日に2回投稿復活の兆し。
今日はみんなで海水浴だ!
昨今の海水浴なんて危険の代名詞だ。
鮫より獰猛な海手足の存在もそうだし、海水にネバダ寄生虫が混入している恐れだってある。
特に海手足は普段人間を食う機会が少ないゆえに凶暴だ。
勢いよく漁船に乗り込んで漁師を襲ったり、ワニのように海辺に乗り上げて歩行者に喰らい付いたり。
幸い日本は比較的海手足が少ないが、多い地域では漁に出るのも命懸けな日々が続いていると言う。
だが、それでは成り立たぬのが地元産業である。
地元企業連合が頑張って海水浴場周辺に32台の命令拡散機を導入。
地域振興も兼ねて、仮面ヤイバーのイベントも招いて新装オープンしたのがこの海水浴場である。
日本の財力を感じさせるお話である。
さて、私たちが向かっているその静岡県の海水浴場では、前述した通り仮面ヤイバーコラボイベントが開催中。
特設ステージもあって、来客には記念ヤイバーカードが配られるらしい。
それに子供達の目は釘付け。
仮面ヤイバーコラボ商品を欲しがったため、私たちはしばしの旅行を楽しむことになったわけである。
海にはたくさんの人だかりができていて、ギラつく陽光も仮面ヤイバーショーも実に盛り上がっている。
先日はTV局もやってきていて、私もTVでその設備を見たクチだ。
後ろでは、コナン君が子供達に解説してやっているようだ。
「あの定間隔で浮いてるのが命令拡散機だとよ」
「おー、なんだかおしゃれでSFみたいですね!」
「光彦!泳ごうぜ海!海!ひさしぶりだぜ!!」
「あっあゆみも!!!上がったらヤイバートルネードウィンナーね!」
ヤイバートルネードウィンナー。
渦巻きソーセージにマスタードでYって書いてあるだけの観光地おやつだ。
コースターもついてきて、コラボ価格でぼったくってくる。
子供達は食べ終わると、すわ海に行かんといきりたったらしい。
だだだだだ、と皆して勢いよく走りだした。
元気で良いことだ。
まったりパラソルを設置しているのは若狭先生だ。
コナン君達の小学校の先生で、正直私とは縁がない。
若狭先生はそこそこに険しい面持ちで、思い詰めたように海の向こうを眺めている。
さもありなん。
彼女は黒の組織に復讐を誓った復讐者。
その組織が先日自分の預かり知らぬところでほぼ壊滅状態になったんだから。
そりゃ物思いに耽るぐらいはするだろうさ。
そっとコナン君に声をかける。
「大丈夫ですか、あの先生。確か灰原さん狙いだったと伺っていますが」
「問題ねーよ。そのために昴さん呼んでるんだしな」
「はい、呼ばれて飛び出て昴です。コナン君のお呼びとあらばどこでも」
ニュッと後ろから姿を現したのは赤井さんである。
ニコニコ演技だと思うと違和感ありまくりの笑顔を作り、ダブルピースを蟹さんでチョキチョキさせた。
コナン君が胡乱な表情でしょっぱい顔をする。
「昴さんそんなキャラだっけ……」
「意外と冗談を言っても良いと彼が教えてくれましたので。ねぇ空君」
「はい。かっ飛ばしていきましょう」
私と赤井さんはおふざけ仲間だ。
赤井さんも生来愉快な人なのだが、口が意外と重くて思ったことを口に出さない人だった。
だからこそ私との会話のキャッチボールが生きてきたわけで。
今。昴さんは弾けた。
そう言うことである。
「悪い相乗効果が生まれている…!」とコナン君が頭を抱えつつ、私も一緒になってダブルピースをした。
画面外で頑張ったよ!我ら馬が合うのだ!
