なお、この小説のライザーは、腰が低く、眷属と同じ目線でいる事を大切にする貴族です。
第19章 来訪者、来る。
レイナーレたちがリアス・グレモリーの仲間に加わってから数日。旧校舎のオカルト研究部は、以前にも増して賑やかになっていた。
「だから、俺のほうが強いって!」
「いやいや、ウチのほうが強いっす!」
兵藤一誠とミッテルトが、子供のような言い争いを繰り広げている。
「もう、二人とも!部室で騒がないの!」
部長席に座るリアスが、呆れた声を上げた。
「だって部長! こいつが俺より強いとか言うんですよ!」
「一誠が先に言い出したんすよ! ウチは事実を説明してるだけっす!」
「あらあら、二人とも元気ですわね。」
紅茶を手にした姫島朱乃が、くすくすと笑う。
その傍らでは、木場祐斗がカラワーナと武術について語り合い、アーシア・アルジェントはドーナシークと穏やかに会話していた。白音とギャスパーは、賑やかな部室を少し離れた場所から眺めている。
「・・・騒がしい。」
「で、でも、皆さんが楽しそうなのはいいことだと思います・・・。」
窓際に腰掛けた黒歌は、尻尾をゆったりと揺らした。
「平和にゃ。こういう時間も悪くないにゃ。」
「そうね。」
リアスも微笑んだ。
しかし、次の瞬間、黒歌の猫耳がぴくりと動く。
「・・・そろそろ、来るにゃ。」
「誰が?」
「フェニックスにゃ。」
その名前を聞いた途端、リアスの表情が引き締まった。
やがて扉がノックされ、銀髪の女性が入室する。長い銀髪を整え、青と白を基調としたメイド服と白いヘッドドレスを身につけた、隙のない立ち姿の女性だった。
「失礼いたします。お久しぶりです、リアスお嬢様。」
「グレイフィア!」
グレイフィア・ルキフグス。
サーゼクス・ルシファーの妻にして女王であり、リアスの義姉でもある。現在はメイドとしての役目を果たしながら、魔王の補佐を務めている。
一誠は思わず息を呑んだ。
「この人・・・、すごく強そうだ・・・。」
「一誠、聞こえていますよ」
「す、すみません!」
グレイフィアは小さく会釈すると、レイナーレたちへ視線を向けた。
「あなた方については、サーゼクス様から報告を受けています。現在は、リアスお嬢様に協力しているそうですね。」
「はい。私たちは自分の意思でここにいます。」
レイナーレが答える。カラワーナたちも静かに頷いた。
「承知しました。サーゼクス様も、皆様の意思を尊重されています。どうか、ご自身の選択を大切になさってください。」
その言葉に、レイナーレの表情がわずかに和らぐ。
ひと通り挨拶を終えると、グレイフィアはリアスへ向き直った。
「本日の用件は、ライザー・フェニックス様についてです。ライザー様は、リアスお嬢様と直接お話ししたいとお考えです。」
「・・・やっぱり来るのね。」
「はい。詳しいお話は、明日、直接お伝えになるとのことです。」
リアスは顔を上げ、毅然と告げた。
「先に伝えておくわ。私は婚約を受け入れるつもりはない。」
「承知しております。そのお気持ちも、必要に応じてお伝えいたします。」
グレイフィアは一礼した。
その様子を見つめながら、黒歌は窓の外へ視線を移す。
「未来が、また動き始めたにゃ。」
彼女の瞳には、まだ誰にも見えていない可能性が映っていた。
第20章 ライザー・フェニックス
翌日。オカルト研究部の部室に、赤い魔法陣が浮かび上がった。
炎を思わせる光の中から現れたのは、金髪に整った顔立ちの青年だった。
金の刺繍が施された深い赤紫色の上着に、白いシャツ、同系色のズボン、黒い靴。フェニックス家の貴族らしい華やかな装いである。
「久しぶりだな、リアス。」
「ライザー・・・。」
ライザー・フェニックス。
フェニックス家の上級悪魔であり、不死鳥の再生能力を備えた青年だ。
彼の後ろには眷属たちが控え、その中には妹のレイヴェルもいた。
ライザーはリアスの前まで進むと、丁寧に頭を下げた。
「突然の訪問を許してほしい。今日は、君と直接話がしたかったんだ。」
「婚約のことね?」
「ああ。ただし、君の意思を無視して話を進めるつもりはない。」
リアスはまっすぐに彼を見つめた。
「私はあなたと結婚するつもりはないわ。」
「・・・そうか。君の気持ちは分かった。」
ライザーは彼女を責めず、静かに頷いた。
