警官さん達は、真っ暗な庁舎に取り残された子供の姿に大層びっくりしたようだった。
「なっなんてことだ!?君、ここは危険だ!」
「ぼく、お父さんとお母さんと逸れたのかい?おじさん達と一緒に安全なところへ行こうね」
わあわあと刑事さんに囲まれて、私はびっくりしてオロオロと彼らを見上げた。
随分と優しい刑事さん達のようで、私へと気遣いに満ちている。
だがそうも言っていられないのが現状だ。
私はずっしりパンパンのリュックを掲げて眉を下げた。
このリュックは伸縮性抜群で、中のものに応じていい具合に膨らむのだ。
そのせいではち切れそうな見た目になってしまっている。
「すみません。このリュックの中に爆弾が入っているんです。上に持って行くわけにはいかないので、爆発物処理班の人」
「そうかそうか。それは怖いなぁ。ところで、その背中の飾り可愛いね。お母さんがつけてくれたのかな?」
「飾りではなく本物……いえ。それはともかく。これは4F、6F、8Fの各男子トイレの清掃用具入れで発見しました。時限式で、爆破は15分後。早く対処をお願いします」
「へ………」
信じてもらえないようなので、論より証拠とバッグから爆弾を一つを取り出した。
チッ、チッ、と鳴り響く赤いランプの重厚感は暗闇で見ると倍増しに見えた。
すぐさま警官の顔が青くなる。
これ、ちゃんとチッチッってカウント音を後付けしてるらしいんだよな。
あった方が臨場感があるとのことで、裏サイトでも作り方としてカウントオンの付与を推奨してるのだとか。
変な臨場感を付けんでくれないか。
絶句する警管さん達の後ろから、佐藤刑事が駆け寄ってくる。
「どうかされましたか!?」
「佐藤警部補!それが…この子が爆弾を発見したと言ってこれを見せて……」
「空君!?一体どうしてこんなところに!」
私はぺこっと頭を下げて佐藤刑事に挨拶した。
「コナン君が、警視庁の中にまだ爆弾が残っていると話していたので、独断で高木刑事の力を借りて乗り込んできました」
「コナン君が!?それが見つけた爆弾なのね」
「はい。まだこの階以降は探せていません。爆弾は全て男子トイレにあったので、そこを重点的に調べた方が良いかと」
「分かったわ。ありがとう空君」
どうでもいいが高木刑事の名前出したのに反応したのはコナン君のワードだけか。
悲しいね。
鉄火場ではコナン君のワードの方が万倍大事なのはわかるけど。
周りを囲む刑事さん達が困惑にオロオロしている。
「あの、佐藤警部補…?」
「この子は東都タワー爆破事件で爆弾解体に立ち会った子よ。賢いし、信じていいわ」
「なんと…!」
刑事さん達がざわめいて「怖かったろうに!頑張ったな君!」「凄いぞ!」と純粋に褒めてもらえて私もニヨニヨである。
ほんま優しい刑事さん達やでぇ。
「でも、どうやって中へ?崩れた入り口の隙間でも見つけたの?」
「まあそれは追々。それより、このスマホをどうぞ。これなら生きてます」
「!!!私たちの通信機器がダメになってたの、知ってたの?」
「高木刑事が電話が繋がらないと言ってたので。どうやら公安案件で、電子機器をダメにする軍事機密をテロ組織が握ってる話を小耳に挟んでいました」
「コナン君から聞いたの?」
「はい。テロ組織自体は公安と組んでコナン君が押さえてるので、そっちは心配いりません」
「よかったわ。流石コナン君」
魔法の言葉、コナン君。
コナン君なら何知っててもおかしく無いみたいな風潮マジで面白いんだよな。
いけすかない公安もコナン君に首輪嵌められてるんなら大丈夫みたいな安心感があるらしい。
どうやら爆発物処理班の人はまだ警視庁の中にいたようで、彼らも工具を持って到着したらしい。
