こういった物語の続きを誰かに書いてほしいので、もし読んで面白そうだとか、続きが浮かんだという人は続編を書いてください。
青空広がる心地よい天気の下を、その反対側の世界で『生きる』……否、動く存在であるアンデットが闊歩する都市の名はエ・ランテル。
王国との戦争とも呼べない虐殺を終え、アインズ・ウール・ゴウンにより支配された城塞都市エ・ランテルで今回の事件は幕を上げたのだった。
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「は~あぁ、聖王国での一件が問題無く片付いたとはいえ、長期間国をほったらかしにする王様なんて前の世界でも考えられないよな」
溜息を吐きながら、目の前の山のような書類に手を伸ばす。いくら片付けても減らない書類の束に、疲れを感じないこの骸骨の体に感謝しながら作業を続けていると、不意に扉が開き、アルベドが勢いよく部屋へ飛び込んできた。
「アインズ様!突然の報告に失礼します」
アインズは仕事中の机の前に立つアルベドは深く頭を下げさせ、報告を促した。突然の入室には一瞬驚いたものの、すぐに精神が沈静化され、支配者らしい態度で報告を受け取る。
「それで、どうしたんだアルベドよ?お前が慌てて入って来るとは珍しいな?」
「はっ!では報告いたします。エ・ランテル前にて所属不明の軍隊が攻撃を仕掛けて来ました」
「……っは?」
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時は少しばかり遡り、エ・ランテルの城門前にて入場を待つ商人達の前に、突如として巨大な“門”が出現した。
その門からは様々な種類のモンスターと古代ローマ帝国風の歩兵達が、列をなしている商人に向かって襲いかかってきた。
「進めぇ!!!蛮族共を皆殺しにしろぉぉぉぉ!!!」
「「「「うおおおぉぉぉぉ!!!!」」」」
馬に乗った他の歩兵よりも着飾った男がそう怒声を上げると、モンスターと歩兵が牙と剣を商人に向けて走り出す。
突然の出来事に驚く者はいても、襲い掛かってくるモンスターや歩兵の襲撃を恐れる者はいなかった。なぜなら、このエ・ランテルにはそれ以上に恐ろしい存在がいるからだ。生ある者にとっては最も忌み嫌うべき敵でありながら、この街では罪なき者にとって絶対の守護者であるあの騎士がいるのだ。
「グオオオオォォォォ!!!!!!」
生者ならば本能から恐怖を抱くこの雄叫びに何事かと困惑する謎の集団に、城門の方から死を纏った騎士が飛び出してくる。
「な、なんだ!?蛮族共は死を手懐けているのか?」
先程怒号を上げて指示を出した男がそう呟くと同時に、商人達に向かって襲いかかってきたモンスターや歩兵は皆すべて死の騎士の持つフランベルジュによって切り裂かれ、反対の手に持つタワーシールドによって弾き飛ばされていった。
「うおおおぉぉ!凄い!流石はアインズ・ウール・ゴウン魔導王様の騎士だ!」
「普段は恐ろしいもんだが、こういう時はやはりどんな騎士団よりも頼もしい!」
「はははっ、全くですな」
奇襲による突然の攻撃にもかかわらず、どう見ても戦いとは無縁そうな商人共は高笑いし、謎の軍隊の兵達は死の騎士によって見るも無惨な死体に変えられていく。
更に恐ろしいことに、その仲間の死体が立ち上がり、味方だった者たちに襲い掛かるのだから、ここが地獄なのかと敵は錯覚してしまう。
「て、撤退だぁ!総員すぐさま撤退し、王にこの事をお伝えするのだ!」
撤退の指示が出るや否や、兵たちは一斉に動き出した。誰もが死の騎士と、その手でゾンビに変えられた元仲間の亡骸から逃げ出したかったのだ。
我先にと門へ駆け出す兵たち。あの死から、一歩でも早く遠ざかりたかった。あの門を越えれば助かる──そんな根拠のない希望にすがらなければ走れないほど、わずかな時間で彼らの心は徹底的に打ち砕かれていた。
