【クロス】コードギアス 忘却のピーター   作:超高校級の小説家(笑)

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【皇女と蜘蛛】

◆ 

 

 

『クロヴィス皇子暗殺』という激震から間髪入れず、神聖ブリタニア帝国はエリア11へ次なる楔を打ち込んできた。 

第2皇女コーネリア・リ・ブリタニア。

 『ブリタニアの魔女』と恐れられる比類なき軍事の天才が、新たな総督としてトウキョウ租界へと着任したのだ。そして、その姉の影に隠れるようにして、もう一人の皇女――第3皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアもまた、密かにこの極東の地に足を踏み入れていた。

 アッシュフォード学園の生徒会室。

 ルルーシュは、窓の外を眺めながら静かに紅茶を口に運んでいた。

 視線の先には、庭の芝生をせっせと手入れしている用務員の少年、ピーター・パーカーの姿がある。

 (――しらを切り通すつもりか、ピーター・パーカー。あの日、スザクを救出した現場のカメラ映像、骨格の完全一致、そして手首から放たれた謎の繊維。君が『スパイダーマン』である証拠はすべて揃っている)

 ルルーシュの紫の瞳の奥にある光は、氷のように冷たかった。

 正体は割れた。スザクの無実が証明され、特別派遣技術部(軍)に戻れたことには安堵している。だが、この目と鼻の先にいる『最凶のイレギュラー』をどう処理するか。ギアスをかけて私の『絶対的な駒』にするか、あるいは――。

 ちなみに、テロ組織のメンバーである紅月カレンは、シンジュクでの心労か、あるいはスパイダーマンの素顔を目撃したショックからか、今日も学校を欠席していた。

 (……うわあ、ルルーシュの視線がさっきから超怖いんだけど! 窓ガラス越しなのに、背中に突き刺さるようなプレッシャーを感じる……!)

 ピーターは芝生を刈りながら、冷や汗を拭った。

 あの救出作戦の時、スーツがないせいで私服のまま飛び出してしまった。カレンには顔を見られ、仮面の男には間違いなく正体を感づかれている気がする、会ったことはあの時しかないけど。スパイダーセンスは鳴らないが、この学園にいること自体が、薄氷の上を歩くようなサスペンスだった。

 

◆ 

 

 

その日の午後。

 「ピーター、悪いが租界の中央区までお使いに行ってきてくれないかい? 会長からの頼みで、機材の部品をいくつか受け取ってきてほしいんだ」

 ルルーシュからそう頼まれた時、ピーターは深く考えずに学園を飛び出した。

 それが、ルルーシュが自分を監視し、その行動パターンや異能の出処を掴むための『罠』だとは知らずに。

 トウキョウ租界の賑やかな中央通り。

 ピーターが慣れない異世界の地図を見ながら歩いていると、突然、頭の奥でジリジリと強烈な警告音が鳴り響いた。

 (――スパイダーセンス!? 上から来る……!)

 ピーターがハッと見上げた瞬間。

 近くのビルの時計塔、そのはるか高所から、ピンク色の髪をした一人の少女が足を滑らせ、真っ逆さまに落下してくるのが見えた。

 「きゃあぁぁぁっ!?」

 「危ないっ!!」

 ピーターが身体をバネのようにしならせ、現場へと猛ダッシュする。

 しかし、ピーターよりも僅かに早く、現場を通りかかった一人の青年――枢木スザクが、その超人的な身体能力で地面を蹴り、宙を舞った。ガシッ、と空中で少女の身体を優しく抱きとめるスザク。

