虚飾の権能を持ってTS転生した上で英霊として召喚されましたが、マスターが可愛いので満足です 作:プラチナムウィッチ
言うまでもない事だが、聖杯戦争において敵のサーヴァントを倒すのと敵のマスターを倒すのでは余裕で後者の方が簡単だ。ただ、みんなそれは分かっているので自分がやられないようにサーヴァントに守らせたりする。
なので、敵マスターを倒そうとすると結局サーヴァントと戦う事にもなるのだが、正直その状況になればこっちにとっては勝ち確も同然。
だって、敵のサーヴァントにマスターを倒させれば良いだけなのだから。
少女の小さな身体が血飛沫を上げながら吹き飛んでいく。地面に衝突しても勢いは止まる事はなく、何度も跳ねた後にようやく止まった。
痛そう……。
「な……んで……」
可哀想だが、先に仕掛けてきたのは向こうではあるので。
「■■■■――!!」
バーサーカーが追撃を加えようと飛び上がり、勢いそのままに石剣を振り下ろした。
まぁ、一旦。一旦ね?
「何かしたの?アーチャー」
「どうやらバーサーカーは『私と彼女を見間違えてしまった』ようですね」
「恐ろしい事するわね……」
サーヴァントは相棒であると同時にただの人間であるマスターには逆立ちしても勝てない存在だ。つまり、マスターという立場の人間はとんでもない暴力装置をそばに置いているという事である。
令呪による縛りか、あるいは俺と凛のように絆で結ばれているか、各々に立場はあるだろうが、その楔から解き放たれた暴力が自分に向けばマスターにはなす術がない。
「アーチャーが何かしたのか!?止めてくれ!」
「無駄よ、衛宮くん。いまさら止めても助からないわ」
凛の言う通り、普通に考えればここからあのイリヤスフィールという少女が助かる方法はない。たぶん、胴体が真っ二つになるぐらいの事にはなってるだろうし、そもそも最初の一撃で内臓はぐちゃぐちゃになったと思う。
まぁ、助からない。
普通なら。
「落ち着いてください、衛宮士郎」
「落ち着いてられるか!」
「そうですね……まずは勘違いを正しましょうか。そもそも、『戦いはまだ始まっていない』のですから」
視界の一部が変化する。
凛にも衛宮士郎にも変化はない。ただ、衛宮士郎の隣には無傷のセイバーがまるで瞬間移動でもしたように立っており、正面には仁王立ちするバーサーカーとその隣に無傷で立つイリヤスフィール。
「なに……今の……何をしたの!?」
「戦いが始まったと、そう勘違いをしていたのでは?」
自分の身体を抱きしめるようにして、少し震えているようにも見えるイリヤスフィールに語りかける。
「これは……アーチャーの幻術!?」
セイバーも驚いている様子だが、一旦放置。
「許さない……バーサーカー!殺して!あいつを殺して!」
「物騒な事を言いますね」
幻術ではないが、そう思うならそれでもいい。
バーサーカーが迫り、そんな事は気にしていないように一歩歩く。
「■■■■――!!」
石剣に俺の身体が吹き飛ばされる。
何事もなかったかのように二歩目。
再び石剣に切り飛ばされる。
何事もなかったかのように三歩目。
岩のような手に掴まれ、投げ飛ばされる。
何事もなかったかのように四歩目。
五歩、六歩、七歩。一歩ずつ、イリヤスフィールへの距離を詰める。
バーサーカーがどれだけ妨害しようと、全部全部勘違いか見間違え。
イリヤスフィールが攻撃してきても、神秘の濃さとやらで弾かれるか、仮に通じてもなかった事になる。
「こ、来ないで!」
「残念ながらそうもいきません」
バーサーカーに吹き飛ばされたのをなかった事にするついでにイリヤスフィールの背後に。
片手をイリヤスフィールの両目を覆うように、もう片方の手でお腹の辺りを包むように抱き寄せる。さらに、目を覆っている方の手を引いて、その耳元に口を寄せる。
「あなたを理解したいのです」
はい、落ちた。
力が抜けて崩れ落ちる身体を抱き抱える。
「さて。あなたのマスターはこの通り、気を失ってしまいました。危害を加えるつもりはありません。ひとまずは、ここまでとしませんか?」
「――――」
「あなたがまだ暴れ足りないと言うならば止めません。ですが、その場合はあなたのマスターの安全は保証出来ませんね」
「■■■■――!!」
あ、ダメそう。
ある程度考える能力があるなら自分のマスターが人質に取られているような状況で、しかも犯人はどれだけ殺そうと意味がない魔女。どうやっても殺せないのに、バーサーカーがその動きを見せた瞬間にこっちはイリヤスフィールをどうにでも出来る。殺す事だって。
と、分かってくれれば話は分かりやすかったのだが。
思いっきり石剣を振りかぶってるけど、あなたのマスターがここにいる事分かってます?
