天使様は女たらしクズ野郎に救われる 作:お隣の芋女
いつまでも場面を変えられないことに苦しんでいます…。
それと今回はR17.9のタグ表記がある内容になっております。
文才がないので表現が乏しく、キャラ崩壊などもありますが、暖かい目で読んでいただけたらと思います。
「……これを見せたいがために私に操作させたのですか」
なぜだか突然胸が苦しくなって、頭があまり回らない私は、そのまま思った事を口に出してしまった。
「は?」
明らかに機嫌を悪くした絢奈さん。なのに、私の髪を手入れしているその手はいつまでも優しくて、それがなんだか余計にモヤモヤしてくる。
八つ当たりだとわかっているのに、このわからない感情をそのまま絢奈さんにぶつけてしまう。
「今こうして私になにかやってくれるのも、ここに書いている人たちの代わりとか、同じようにしようって思ったからですか」
「結局、浮かれていたのは私で、ただ独り歩きしていただけですよね。私は「なに言ってんだお前」…何ですか」
呆れたような声で被せた絢奈さんは、ここまでくると普段から癖になっているのだろうため息を吐きながら、ソファを回って私の前で視線を合わせるために膝をついた。
ゆっくりと私を見上げるその瞳は若干の苛つきとめんどくささが宿っていた。
「それをお前に見せびらかして何になんだよ。言っただろ、女に困ってねえしガキに興味もねえ。確かにそいつらとは最終的にお前の思春期な頭で考えているようなことになるかもしれないが、それをお前にとやかく言われる筋合いもねえよ」
妙に色気のある首筋に、鎖骨、作り物のような凹凸のある身体が視界に映る。知識だけは知っている大人の行為。あの厚い身体を裸の女性と重ねて、私の髪を撫でる時と同じように優しく触れる。
初めての事だったから錯覚してしまった。
これが私だけにやってくれるものだと。
初めてできた私だけのものだと思ってしまっていた。
「だったらなんで私にこれを操作させたんですか!」
勝手に勘違いしただけなのに、私はらしくもなくその不満を吐き出している。
「空いてる日あるならそこに入れろ。他の奴と被ってるならそいつは消していい」
「だから私はこの方たちの代わりにはなりません!」
誰かの変わりは嫌だ。消したその人がするはずだったことを私がするのは嫌だ。私は私にだけ与えられたものが良い。私だからっていう特別が欲しい。
「自惚れんなガキ。どんだけ自意識過剰だよお前は」
分かってる。自惚れていたのも自意識過剰なのも。でも、だって初めてだったから。私を優先して雨に濡れてくれたことも、風邪を引かない様にお風呂を先に入れてくれたことも、私のために可愛らしく席を準備してくれたことも、私のために髪を乾かしてくれることも。
全部初めてもらったから、浮かれてしまっていた。勘違いしてしまっていた。
私の居場所はここなんじゃないかって。
「じゃあ一体なんのためにこれをさせるのですか!」
やけになって放った問は、私が決して聞きたくない答えを促そうとしていた。
そんなのただの代わりでしかない。そもそも絢奈さんの中で私は特別でもなんでもない。
当たり前だ。今日知り合ったばかりで、そんなすぐ特別になんてなるわけない。
それこそ良くて他の人の代わりだ。絢奈さんは言葉は荒っぽいが、根は凄く優しくて暖かいから、きっと今日の私みたいな人がいれば同じように手を差し伸べるだろう。
私じゃなくてもいい役割であって、私じゃなきゃいけない役割ではない。
だからこれまでは私が勝手に勘違いして浮かれていただけだ。
その答え合わせが、絢奈さんから告げられる。
絢奈さんはゆっくりと右手を私の方へ向けた。
そのまま中指を親指にひっかけて、思いっきり放った。
「いたっ!!?」
本日二回目のデコピンを受けた私は、そのあまりの痛さにただ額を抑えて絢奈さんを見る事しかできなかった。
絢奈さんは、私の目をジッと見つめると、何も言わず立ち上がってまた私の後ろに回ると、途中だった髪の手入れを再開してくれた。