「くっ、栄光ある帝国兵である我々がこのような敗走を許すとは!?」
味方に撤退の指示を出した後、すぐさま軍隊の隊長と思われる男は馬を門の方向に向けて走り出させる。
「おや、もうお帰りになられるのですか?」
突然耳元で囁く男の声に、振り返る。けれど、後ろには誰もいやしなかった。
「なんだ、幻聴か?いかん、このことを陛下に伝える前に精神がイカレるなぞ許されることではないぞ!」
頬を叩いて気をしっかり持とうとする。だが、またもや声が耳元で囁かれる。
「ほう、その陛下とは誰なのか非常に気になりますね?」
また先ほどの男の声だ。先ほどと同様に後ろを振り返るも、誰もいやしない。だが、確信はした。目に見えない何者かがすぐそばに近づいていると。
「何者だ!?正々堂々と姿を現せ!姿を隠している所をみると、よっぽどの臆病者か卑怯者のどちらかか!?」
あれほどの化け物を飼いならす国だ。この声の主も、きっと常識の外にいる化け物に違いない。
それでも、今ここで敵の正体を見極めなければ帝国の未来に関わると判断し、思い切って挑発してみる。
「ふぅ~!ふぅ~!」
腰に下げた剣に手を添えると、カチャカチャと金属がぶつかり合う音が耳に届く。今度はどこからだろうと辺りを見回すが、やはり誰の姿もない。
いや、この音は自分の腰元から響いていた。ふと視線を落とすと、剣を握る手が小さく震えているのがわかった。
この恐怖はあの死の騎士によるものなのか、それとも、先程から聞こえる謎の男の声によるものなのか判断がつかなかった。
息が乱れて苦しい、冷や汗も出てきた。一刻も早くこの場から逃げ出したい。幼子のように、怖いものから涙を流して悲鳴を上げながら母親の元へと走り出したかった。
それでも、今日という日が来るまでの間、彼は帝国兵として、帝国に生きる民として、国の為に死ぬことを誇りとするという教えを受けて生きていたのだ。
だからこそ、彼は愚かにも万が一の希望を逃し、死よりも恐ろしい地獄への片道切符を手に入れてしまった。
「どうした、返事をしてみせろ!それとも、我ら帝国に恐れをなして逃げ出したか!?」
声はすれど姿は見えず、何もしてこないことに不思議さを覚えつつ、もう一度挑発する。もし本当に逃げくれていたなら、彼にとってどれほど嬉しかっただろうか。
しかし現実は甘くない。その挑発に応えるように、姿なき化け物がついに動き始めたのだ。
「ふふふ、お待たせして申し訳ございませんでした。私の上司にあたる御方に報告と今後の動きの指示を受けていたものですから」
「なに?」
御方?この化け物共を支配しているのだ、きっと想像も及ばない化け物なのだろう。
「あなたは幸運ですよ。ただの人間でありながらかの栄光の地に足を踏み入れることが出来るのですからね。まあ、お代は貴方の全てになりますがね」
ケタケタッ!と姿の見えない声は悪魔のような笑い声(実際に悪魔かもしれない)を上げている。
「くっ!馬鹿にするな化け物め、何が栄光の地だ。貴様らのような奴らの自慢するような地なんぞ虫も湧かぬような薄汚れた下賤な場所であろう!」
言ってやった。私は言ってやったぞ!まるで御伽噺の英雄にでもなったような気分だ。恐ろしい姿の見えない悪魔の言葉に耳を貸さず強き心で言い返してやった。
あの姿の見えない声も私の勇ましい心に怯えたのか何も言い返してこない。つまり、奴らはこの私の英雄が如き姿に恐れをなしたのだ。
その証拠に、先程まで暴れ回っていた死の騎士や元仲間であったゾンビも動きを止めている。
「ふふふ、どうした。我が図星を突かれて焦ったか?」
周囲の様子をうかがいつつ、勇気という名の蛮勇を見せた男は、偽りの勝利の笑みを浮かべて剣を天に掲げ、挑発を続けた。
「どうした!?俺の勇気に圧倒されたか?いいか、今回は様子見に過ぎん!!次の進行では、我が帝国の──」
捨て台詞を吐いて立ち去ろうとした男の喉が、次の瞬間、まるで大男に掴まれたようにぐっと押さえ込まれた。
