最終的に出久は負けた。
自分の限界を超えてボロボロになりながら戦ったが、最後まで親戚くんを倒す事は出来なかった。
まあとりあえずはお疲れ様かな。
上手く個性を使いこなせない今のアイツが第一種目で1位、第二種目でもギリギリ勝ち残って最終種目でベスト8まで勝ち残ったのだ。個人的には大健闘と言って良いと思う。
ベスト8も組み合わせ次第ではもう1勝くらいいけそうな内容だったしね。今回は相手が悪かった。
これからのアイツの未来に期待を持てる内容だ。誇っていいよ出久きゅん。
……とはいえ、観客がドン引きするくらいボロボロになるまでやり過ぎたのは問題だわなぁ……
……職場体験の指名来るかなぁ?
まあ最悪は俺の所で引き受けてもいいんだけど、せっかくの機会だし他のヒーローの所で経験を積んで欲しいところではある。
そんな事を考えながらビール片手に他の試合を見物。
「零至くん、他の学年のステージも見てみるかい?」
「んー……」
リモコン片手にそんな事を聞いてきたオールマイトに、
「ん……いや、このまま一年ステージでいいんじゃね?今から他の学年を見て、勝ち残ってる奴らを一から覚えるのもめんどいし」
「ふむ……確かにそうだね。でも、君は他の学年で見てみたくなるくらい気になる生徒がいたり、逆に活躍を見てて欲しいとか言われた生徒はいないのかい?」
「……んー?……ん?………ん〜〜〜………」
そのオールマイトの言葉……それを聞いてアルコールを摂取した事によりIQ53万すら超越した俺の天才的な頭脳がぐるぐるぐるぐるとフル回転し……
「……うん、大丈夫。特に気になるヤツもいないし約束とかもしてねーわ多分。めんどいしこのまま一年ステージでいこー」
この天才に任せたまえ。三国志とかなら知略99とかあるぜきっと今の俺ー……まあ知らんけど、
「軽いなー……まあ、零至くんがそういうならそれでいいか」
「ういー」
「氷叢くんはアシスタントだからそれでいいのさ!!でもオールマイト!!君は後でちゃんと他学年のダイジェスト版の動画をチェックするのさ!!教師として当然の事なのさ!!」
「は!!はい校長!!」
「大変だねーオールマイトは……がんばなり〜」
こんな感じでダベリながら仮眠室で体育祭を観戦する。
しばらく順調に体育祭は進んでいたのだが……
「……失礼、もしもしなのさ」
校長のスマホに着信。校長が仮眠室を出ていく。あまり聞かせたくない話なのかもしれない。
気になって俺もスマホを確認。
優『こら!!いい加減LINE返しなさい!!校内にいるのは知ってるんだからね!!』
……確認し、そっとスマホを裏返しにしてテーブルに置く。
すでに何度か連絡もらってるみたいだけど、まあ面倒くさいし無視するとしよう。
(……どーせ連絡返したら返したで『今何処いるの!?』とか『一緒に屋台回りましょ!?』ってうるせーしなー)
んで仕方ないからって会えば会ったらで『何でアンタ酒飲んでるのよ!!』とかでうるさいしなー……うん、無視しか勝たん!!
無視しか勝たん!!おお!!いいセリフだ!!流石知略99な俺!!天才過ぎるねさすおれ!!