 しかし、落下の勢いは凄まじく、このままではスザクごと地面のコンクリートに叩きつけられる。

 「くっ……!」

 スザクが衝撃に備えて歯を食いしばった、その瞬間。

 「はっ、セーフ!!」

 横から飛び込んできたグレーのパーカーの影――ピーターが、スザクと少女の身体をまとめて両腕でガッチリと受け止めた。

 凄まじい質量と衝撃がピーターの肉体を襲うが、彼の超人的な筋力は、コンクリートを僅かに軋ませるだけで、その衝撃を完全に殺してみせた。

 「え……?」

 スザクが驚愕の目でピーターを見つめる。抱き合わされた状態のピンク髪の少女――ユーフェミアもまた、大きな瞳を丸くしていた。

 「君、君は……あの時の!」

 スザクはすぐに気づいた。フードの隙間から見える素顔、環境にそぐわない圧倒的なパワー。

あの夜、自分を助けてくれたあの少年だ。

 「あ、あはは、あの時の?何それ、それより怪我はない?」

 ピーターは少し誤魔化したあと二人をそっと地面に下ろし、照れくさそうに頭を掻いた。

 「はい、私は平気です。……ありがとうございます、お二人とも。本当に勇敢な方々なのですね」 

ユーフェミアはハットを直しながら、お淑やかに、しかし心からの感謝を込めて微笑んだ。その純粋な笑顔に、ピーターもスザクも思わず毒気を抜かれてしまう。

 「僕は枢木スザクといいます。君は……どうしてあんな高いところに?」 

 「私は……ユフィ、と呼んでください。ちょっと、実は私怖い人たちに追われてて。」

 クスッと悪戯っぽく笑うユフィ。

 「僕はピーター。ピーター・パーカー。ただの学園の雑用係さ。ユフィ?さん?怖い人に追われてるの?」

「ふふっ、冗談です。」

 

 ピーターとユフィの軽口に、スザクは嬉しそうに笑った。名誉ブリタニア兵であるスザク、怪しげな私服のピーター、あるいは「ニューヨーク出身」という歪な嘘をつく少年、そして素性を隠した皇女ユフィ。

 理不尽な身分制度が存在するこのエリア11で、3人は不思議な巡り合わせによって、租界の片隅で小さく手を結び合うのだった。

 

◆ 

 

 

夜の帳が下りたアッシュフォード学園。ルルーシュは自身の私室の鍵を閉め、暗闇の中で複数台のモニターを見つめていた。 画面に表示されているのは、昼間、自身が「お使い」を命じて租界中央区へ向かわせたピーターの移動ログ。端正な顔立ちを青白い光で照らしながら、ハッキングで強引に抜き出した租界交通管理局の監視カメラの映像データを、ただ一人で冷徹に分析していた。

 「……!?」

 再生された映像を見た瞬間、ルルーシュは息を呑んだ。

 画面の向こう、空から降ってきたピンク色の髪の少女を、名誉ブリタニア兵の枢木スザクが受け止め、その二人をさらに横から「グレーのパーカーの少年」

――ピーター・パーカーが、その人間離れした怪力でまとめて抱きとめていた。

 「ユーフェミア……! 馬鹿な、なぜユフィがエリア11にいる……!? おまけにスザクと、あのピーターまで……!」

 キーボードを叩くルルーシュの指先が、驚愕と動揺に僅かに震える。

 かつて本国を追われる前、幼き日の自分とナナリーを可愛がってくれた、数少ない心優しい姉妹の一人。それが、自分がマークしている『最凶のイレギュラー(スパイダーマン)』、そして軍に戻った親友のスザクと、同時に接触を果たしたのだ。

 ルルーシュはチェスの駒(キング)を指先で強く握りしめ、その紫の瞳に、激しい感情の炎を宿らせた。

 「コーネリアが着任し、ユフィが来た。……母さんの死の真相を知る、あるいはあの日の悲劇に深く関わる皇族たちが、このエリア11の盤面に引き寄せられつつあるというのか。……君はまたしても、私の過去の因縁の前に現れるか、ピーター・パーカー」

  新総督コーネリアによるテロリストへの冷徹な大掃除が始まろうとする中、誰からの報告も受けることなく、たった一人で闇の中から世界を覗き見るルルーシュ。彼の復讐の歯車、そしてピーターの「親愛なる隣人」としての責任の歯車が、ユフィという少女を媒介にして、さらに深く、複雑に噛み合い始めていくのだった。

ピーターにKMFを与えたほうがいい?

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