ホモビにでただけで異象ハンターにされる男 作:ニコラス―NICORUTH―
ヘテロシティは毎日が異常、想像以上。それはそこに住まうみ
んながよく分かっている。
が、その日は誰が見ても、異常を超えた異常であった。
まさかラッコとテレビの間の子のような異象の群れが、街中で暴れ市民を脅かすなど、ネットでゲラゲラと笑っていた者たちには想像もつかなかっただろう。
「 おい、大丈夫か大丈夫か?何処か悪そう・・・ 悪そうじゃない? 」
「 悪くもないし。てか誰のせいでこうなってると思ってんの? 」
混乱の中、田所は再びその顔を見た。赤いメッシュの入った長髪。長い竜のような角。
キリッとした凛々しい瞳。
彼シャツの下はパンツ一丁、と見せかけてホットパンツを履いている。が、勃ってるのをみるにブラはしていない。
誰のせいで?と言われれば思い当たるのは自分だが、田所は真紅が何故、こうも顔を赤らめて息を荒げているのか理解に苦しんだ。
そういえば、昔の彼女も、こんな風に・・・
おっと、今は昔を思い返すよりも、この現状をどうにかしなくては。
襲いかかるタギドの百鬼夜行。
ラッコテレビの化け物、ある意味人類の負の象徴と呼ぶべきそれを一体一体迅速に切り捨てていく。
が、それ以上のペースで、隣の真紅が素手で殴り伏せていっている。
自分もやはり歳を取ったものだと改めて染み染み感じる田所であった。
時代は変わった。少なくとも田所が今より若いころには、彼シャツ着て出歩く女の子はそうはいなかった。
「 MURはん、今の子ませてますね・・・ 」
「 どうだっていいダルルォ!?そんなこと。 」
「 そうよ。アタシがなに着ようが勝手じゃん。 」
「 いいねぇ、その周りに流されない、芯の通った感じ。やっぱ界隈の将来は安泰だってそれ一番・・・ 」
「 そんなこといってる場合じゃない! 」
こんな惨事の中、カフェを閉めて現場に急行した翳が自身の異能で影を巧みに操って、ミーム異象の群れに大立ち回りを演じた後に田所のもとへダイナミックに着陸した。
「 浩二、やはり恐れていたことが起きてしまった。 」
「 でも早すぎぃ!じゃないすかね?
ミーム異象はせっかちだった・・・? 」
「 いや、別に可笑しくもないゾ。 」
「 どういうこと? 」
「 前のトマトデビルの件を踏まえれば、なにもおかしくは・・・また来たぞ! 」
さらに追加で現れる、異形のタギドの群れ。ハンターたちはひたすらそれらの対処に追われる。
切り刻み、撃鉄を打ち鳴らし、打撃を叩き込み、高圧水流で撃ち抜く。
しかし、まるで消せば増えるとばかりにタギドは次から次へと湧いてくる。
レインマンを思わせる、八頭身に腹立つテレビ頭の"タギドマン"。
デュラハンそっくりなあのカッチョイイメットがくそダセェドラム缶テレビに置き換えられてしまった
"デュラタギ"。
王道を征くファンタジーの大御所に、タギドの下劣なフォルムが混ざって台無しになってしまった"タギドラゴン"。
その他、おおよそこれを作った人物の正気を疑わざるを得ない悍ましい化け物たち。
そう、これらはすべて、人間が広げたミームから生まれたのである。
面白半分で生み出した存在が、今、自分たちをエンタメとして消費していた人間たちに牙を剥き始めている。
街を炎で焼き、大鎌を片手にバイクを疾走させ。
虚構が現実になっていた。
突然姿を現す。なんの前触れもなく。0人の想像から出現し、百の災いを齎す。これもまた、異象が異象たる所以であろう。
人がタギドを見る時、タギドもまた私たちを見ていたのかもしれない。
このタギドの群れは、暇を持て余した人間たちの罪、そしてそれを咎める罰のようである。
これらを対処しながら、翳や田所は会話を続ける。
「 レクイエムの時もそうだった。アイツがトマトジュースの自販機を破壊する映像が出回って間もなくトマトデビルが現れた。
Aiタギドも同じだ。現実にあったことか、それに近しい面白おかしくデザインされたしょうもない創作かの違いというだけだ。 」
「 んでもトマトデビルってぇ、一体だけだったんだろ?
このタギドたちバリエーション豊かすぎやしませんかね? 」
「 それもミーム異象の特徴なのかもしれない。知れ渡れば知れ渡るほど、影響力を強める。
Aiタギドはあまりにも広がりすぎた。だからこんなにも実体が多くなっている。 」
「 Aiタギドの種類だけ、この異象も増えていくということかゾ? 」
「 そうなるな。だからトマトデビルの時よりも被害もこうして大きくなっている。放置していれば、タギドはより増加し、進化し続けていくだろう。 」
「 ならどうすればいいんすかね? 」
「 手はないわけじゃないゾ。なぁ、翳? 」
「 そうだしんのすけ。 」
「 んにゃぴ・・・ちょっとよくわかんないっすね。
少し説明して、どうぞ。 」
「 そうしたいところだが・・・ 」
「 そうしたいところだが? 」
「 真紅が危うい。彼女はまた、自分の"異能"に呑まれかけている。 」
田所はこの時、真紅というのが、あの年若い女の名であることを察した。
そして、彼女の姿を目で追って探すと・・・
「 うおぉぉぉぉぉおおおおお!! 」
『 タギィイ!? 』
いた。しかしその姿は大きく変わっていた。
あの黒髪は白くなり、あの凛とした様子から打って変わって、その凄まじい暴威を敵味方問わずに振るい始めている。
「 真紅! 」
「 わからないのですか!?私です、イロヒです! 」
「 暴走してる。シンクロ率400%。 」
その周辺のタギドたちが赤い塵へと還っていく中、イロヒとレクイエムはその猛攻を必死に凌ぎ続けながら、友人へ、仲間へ訴えかけている。
しかし、あの様子では届きそうにない。
現実は非情である。
「 があぁぁぁああああああああ!! 」
そこにいたのは、一匹の竜だった。
それを冷静に見つめるものが田所の他にも一人。
「 あれがアイツの異能ゾ。身体を劇的に強化する。デメリットとしてああして暴走する。 」
「 MURはん、オレを呼びつけたのってAiタギド関連だけじゃないよな? 」
「 そうだよ(肯定)奇しくもあれは、お前と同じタイプの異能だ。
お前なら、あいつをどうにかできるかもしれない。
それも兼ねて相談しようとケツピン亭にさそった矢先に、この異象災害ゾ。 」
「 あいつ、溜まってんなぁオイ。ひたすら暴れてるが、タギドへの殺意がパないってはっきりわかんだね。 」
「 真紅もAiタギドを鬱陶しがってたからな。無意識のうちに、鬱憤を晴らそうとしてるんだろう。
・・・田所。 」
「 言われるまでもないっすよMURはん。 」
「 あの子はオレに任してくれよ。 」
"野獣"は、その竜へと、鋭い眼光を向けた。
次回、魔竜と化した後輩vs野獣と化した先輩