京都校の先輩に人の常識無いんですか?   作:lambdazero

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初対面で毒舌と同情って失礼ですよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……広い敷地だ。

 本当に学校かと思うくらい。

 道中、色々な人とすれ違う。

 校舎までだいぶ歩いた。

「マスター、分かりますか? 彼等皆様、全てが呪術師ですよ」

「慢性的な人員不足って言ってたような……」

 清姫が呪術師であると見て分かるらしい。

 それにしては、人居るように見える。

「此処は拠点でもある。斡旋して対処する、組織なのさ」

 東堂はその割にしがらみが多い下らない連中だと言い切るが。

「何か皆さん、雰囲気が暗いですね?」

「私達のことも不審に見ていました。まぁ、サーヴァントをご存じで無い皆様には……どう見えているんでしょう?」

 シャルロットもジャンヌも、何か陰湿な空気に違和感を感じるようだ。

「お前らは他の呪術師にはぱっと見、部外者の人間に見えている。生身を存在として維持しているからな。普通なら呪力が枯渇して気絶しているレベルの術式運用だろう。ブラザー……無意識に調整をしているあたり、お前は素質があるぞ」

「何でブラザー何すか。俺家族居ねえッス」

 東堂のブラザー呼びに連太郎が異議を唱えても、お前は俺のソウルが兄弟と認めた、とか意味不明な事を言い出す。

「敬語も居らん。俺はお前の師匠であり、兄弟である。遠慮はするな」

「えぇ……」

 意味分からない。距離感おかしくないか。

 そもそも、初対面で女のタイプ聞いてくる人間に常識言っても無意味な気もする。

「東堂さん。俺って基本的に何すれば良い?」

 校舎の入り口が見えてきた。

 これから何していけば良い?

 東堂は高専は学校であり、斡旋する場所で仕事であると言った。

 任務を受けて目的地に向かい、呪霊を祓って、終わり。

 細かいことは補助監督がやってくれる。

 サポート体制であるようだった。

「お前、等級は?」

「四級」

 与えられた等級は四級。最低ライン。

 普通だなと言われた。

「総監部め、敢えて最低限にしたな。この呪力総量、どう見ても規格外だろうに。だが本人が無力では妥当か」

 ちぐはぐな半人前。

 一般人が呪術師になれと言われて、基礎も分からず放り込まれたのが連太郎。

 此処でイロハを学べと言われた。

「先ずは基礎の知識を座学で補え。実戦はまだ速い」

 いきなり現場は無理強いだろうと思ってたが、一安心。

 校舎に入って、廊下を歩く。

 在籍する生徒は皆先輩。

 同級生の一年は一人だけらしい。

「新田は今、長期任務で居ない……というか、奴は有能でな。そもそも高専に居る方が少ないぐらい激務で西日本をそこら中飛んでいる。反転術式で治癒できる教諭共々京都の補佐として、自慢の有能株だ」

「反転術式?」

 また知らない専門用語。

 清姫曰く、習得の難しい高等技術。

 そもそも呪力とは何か? からくどくど話を始める。

 ジャンヌとシャルロットも聞きながらついていく。

 歩いて行くうちに、談笑の声が聞こえる。

 緊張してきた。先輩しかいないって、つまり連太郎は一番役に立たない生徒という意味だ。

「連太郎さん、私達一度引っ込みますね」

「ええ。初対面で女性を侍らせるのは印象が悪いので」

 シャルロットとジャンヌがそう言うと、説明中の清姫も止めて戻る。

 一瞬で霧散するように光の粒子に変わって散った。

「ほぉ? こういう顕界の仕方か」

 興味深いのか東堂が消えた三人を見送り、無造作に扉を開く。

「集まってるなお前ら」

 先に入って、声をかける。

 全員がこっちを向いたようだ。

「爺さんの言ってた、五条悟の悪巧みの犠牲者が到着したぞ。……いいぞブラザー。入れ」

 その呼び方固定かよ、と思いながら入室する。

 ……数名の先輩がいた。

 綺麗な女子三名。糸目の男子に……。

「うん? ……うん?」

 眼を疑う。変なロボが制服着て混じっている。

 目をこすって見直す。ロボやん。

「……俺が気になるか。一般人と聞いていたが、この反応、本当に一般人のそれだな。まぁそうなるな」

 ロボが喋った。

「最近の科学力スゲえな」

「いや、これは呪術だ。科学では無い」

「マジかよ」

 呪術でロボ動くのか。尚更凄いな。

 思わず凝視すると、反応が新鮮なのか腕から武器も出るぞと言っているロボ。

「メカ丸。お前なら信用できる。基礎知識を教えてやれ」

「何故俺だ?」

 メカ丸? あだ名か?