「…お前が行きたいなら猫カフェでも動物園でも猫島でも行くかって提案しようとしたんだろ。つかそれ以外にあるか脳内ピンク」
「えっ……」
しばらくして後ろからかけられた言葉に、私は思わず振り向いた。
そこには櫛を持ったまま不満げな顔をしや絢奈さんが、もの凄い形相で私を睨んでいた。
「今……なんて言いましたか」
「だから真昼が行きたいなら行くかって言ってんだ。一緒に行く相手がいねえんだろ。休みの日言えばついてってやるよ」
「一緒に…いいのですか?」
「だからそう言ってんだろ、しつけえな。同年代の奴らみたいにきゃっきゃできねえがそれでも良いんならな」
「それは私も出来ないですけど……でもどうして」
「…あー、理由はどうでもいいだろ。それよりさっさと決めろ。行くのか、行かねえのか」
このやりとりをめんどくさそうにしながら、眉間に皺を寄せて髪をかき上げる絢奈さん。
そんな彼の姿を、私はただ静かに眺めていた。
私が行きたいなら……
生まれて初めて、そんな事を言われた。
今までどこかに出かけるなんてしたことはなかった。
どれだけ行きたいと思っても、それを親にお願いしても、絶対にそれが叶うことがないとわかっていたから。
機嫌を悪くして、私を嫌いになってほしくはなかったから。
だから、どれだけ願望を抱いても、決してそれを口に出すことはなかった。
ただ我慢して、見ないふりをして、必要ないと切り捨ててきた。
それが普通で当たり前だった。
なのに、この人は…絢奈さんはいとも簡単に私の当たり前を壊して、見たことない景色へ連れ出そうとしてくれる。
それはあまりにも……ずるい。
早く答えなきゃ。また怒らせてしまう。早く私の答えを……
「……っぁ」
私が自分の意思を伝えようとした瞬間、あの言葉が嫌なノイズとなって再生された。
『要らない子』
一瞬で地獄に叩き落されたかのような感覚に、思わず身体が震えて声が出せない。
今までのが全部夢だったんじゃないかって。
先ほどまでの夢のような時間が泡となって消えていく感じがした。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
『要らない子』
聞きたくない!
もう聞きたくない!
私はもう『要らない子』…やめて……
どれだけ耳を塞いでも、嫌だと拒んでも聞こえてくる言葉に、私は押しつぶされそうになっていた。
その時、ふわっと身体が浮くと陽だまりのように温かくて落ち着くものに全身が包まれた。
「はっ、小せえなあ。やっぱお前はガキだよ」
頭の上から声がして、ようやく私は今絢奈さんに抱きしめられていることに気付いた。
いつの間にか後ろから移動して、私を抱き上げてくれたのだろう。
どうやらそれに気づかないほど、私は追い込まれていたらしい。
絢奈さんは小さい子をあやす様に、背中を叩きながら頭を撫でてくれていた。
自分の身体を揺り籠の様にゆっくりと揺れる絢奈さん。
「公園から今まで様子がいちいち変わってるところを見るが、お前が何を抱えているのか知らねえし興味もねえ。ただ、お前はまだ16かそこらのガキだ。色々抱えるのにはまだ早え。だが生憎、ここには大人の俺がいる。大人の助けが欲しいなら言っていい。寄りかかりたいならそうすればいい」
心地良いリズムで私をあやす絢奈さんの言葉は、私のほかに別の誰かにも言っているような、そんな感覚がした。
「わがままはガキの特権だ、使える時に使えばいい。無理に強がんな、自分を守る為なら弱さを出していい」
絢奈さんはずるい人だ。人が欲しい時に欲しい言葉を簡単に与えてくる。
今まで誰も、血の繋がっている両親ですらくれなかった言葉を、今日出会ったばかりの絢奈さんは私にくれた。
「ガキは独りじゃ生きられねえんだ。誰かに支えてもらって当たり前。だからもしお前が遊ぶ相手も頼れる相手もいねえなら俺がなってやるよ」
この人は…本当にずるい。
そんなこと言われたら、私はこの人を頼ってしまう。
