side緑谷
雄英体育祭関係者達一同の心配を他所に、体育祭は無事に何事も無く終了した。
間に挟んだ休日で生徒達はそれぞれ疲れや傷を癒し、そしてまた今日から通常の授業が始まった。
毎度毎度やたらと僕たち生徒の不安を煽る相澤ムーブ〜からのヒーローネーム決めも順調?に終わり。話題はこれから僕たちが向かう職場体験先に関わるプロヒーローからの指名の話に移った。
「………………」
相澤先生が黒板に生徒の名前を、そしてその生徒がもらった指名の数を書いていく。
ダントツトップの轟くんに集まる称賛の声。
雄英体育祭で優勝したにも関わらず指名数で負けたかっちゃんをイジる声。
自分に指名が来たことを素直に喜ぶ声。
そして……
(……………無い、か……)
……そして、僕を含む指名が来なかった生徒達の『残念!!』『悔しい!!』という声。
それぞれが色々な思いを抱えながら、今日の授業が終わっていく。
「あ……あの……緑谷さん?」
「……?どうしたの八百万さん?」
放課後のホームルーム終了後、珍しく八百万さんが僕に話しかけて来た。
「み……緑谷さんはその……ほ、本当に職場体験の指名は0なんですの?」
「……あ、うん……」
改めてのその確認に軽くヘコむ僕。
「……あ!?ち!!違いますの!!そ!!そういう意味では無くて!!」
そんな僕の様子を見てアワアワと慌てて彼女は、
「ひ、氷叢さんと緑谷さんはとても仲がよろしかったなと思いまして!!そ!!その!!ひ!!氷叢さんから指名とか来たりしちゃったり何だりしてないのかな!?何て思ってしまいましたの!?」
「……あー……」
……確かに、それは僕もちょっと思ってた事だった。
「あー確かに!!デクくんと氷叢さん仲いいもんね!!」
「そーだよね!!だから何となく職場体験の指名の話を聞いた時、私も緑谷は氷叢さんから指名を受けるもんだと思ってた!!」
「いーなー!!プロヒーローと仲良しっていーなー!!うらやましーなー!!」
近くで僕らの話を聞いていたらしき麗日さん、芦戸さん、葉隠さんが話に混ざってくる。
「……そ!!そうですの!!だから私もそれがちょっと不思議で……本当に、緑谷さんは氷叢さんから指名を受けてないのかな?と。実は隠れてコッソリ緑谷さんだけが氷叢さんの指名を受けてたりするのかな……なんて(……流石にそれはズルいのでもし本当にそうなら何とか私もそこに入れてもらえないかな……なんて)ボソッ」
「……?アレ?八百万さん最後何て言ったのかな?ごめん良く聞き取れなくて」
「……だだだ大丈夫ですわ!!」
「あっはい……」
赤面しながらブンブンと顔と両手を振り回して否定する八百万さん。スルーが吉、という天啓に従いそれをスルー。
「でもそうだよね……何となくデクくんは氷叢さんとこかなー?とは思ってたから正直意外かな?」
「うーん……実は、僕も職場体験の話を聞いた時最初はそう思ったんだけど……でも、よくよく考えてみるとそんなおかしな事でも無いんだよね。何となくコーチが考えそうな事でもあるし」
「……おー?その心は?」
インタビュアーのようにこちらに筆箱を向けてくる芦戸さん。
それに答える、
「……正直言うとね。僕、プライベートでもコーチのヒーロー事務所にはちょこちょこ遊びに行ってるし……普段からトレーニングも面倒みてもらってるからさ。多分……『せっかくの職場体験の機会にまで俺んとこ来んなよ』って所じゃないかな?」
……多分、コレが正解に近いと思う。
コーチの考えそうな事だ。
1年前からオールマイト絡みの事もありコーチには個人的に指導をしてもらっている。
さらにヒーロー事務所にもちょこちょこ遊びに行っている。
さらにさらに母須恵砂町の変態達ともコーチ抜きでの人間関係も出来つつあり、僕個人もコーチの活動エリア自体に馴染みつつあるのだ。
『せっかくの職場体験の機会なのに、俺んとこ来ても目新しい経験とかな~んも出来ねーぞー』
……うん。如何にもコーチが言いそうな事だ。
まあ自分でもちょっとズルいとは思うけど。
プライベートで遊びに行けるヒーロー事務所があるってのは、ヒーローを目指す学生にとって凄いアドバンテージな気がする。
でもこのクラスには轟くんとかもいるし……僕だけってワケでもないから……
……なんて、そんなちょっとした後ろめたさと、まあ僕だけでもないし……と、そんな事を僕が考えていると、
「……ず!!ズルい!!ズルいですわ!!そんなのズルいですわよ!!緑谷さん!!」
「……え?や?八百万さん?」
目の前に興奮した八百万さんが迫ってくる!!