 混乱する連太郎。

「東堂君、メカ丸に面倒なこと押しつけないでよ」

 こっちも凄い髪型の女子生徒が文句を言う。

 わら人形みたいな金髪の、なんだこの髪型。ぶっとい。 

「西宮、俺に指図するな」

「一般人なんてド素人じゃない。足手纏いになるだけよ」

 雰囲気が怖い先輩も言う。

 美人なのに尖った空気がする。

「……止めろ二人とも。東堂の指示は、メカ丸が一般人の感覚に近いからという判断だ。三輪もいいが……」

 糸目の男子が仲裁する。

 何だろう、教室内で凄いギスギスしてた。

「とりあえず落ち着こう皆。彼も完全に萎縮しちゃってるよ?」

 青髪の珍しい女子が漸く空気を緩和する。

 もしかして、この学校生徒同士で不仲……?

「ゴメンね、皆威嚇してて。よく分からないまま誘拐されたんだって? 私は三輪霞。貴方は?」

 あぁ、この人いい人だ。

 そう思う。呪術師ってキャラ濃いと思う中、この先輩は普通という空気がする。

「あ、どうも初めまして。七尾連太郎です。この度なんか変な奴に捕まって強引に拉致されました。細かいことも勝手にやられて逃げられない状況です。よろしくお願いします」

 丁寧に名乗って頭を下げる。

 すると……。

「うわぁ、本当に普通の人だ。態度も礼儀正しい」

「……やりにくいわね。霞よりも完全に普通の感性みたい。もう少し生意気で張り合いのある後輩かと思ったら」

「五条悟が連れてきたというだけで決めつけは良くないぞ、真依。一般人とは、こういうモノだ」

「俺を見て素直に反応に出るぐらい、この世界を知らないらしい。後輩の教育か……。まぁ、頼られて悪い気はしない。東堂、俺で良いならやろう」

 何で普通の挨拶でこんな珍しい扱いされるんだろうか。

 変な言動はしていない。至って普通のハズだが。

「七尾。俺は理由合ってこんななりだが、呪術師だ。メカ丸でいい」

 そう言うと近づいて挨拶してくれる。

 見た目こそマシンだが、中身は人だった。よかった。

「よろしくお願いします。……何か、腕とか変形しそうッスね先輩」

「可変機構は取り入れたいが難しくてな。……お前ロボットアニメ好きなのか?」

「ガ○ダムとかゾ○ドとか好きですね。メカ丸って聞いたことあります。昔やってたアニメでしたっけ」

「……俺の元ネタまで知っているのか。気が合う後輩が出来た。特に動物のマシンが好きな奴は少ない。お前、話の分かる奴だな」 

 ガッチリ握手する。

 趣味が同じ人は仲良くなりやすい。

 なるほど、この人もいい人だ。

「先輩はどの世代が好きですかゾ○ド」

「無論、初代のライガーだ」

「俺、ジェネシスです」

「そうか。ハヤテ、良いよな。あの疾走感とか最高だった」

「初代の重厚なストーリーには負けますよ」

 めっちゃ意気投合した。

 数分間、オタトークで盛り上がる。

 周囲が知らない同級生の趣味に驚く。

『もしもし、マスター?』

 控えから清姫が声をかけてきた。

 何か怒ってる。

(どうした?)

『隠し事をする人と意気投合は、良くないですよ』

(またか……)