なお、内なるあむぴは相変わらず「そこのクソふざけたFBIにアッパーカットを決めろ、今すぐにだ」と私に凄んでいる。
あむぴ荒ぶりすぎじゃんね。
とはいえ、いくらなんでも私の海水浴は危険のためお留守番である。
幼生をお漏らししたら洒落にならん。
というか羽がどうしようもねぇ。
パラソルの下に可愛らしいクマさん模様のブルーシートを敷きつつ、昴さんが腰を下ろした。
「せっかくなのでトランプでもしましょうか」
「あら、いいですね。でもいいのですか?」
若狭先生がうっすらと笑って昴さんの隣に座る。
「真夏の浜辺でハイネックの方が、そんなに長時間いたら汗でぐっしょりとして、その顔の皮膚がずれてしまわないかと心配です」
「ご心配には及びませんとも。長袖長ズボンで手足の傷跡を隠すあなたも…相応に暑さには弱そうだ」
「僕この空気でトランプやるんです?一人で海の家で涼んでちゃダメですか?」
ギッスギスのギスなパラソル下はここだけ氷点下5度とかそう言うアレ。
ははは…ふふふ…と笑う二人の間で私は重いため息をついた。
仲良くしてね!!!!
「あの、若狭先生が被害者だということを想定して話しますね」
「…ええと?」
「組織はトップを除いて丸ごと全部公安が飲み込みました。余り物は残ってないので諦めてください」
「……………」
私に刺す視線が突き刺さる。
トランプを取り出してバラバラと手の中で消したり出したり、気ままにマジックを見せた。
「僕は一応被害者の会の所属で、被害者の会が公安と協力して今回の大捕物を成し遂げた形です」
「……なら、私も入れてもらえないのかしら。きっと力になれるわ」
「いえ。目的を達したので既に会は解散しました。タッチの差でしたね」
ベルモット達は司法取引ということで現在公安と調整中だ。
キュラソーやらアイリッシュやらも同じく。
とんでもなくハイスペックな人材ということで、現在この先のことを考えている最中である。
若狭先生の視線がぎょろりと私を品定めしている。
打算や損得計算が行われているのだろう。
「残念だわ。なら、仕方ないわね」
「余り物は残ってないと言ったはずですよ。下手に動けば、あとは無意な争いが起きるまでです」
「そんな怖い顔しないで。怖いことなんてしないわ」
「振り上げた拳をタダで下ろせるほど、復讐者というものは甘くはないでしょう?」
ぴたりと、彼女の指が動きを止めた。
細められる瞳、威圧感、殺気。
「ボウヤは、違うのかしら」
「さて。どうでしょうね。復讐は何も生まない、なんて下らないお為ごかしを言うつもりはありませんが」
これは後に引けない若狭先生と、それを止めたいが心情的に止める言葉のない私、と言う構図だ。
私はしゅるりとトランプを手の中に戻し、三等分した。
「配りました。ババ抜きをしましょうか」
「マジシャンの配った手札を信じろと?」
「所詮戯れ、コミュニケーションの一環です。その程度の逆境、食い破らねば組織に牙は突き立てられませんよね?」
「………そうね」
開始するのは復讐者達の全力ババ抜き煽り合い付きである。
一手ごとにブラフ付き、ポーカーじみた心理戦。
なんで海まで来てこんなことせにゃならんのか。
あーーーー胃が痛い。
早く帰ってきてくれ少年探偵団!
と、思っているうちに事件発生。
私がギスギス空気に胃を痛めている間に、凄まじい悲鳴が海水浴場にこだました。
どんな時でもあなたのお供に殺人事件。
今回ばかりは「この修羅場から逃れてよかった」と思う私なのであった。
・海手足被害
船という船を襲って壊して人間を食う。
特に小型船、漁船が襲われやすい。
舐めた若者が海に来ないか浅瀬で延々待ってみたり、遡上して釣り人を襲うはずがクーラーボックスで逆に殴り殺されたり。
海手足「狩りはたいへん!」
海手足「そのとおり!」
・赤井さん
自由に生きてる。
せっかくだし死んだまましばらく遊ぶか!!