もっと休みくれ
「ふふーん♪ 勇音さんへのお土産の和菓子、喜んでくれるといいなぁ。やっぱり現世の任務のあとは、四番隊のベッドでゴロゴロするに限る……っと!」
穿界門をくぐり、ルンルン気分で四番隊舎の前へと
足を踏み入れた八神夜。
だが、その平和な帰宅時間は、一瞬にして地獄へと変わった。
「うぉらぁぁあぁッッ!!!!」
気配すら感じさせない、殺意全開の咆哮。
夜が悲鳴を上げる間もなく、彼女の頭上から
更木剣八の巨大な斬魄刀──『野晒(のざらし)』が、
地面ごと叩き潰す勢いで振り下ろされた。
──ドガガガガガァァァンッッッ!!!!!
「うわぁ! な、なんで四番隊隊舎前に更木隊長が?!」
間一髪、本能的な瞬歩で後ろへと跳び退く夜。
煙の中から、隻眼の男がニヤニヤと歯をむき出しにして現れた。
「遅せぇぞ八神ィ! 現世で派手に街を溶かして回ってたって噂を聞きつけてよ、こっちは退屈して待ちくたびれたぜ!」
「待ち伏せですか!? やっと現世任務終えてきた
新人にする事じゃないですよ! 私の事好きなんですか!?」
「動くな、斬り殺してやる!」
問答無用で繰り出される剣八の豪快な剣閃。
殺意しか詰まっていない圧倒的な重さに、
夜は冷や汗を流しながら腰の二刀を引き抜いた。
「も、もう! これだから更木隊長は!」
夜は二刀を構え、震える声でその解号を叫んだ。
「──烈波(かぜ)吹き捲りて天を裂け、轟炎(ほのお)猛りて地を焦がせ……『烈波轟炎(れっぱごうえん)』!!」
引き抜かれた二刀から、風と炎が噴き出す。
夜は逃げ道を確保すべく、間髪入れずに技を叩き込んだ。
「──『烈風交斬・焦熱波
(れっぷうこうざん・しょうねっぱ)』!!」
超熱風の螺旋刃が飛ぶ。しかし、剣八は笑いながらそれを
気合だけで叩き斬り、一歩も引かずに距離を詰めてくる。
「効かねぇよそんなもんっ!」
「っ、ならこれっ……!」
夜は風の超加速で一気に間合いを外し、
剣八の死角へと回り込んで追撃を放つ。
「──『赫炎龍捲・瞬撃
(かくえんりゅうけん・しゅんげき)』!!」
風を纏った瞬歩と、炎を宿した刃が剣八の肩をかすめ、
大爆発を起こす。
しかし、衣服を焦がされただけの剣八は、
痛がるどころかますます目をギラつかせて嬉しそうに笑った。
「すげぇスピードだ! 面白い、面白れぇぞ八神!!」
「嘘でしょ……!? あれで掠っただけ!?」
絶体絶命。退路は完全に塞がれた。
このままでは確実に押し潰されるという極限の恐怖と、
理不尽すぎる状況へのヤケクソで、
夜の頭のネジがぷつりと切れた。
(……もう、嫌だ! 怖い!知らない!
知らない知らない知らなーいっ!!)
夜は両手の二刀を固く握りしめ、体内のバカデカい霊圧の蛇口を、限界なんて無視して力任せにぶち壊した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
夜の全霊の叫びとともに、
全身から解き放たれる凄まじい熱量と暴風。
左手の風が右手の炎を無理やり圧縮し、暴れるエネルギーが力技でねじ伏せられ──奇跡的に、ひとつの漆黒と赫めく炎の「巨大な龍」の形をとって突撃した。
──ズガガガガガガガガガガァァァァァンッッッ!!!!!
夜が技名すら知らずに放ったその一撃。
空間を割る大爆発とともに、
炎龍が四番隊舎前の広場を一直線に駆け抜ける。
剣八の威圧すら一瞬で飲み込み、
龍が通過した直進上の地面は、分子レベルでドロドロに溶けて一直線の「溶岩のクレーター(焦土)」へと変貌した。
「がはっ……! ぐ、あぁぁぁぁっ……!!」
流石の剣八も、至近距離で直撃したその規格外の特大火力の前に数十メートル後方へと豪快に吹き飛ばされ、砂煙の中に沈んだ。
──ゴオオオオオオ……と、溶けた地面が赤く光る静寂。
がむしゃらに全霊圧を放出した夜は、
二刀を握ったまま、目の前の一直線に溶け落ちた
凄まじい惨状を見つめて固まっていた。
「……え? あ。はい? な、何? この火力。」
自分が何を出したのかすら分かっていない、困惑しきった声。
しかし、砂煙の向こうから、全身を焦がした更木剣八が不気味な笑みを浮かべ、歓喜の咆哮を上げながら立ち上がってきた。
「……グ、ハハハハハハハッッ!!
最高の力じゃねぇか、八神夜ぁぁぁぁぁッッ!!!!」
眼帯の奥の瞳をギラつかせ、更なる殺気を爆発させる戦闘狂の姿に、夜の顔が恐怖で引きつる。
「う、うわぁぁぁぁ! もうヤダよ! 怖いよ〜!
隊長!助けて〜〜〜!!!」
夜は己の引き起こした大災害と、ゾンビのように起き上がってくる怪物の恐怖にボロボロと涙をこぼしながら、最高速の瞬歩を踏み込んで一目散に逃げ出すのだった。
お久しぶりでごさいます。
リアル忙し過ぎで更新止まってましたが
また少しずつ再会して行きたいと思います。