 何時もの清姫の潔癖症だ。

 その逸話故に嘘と隠し事を毛嫌いする清姫。

 彼女のスキル……というらしい能力で、見抜ける。

 だが、今に始まったことでは無い。

 前から事あるごとにいちゃもんをつけて妨害する。

 現代において嘘も隠し事も必要なことだ。

 清姫は威嚇しているが、ジャンヌとシャルロットが宥める。

 放置で良い。出てくる前に二人が止めている。

「メカ丸、ロボットアニメ好きなの?」

 三輪が聞いてきた。同級生も知らないようだった。

「ああ、好きだな。術式運用においても知っていて損は無い」

「そっか……。今度の任務でお金に余裕あったらプラモデルお土産に買ってくるね」

 この二人は仲良さそう。

 良かった、いい人がいた。

 ……後はちょっと怖いけど。

「話し終えたかな? 私は加茂憲紀。君に言っては分からないだろうが、御三家の人間だ」

 糸目の先輩が丁寧に名乗ってくれた。

 普通に話の通じそうな人だが。

「御三家? ポケ○ンっすか?」

「……普通の人は御三家と聞くとそう言う反応するだろうね。いや、本当にこの呪術師の世界ではあるんだよ。御三家と呼ばれる三つの家系が」

「水と炎と草?」

「そこから一旦離れようか」

 理解できない連太郎に付き合う加茂。

 東堂が手早く補足する。要するに歴史のある良家だ。

 加茂、禪院、五条。この三つが歴史の長い家柄。

「先輩、実家が凄いんですね」

「……事情を知らない君は、そう言うと思う。うん、色々あるんだ。真依も御三家の一つだよ」

「ちょっと! 余計なこと言わないでよ!」

 真依と呼ばれた先輩がキレるように言った。

 地雷らしいので、察して黙る。

「そこ! 空気を読むな! やりにくいなぁ、もう!」

 実家のことで怒るなら、聞かれたくないだろう。

 言わぬが何とやら。

 言動で示すと理解の良い連太郎にぼやく。

「何よ。真面目な態度しちゃって。呪術師の世界を知らない癖に」

「ですんで、先輩達にご教授頂こうと……」

「うわ、何だろ。先輩って言われるの気持ち悪い。新田以外に居ないから違和感凄いわ」

「すいません、常識無いんですか?」

 何で初対面で毒舌食らわないといけないのか。

 思わず問う。

「真依ちゃんストップ。この子ホントに素人だよ。悪口止めようよ。可哀想」

「何で俺同情されてるんです?」

 この人も非常識か。

 毒舌と同情ってキャラ濃すぎるだろう女子。

「真依も桃ちゃんも。七尾君、唖然としてるよ?」

「霞、一般人ってどう接すれば良いのかな……」

「一般人って所謂喋る動物よね」

「真依!? 桃ちゃん!?」

 ああ、ダメな人だこの二人。

 ちょっと距離を置こうと思う。

「お前ら、その辺にしとけ。七尾、こいつらは呪術師に染まりきってる。俺と三輪がお前に知識面で伝授しよう」

「私も!? ああでも、分かるかも。心細いよね?」

 いや、心細いけど。メカ丸と三輪が頼りにしてるけど。

 申し訳ないと先んじて伝えて。

「京都校の先輩達って常識何処に忘れてるんです?」

 こっちも思ったことは言っておく。

 失礼通り越して無礼だろうこの西宮と真依と言う人。

 東堂もだが。

「あんた、ケンカ売ってる?」

「これはどう見ても真依が悪いよ!」

 懐からリボルバー取り出す真依にビビる連太郎。

 銃刀法はどうした。武装してるぞこの人。

「何、その顔。もしかして銃刀法? あのね、こんなか弱い女が武器無しでどうやって呪霊祓って言うのよ。東堂先輩みたいにフィジカルバカじゃ無いの私は。武装しないと意味ないわけ」