と思ったら器用にイリヤスフィールを避けて石剣が俺の身体を捉えた。
「少し、落ち着いてお話をしませんか?」
「■■■■――!!」
こっちの言葉など聞こえていないかのように暴れ散らかすバーサーカー。こうしている間にも俺の身体は吹っ飛んではなかった事に、吹っ飛んではなかった事になっている。
うーん、ダメそう。
代わりに戦ってくれる駒がいたら楽だったけど、まぁ、必要になったらセイバーを貰えばいいか。
まぁ、権能を使って無理矢理洗脳して駒にする事も出来るは出来るだろうけど、そこまでしてこのムキムキがほしいかと聞かれたら別にって感じだし。
「仕方がありません。残念ですが、あなたの選択を尊重しましょう」
バーサーカーが見間違えて、気を失って地面に倒れているイリヤスフィールに石剣を振り下ろした。
あれは即死ですね。残念ながら。
「い、一体何がどうなってるんだ!?」
「危険ですから、下がっていた方が良いですよ」
状況が分かっていない衛宮士郎にアドバイスをしつつ、たった今殺したのがイリヤスフィールだと認識したバーサーカーがこっちに向かってくるのを眺める。
マスターが死んでしまった今、バーサーカーが暴れられるのもあと少しの時間だけだろう。
「■■■■――!!!!」
何回殺してくれれば気が済むのか。
権能でバーサーカーの猛攻をやり過ごしていると、突然バーサーカーの身体が光の粒子となって消えた。
「さて、一件落着ですね」
という事で、バーサーカーが消えた事実は残しつつ、イリヤスフィールが死んだという事だけなかった事にして一件落着。
「その子は生きてるの?」
「ええ。バーサーカーには退場してもらいましたが、マスターまでこの世から退場する必要はありませんから」
「甘いわね。まぁ、あのとんでもないバーサーカーを倒せただけよしとしましょうか」
「それと、戦利品として彼女は持ち帰ります」
「ちょっと待て」
◆
セイバー、衛宮士郎と別れて屋敷に戻ってきた。
気を失ったイリヤスフィールは背負って持って帰ってきた。
「で?どうするのよ。サーヴァントがもういないと言っても、目が覚めたら暴れるわよ」
「その心配はありません。少し、試したい事があるものですから」
もう夜も遅いので凛には先に寝るように言って、俺はイリヤスフィールと二人きりになった。
絨毯に腰を下ろして、膝の間にイリヤスフィールを座らせて後ろから抱くような形。
さてさて、いつ起きるかなー。
「ぁ……ここ、は……」
10分か20分か。体を揺らしたりしながら待っていると、ようやくイリヤスフィールが目を覚ました。
「お目覚めですか?」
「ひっ……」
耳元で囁くと、可愛らしい反応をしてくれる。
片方の手をお腹に回して逃げられないようにしつつ、もう片方の手で顎を掴む。そして、首を回して後ろの方、つまりはこちらの方を向かせる。
「い、いやっ……」
サーヴァントの中では弱い方とはいえ、ただの人間と比べれば最低でも大人と子どもぐらいの力の差はある。逃げようと身を捩っても無駄なこと。
人形のような綺麗な顔だ。
「あなたとは仲良くなりたいと思っているのです」
「離してっ……!」
今のままで話すらまともに出来ない。
というか、めちゃくちゃビビってるけど、仕掛けてきたのそっちだからね?どれぐらい痛かったのかは知らないけど、それこっちに向けてきたの君だからね?