一度頼ってしまったら、この人を知ってしまったら。もう絢奈さんから離れられなくなってしまう。
「ずるいです…そんなの」
「覚えとけ。大人はお前たちガキが思っている以上にずるい」
ゆっくりと絢奈さんはソファに倒れていく。私が彼の上に乗っかる形になって、改めて彼の身体の大きさを認識する。私の身体がすっぽりと収まってしまうその大きな身体はとても安心感があった。
私は身体を起こして絢奈さんを見下ろす様に馬乗りになった。
「絢奈さんは他のどの大人よりもずるいと思います」
「確かに間違いねえな」
私が見下ろしてから、絢奈さんは一度も目線を逸らさずうっすらと笑みを浮かべた。
その姿がどこまでも大人の余裕さと、意地悪さと、色気を放っていて、次第に大きく響いてくる心臓の音がうるさい。
「だが、そんなずるい大人を頼れるっていうのはなかなか良いもんだろ」
「…ええ、良いものですね」
悪い笑みを浮かべる絢奈さんにつられて私も思わず笑みをこぼした。
すると、絢奈さんは一瞬目を大きく開いたかと思えば、今度は優しい眼差しで私の頭を撫でた。
「お前は表情がコロコロ変わるな。一人で百面相してるから見てて飽きねえ」
「そういう絢奈さんも怒ったり優しかったりですね」
「なんだ、いっちょ前に挑発か」
「ち、ちひゃいます。だひゃらひょおをひっぱらにゃいでくらひゃい(ち、違います。だから頬を引っ張らないで下さい)」
「ははっ、餅みたいに伸びるしやらけえな」
絢奈さんは子どもみたいに私の頬を伸ばしたり揉んだりして遊んでいる。
決して私が痛くない力加減で、ゴツゴツした大きな手が触れる。
私の顔を覆えるほどの大きな手、私は今だ私の頬を遊ぶ絢奈さんの手にそっと上から触れた。
すると絢奈さんは一瞬目を見開くと遊んでいた手がピタッと止まった。
「絢奈さんはゴツゴツしてますね。ゴツゴツしてて硬くて大きくて、大人の男性なんだって改めて実感します」
絢奈さんの手を観察するように両手で揉んだりしてみる。初めて男性の手をしっかり触るが、やはり自分の手の質感とは違って、筋肉質で不思議と重みを感じる。
凹凸がはっきりしてい逞しさがありつつ、それでもってスラっと伸びた長い指。
丁寧に黒く塗られた爪は自分でやっているのだろうか。肌が白いからか黒が一段と際立って綺麗に思えた。
それにしても綺奈さんは肌が本当に綺麗で、一体どんなケアをしているのか気になった。
手だけじゃなくて身体のどこを触ってもスベスベで正直少し羨ましい。
喉仏も初めて触るが、なんだか不思議な感触がする。
くっきり出てる鎖骨も私のより太い。
胸もお腹もゴツゴツで筋肉で硬い。
腕、首、胸、お腹、脚、全部が私と違う。
なんだか不思議ともっと触れたい。
もっと綺奈さんに触れたい。
綺奈さんを知りたい。
綺奈さんを感じていた「……おい」
「……あ」
突然綺奈さんに腕を掴まれて、やっと私は自分が今まで何をしていたかを気づいた。
私はずっと無我夢中で綺奈さんの身体を…
「やっと気づいたか、エロガキ」
「ち、ちがっ!…私はっ!」
「何が違えんだよ。人の、しかも男の身体をやらしく弄っておいて」
綺奈さんは私の手を掴んだまま、その手を自身の身体に誘導させていく。
私の手が綺奈さんに誘導されて彼の首に触れた。
「首筋は血管が密集していて皮膚が薄い。そういう知識があるならわかるだろ?なんなら学校でこれ見よがしにつけてる奴もいるだろ」
「っ!それは…」
彼が何のことを言っているのか。それがわかった瞬間、私の心臓が大きく跳ねたのが分かった。
確かに学校の先輩方やクラスの女の子たちが時折首筋に内出血のような赤い痕がついている事があった。
あれは多分そういう行為の一種でついたものだろう。
「皮膚が薄い場所は比較的痕がつきやすい。あとは鎖骨周りや胸元」
告げられた場所へと順番に手を誘導されていく。
先ほどまで夢中になって触っていた時とは違い、絢奈さんに言われてより深く鮮明に身体の感触を意識してしまう。分厚いのに薄い皮膚が触り心地がよくて、白い肌にうっすらと見える血管が妙な魅力を出していた。