「いくら緑谷さんと氷叢さんが入学前からの知り合いだからと言って!!学校の公的なイベントでもないのに1人だけ氷叢さんの事務所に行けるだなんてズル過ぎますわ!!不公平ですわ!!」
「うーん……」
まあ言いたい事はわかる。だからこそ多少は申し訳無いとも思うけど……でもこのクラスには轟くんとかも以下略な気もするし……
「……で!!ですから!!」
パンッ!!と両手を合わせ、
「……わ、私も!!ぜひ今度緑谷さんがプライベートで氷叢さんの事務所に行く時に一緒に連れて行ってください!!こ!!コレこそが平等!!そう公平!!そういう事なのですわ!!」
「……そ、そうかなぁ……?」
「そうですわ!!そうに決まってますわ!!」
グイグイと来る八百万さんに気圧される僕。そんな僕に追い打ちをかけるようにして、
「そうだそうだー確かに不公平だー!!ズルいぞ緑谷ー!!」
「我々はー!!生徒一同の平等な扱いをヨーキューするー!!」
「あ!!芦戸さん!?葉隠さんまで!?」
便乗した2人のクラスメイトが騒ぎ出す。
「「A組の仲間なのに1人だけズルいぞ罪だ緑谷!!罰として私達も氷叢さんの事務所に連れてけー!!」」
「ええええーーーー!!!!!」
八百万さんスタートからの芦戸さん葉隠さんからの困った要望。参ったなぁ……僕が許可するしないの話じゃないんだけど……
助けを求めてチラッ、と麗日さんを見ると。
「たはは……でも、せっかくの機会だし、私も行って良いなら一緒に行きたいかなぁ……って。ぶっちゃけ、ヒーロー事務所って色々な所を見てみたいよね」
「おおう……」
この瞬間神は死んだ。
ブルータスお前もかかもしらん。知らんけど。
今僕の周囲は『絶対に一緒に行きますわ!!』とメラメラとヤバいくらいに闘志を燃やす八百万さんと『なんか楽しそうだから一緒に行きたーい』ってな芦戸さん葉隠さん。さらに『行って良いなら一緒に行きたいかなぁ?』という麗日さんによって包囲されていた、
(……うーん……困ったなぁ……)
まあ、最終事務所に来る来ないについて決めるのはコーチ何だけど……
「マジかよ!!氷叢さんのヒーロー事務所見学させてもらえるのかよ!?くぅーっ!!熱いぜ!!」
「やる気なさげに見えて、氷叢さんって絶対に武術とかちゃんとやってる人の動き何だよな。俺も行っていいかな緑谷?色々聞いてみたいし」
(なんか気がついたら大事になってる!!)
そりゃ確かにそんなに大きな教室じゃないよこの教室!!
だからって!!放課後教室に残ってた皆が聞き耳立ててるってどうなのさ!!
「……チッ!!」
君もかよかっちゃん!!君!!こういうの気にせず1人で帰るタイプだろ!!
逆に轟くんは我関せずとばかりにひたすらスマホを操作していた。彼的にはなかなか珍しい光景だ。
何だかんだと多くのクラスメイトが残った教室。
その視線が僕に集中する。
「……で、どうなのでしょうか緑谷さん?」
そんな皆の意見を代表し、言い出しっぺの八百万さんが口を開く。
「
「「「「ちょっと今クソデカな私情が挟まってなかったか!!!!」」」」
「ち!!違いますわ!!これは違いますのよー!!」
ワイワイと騒ぎ出す賑やかな教室。
雄英高校に入学して出来た大切なクラスメイト。
大切な仲間。
大切な友達。
(……え?……ちょっと待って?)
そんな大切な皆が、
(あの、変態たちと……A組の、皆が……?)
心臓をギュッと鷲掴みにされたような、そんな背筋にサブイボが立ちそうな悪寒。
えっ……ちょっと待ってステイステイステイ……
えっ……マジで?
