呪術廻戦の漏瑚が祈本里香ちゃんに導かれ、ダラさんとクロスオーバー。彼の目指した『人の立ち位置』とは何かを考える話です。この書き手が、書きながら考えてみた話です。
後半はバトル編。ダラさんの宿敵、屋跨斑として完全に復活した姉の椿と対決。椿とダラさんにオリジナル領域展開を使ってもらいます。
創作理由
①漏瑚の求める人の地位とは何か?があまり具体的に描かれていないので、そしてモジュロで呪霊自体否定されたので、彼の求める世界のきっかけになる話を。漏瑚がこの話の主人公です。
②ダラさんアニメ化で書きたい。原作漫画読んで彼女の過去話がむごすぎるのでR18系書けないなと。なら、漏瑚の答えの一助になってもらおうと。あと、超人戦闘書きたいなと。あと、ダラさんの姉の椿がクズキャラなので制裁を。

そして、リカちゃんはキャラが未だによく分からない(全能チートにしました)。解釈違い盛り沢山ですが読んでいただけたらと。


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人たる地位とは如何なるものなりや?

生前、儂が求めていたのは、ひたすらに呪霊が人の地位に取って代わる事だった。

理由一つ目。人間は明らかに呪霊より弱い。

理由二つ目。人間は心に嘘をついて生きている。呪霊は呪いという負の感情のままに生きている。人間は嘘をつき続けて、それで生きていると言えるのか?儂は否定する。

理由三つ目。・・・呪霊が、この世界において自らの力で己の地位を確立せねば、ただ狩られるだけではないか。

 

そんな儂の考えに賛同する者達は少なかった。呪霊は己の事しか考えないから。花御と陀艮くらいだ。

真人は異なる。奴が生まれた理由から、人たる地位を奪う為の旗印にしたのが最大の間違いだ。奴は何の目的も持たない典型的な呪霊そのものだ。ただ知能が人間並みなだけで、低級の呪霊と思考回路が変わらない。よって奴は死亡後、どこにも行けない塵芥と化した。

そう言う儂も敗れた塵芥だ。相手が宿儺だから仕方が無い?理由にならない。死ねば価値は無い。宿儺に認められた?奴ほど気まぐれな存在は無いぞ。数日後の奴の脳内に、儂の痕跡が残っているかも怪しい。

 

そして、儂はあの世への道を歩いている。わざとゆっくりと。未練がある?未練だらけだ。

あの世への道で、儂らが夏油という呪術師と思っていた羂索とやらが敗れ去ったのを見た。そして宿儺が死んだのも見た。宿儺も、敗れ死に逝く時は儂と同じ怯えた目をしていた。奴ですら同じなのか。

力があれば呪霊は人を上回れると思っていた。それは逆に、力を否定されれば何も残らない存在である事を意味していた。

・・・儂ら呪霊は、ただ滅びる為に存在していたのか・・・?

 

「悩んでいるようだね、漏瑚さん。」

突然現れた小娘に声をかけられた。・・・存在自体気が付きもしなかった。

「私の名前は、祈本里香。知っているかな?」

「・・・聞いた事がある。単なる小娘の霊なのに特級呪霊になった存在。呪いの女王とか呼ばれている奴だ。・・・で、何の用だ。儂の魂でも滅ぼすつもりか。」

「そう、私は強い。あなたよりも。魂を滅ぼせるくらい。

でもね?あなたは普通の呪霊と違う。他の呪霊の事も考えている。それってね?良い意味で人間らしいと思うんだ。だからあなたには、少しでも救われたと思える未来を掴んで欲しい。あの世でも、来世でもいいから。」

「宿儺も羂索とやらも敗れた。今後、呪霊で奴らより強い者が現れるとは考えにくい。呪霊は今後呪術師に滅ぼされ続ける運命だ。儂の望む未来は無い。」

「・・・その通りだよ。これを見て欲しい。私達の世界で起きる数十年後の出来事。」

儂は、祈本里香がテレビ画面の様なものを出し、それを見せられた。

 

内容はこんな所だ。

数十年間、日本には強力な呪霊は現れていない。儂の予想通り衰退した。

そして、異星人が地球に移民として来た。この異星人は、呪霊に近しい存在で、呪霊を祓う呪術師を敵視した。地球人達も異星人を敵視。互いに相手を下に見ていた。

そして、決闘という名の2つの戦争勃発。その片方が終わり、後悔した当事者の異星人が宿儺以上の存在と化した虎杖悠仁と結託。呪力と呪霊が限りなく少なくなる世界を形成。それにより、呪霊はほぼ全て成仏。呪力が無くなり呪霊を自分達と同一と認識しなくなった異星人と、地球人類は共存できる様になる。

 

・・・何だ。何だこの未来は。そもそもの発端は、地球人類と異星人の差別意識だろうが!何故呪霊にその原因を押しつけて解決したフリをしているんだ!汚れ役を儂らに押しつけて、自分達は平和な未来だと!ふざけるのも大概にしろ!!