「おい」
「……っなんですか」
私に乗られている絢奈さんは、なぜか異様にニヤニヤしながらまっすぐこちらを見つめている。
そのまま空いた手で彼は私の唇に軽く触れた。
「息、荒くなってるぞ」
「っ~!?!」
声にならない叫び声を発しながら、私は顔を隠すため、彼の胸元へ頭を押し付けた。
全身が心臓になったんじゃないかって思うほど、鼓動の音がうるさい。
頭上ではカラカラ笑う絢奈さんの楽しそうな笑い声が聞こえた。
この人は本当に意地悪な大人だと痛感した。
すると、一瞬絢奈さんが私の背に手を回すと、どうやったのかわからないほど素早くスムーズに私と絢奈さんの位置が入れ替わった。
私はいつの間にかソファに寝転がされ、私の上を絢奈さんが覆いかぶさっていた。
両手は彼の大きな片手でがっしりと拘束されており、恥ずかしさで真っ赤になっているだろう顔を隠すことが出来ない。
「さっきまで一人で夢中になって触ってたくせに、今のは恥ずかしいのな」
「そ、それは当たり前です!先ほどまでのは私が悪かったですが、今のに関しては絢奈さんが変な事を言うから、……それに意識してしまって」
「思わず興奮してしまったと「ち、違います!!」違わねえだろ。てか別に興奮する事を悪いは言ってねえだろ。バカみたいにそうやって食いついて否定するからガキって言ってんだよ」
先ほどまで見下ろしていた側だったからだろうか、キッチンでの状況よりも絢奈さんの目が鋭く見える。
完全な肉食獣のような、私の身体が彼の影で覆われた、明確に捕食者と獲物に分類されてしまうこの状況は、まさに絶体絶命なのだろう。
本来なら血の気が引いてしまうはずなのに、なぜか私の心臓は先ほどよりもうるさく鳴り響き、体温が上がっていく。なんならじんわりと汗が滲んできそうなほどだった。
「何度も言うがお前は警戒心がねえ。んでもって俺は良い大人でもねえって言ったろ。さっきの今でなんも学習してねえのか」
「そ、そんなことは……」
「ねえってか?お前、今自分がどんな顔してるかわかってんのか。すげえ縋ってる目してんぞ」
「……え」
絢奈さんに言われて初めて、私は彼の綺麗な瞳に映る自分の顔を見た。
そこには確かに、私の知る私はいなくて、今まで見たこともない、他人に何かを必死に求めるような、熱くも弱弱しい目をした椎名真昼がいた。
両手を頭の上で抑えられてて、圧倒的弱者になった姿。
そんな情けない姿をした自分自身を自覚した瞬間、熱でも出したんじゃないかって思うほど全身がカァッと熱を帯びていった。
「俺は同じこと言うのが嫌いだ。だから今回は少し痛い思いしとけ」
「ちょっと待っ、絢奈さっ!…んっ」
絢奈さんは私の頭上で掴んでいる手をグイっと後ろに押して、私の空いた首筋に唇を当てた。
一瞬ピリッとした痛みが首筋からすると、思わず声を漏らしてしまった。
「あの痕ってのはようは内出血の痕でな、されると少しピリつく」
「絢奈さん…」
「さっき言った通り、鎖骨や胸元は皮膚が薄い。個人差あるが、首筋よりかは皮膚が突っぱねってねえから、やりにくいと感じる奴はいるかもな」
「ぁっ!待って、止まって」
「さすがに俺のだと襟元は緩いな」
首筋から鎖骨、胸元へ、絢奈さんは順番に唇を着けて私に少しばかりの痛みを与える。
痛くないのに、された箇所の奥深くまで熱を伝えるようなそれは、徐々に私の身体を作り変える毒を打ち込んでいる様だった。
それから絢奈さんは私の服を胸が見えそうになるギリギリのところまで上げると、先ほど同様にお腹へ唇をつけた。
「別に皮膚が薄いところ以外にもつけられる。お前みたいに色白なら余計に目立つしな」
お腹は首筋とかと違ってじわぁと熱が浸透していくような感覚がして、それがいくつもつけられていく。
ゆっくりと下がりながら、絢奈さんの右手は私の左足を掴むとそのままゆったりとしたズボンをスゥーと上げていく。
「もう少し飯食え。枝みたいに細いからズボンが足の付け根まであがるぞ」
「はぁ…はぁ、絢奈さ…待って…」