俺はただこっちに飛んできた攻撃をそのまま返品してあげただけで。
「まずは、落ち着いてもらいましょうか」
まぁ、子どものする事だ。寛大な心で許してあげよう。
「私に身体を委ねてください。抵抗する必要はありません。ドロドロに溶けてしまいましょう。ドロドロ……ドロドロ……身も心も……」
完全に洗脳しきって別人のようになってしまってはおもしろくない。なので、ギリギリのところを狙う。
「ぁ……ぅ……」
「その調子です。全て、私に委ねてください。あなたの全て、私に……」
ぐるん、と目が裏返った。
それと同時にじんわりと温かい感覚が。
おっと。失敗、失敗。
でも大丈夫。ちょっと頭がバグっても、漏らしても、なかった事にしてやり直せば良いので!
まだ慣れない事も多いので、こっちからしても手探りだ。人体実験みたいな事にはなってしまうが、最初に殺しにきたのはイリヤスフィールの方なので自業自得と思ってもらおう。
「ぃ……ゃ……」
夜はまだ長い。二人きりで楽しませてもらいましょうか。
◆
翌朝。
「おはようございます」
「……ええ、おはよう。もう慣れてきた自分が嫌ね」
凛と同じベッドで目覚める。
もう横に全裸のウルトラ美少女がいても驚かなくなった。驚かなくなったどころか、普通に受け入れられている。良い傾向だ。
「昨日は結局どうなったの?」
「彼女には心を入れ替えてもらいました。もう暴れたりする心配はありません」
「ふぅん?ま、何をしたのか深くは聞かないでおくわ」
そうしてもらえると助かる。実は興が乗って色々とやってしまったので。
逃げないようにするにはどうすれば良いかと考えて、わざとお茶を飲みにいくとかの隙を見せて逃げ出させて、ちょっと逃げさせてサーヴァントの身体能力で捕まえる。頑張れば逃げられると希望を持つので、次はもっと泳がせてどこかの森に逃げ込んでサーヴァントの身体能力でも探すのが困難なところまで逃げさせて、次は権能で逃げた事自体をなかった事にした。記憶は残したまま。
たとえ地球の裏側まで逃げたとしても、ぜーんぶ意味ないよと説明した時の絶望した顔にはゾクッときちゃったよね。余計にかわいがってしまった。
寝室を出て、凛と一緒に広間へ移動する。
広間のソファーにイリヤスフィールはいた。
「本当に大人しくしてたみたいね。何度か屋敷を出入りした形跡はあるけれど」
「昨夜はよく眠れましたか?」
「寝れるわけ、ないでしょ」
「それはお気の毒に。今夜は添い寝して差し上げましょうか」
「……ふざけないで」
これが昨夜の成果です。
完全に自意識がなくなったり、別人のようになったりさせず、かといって逃げたりこっちを害したりもしない、良い感じに洗脳というか心を折るというか、そんな感じに調整した成果。
「ひっ……」
近付いて、肩に手を置いてみればビクッとこの反応。
凛は元気満天な感じだから、こういう大人しい系?は新鮮でとても良き。なんというか嗜虐心?がとても唆られる。
「イリヤスフィールにはメイドになってもらおうと考えています」
「メイド……?」
「ええ。これだけ広い屋敷なのですから、メイドの一人や二人いても良いとは思いませんか?」
単純にメイドさんというものに憧れがあるというのもあるが、それはそれとして凛は隙があれば掃除とかをさせようとしてくるのだ。シンプルに家事要員としても欲しい。
「めちゃくちゃな事言ってる自覚ある?」
「今さらでは?」
「ええ、今さらね。その自覚があるならちょっとは改めてほしいものだわ」
「ですが、メイドがいれば助かるのも事実でしょう?」
イリヤスフィールの隣に座って、肩に腕を回してみる。
「ぃ……」
「どんな脅かし方したらそうなるのよ」
「脅かし方なんて、そんな。私はただ、仲良くなるためにお話をしただけですよ」
ちょっと離れてたら普通に話せるのに、こうやって触れるぐらい近付くとこうなっちゃうんだよなー。
まぁ、可愛いから良いか。
「そうと決まれば、今日はメイド服を買いに行きましょう」
「まだ何も決まってないわよ……もう好きにして」
○パンドラ
天然で魔女みたいな事をし始めた。
メイドさんゲット。
気弱()な子も好き。
○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
頭の中をグチャグチャにされた。狂うかどうかの絶妙なラインを攻め続けられ(ラインを越えたらなかった事にされて)、パンドラに逆らえなくなった。
人格は保っているが、パンドラに一定以上近付かれると思考がショートして半泣きになって震える事しか出来なくなる。
聖杯戦争に負けたので、生きているだけまだマシ?