転生したら謎の鉱石だった件 作:街人A
う、うーん……ここは……洞窟か。あのまま意識を失ってたのか……?
《是。また魔素切れを起こしたため、
魔素切れ……?俺結構魔素溜め込んでなかったっけ?
《是。ですがユニークスキル『勇者』の力で強引にアルティメットスキルへ進化させた為、通常のアルティメットスキルよりも大幅に魔素が消費されました》
なるほどねー。そういえば、最後カマソッソに『吸収』した後何かしてた?遠のく意識の中で『会話者』が何か言っていた記憶が微かにあるんだけど。
《解。カマソッソから吸収した力をスキルに変換していました。変換した事でユニークスキル『
おお、ユニークスキルか。どういうのだ?
《解。ユニークスキル『貪食者』は個体名リムル=テンペストの『捕食者』と殆ど同じです。相違点は『貪食者』には擬態能力はありませんが、対象に触れなくても射程内であれば食らう事が可能です》
なるほどね。リムルと似通ったスキルか……まぁ今更だな。
そういやリムルは今どうしてるとか分かる?
《解。主人が意識を失っている間に魂の回廊を通して個体名リムル=テンペストのユニークスキル『大賢者』と情報共有をしました》
『会話者』曰く、リムルはなんやかんやあってゴブリンの村を救ってそこのゴブリン達と牙狼族というオオカミ達の長となったらしい。現在は村のために技術者を求め、ドワーフの国である武装国家ドワルゴンに行っているそうだ。
そんな感じでリムルの現状について事細かに教えてもらった。ドワーフの国かぁ……俺も行きたかったな。
というか、俺どれだけの時間眠ったんだ……?話聞いてるとだいぶ時間経って──いや考えないようにしよう。大した問題じゃない筈だ。俺は『勇者』によるスキル進化はなるべく使わないようにしとこう、と心に決めた。うん、それがいい。
よし、そんじゃあ早速そのゴブリン達の村とやらに向かってみるか!いや、その前にジュラの大森林を冒険してみるのもいいかな?というわけで速攻でこの洞窟を出るぞ!
そうして俺は洞窟を駆けた。途中で遭遇する魔物達をバッタバッタと薙ぎ倒し、その死体ごと『貪食者』で吸収していく。俺にはスタミナという概念がないため、休む事なくカマソッソ譲りの『超振動』による超音波砲で壊せる壁を壊して最短で洞窟を抜けたのだ。
「おお、ここがジュラの大森林か!」
自然豊かだなぁ……!よし、リムルの村に向かいつつ冒険だ!探索探索!
******
探索を続けてしばらくして……
《告。付近に生命反応を二つ確認しました。かなり弱っているようです》
ふむ、弱っているか。知ったからには放っては置けないな。行くか……!
そうして反応があった先に向かうと、そこでいたのは驚くほど真っ白なオオカミとフード付きの外套を身に纏った小柄の……あれは女の子かな?フードで分かりづらいけど多分そう。ピンクがかった白い髪をした女の子だ。その二人が傷だらけで倒れて気絶している。
『検索者』、あの二人の種族分かる?
俺は洞窟で蓄えていたヒポクテ草から回復薬を作ってそれを使って治療しながら聞く。
《ユニークスキル『検索者』より解。種族名 魔狼族と……おそらく
魔狼族:Cランク級の魔物。群れで行動する事が多く、魔力の扱いに長けている魔物。
『検索者』の説明によると、この天狼族は昔に牙狼族との縄張り争いに敗れ、その後も立て続けに不幸にあって今では絶滅危惧種とされているらしい。
大鬼族:Bランク級の魔物。角と牙を持ち、戦闘を好む大柄な人型の魔物。
角を持つ、ね……どう見ても角は見当たらないんだが……
説明によると、オーガの中からごく稀に角を持たない子が生まれる事があるそう。それをオーガでは不吉な象徴──いわゆる忌子とされるらしい。
色々気になる事はあるが、果たして部外者の俺が聞いてもいい事なのかどうか……とりあえず、目覚めるまで待つか。
そうして日が沈んだ頃に二人は目を覚ました。
「お、気がついたか」
「あ、あなたは……?」
オーガの子が俺に聞いてきた。
うーん……だいぶ警戒されてるなぁ……オオカミの方も戦闘態勢に入っている。ひとまず、敵じゃない事を示さないと……それってどうすればいいんだ?とりあえずは自己紹介からか?
「俺はレノ=テンペスト。妖鉱石っていう……まぁ簡単に言えば、自我のある鉱石だな」
「妖、鉱石……?」
オーガの子とオオカミが同時に首を傾げた。
予想通りの反応だ。そりゃ自我のある鉱石とか言われても訳わかんねぇよな。うんうん、気持ちは痛いほどよく分かる。
「ああ、それが俺だ。お前らが怪我してたから回復薬で治したんだ。一応心配だったから今まで見守ってたんだけど、見た感じ全然大丈夫そうだな」
二人に関しては気になるところだが、なんとなく触れられたくなさそうな気がしたのでその場を去ろうとすると突然地面から勢いよく何かが出てきた。
なんだこいつ、デカい蟻?