「俺にもフェニックス家の人間として果たすべき責任がある。家同士の事情もあり、すぐにすべてを解決できるとは約束できない。だが、君の意思を聞かずに結論を押しつけることはしたくないんだ。」
リアスはわずかに目を見開いた。
「部長が嫌だって言ってるんだから、俺は認めないぞ!」
一誠が前に出る。
ライザーは彼を見て、穏やかに尋ねた。
「兵藤一誠君、だったな。君はリアスを大切に思っているんだな。」
「当たり前だろ!嫌がっているのに、無理やり結婚させるなんて納得できるか!」
「そうだな。大切な人の将来が、自分の知らないところで決められそうになれば、黙ってはいられないだろう。」
ライザーは一誠の言葉を否定しなかった。
「俺も自分の立場を簡単に投げ出せるわけではない。だからこそ、互いに納得できる道を探したいと思っている。」
一誠は戸惑いながらも、彼の言葉に耳を傾けた。
続いてライザーは、部室にいる一同へ頭を下げる。
「君たちがリアスを支えている仲間たちか。人から聞いた話だけで相手を判断したくない。よければ、君たち自身のことも聞かせてもらいたいんだ。」
「あら。ずいぶん丁寧な方ですのね。」
朱乃が微笑む。
「そう言ってもらえると助かるよ。俺一人で見えているものが、すべてとは限らないからな。」
ライザーはレイヴェルにも声をかけた。
「彼女たちについて、どこまで把握していた?」
「お兄様、事前情報ではリアス様の眷属を中心とした戦力だと聞いていました。堕天使の方々が協力していることまでは、詳しく把握できていませんでした」
「そうか。なら、こちらの調査が不十分だったな。」
ライザーは素直に認め、レイナーレたちへ向き直った。
「君たち自身の意思で、リアスを支えているんだな?」
「ええ。私たちは自分の意思でここにいるわ。」
レイナーレが答える。
「私も同じだ。」
カラワーナが頷き、ミッテルトも元気よく手を挙げた。
「ウチもっす! もう仲間みたいなものっすから!」
ドーナシークも静かに一礼する。
「私も、皆さんと共に歩んでいくつもりです。」
「分かった。君たちの選択を尊重するよ。過去に何があったとしても、それだけを理由に今の意思まで否定するつもりはない。」
レイナーレは、わずかに目を細めた。
「・・・私たちの過去を聞いても、同じことが言えるかしら?」
「必要なら話を聞いたうえで判断したい。ただ、最初から決めつけることはしたくないんだ。」
その言葉に、黒歌が尻尾を揺らす。
「ずいぶん素直に認めるのね。」
「自分の見落としを認めることは恥ではないさ。仲間に意見を聞かず、無理をさせるほうが問題だと思っている」
ライザーは眷属たちにも視線を向けた。
「帰ったら、皆の意見を聞いて作戦を練り直そう。俺が見落としていることもあるはずだ。遠慮なく意見を聞かせてほしい。」
レイヴェルは嬉しそうに頷いた。
「はい、お兄様。私も考えをまとめておきます。」
ライザーは黒歌の立場についても確認し、協力者であると知ると丁寧に頭を下げた。
「黒歌殿、失礼した。君の立場を正確に把握できていなかった。」
「別に気にしてないにゃ。」
「ありがとう。いつか、君がリアスたちに協力している理由も聞かせてほしい。」
「それは秘密にゃ。」
「ははっ。そう簡単には教えてもらえないか。」
最後にライザーはリアスへ向き直った。
「10日後、レーティングゲームで決着をつけないか?」
「・・・ええ。受けて立つわ」
「ありがとう。君の意思を変えさせるために、戦いで屈服させようとは思っていない。互いの力と信念を示す場にしよう。」
ライザーは眷属たちと共に魔法陣へ向かった。
一誠は拳を握りしめる。
「絶対勝ちましょう、部長!」《vib:1》
「ええ。みんな、力を貸してね。」
黒歌は窓の外を見つめた。
「・・・特訓が必要にゃ。」
第21章 一誠、ライザーに挑む
翌日、ライザーたちは再び旧校舎を訪れた。今回は顔合わせに加え、希望者による模擬戦も予定されていた。
ライザーの眷属の中から、1人の少女が前に出る。青い髪の小柄な少女で、手には長い棒を持っていた。
「彼女はミラ。棒術を得意としているんだ。」
「ミラと申します。よろしくお願いします。」
《vib:1》「兵藤一誠だ。よろしくな!」
一誠は挨拶を済ませると、ライザーを見つめた。