初めて感じる気持ちのいい毒に侵された私は、もはや抵抗する力もなくなっていた。
息が出来なくて途切れ途切れになりながら、私の足を持ち上げながらこちらを見下ろす絢奈さんに視線を送る。
そこには、一切表情を崩さず、こちらを見下ろす捕食者となった絢奈さんがいた。
彼はそのまま私の足に軽く口づけをすると、そのまま何度も繰り返していく。
その甘く魅惑的な光景に、私はただ漏れ出す声を我慢しながらも目を逸らせずにいた。
「他に皮膚が薄い箇所は、ここな。腿の内側。周囲に太い血管が集まってるから、よく目立つ」
絢奈さんはこちらの反応を観察するように、鋭い目つきでこちらを見ながら、私の内腿にちゅっと吸い付いた。
可愛らしい音を奏でるのに、その効果は私の思考を下げ、体温を無理矢理上げさせ、心臓が破裂しそうなほど心拍数を加速させた。
いくつもいくつも、私の足に小さな赤い花が咲く。
皮膚の奥底に熱を伝える猛毒の根を張らして。
彼が甘美な音を立てる度に一輪ずつ咲いていく。
身体にビリリッと電流が走った様に、衝撃が私を襲う。
知らない感覚に驚いて戸惑うも、絢奈さんは決して動きを止めようとしない。
「んぅっ、待って、くださいっ!なんか変で…絢奈さっ」
「じんわり火照ってきたな。うぜえほど甘ったるい匂いがする」
「やぁ…恥ず、かしいから」
「なら俺の顔押し付け離させようとしねえその手どけろよ。気付いてねえのか知らねえが、もう掴んでねえぞ」
「ぇっ?……あ」
絢奈さんの呆れの混じった言葉と共に、私は自分の手の位置を確認した。
すると、私の手は確かに絢奈さんの頭を撫でながら、後頭部に手を添えてわずかに彼の頭を自身の足に押し付けていた。
「っ~~~!?!?」
何度目かの声にならない叫びをあげた私は急いで絢奈さんの頭から手を放そうとして、こちらを見る蒼い瞳と目が合い、思わず手を止めた。
それが何でかはわからない。
ただこの光景が、まるで絢奈さんという捕食者に食べられているかのように感じた瞬間、背中がゾワッとして動くことが出来なかった。
視界の端に映る自分の足に見えるのは、無数に咲いた赤い華の痕。
恐らく、首筋や胸元、腹部もまた同じように咲いた痕があるのだろう。
現に、すっかり全身が熱に侵されるなか、絢奈さんが触れた部分はより一層熱く感じていた。
もはやまともに呼吸も出来ない私は、頭がボーッとしながらも絢奈さんを見つめ続けた。
今日だけで、この人からはいろんな初めてを教えてもらった。
知らない感情に知らない感覚、そしてこの胸の奥で私を苦しませる知らないナニカ。
分からない。怖い。でもどこか心地よくて気持ちいい。
そんな自分でもわけのわからない状態になっていた私は、ただ絢奈さんをもっと感じたいと思った。
あの人の声をもっと近くで聴きたい。
あの人の匂いをもっと近くで嗅ぎたい。
あの人の熱をもっと近くで感じたい。
どんどん溢れる気持ちに従った私は、起き上がって彼の頭を抱きしめて一緒にソファに倒れ込んだ。
意表を突かれたからか、なにやら異議を唱えるような事を言っていたが、しゃべる振動がくすぐったいとしか思えず、私は無視してぎゅっと彼を抱きしめた。
言葉は強いのに、今もソファに倒れる時、絢奈さんはその大きな手を私の頭に添えてクッションの様にしてくれた。見えてないはずなのに、ちょうど良い位置に添えられるのは、どうしてだろうか。
ボフッと柔らかい衝撃と共に、私と絢奈さんの身体がより密着する。
絢奈さんの身体は先ほどよりも熱を帯びていて、かすかな雨の匂いがするも、それを覆うように絢奈さんの匂いが強く私の嗅覚を刺激した。
私はそれを肺いっぱいに吸い込んで、心地いいまま、突如一気に眠気を感じた。
特になにか運動をしたわけでもないのに、やたら満足感というか、気持ちのいい眠気が来たことに不思議に思いながらも、私は少しだけいいかと自分を納得させて、そのまま意識を手放した。
これからもゆっくりですが更新していきますので、よろしくお願いします!