怪異さん、間違えてますよ   作:ブルーな気持ちのハシビロコウ

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祠を直すことも必要かもしれない

 

「お、お前ッ!!!」

「はい?」

 

体を動かそうとハイキングをしていると、急に後ろからに声を掛けられた。

 

そこには翁がいて、鬼気迫った顔とまるで嘆くかのような声で叫んでいた。

 

「お、おまえ!あの祠を壊したな!?」

「……ほこら?」

 

翁が指を指す所には、確かに祠があった。

というか祠だったものと言えばいいのか、それは壊れている。

 

屋根は崩れ屋根としての役割を果たしておらず、よく祀るために使われている紙垂も泥に汚れていた。

 

確かに、人為的なものに見えた。

 

「?いやーーー」

「あーあ、小僧。壊しちまったのかよあの祠」

 

 

別な声が聞こえる。

 

「え、だれ」

「ったく。アンタ、ヤバいぜ?」

 

渋い声の男性が、更に俺の後ろーーーー様は登っていた方向にいた。なんか木に体重を任せていて、タバコに火をつけている。

 

いや、火気ダメじゃね?

火事になったら祠どころの規模じゃなくなるだろ。

 

「運が悪いなアンタ。このままだと、死ぬぜ?」

 

サングラスを下げて、鋭い眼光を向けている。

 

何してんだこいつ、誰だよ。

 

 

「フフフフフ」

「ハハハハハ」

 

木から、さらに2つの陰が現れる。

 

「姉さん、このままだとあの人まずいよね」

「そうね、このままだとあの人まずいわね」

 

双子の少女だった。

 

「増えたんだけど」

 

何故か山で動きにくそうな着物と草履で、黒髪のおかっぱ頭。なんというか、日本人形みたいな感じ。

 

「お、終わりじゃ!小僧!おぬしは終わりじゃ!!」

 

つばを吐き散らしながらじいさんが俺を指さす。

 

なんか賑やかになったな。

 

 

「あのすみません。この祠が壊れたらどうなるんですか?」

 

 

「「「……さぁ?」」」

「知らねぇのかよ」

 

三人が小首を傾げた。

 

「いやだってなぁ、古い祠だし。文献とか読んでないし、そもそもほぼ通りすがりだし……嬢ちゃんらも?」

「えぇ、私達も地元じゃないから詳しくないわ」

「そうね、元々は山の守り神だった的なあれじゃない?」

 

「なんでここにいんだよアンタら」

 

「いやまぁ……祠壊れたしぃ?」

「姉さん、壊れた事実のほうが大事よね」

「そうね、壊れた事実のほうが大事よ」

 

「内容なさすぎだろっ」

 

「こ、小僧ッ!お前が壊したんだぞ!」

 

「まぁーなんてったって俺達は『壊されそう祠ネットワーク』の一員だからな」

「なにそのニッチな集団!?」

 

「フフフ、全国の壊れそうな祠の場所と軽い歴史だけネットに書いてあるから。壊した人がいたら意味ありげにセリフをいう事に快感を得てる集団よ」

「ハハハ、特に除霊とかそういった能力はないわ」

 

「要するに変態集団なのはわかった」

 

肝試しの延長線上みたいなものだろうか。

つかもはや野次馬だろ。

 

「そもそも壊しに行くわけじゃないから壊れている現場に立ち会えないケースもある……最近は人が減ってきているが、まぁ有志だしこの嬢ちゃんらとも初対面だしな」

 

「フフフ、初対面だと緊張するわね」

「ハハハ、というか着物動きにくすぎなんだけど」

 

「着替えろや、んじゃ俺はこれで」

 

 

さて、話もこの辺にして変態共と一緒にいるのも怖いのでそそくさと下山することにする。

 

かなり早足で。

 

「おい小僧、流石に壊しておいてそれはまずいだろ!」

「壊すのを眺めるアンタたちが言う?」

 

「フフフ、お祓いするところなら教えてあげられるわよ」

「ハハハ、そうね。お札いる?」

 

 

なにその微妙な優しさ。

 

「……」

 

立ち止まり、早く立ち去りたい気持ちを抑えて振り返る。

 

「一つだけ、忠告しとくよ」

 

少しだけ、良心が痛むので忠告だけする事にした。

 

きっと彼らも、先ほど来たばかりなんだろうから。

 

 

 

「ーーーー祠を壊したの僕じゃあない」

 

 

 

「「「えっ?」」」

 

誰が本当に祠を壊したのか、知らないということはそういうことなのだろう。

 

 

 

 

 

俺が来たときには『既に祠は壊れていた』のだから。

 

 

 

 

彼らが『その手の類』かとも考えたが愉快すぎるし、蓋を開けばただのネットで集まった特殊なコスプレ集団なだけだった。

 

「……なぁ、あの爺さんはどこいった?」

 

後ろで、サングラスの男が何か言った。

 

しかしもう、聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーあまりにもザルな集団だな、と思った。

 

別に壊れかけの祠のあるところに行くことは犯罪じゃないし、倫理的にはどうなのかと思うが好きな事は好きにすればいいと思う。

 

 

森がザワッと風が吹く。

 

数えるのも億劫な数の鳥が一斉にはばたいた。

 

ふとした疑問なのだが

 

祠の主は、誰が壊したのか知っているのだろうか?

 

というか、関係あるのだろうか。

 

アリに手を噛まれて振り払った人間は、そのあとどのアリに噛まれたかわかるだろうか、気にするだろうか。

 

もし報復するのなら、そのムカつく衝動のままに目についたアリにするんじゃないだろうか。

 

そうでないにせよ、場は離れるに限る。

 

そのサークル?……の人が減っているのも、結局のところその現場に『遭えた』からなんじゃないだろうか。

 

 

まぁ知る由はないが、この山に今後立ち入るのはよそう。

 

 

大事なのは関わらないことだ。




最近Xで見ませんね、祠モノ
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