「あぁ、なるほど。猟友会みたいなもんですね」

「呪術師を猟師に例えるのはあんたが初めてよ……」

 ガックリ項垂れる真依。

 もう一般人には付き合ってられないと言った。

 帰るらしい。素っ気なく去って行く。

「待て真依、帰る前に見ていけ。ブラザーの術式を。……見て驚くと保証する。稀に見る、破格だぞ」

 腕組みして黙っていた東堂が笑う。

 術式を使えというので、皆の目の前でグラウンドオーダーを手動で手間だが起動する。

 すると。

「んなっ……!?」

「す、凄い呪力量……!? 乙骨君ぐらいある!?」

 非常識二名が驚愕する。

 術式起動すると。

「はーい、皆様初めまして!」

 代表のシャルロットがひょっこり出て来た。

 紋章抜きで、ただ感覚でそれ以上の術式起動を省いて喚んだ。

「誰!? 今、何処から出て来たのあんた!?」

「後ろから……媒介は影、じゃない。虚空からいきなり実体化した?」

 一同混乱する。有り得ない、と三輪は言った。

 メカ丸に至っては、硬直していた。

 グラウンドオーダーの分かっている範囲を説明すると。

「サーヴァント? 生身? 歴史の英雄?」

「影法師みたいなものって、意味不明過ぎるわ……」

 西宮も真依もお手上げだった。

 理解できない術式。聞いたことのない規模と内容。

「十種影法術さえ易々と超える……。これは東堂の言うとおり、御三家さえ置き去りにする。乙骨君の再来か」

 だが乙骨は五条の遠い親戚だと言う加茂。

 自慢気に言う東堂。

「分かるか、これがブラザーの術式。メカ丸、お前なら解せるだろう」

「ギリギリな……。天与呪縛、俺以外にも居たか」

 メカ丸もどうやら天与呪縛の類らしい。

「不便だろう。七尾、お前……自分では戦えないな?」

「はい。そういう縛りって聞いたので」

 術式特化の身体が代償。何も出来ない。

「ピーキーな子だね。でも、ええと……」

 西宮が言動が散々でゴメンと謝りながら言う。

 まさか、皆が知ってるような大英雄も喚べるのか?

「はい。ヘラクレスとかで良ければ」

「待って!? あんた大丈夫!? 半分神様になってる英雄よ!? 使役できるの!?」

 真依が無理だと言うが喚べるのだから事実として。

 ただ……。

「俺の術式、エピソードによって分かれるんですよ。クラスっていう分類で」

 要はそのエピソードによって召喚できる状態が違う。

 ヘラクレスは多すぎて、喚べる状況がバーサーカー。

「狂ってるってこと!?」

「狂っている状況のエピソードで喚べるんですよね。って言うか、それしか出来ない。ヘラクレス、狂ってない状態だと俺の負担が大きすぎて自滅するんですわ」

 理性のあるヘラクレスは強すぎて連太郎でも喚べない。

 他にもシャルロットなんかはサーヴァントの中でも最弱の部類だ。

 何せ英雄でも神様でも魔物でもない。

 一般人だった存在だ。

「私、知名度低いサーヴァントですので」

「よく言うよ、暗殺の天使。お前は、差し詰めアサシンと言ったところか?」

 不意に、マイナーだと自分でいうシャルロットの出自を言い当てる東堂。

 ギョッとするシャルロットと連太郎。

 初めて初見で当てられた。

「はわわ……。連太郎さんこの人、歴史通ですよ! 私みたいなマイナーすら網羅しているって!」

「落ち着けシャル、東堂さんがインテリなだけだ。俺達はマイナーだよ確実に」

 何も慌てる必要など無いが、ちょっとゴリラみたいな外見に対して造形が深い東堂だった。

「死ぬ直前、肖像画を描いて貰っただろう? 今じゃ美術館で飾られている。その程度の知名度はあるぞ、シャルロット・コルデー」

「私、後世でそんな扱いされてるんですか!?」

「結構人気らしいがな」

 本名まで知ってるとは。

 他は言われてスマホで検索して該当のシャルロットを見ているのに。

 よくもまあ、スラスラ出てくる。

「……ただ、シャルロット。お前がもしも、今こうして生を受けて、生前の己を愚行と言うのであれば。それは結果論だと、言っておこう。歴史は誰かが常に最善手と思ってやっても悪手になるのがザラだ。お前の行為もまた、その手の流れになった。それだけだ」

「……」

 シャルロットの気にすることまで見抜く東堂。

 この人、何者だ? と連太郎は怪しんだ。

「暗殺の天使……ああ、フランスのほうの出身だったのね」

 真依がスマホで検索して納得したように言う。

 外国人なのにその割に流暢な日本語喋るなとか言われた。

「術式の詳細は連太郎さんも私も分からないんです!」

「ついでに普段はここに清姫って子とジャンヌもいます」

 連太郎が普段、周囲の安全を任せる三人を言うと。

 絶句する真依に西宮と加茂。

 ジャンヌは流石に知っている。

「オルレアンの聖女様!? うわあ、凄いな! 今度一緒にお茶行こう七尾君! ジャンヌさんに会いたいから!」

「……興味深いな、ジャンヌ・ダルク。当時は神の啓示を聞いたと言うが本人に真意を確かめてみるか」

 ミーハーな三輪に、歴史を紐解くメカ丸。

 曰く、

「神の啓示……術式によって得た生の今でも得られるなら、俺は是非神託を聞きたい。今後のためにな」

 興味津々だった。

 こんな風に、若干アレなメンツに迎えられて。

 連太郎の呪術師の特訓が始まった。

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