「えっと……ちょっと待って……皆、本気で言ってる?皆、本気でコーチの事務所に……あの
「……緑谷さん?」
「……どした緑谷?」
「デクくん大丈夫?なんか急に顔色が悪くなってる気が……」
「……ちっ……ツベコベ言ってんじゃねえよデク……テメエはとっとと俺達があの野郎のヒーロー事務所に行っていいかだけ聞けば良いんだよクソが……」
「爆豪ちゃん……私思った事何でも言っちゃうの。氷叢さんの事務所に行く許可を緑谷ちゃんに求めてるのに、その言い方は流石にどうかと思うのだけれども……」
……落ち着け僕。
うん。落ち着け僕。
皆はただ単にアノ町の異常さを知らないだけだ。
だから、アノ町の異質さを知ってる僕が皆を止めてあげればいいだけ。ただそれだけの話だ。
だから、今ここで僕が皆に言うべき言葉は……
「えっと……とりあえずクラスの皆はコーチの事務所に……つまり、あの母須恵砂町に行ってみたいって、つまりそういう考えって事で良いのかな?」
「テメエの耳は節穴かよ!!さっきから全員そう言ってんだろうがよ!!」
「こら爆豪!!」
「話がこじれちゃうー!!」
「皆!!爆豪くんの口を閉じろー!!」
「むがー!!」
「………(!!!!)」
暴れるかっちゃん。それすら気にせずスマホを操作している轟くん。
そんな暴れるかっちゃんを抑えるクラスの皆。
真顔で僕はそんな皆を見回し、改めて一言。
「……えっと……正気??」
「………何だ!!何だそりゃこのクソナードがぁ!!!」
「「「「爆豪じゃないけどちょっと予想外過ぎる回答が来たー!!!」」」」
「えっ?でも……」
皆こそ本気なのかな?
あのクレイジー過ぎる町に雄英高校のヒーロー志望の皆が来るの?
(……………)
心を落ち着かせ一拍。そして、
「……一応、もう一度だけ聞くね……正気??」
「「「「「緑谷こそ何でそうなんだよぉぉぉぉ!!!」」」」」
ギャーギャーと騒ぎ出す教室の皆。
でも仕方ないじゃん。
こんな真面目なクラスの友達。
そんな皆が
「み!!緑谷さん!!結局!!どっちなんですの!?私は氷叢さんの事務所に行っても良いんですの!?ダメなんですの!?」
「おいデク!!テメエ!!言うべきことはちゃんとハッキリ言えやコラァ!!」
そんなカオスな教室の騒ぎを抜け出し僕に迫ってくるかっちゃんと八百万さん。
困ったなぁ……どうしようコレ……
「……みっ……み!!緑谷ぁぁ!!」
……そんな感じで困ってる僕を、さらに困らせようとする声が教室に響いた。
うん……轟くんだ……
「……と?轟?」
「ど……どしたん轟?話聞こか?」
さっきから必死にスマホを弄っていた轟くん。
そんな彼が怯えた表情で僕に通話中のスマホの画面を向けて……
……うん、その通話中の画面には……
『ウェーイw親戚くん見てる〜?今、俺、親戚くんが大切にしてるお姉さんと一緒にいまーすwそんでこれから
「「「「チャラ男構文来たぁぁぁぁ!!!!」」」」
「「「「何であの人ヒーローなのにチャラ男構文がこんなに似合ってるんだよぉぉぉぉ!!!」」」」
LINEの通話。
向こうはカメラON。
……その画面には、コーチのヒーロー事務所の2人掛けのソファーに横並びに座ってる2人の男女が映っていた。
クズコーチと……多分……轟くんのお姉さんらしき人が……
それを確認し、僕は、
「落ち着いて轟くん」
「み!!緑谷ぁ!!」
焦る轟くんに僕は、
「150%確実にからかわれてるだけだからサッサと通話を終えよう。それが一番良いと思うよ」
「「「「「何でオマエはそんな冷静なんだよ緑谷ぁぁぁ!!!!」」」」」
うん、まあ経験談としてだけど。
あの人はクズ何だけどね。
『あー俺アイツとヤッたわー』
……とかは言わないタイプだからクズコーチは。
だから、LINE通話で向こうの画像を出した以上は安心だと思う。
(うん……でもまあ………)
将来的には……知らんけど……
チャラ男構文がこんなにも似合うヒロアカ2次創作主人公!!
オマエこの前の体育祭であんなにヒーローしてたのに!!(白目)