その蟻はオーガの子とオオカミの方を向いており、狙われている事が分かった。カマソッソといい、俺よりも他のやつ優先するのは俺が鉱石だからか?美味しくなさそうってか?
「邪魔だ……地中に帰れ!」
俺は全力でその蟻を踏みつけた。すると蟻が出てきた時以上の勢いと衝撃で地中へ吹っ飛んでいった。
「大丈夫だったか?」
「は、はい……ありがとう、ございます」
そう答えたオーガの子は困惑した表情をしていた。見た目にそぐわない強さで驚いているのかもしれない。
「それならよし、次は助けられるとは限らないから気をつけろよ」
そう言って俺はその場を去った──のだが、
「あいつら着いて来てんなぁ……」
もうリムルの村は目の前だ。うーん……仕方ないな。
「おーい!そこの二人、そんなコソコソしてないで一緒に行こうぜ」
そうして俺達は三人でリムルの村へ向かったのだった。
******
「久しぶりだな。無事で何よりだ」
「ああ、まったくだ。生きた心地がしなかったぜ……」
村の入り口にてリムルと再会。武装国家ドワルゴンに行ったと言っていたがもう帰って来ていたのだ。
「えーっと、それでそちらさんは……?」
「ああ、ここに来る途中で会ったんだ。詳しい事はよう分からんけど傷だらけで倒れてたからさ。助けて、そんで連れてきた。出来ればここで保護してやってほしい」
まぁ実際は連れてきたんじゃなくて着いてきたんだけど些細な問題だろう。なんで着いてきたのか、とかは分からないが助けを求めてるのは目を見ればなんとなく分かる。リムルもそれを察したようだ。
「そういう事なら全然オッケーだ。リグルド、頼んだ」
「はっ!お任せください」
するとリムルのすぐそばにいたムキムキした大柄なホブゴブリンが出てきて案内しようとするが二人は警戒して動こうとしない。
「そう心配すんな。もし何かあってもさっきみたいに助けてやっから、今は大人しく保護されとけ。まぁそれが嫌ならお前ら二人だけで森を彷徨う事になるが、どっちがいい?」
俺がそういうとしばらく悩んで、それから漸く二人はリグルドに着いていった。
「さて、早速で悪いんだけどレノにお願いしたい事が──」
「名付けならやらないぞ?」
俺はリムルの後ろの方にいる沢山のゴブリンを見ながら言った。
俺はここにくる途中で『会話者』から、リムルがドワルゴンから帰ってくると膨大な数のゴブリンがこの村に来ていたらしく、リムルはそいつらに名付けをしようとしてる事を聞いていた。あの数を名付けとか地獄でしかない。
「そこをなんとか!俺を助けると思って!」
「助けるって……そもそもがリムルの自業自得みたいなもんだろうに。そもそもこの数を名付けってどう考えても正気の沙汰じゃないよ?名付けの事を『大賢者』から聞いてるよな……?」
魔素が幾つあっても足りないよ?冗談抜きで。
「うぐ……た、頼む。この借りはちゃんと返すから!」
「はぁ……仕方ない。言質とったからな、マジでちゃんと返せよ?」
こうして結局手伝ってしまう俺は甘いのだろうか……押しに弱いとか思われたくないな。次があれば断固として拒否しよう、そうしよう。
そうして名付けに入る──その前に……
「みんな、聞いてくれ!みんなに紹介したい奴がいるんだ。というわけで自己紹介を頼む」
「えー、動く鉱石レノ=テンペストです。訳あって今までリムルと別行動してたんだが、これからはリムルと一緒に色々やっていけたらと思うのでこれからよろしく頼む」
俺がそう言って自己紹介をするとリムルが余計な事を言った。
「レノと俺は兄弟みたいなもんだ。頼りになる奴だから困った事があったら”遠慮なく”こいつを頼ってくれ」
無駄に「遠慮なく」を強調するんじゃない。あわよくば面倒事を押し付けようとするな!
そんなこんなで挨拶を終えて俺とリムルはゴブリン達を半分に分けて名付けを始めたのだった。
それから数週間後……
この村は人口が増えた事で現状の村では狭くなってしまったため、広い土地へと引っ越しを行なった。リムルがドワルゴンから連れてきたカイジン達の指示のもと建築が進んでいた。
そして、現在俺はオーガの子と魔狼の相手をしていた。そして思った、名前が無いのだいぶ不便だな……と。今ならバカみたいに名付けしまくったリムルの気持ちが分かる気がする。
出来れば名付けてやりたいが、この二人は全然心を開いてくれない。もう少し時間が必要の様だ。
『検索者』の説明を聞くにこの二人は似た境遇で孤独だったからこそ信頼して一緒にいるのだろう。孤独の気持ちは俺にも分かるところはある。そういやヴェルドラも孤独だったな……こうしてみるとあれだな。これは──
「類友ってやつか……」
「何ぶつぶつ言ってるの……?」
「あ、いや少し考え事してただけだ。気にしなくていい」
とりあえず、今はこうして向こうから話しかけてくれるようになった事を喜んでおこう。
そしてこの後、リグルドから周囲の警戒をしていたリグル達が人間を見つけたという報告があった事を伝えられ、俺とリムルは様子を見にいく事にしたのだった。