怪異との縁が無駄にある男が、苦しむ話。

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入り口は出口にならない時がある

 

 

 

チャイムが鳴った。

 

ズキズキする頭に、よく響く音だ。

 

薄目を開けて、ぼぅとする意識の中でもわかる。

 

俺の玄関に、誰かがいる。

 

「……」

 

時計を一瞥して、来客が誰かモニターの電気をつける。

 

「っ」

『ネェ、アケテ』

 

 

その声は、チャイムに負けずよく響いた。

 

 

あまりにも聞き馴染みのある声、そしてカメラ越しの姿に俺は驚嘆した。

 

生唾を、飲む。

 

数メートル先の扉の先には、知っているが知らないナニかがいる。

 

部屋の明かりはついてないからこそ、不気味さが加速する。

 

『ハヤク、開ケテ、ムカエニキタヨ?』

 

 

その声は、ノックと共に大きくなっていく。

 

機械的な、感情なんてない声が。

 

 

『ネェ、アケテ』

「っいや、無理です」

 

『……』

「あんまりにもびっくりして返事しちゃったよ」

 

『…ドウシテ?』

「聞いてくることあんのこれ?」

 

『スキデショ?私ノコト』

「いや、まぁ…はい。推しですけど」

 

『ナラ、アケテ』

「無理だって、いやどう考えても無理だよ」

 

『ワカラナイヨ、ドウシテ?』

「いや、じゃあ名乗ってもらっていいですか?」

 

 

『……』

「おい、言えよ。化けてるにせよなんにせよ言えよ」

 

 

 

『……超美乳!!ミニスカ戦士ポルちゃん』

「なんでエロゲの推しで来たんだよ」

 

 

「相場は彼女とか親とか大事な人だろ、なんで二次元の推しキャラで来るんだよっ」

 

 

『彼女イナイジャン』

「嫌な心の削り方すんなや」

 

『ドウシテ、エッチダヨコノ体』

「解釈違いなことすんなよ、寝るぞ」

 

『解釈違イ……』

「そうだよ、ポルちゃんは皆の前では元気で華奢な感じを出しているんだけど主人公ちゃんの前ではちゃんと心の陰の部分をだしていて主人公ちゃんの包容力によって皆には見えない顔を出して」

『早口コワ、キショ』

「心の声漏れてんぞ推しの皮の奴」

 

『アケテョ』

 

「いや開けないし、もっと致命的な部分があるだろ」

『ナニ』

 

「声」

『声?』

 

「それポルちゃんの声じゃないじゃん」

『……』

 

「誰の声だよそれ」

『ツダ◯ン』

「なんでそこをハイブリッドしたんだよ」

 

『好キデショ』

「好きだけどもよ、可愛い顔からハードボイルドな声聞こえてんだよこっちは。頭バグるわ」

 

『声真似ダヨ?AIジャナイヨ』

「ニュースをかじるタイプの怪異だ」

 

「……とにかく帰れよ、なんで俺をターゲットにしたのか知らんけど失敗してるよお前、時間も遅いし」

『他ノ怪異ガココガ面白イッテ』

「怪異にネットワークあんのかい、遊び半分で来んな」

 

『デモ今回ノ事、為ニナッタ』

「しまったコイツに伸びしろ与えちゃった」

 

『今度ハ露出増やして井上◯彦ボイスデ来ルネ』

「いやバカだわコイツ、大丈夫そうだわ」

 

 

『……マタクルネ』

「二度と来るなっ」

 

 

その言葉を最後に、扉の先の気配が消えた気がした。

どうやら諦めたらしい。

 

 

 

「……あっぶな」

 

とりあえず一息ついて、ペタペタと素足で扉に近寄って

 

 

 

ガチャン。

 

 

 

鍵を、掛けた。

 

 

ーーーー友人との彼女できない会での帰り、千鳥足で帰ってきてそのままベッドにダイブしていた。

 

 

チェーンはおろか鍵は掛けていなかった。

 

 

迂闊だったと、素直に自省する。

 

もし彼女?がチャイムだけでなくドアノブを回したらどうなっていたのだろう。

 

まぁ考えても意味はないので、寝室に戻りながらイヤホンを付けてスマホを開いて気に入った音楽を再生する。

 

二日酔いの頭には少し苦痛だが、まぁ許容範囲だ。

 

『ーーーーーーーー!!!』

 

聞き慣れた音楽の隙間からガチャガチャと狂ったように音が聞こえる。

 

まぁ、無視しよう。

 

 

 

 

これは、怪異との縁が無駄に多い僕の話。


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