 

「こんな未来を認めろというのか・・・。儂が、呪霊が、これまで存在してきた意義が消されているではないか!呪霊には存在する資格すら無いというのか!」

「そうだよ。」

「そもそも呪霊を消し去る案を出したのは貴様だろう!祈本里香!貴様が、あの異星人と接触した映像が僅かにあった!貴様が呪霊絶滅の元凶だ!何を考えている!」

「そうしないと、戦争の、地球人と異星人との諍いの落とし所が無かったから。第三者で都合の良い悪役が居て、それに責任を押しつければ争いは収まるんだよ。

・・・これは、あなた達が行ったツケだよ、漏瑚さん。あなた達は、自分達が人間より強いと勘違いしていた。力を示せば、人間は呪いにひれ伏すと。

違うよ。人が何故『霊長』と呼ばれているか。それは、総合的な人類の力に敵う存在がいないから。人類は呪霊の様に暴力も使う。それだけなら人間は呪霊に劣る。でも、人間には権力がある。財力がある。知恵がある。騙す。脅す。組織を作る。あらゆる手段を講じて相手を弱体化、無力化する。それらにおいて、呪霊は人間に遙かに及ばない。だから滅ぶ。

そう、呪霊が消え去るのは必然。あなた達は他者との共存を頑なに拒絶する。弱いのに。人は何故複雑な組織を作るか?単体では弱いから。だから、組織の力に、権力に身を委ねている。暴力だけでは限界があるから。

あなたは、呪いこそ『真の人間』だと、人の地位に立つべきだと言った。それを目指した。

それには何の問題も無い。問題なのはやり方。殺戮でその地位を得ようとした。大勢の人を殺して。傷つけて。

テロリズムが自分達の存在証明になるのは古い考えだよ?しっぺ返しを喰らって滅び去る。テロを行った人間で生き延びているのは別の力、権力や財力等を有している者達。あなた達は暴力がほとんど。だから滅びる。羂索や宿儺も同じ。

はっきり言えば、人の地位ってやつを舐めているとしか言えないね。羂索の様な詐欺師や宿儺みたいなパワー馬鹿が、単独で頂点に立てるほど楽な地位じゃ無いんだよ。」

 

「見た目によらず、辛辣な事を言うんだな。」

「そうだよ『漏瑚』。リカはお前達を憎んでいる。お前が焼いたポニーテールで眼鏡の女の子を憶えている?」

「いいや。」

「だから、お前らは滅びるんだよ。戦った相手すら憶えていない。それじゃあ人間の兵士と同じ。人間の兵士は戦場から帰還すれば人間に戻るけど、お前達は通常通り。どこでも殺す。どこでも戦場にする。世界中を戦場にして何の意味があるんだよ。

その上、食べるのでも縄張り争いでも無く、意味も無く殺す。自分達が殺される立場になると考えもせずに。愚かしい事この上ない。

そして、これはリカの個人的な恨み。お前が焼いた子は、真希ちゃんといってリカの大切な憂太を支えられる数少ない人。恋敵でもあるけど、リカは現世に長くいられないから、彼女に頼るしか無い。彼女がいなければ、すぐ自分を軽んじる憂太は『他人の為』とか言って自分をすり減らす人生を送るから。そんな彼女を、お前は殺しかけた。

本当にリカは、お前を滅ぼしたいと思ったよ。でも、お前の考えは理解できる。だから気まぐれで、お前の思想を汲み取ってやろう。

漏瑚。お前が、呪霊が、人の地位でいられる未来のきっかけを与えてやる。

拒否権は無い。従え。お前はリカより弱いんだから。」

 

それを言った時の、祈本里香の顔を見た。宿儺や羂索を上回る怖気を感じた。

無表情で、儂を塵芥とも思っていない、呪いの女王に相応しい顔だった。

 

 

「さて、私の気持ちを言ってスッキリしたんで、漏瑚さんには特級呪霊レベルの存在が力を持ちつつ人の日常に溶け込んでいる事例を見せようかな?異世界なんだけど。」

「何だそいつは。羂索の様な奴か。」

「羂索は一応人間だけど、そういうタイプでも無い。人間を見下す事無く、本当に人間と共存できている。あなたには考えられない事例だろうね。ちなみに、その呪霊の名は『屋跨斑』。蛇と人間の霊の融合体。そして、現在では『ダラさん』と名乗っている。」