上から応援で駆けつけて、懐中電灯で照らし出し、「こ、これは!」と息を呑んだようだった。
「これだけあれば丸ごと警視庁を爆破できますぞ!こんなに重いものをよく運んだものだ。業者を装ったんだろうが……これは君たちが集めたのかね?」
「いえ。この子が一人で」
視線が私に集まる。
まあ、大人の体重より重かったが、私に取ってその程度である。
えへへ、と笑って誤魔化すことにする。
リュックを置くと、がちゃ、と爆弾同士が擦れ合う重い音が響く。
不可思議な沈黙が場に満ちた。
「ともかく、爆弾はおまかせしました。僕はこれで」
「待って」
むんずと掴まれて、そのまま佐藤刑事に背中をペロリと巡られる。
羽の付け根が顕になり、私はバタバタと暴れた。
「さ、佐藤刑事のえっち!!!」
「どういうこと?これ、直接体から生えてるみたいに見えるけど」
「なんか凄い発明です。ミラクルパワーも授かってます。とても凄い」
「ふざけてる?」
「ふざけてはいますが嘘は何一つありません。本当になんか凄い発明品です」
研究者たちのなんか凄い発明こと私の存在そのものである。
凄いぞーおぞましいぞー!!!
じとー、と見られて、私は「べ、弁護士を呼んでください!黙秘します!!」と叫んだ。
「よくそういう小賢しい被疑者いるけど、私たちはそんなに甘く無いわよ」
「当番弁護士ぐらいは許してください。あと勾留後は私選で妃弁護士呼びたいです」
「ますます小賢しいわね。そういうの、毛利探偵が逮捕された時に学んだの?」
「はい。勉強になりました。ドブネズミより賢く20日の勾留期限まで黙秘を貫いてやりましょうとも」
「どう見ても不必要な学びをしてるように見えるけど」
佐藤刑事は重くため息をついて首を振った。
「言いたく無いってことね。ならいいわ」
「え、いいんですか」
「事件が終わった後こってりしぼるから、それまで待ってあげるって意味よ」
「優しい……コナン君と相談して設定固めますね」
「そういうのを刑事の前で言わない!!!」
わしゃわしゃと撫でくりまわされて、私はクスクスと笑った。
佐藤刑事もつられるように笑顔になって、囁く程度に言葉を落とす。
「ありがと。このままじゃ私たち、死んでたかもしれないもの。貴方のおかげで助かったわ」
「ふふ。僕が助けられた命があったなら、それより嬉しいことはありません」
というわけで私は猫の子のように連行され、上に連れていかれたのだった。
爆弾は簡素な作りだったようですぐに解体され、ヴェスパニア鉱石と共に証拠品として保管される運びとなった。
時間制限さえなくなってしまえば、あとは順に高所作業車やヘリで救助すればいいだけだ。
人数が多いため手間取ったようだが、私のスマホで外との連絡が取れるようになったのも大きかったらしい。
外と合わせて点呼をして、警視庁爆破事件は無事に幕を閉じたのであった。
受付にいた刑事と民間人の多くが犠牲となったその事件にて。
私の存在は伏せられる運びとなった。
工藤新一パワーでもあるし、高度に政治的なものでもあったので。
少なくとも事件現場である警視庁は命令拡散機が運び込まれ、緊急でその後全職員に命令拡散機の暴露が義務付けられたが。
そして高木刑事は呼び出され、頭が痛い顔をした目暮刑事に懇々と説教されて。
私も「民間人が無茶しすぎ!!!」と凄く注意されたし、コナン君に「そこまでしろとは言ってねぇよ!?!?」と驚愕されたのだった。
・その頃のジン
「………………」
「あの野郎!兄貴がどれだけ傷ついたかまるで分かってねぇ!!」
「………」
「ジンの兄貴のこと後回しにしやがって!みろよこのシュンとした悲しそうな様子!許せねぇ!」