「お前、部長との結婚を本気で考えているんだよな?」
「ああ。だが、リアスの意思を無視するつもりはない。」
「だったら、俺と勝負してくれ!」《vib:1》
ライザーは少し考え、頷いた。
「いいだろう。ただし、これは模擬戦だ。互いに学ぶための戦いだということを忘れないで欲しい。」
「分かってる!」
ミラが棒を構え、一誠も拳を握る。
開始と同時に、一誠は勢いよく踏み込んだ。しかし、ミラは棒の長さを生かして間合いを保ち、彼の攻撃を巧みに受け流す。
一誠が懐へ入ろうとすれば、ミラは足運びを変えて距離を取る。焦って繰り出した一撃は軌道を逸らされ、一誠は体勢を崩した。
その隙を突かれ、棒で動きを制された。
「・・・これで終わりです。」
ミラはすぐに棒を引いた。
「お怪我はありませんか?」
「・・・ああ。大丈夫だ」
一誠は悔しそうに顔を伏せた。
ライザーはミラの技量を称えたあと、一誠にも声をかけた。
「最後まで立ち向かったことは立派だと思う。だが、今回の戦いには改善できる点もある。間合いの取り方や、体勢を崩した瞬間を振り返ってみるといい」
「・・・俺、弱いんだな。」
「今はミラとの間に実力差がある。だが、それは君に成長する余地があるということでもある。俺も最初から今の実力を持っていたわけじゃない。」
ライザーは一誠の目をまっすぐに見た。
「敗北から何を学ぶかが大切なんだ。」
そのとき、黒歌が一歩前に出た。
「今度は私が見せてあげるにゃ。」
ミラはライザーを見た。
「私も、黒歌さんの動きを学びたいです。」
「分かった。ただし、危険だと感じたらすぐに止めよう。」
ライザーの言葉を受け、ミラは再び棒を構えた。
鋭い一撃が黒歌へ迫る。
しかし、黒歌は最小限の動きで攻撃を受け流し、相手の力を逃がした。
体勢を崩すことすらなく、涼しい顔で距離を取る。
「力任せに受け止める必要はないにゃ。相手の動きと力の流れを見れば、少ない動きで対処できることもあるにゃ。」
「なるほど・・・。勉強になります」
ミラは真剣な表情で頷いた。
ライザーも感心したように黒歌を見る。
「ミラにとって、貴重な経験になった。黒歌殿、もしよければ、彼女に助言をいただけないだろうか?」
「いいにゃ。特訓のときに教えてあげるにゃ。」
「ありがとう。俺からも、ミラと一緒に学ばせてもらいたい」
黒歌は一誠へ向き直った。
「一誠。負けたことは悪くないにゃ。何が違ったのかを考えて、次の努力につなげることが大切にゃ。」
一誠は拳を握り直した。
「俺、次はもっと強くなります!」
「そうにゃ。その意気にゃ。」
ライザーも頷く。
「次に手合わせをするときは、俺たちも楽しみにしているよ。」
一誠はまだ悔しさを残しながらも、力強く顔を上げた。
「次は、もっと食らいついてやるからな!」
第22章 グレイフィアが見たもの
黒歌とミラの手合わせを、少し離れた場所から見つめていたのはグレイフィアだった。
ミラの棒術は優れている。間合いの管理と判断力にも見るべきものがあった。しかし、黒歌はその動きを見極め、ほとんど無駄のない動作で対処していた。
――単純な反射ではありませんね。
グレイフィアは冷静に分析する。
黒歌は、攻撃がどこへ向かうのかを理解したうえで動いている。しかも、まだ本気を出しているようには見えなかった。
――この方は、一体どれほどの力を秘めているのでしょう。
サーゼクスから聞かされていた情報だけでは、彼女の実力を正確に測ることはできない。
異世界を旅し、言霊によって多様な力を扱うという話も、実際の動きを目の当たりにすれば、その一端にすぎないのかもしれないと思えてくる。
「どうしたにゃ?」
黒歌がこちらを見た。
「いいえ。興味深いものを見せていただいたと思っただけです。」
黒歌は楽しそうに笑った。
グレイフィアは、次にライザーへ視線を向ける。
彼はミラの技量を認め、一誠を嘲笑することもなく、2人の意見を聞こうとしていた。自分の眷属を単なる駒として扱うのではなく、共に成長する仲間として接している。
――以前に聞いていた印象とは、少し違いますね。
今回のライザーは、貴族としての誇りを持ちながらも、自分の考えを押しつけることを避けている。
自分の判断だけが正しいとは考えず、仲間の意見から学ぼうとしていた。
