいては何の情報もない第六魔法習得の足掛かりを得たいのさ!」
ある種の類感魔術。
第一魔法と『トイ・ストーリー』
第二魔法と『トイ・ストーリー2』
第三魔法と『トイ・ストーリー3』
第四魔法と『トイ・ストーリー4』
第五魔法と『トイ・ストーリー5』
それぞれ対応するものに近似の要素があるのであれば、第六魔法にも『トイ・ストーリー6』を構成する要素が存在する、かもしれない。逆説的に『トイ・ストーリー6』を知ることができれば、第六魔法へと限りなく近づける。
「何も知れば魔法を得られるなんて思っちゃいない。そんな美味しい話はないさ。だが霞程度に掴めるのなら、
コートの男は、やはり魔術師然とした魔術師らしい魔術師だ。その行動の原動力に暗殺者の男は理解を示さない。
けれど、そう、けれどもだ。
「その協力をしろと?」
「無論。ああ、役者は君一人だけではないよ。俺もするし、他にも子飼いの魔術師を動員するから君が一人何役もする必要はない。それに主役は人形だ。実は知り合いに腕の良い人形師がいてね」
『伽藍の堂』って知ってるかい? なんてにこやかに男は語る。
「なんで」
「ふむ?」
「なんで俺なんだ」
聞く限りにおいて、魔術使いでしかない男が必要とされる理由がなかった。人手が足りないのなら子飼いの魔術師とやらを使えば良い。子役が必要ならば適当な孤児院に暗示を掛けて引き取れば良い。必要性というものはそんな簡単な反論によって形を無くす。
馬鹿なことを訊いたと魔術使いは思う。何も気づいていないふりをして、唯々諾々と協力する姿勢を見せるのが賢いやり方だ。わざわざ己でなくとも良いと聞こえるような、危険をほじくり返す物言いに後悔はある。
だが、訊かずにはいられなかった。かつて魔術師のくだらない儀式とやらで家族を失うことになった男の、その存在価値はあの日家族を救うこと能わずに消えた。ともすれば復讐の準備ができた時点で怨敵が『魔術師殺し』に殺されていたと知ったときに燃え尽きたのかもしれない。
だから何故だと。
こんな無価値な男を捕まえて、何の意味があるのだと問わずにはいられなかった。
「あー、直感? 君以上のアンディ役はいないと思った」
対し、返答はそんな簡素なものだった。
理由なんてない。とはまた別の、しかし大差ないような理由。直感、勘、感覚なんて話で必要とされる。
「……クソっ。そうか、そうかよ、くそったれ。あー、くそ」
「俺そんなに面白いこと言ったか?」
「笑ってねぇよ、くそがッ! ちくしょう、ふざけんじゃねえ」
なんて可笑しな話だ。こういう利点があるから、なんて理由が欠片でもあれば割り切れた。納得をした。納得ができた。
けれど、そうじゃない。利点とか、そういうものではない理由で魔術師が手を差し伸べたのだ。実験動物を選ぶソレではない。学友を遊びに誘うような気安さで魔術師は魔術使いを演者に選んだのだ。
「いいさ、良いぜ、乗ってやる。元より俺はアンタの命を狙って失敗したんだ。煮るなり焼くなり、決める権利はアンタにある」
「うん? ああ」
もはや暴れることも、暗殺を続行することもない。逃げようなんて気配もなくなれば拘束を続ける意味もなくなる。
迎撃の初手に射出した対魔術師捕縛用ネットランチャーによって絡まった部分を解いてやり、這いつくばっていた彼にコートの男が手を貸した。
「これから『劇団TOY STORY』のアンディ役として、よろしく頼むよ。詳しい計画は今度落ち着いた場所で話すとして、取り敢えず――君の名前は?」
「あぁ、俺は――」
これから始まるのはおもちゃに演技だとバレてはいけない、都市をまるまるひとつ使った大規模な劇場型類感儀式。
それは魔術師と魔術使いと大量のエキストラの物語。
そして、
【コートの男】
いわゆる転生者。
第六魔法の内容が気になるから根源を目指すタイプの魔術師として今生を謳歌中。ひょんなことから蒼崎橙子と出会う機会があり、今回のトイ・ストーリーうんぬんを思いついたので実行することにした馬鹿。
割と都市を牛耳れるくらいには表の地位もある名門の当主なので、定期的に自分の暗殺をセルフ依頼して潜在的な敵を管理している。
【魔術使いくん】
見た目は完全にショタ。アラサーなので本編は少年ではなく男表記。残念だったな、(叙述)トリックだよ。
永遠の子役。たぶん先祖の血筋が原因。確定している厄ネタ。伝承保菌者ではないけど神秘が濃い。何だコイツ、歩く研究素材じゃん(一般通過魔術師)
ちなみに本編最後の名前を聞いてる場面は運命構図でした。やっぱFateの始まりはこうでなきゃ。
あ、与太話なんで続きとかないです。
こんな粗まみれのネタで続き書けるわけないでしょ。