まあどうせこれで優のヤツがぶち切れたとしても最終は多分何とかなるしね!!うん、やっぱ無視しか勝たん。
「うーん……まあいつもの事だし……まあ、いいか……」
「ねー♫」
「この流れで♡の相槌は流石に打てないかなぁ……」
オールマイトと2人で話していると、さっきよりも厳しい顔になった校長が室内に戻って来た。そして、
「……すまない。不測の事態が起こったのでここで失礼するのさ。オールマイトは閉会式まで、氷叢くんは最後までここでゆっくりしてて欲しいのさ」
そう言って校長が去っていく。
「「…………………」」
しばし、俺達は無言……
『!!!!!』
テーブルの上で裏返しにした俺のスマホだけがやたらとやかましい……そんな時間が少し過ぎて、
「……まあ、考えても仕方ないね。校長が我々に何も言わなかったのは」
「……今の俺達に言ったところでどうしようもない、そういう類のトラブルが起こった、って事だろしね」
「うん。そういう事だろうね」
こうして雄英体育祭が終わっていく。
閉会式で役割のあるオールマイトが途中で去り、後には俺が1人残る。
閉会式は
ああいうヤツを何とかするのは俺の役割じゃないしね。どーせ放っといてもデニムぱいせん辺りが手を回すだろーよ。まああの人に任せときゃ大体間違いない。
(……しかし……出久はどーするかなー………)
頑張ってはいたけど、反面でやらかし具合も凄かったからなあ。事情を知っている俺達以外の客観的な評価が非常に厳しい。
実際に《雄英高校体育祭》の掲示板の《一年ステージ》のスレを覗きに行ってみたらまあ!!こーなるよな!!……という酷い有様ではあった。
『でもあの緑谷って奴!!めっちゃチ〇コデカいんだぜ!!』
……って、フォローしつつ色々と悪い事書いてた連中と楽しくレスバもしといたけど……それがどの程度アイツの助けになったかというと……正直、わからない。
使いこなせれば天下無敵のワン・フォー・オールだが、事情を知らない連中からすれば勝手に暴走してボロボロになる危ない奴だもんなぁ今の出久は……
職場体験の指名はかなり厳しい事になるだろう。
となると俺が面倒見るか?……っと考えつつも、俺とオールマイトが一年面倒見てコレなのよね出久きゅんは……
(……やっぱ、俺とオールマイトだけだと指導が偏るんだろうなあ……)
事情を知った上で出久を教えられる人が少な過ぎるのが問題なのだ。俺もオールマイトも正直……人に何かを教えるってガラでもないしね。
誰か都合のいい人……オールマイトや出久の事情を知りつつ、かつ指導力もある人いないかなぁ?何て考えていると、
「……あ」
……いた。いたわ。
1人、マジのマジで適任がいた。
タイミングとしても雄英体育祭〜からの職場体験があるからなおさら都合がいい。「体育祭見てて根性ありそうだから気に入った。鍛えてやる」って理由であの爺様が初対面の出久に声をかけても不自然では無い。
そう考えるとマジで理想的なタイミングだ!!
俺はテーブルの上に裏返しにして置いていたスマホを取り上げて……どうせ優からクッソLINE来てんだろーなー……なんて考えながら嫌々画面を見て、
『あの、先程名刺を頂いた轟です。一度、お会いして落ち着いてお話出来ればと考えているのですが、氷叢さんのご都合はいかがでしょうか?』
「がっでーーーーむ!!!」
ファッキン!!
ガン!!!!!
再度テーブルにスマホを叩きつける!!
マジかよ!!勘弁してくれよマジで!!
「……どーせ優だろ!!って油断させといてコレかよ!!ちょっと俺に対してアウェー過ぎない今回の雄英体育祭!!普通!!雄英体育祭ってもっと『青春!!』とか『爽やか!!』みたいなの全開の明るいイベントだろが!!何で俺だけこんなにネットリかつネッチョリしてるんですかねえ!!」
流石にキレそうなのだが!!
むしろ俺がキレても誰も文句言えんだろコレ!!
だが……いつまでも愚痴っててもしょうがないし。
俺は
……数コールが鳴り、そして、
「……お、爺様?おっつー。ご無沙汰お元気?俺だよ俺俺!!俺だってば元気だった?……いや、だからオレオレ詐欺じゃねーんだわ。……え?何よ?『誰だ君は?』じゃねーのよ。ちゃんと着信に俺の名前表示されてんでしょが。『誰だワシは?』はもっとヤベーわ。ヤベーでしょそのネタは。爺様の老人ボケネタは年齢的にも真に迫ってるんだからいい加減にしてってのマジで……」
……かっかっか!!じゃねーよ爺様。いや、珍しくマジな連絡してんのさこっちも。
「えー……上手すぎる爺様の老人ボケネタはもういいからさ。あ、そう……いや、実は頼みがあってさ。爺様は雄英体育祭テレビで見てた?あ、見てたのね。なら話は早いわ。一年ステージで頑張ってた緑谷って奴わかる?あれが例のオールマイトの後継者なのよ。ん……もう知ってる?手紙のやり取りしてたの?んじゃ俺の言いたい事もわかってんでしょ?」
そこで、一拍。
「職場体験で、緑谷出久に指名を入れてくんねーかな爺様。俺も頑張って教えてるけど不慣れなとこもあってさ。爺様が協力してくれるんなら心強いワケ。ね、頼むよ爺様」
珍しい俺の頼み。
それを聞いて爺様は笑っていた。
『……ホントはテメエじゃなくてなぁ……俊典のヤツから言ってくるべき話ではあるんだが……まあ、元々コッチもそのつもりだった。構わねえよ』
「ん……さんきゅ、爺様」
『おう』
……こうして、雄英体育祭が終わった。
緑谷出久。
最終成績。
第三種目・ベスト8。
そして体育祭は終わり、物語は次のステージへと進んでいく。