そのまま、訳も分からないまま宙に持ち上げられると、騎乗していた馬は泡を吹いて倒れ、見えないナニカがゆっくりと姿を現し出した。
「その口を閉じろ。下等なニンゲンが!!!」
「っ──!!?」
その声は、ついさっきまで耳元で囁いていたものだった。だが、そんなことなどどうでもいいと思えるほど、目の前に現れた異様な存在に、男は恐怖のあまり失禁した。
人間でもなければ亜人でもない。肌は鱗に覆われ、目は燃えるように紅く、何よりその背丈は男の三倍はあった。
そんな存在が怒りに燃え、自分の首を掴んで締め付けている。生殺与奪を完全に握られた状況で、恐怖に打ち勝つだけの心の強さを男は持ち合わせていなかった。
「貴様は至高の御方々の作り上げし、栄光の地を侮辱した。その罪は万死ですら生温い。貴様の持つ情報を全て吐かせ、死すら慈悲であると理解するほどの生き地獄を味あわせてやろう」
その瞬間、男は自分の行く末を言葉ではなく魂で悟った。
今にも情けなく泣き叫び、子供のように命乞いしたい気持ちで声を出そうとするが、首を掴れてまともに声も出せない。
そうして、死の騎士に殺され、呻き声しか上げられなくなった元部下の声を耳にしながら、男はその場で意識を失った。
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「以上が、エ・ランテルの城門前で起こった事件の一部始終です」
「そうか。報告ご苦労だった。しかし、帝国か……」
最初は、まさかジルクニフが属国化を提案して油断しているところを奇襲した?と考えもしたが、デスナイト一体にやられる程度の軍隊を差し向けるとは思えなかった。
更に、報告を聞けば、エ・ランテルの城門前に出現した門は転移の力を持っており、ここから遠く離れた地に繋がっているらしい。
だとすれば、帝国とはバハルス帝国とは別の帝国なのだろうと、アインズの頭でも理解できた。
「それで、その捕らえた兵士から情報は吐かせられたのか?」
「はい。ニューロニストが吐かせた情報によると、どうやら敵は国名を持たず、ただ帝国と呼ばれ、ヒト種至上主義を掲げ、他の種族を排斥している国のようです」
「ヒト種至上主義?下らんな……」
その時、アインズの脳裏に、かつてのユグドラシル時代で流行していた異業種狩りを思い出し、思わず不快感から溜息を吐く。
それを間近で見たアルベドは、不愉快そうにアインズの言葉に同意する。
「ええ、まったく。下等なニンゲン如きが、自らを至上などと謡うなど、身の程知らずにも程がございます」
アルベドは怒りを隠すことなく、黒い翼を僅かに震わせた。
その様子に、アインズはアルベドが自分の言葉に過剰反応したと感じ、少し焦りつつもなんとか話を修正しようとした。
「落ち着け、アルベド。感情的になるな。……それで、敵の規模と力量はどれほどだ?」
「はい。ニューロニストの拷問により判明した情報では、バハルス帝国と同規模かそれ以上、そこに従属する衛星国家がいくつか存在しているそうですが、これといった脅威となるような存在はいない可能性が高いと思われます」
「そうか……。だが、油断はするな。敵が弱いといっても、ワールドアイテムや我々にとって未知の魔法や兵器が存在する可能性がある。無暗に敵対することは避けよ」
「かしこまりました」
アインズの指示に、アルベドは深々と頭を下げて了承の意を示す。
「それと、門の調査を急げ。場合によっては──こちらから“訪問”する必要がある」
アインズの言葉に、アルベドは恍惚とした笑みを浮かべ、再び深く頭を下げた。
「御意。アインズ様の御威光を、異世界の愚物どもに知らしめましょう」
その瞬間、アインズは心の中で「いや、別に威光を知らしめたいわけでは……」と困惑したが、もちろん口には出さない。
やがて、勢いづく帝国に死の支配者が現れることになるとは、この時の帝国は夢にも思っていなかった。