その姿勢が本心なら、10日後のレーティングゲームは、単なる勝敗以上の意味を持つことになるだろう。
リアスたちはライザーたちの強さを知り、ライザーたちもまた、リアスの眷属や協力者から学ぶことになる。
ただし、黒歌という存在が、戦いの行方を大きく左右する可能性は高い。
グレイフィアは静かに目を細めた。
――どのような結末を迎えるのか、見届ける必要がありそうですね。
第23章 リアス、特訓を決意する
ライザーたちが帰った後、オカルト研究部には再び仲間たちが集まっていた。
「・・・俺、何もできなかった。」
一誠は悔しそうに拳を握る。
「でも、今の一戦で分かったことは多いよ。」
木場が穏やかに声をかけた。
「相手の間合いや攻撃への対応を知ることができた。それを次に生かせばいいんだ。」
「次は勝てばいい。」
白音も短く告げた。
「負けたまま終わるつもりはないんでしょ?」
「・・・ああ!」
一誠は顔を上げた。
リアスは全員を見渡す。
「ライザーたちが強いことは分かった。でも、諦める理由にはならないわ。10日間で、できる限りの準備をしましょう」
そして黒歌へ視線を向けた。
「黒歌、特訓をお願いできるかしら?」
「もちろんにゃ。」
レイナーレたちも立ち上がった。
「私たちも参加するわ。仲間のために、できる限りの力を尽くしたいもの。」
カラワーナが頷き、ミッテルトも元気よく手を挙げる。
「ウチも頑張るっす!」
ドーナシークも静かに微笑んだ。
「私も皆さんと共に鍛えましょう。」
黒歌は尻尾を揺らした。
「だけど、普通の特訓じゃないにゃ。私の言霊で、皆に合った強者の姿や戦い方を再現するにゃ。」
「つまり、それぞれの課題に合った相手と戦うということ?」
リアスが尋ねる。
「その通りにゃ。強い相手に圧倒されるだけでは意味がないにゃ。」
「自分に何ができて、何が足りないのかを知り、必要な技術や考え方を学ぶ。」
「それが今回の特訓の目的にゃ。」
木場は興味深そうに頷いた。
「剣技だけでなく、戦術や判断力も鍛えられるんだね。」
「そうにゃ。一誠には一誠の課題がある。リアスにも朱乃にも、白音にも、アーシアにも、ギャスパーにも、それぞれの課題があるにゃ。もちろん、レイナーレたちも例外じゃないにゃ」
「分かったわ。みんな、十日間で徹底的に鍛えましょう。ライザーたちに勝つために。そして、全員が自分の力を最大限に発揮できるようになるために。」
「おう!」
仲間たちの声が部室に響く。
黒歌は静かに目を閉じた。
未来視。
いくつもの可能性が、脳裏を駆け巡る。
ライザーが眷属たちの意見を取り入れ、戦術を練り直す未来。ミラが新たな戦法を身につけ、今まで以上の実力を発揮する未来。
そして、リアスたちも互いの力を理解し、連携を磨きながら成長していく未来。
その一方で、連携を崩されて敗北する可能性もあった。
未来は1つではない。勝利へ至る道もあれば、敗北へつながる道もある。
だからこそ、誰か1人の力だけに頼るわけにはいかない。
リアスも、一誠も、朱乃も、木場も、白音も、アーシアも、ギャスパーも。
そして、新たな仲間となったレイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークも。
全員が自分の役割を理解し、互いを信じて戦うことで、初めてたどり着ける未来がある。
黒歌は静かに笑った。
「・・・この未来を掴むにゃ。」
リアスは力強く頷いた。
「ええ、私たち全員で。」
こうして、ライザー・フェニックスとのレーティングゲームへ向けた特訓が始まった。
10日後、彼らがどこまで成長しているのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。
ただ1つ確かなのは、彼らが勝利を目指し、それぞれの未来へ向かって歩き始めたということだった。
感想や、誤字脱字の報告などお待ちしています!
次回「いざ特訓!リアス眷属!」
リアス眷属とライザー眷属とのレーティングゲームの結果
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リアス眷属の勝利
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ライザー眷属の勝利