ブサイク得点王だった俺、最強スペックでサッカー人生やり直し〜今度こそ美女も世界一もすべてを奪い取る〜 作:クズ吉
2014年 9月 愛知県
自室のベッドで上手く寝付けずに数十分おきにスマホを手にして時間をチェックする。
現在深夜1時。新潟に敗戦したことも、もう昨日のことだ。
寝ればスッキリすると思ったんだけどな。
ホットミルクでも飲むか…
ベッドから起きて一階に降りた。
1階の廊下に立つとリビングのドアから光が漏れている。
ドアから覗いてみると、リビングでは母さんと父さんがソファに座りテレビを見ていた。
テレビに映っているのは新潟戦の映像だろうか。
リビングのドアを開き中に入ると二人が俺に気づく。
「大雅、寝れないの?」
母さんが心配そうに俺に言う。
「うん、まあ…ホットミルクでも飲んで落ち着いてから寝るよ」
俺はキッチンの冷蔵庫を空けて牛乳を取り出し、自分のマグカップに注ぐ。
そして電子レンジで牛乳を温めた。
「大雅、おいで」
マグカップを持ってダイニングでホットミルクを飲もうとすると、父さんから呼ばれた。
リビングのソファに隣り合って座っていた母さんと父さんが間を空けて、その間に俺を座らせる。
「何さ?」
「今日は…あぁもう昨日か。昨日の試合は悔しかったね」
「うん」
「母さんと一緒に昨日の試合振り返ってたんだよ。大雅は全力出せたかい?」
父さんは名古屋アハトのコーチだ。
普段の練習からNリーグの試合まで俺の様子を見ているはず。
だがこの質問は話のとっかかりにすぎないのだろう。
「うん、もちろん。全力を出したよ。負けたけど」
「そうか…ならいいんだ」
そう言うと父さんは黙り込んだ。
・・・なんだ?話があるんじゃないのか?
「…お父さん、大雅はもっと出来たんじゃないかってさっき言ってたよ。2アシストしたのにね」
母さんが父さんの代わりに口を開いた。
「おい、言うなよ…まあいいか。大雅はよくやってる。分かってるさ。でも新潟戦はFWとして決めて欲しいって皆が大雅に期待してた。分かるよな?」
「うん。チームの皆もファンサポーターの皆も俺が釜山選手みたいに得点を取りまくることを期待してたと思う」
「そうだな。大雅、今日は釜山選手の日で、大雅の日じゃなかっただけなのかもしれない。でも本当にそれでいいのか?大雅が望むのは何だ?プロサッカー選手としてどんなふうにありたい?」
「俺は…」
心の中でいつも唱える目標はある。でも誰にも言ったことはない。
言うべきだろうか。言わずに分からないと誤魔化そうか。
俺が迷っていると母さんがそっと俺の手を握る。
俺は母さんの方を見る。
「別に言いたくないなら言わなくて良いんだよ?」
この人は本当に…いつも俺の味方だな。
「いや、言うよ。俺を育ててくれた父さんと母さんには知っておいてほしいから。…俺は世界一のサッカー選手になる。リコエス・メッティみたいに理不尽な程の…いや、メッティすら超えた点取り屋になって、日本代表も所属チームもいつも勝たせるようなそんな選手になるんだ」
「世界一か。いいね。世界一になるためには今のままで、新潟戦のような君でいいと思うかい?」
父さんは俺が目標を打ち明けたのが嬉しかったようで、笑顔で俺に聞く。
「思わないよ。俺はもっともっと上手くなってチームを勝たせなきゃならない。3点取られても4点取る選手にならなきゃならないんだ。…でも今はどうやったらそんな選手になれるか分かんない。それが少し苦しいかな」
「・・・僕もプロサッカー選手だったけど、世界一のサッカー選手を目指した事はなかったな。その道は誰にでも歩ける道じゃないのかもしれない。だけど一つ言える事がある。謙虚であれ、大雅。分からないなら分からないでいい、ちっぽけな自分を認め、探求を止めないことだ」
「謙虚であれ…か。いつもそれだね、父さんは。…でも自分で見つけるしかないよな。世界一のサッカー選手になる道は」
「練習ならいくらでも付き合うから、大雅が世界一になる日を楽しみにしてるよ」
父さんはそう言って俺の頭にポンッと手を乗せ撫でる。
「私はこれからも大雅の事、全力で支えたいと思ってるよ。お母さんは大雅が世界一になったら嬉しいけど…うーん。たとえなれなくても大雅が幸せであることを願ってる」
ちゅっ…
母さんはそう言って突然ソファに片膝を立て、俺のおでこにキスをする。
「お母さん、俺はもう子供じゃないよ!」
「何言ってんの。16歳なんてまだまだ子供よ。大雅は私の大切な子供なんだから」
俺が半世紀以上生きている事を知ったら母さんは…まぁ別に知らせることもないしいいか。
母さん美人だし内心キスされて嬉しい。
「リホ、僕にもキスしてよ!」
「自分達の部屋でやれ!」
こうして俺は両親に自身のサッカー選手としての目標を打ち明けた。
そして世界一のサッカー選手になるための探求は新たな段階へと移行する。