「は?随分気安くなったな。力が衰えたのか?」

「違うよ。彼女の心境の変化だろうね。では、ダラさんのプロフィールについてさらっと。

彼女は巫女の家系でした。しかし、彼女は同じ巫女である双子の姉に虐められ、姉に操られていた両親にも邪険に扱われ悲惨な人生だった。

そんな彼女に恋人の様な存在が出来た。それは、彼女の姉が恋していた人だった。嫉妬等で狂う姉は、彼女を強大な蛇の呪い『谷跨斑』の餌にする。村人達と結託して、彼女は四肢を斬られ、口を蛇の様に裂かれるなど暴行を受け、瀕死の状態で谷跨斑に取り込まれ死亡した。」

「呪術の界隈では珍しくも無い話だ。」

「そうだね。だから呪術師って腐っているよね。話を戻すと、喰われた彼女は、逆に谷跨斑を支配して、自分を死に追いやった者達に復讐。姉を嬲り殺し、両親を殺した。村人達は既に姉に殺されていた。その後、罪も無い人々を殺し続ける呪いと化した。」

「それもよくある。」

「でも、いつしか彼女は人の心を取り戻していった。気まぐれに人を助けたりしたら、人々から神として祀られる様になった。彼女は少しずつ気持ちが安らいだ。」

「は?何だその急展開は。」

「この辺は異世界だから謎が多いんだよね。でも彼女が人間らしくなっていったのは事実。そして極めつけ。彼女の前に霊力、呪力と読み替えてもいいけど、それが優れた子供の姉弟が現れた。彼女は彼らにダラさんと呼ばれ、物怖じしない彼らに連れられ、人間世界の様々な遊びを体験する事に。」

「・・・待て。呪いはどこに行った。」

「まだ彼女の中にあるよ。彼女はそれでも、人間と交流できたんだ。だから、あなたのモデルケースになるんじゃないかと思って。

後、先に述べた蛇の呪いの谷跨斑は、頭部だけで生きていた。そして呪力の高い少女に取り付くが・・・、その少女および周囲に振り回され、彼も不本意ながら人間世界に溶け込む様に。」

「・・・ふざけているのか、そいつらは。それとも生温い呪いの持ち主だったか。」

「特級って言ったじゃん。生温くなんて無いよ。要は心の持ち様と言うのかなぁ?」

 

「と、言う訳で、後はダラさんと直接接触して過ごしてみれば分かるよ。

はい、到着ー!」

「もう慣れたんじゃがなぁ・・・。一応ここ禁足地であり、立入禁止なんだけど。」

「まぁそう言わないで。初めまして、ダラさん。私は祈本里香。こちらの結構可愛い呪いは漏瑚さん。私達は、互いに呪われた霊でーす!

漏瑚さんに紹介。こちらの、目は三白眼で口が蛇みたいで怖いけど、スタイル抜群、手が6本あって下半身蛇だけど、人間体になれるから問題無し!な方がダラさんです。」

「お主ら、この世界の住人じゃ無いじゃろ。霊力が違うし。なんでワシの個人情報漏れてんの?」

「私は憂太と同じくコピー能力持っていたり、その応用で何でもありだからね。

で、急なんだけど、こちらの漏瑚さんは、己の立ち位置というか、呪霊の立ち位置について悩んでいる。人間みたいな立ち位置にいたいと思っている。人間になりたいじゃ無いよ?

まぁ説明が難しくて具体的でもないから、極めて人間に近くて、未だに強い呪いや恨みを内包しているダラさんと一緒にしばらく生活して、その答えを見つけたいと思ったんだ。」

「ワシ、お悩み相談屋じゃないぞ?それに、ワシ自身は積極的に人と関わりたいと思ってないし。」

「どーだかなー?・・・一応結論から言うとね。この漏瑚さんは、子供達と相容れないと思う。殺さないよう無力化するけど。」

「おい、貴様!」

「でも、何か感じる事があると思うんだ。と、言う事で、迷惑かけないから、しばらくこの山にいさせて下さい!

対価は出すよ。・・・あなたの姉、椿との決着。」

「・・・。」

「椿の呪いがまだ存在しているのは気が付いているよね?あなたは、その一欠片ですら、子供達と共に戦わなければ封じられなかった。まぁ、身体を乗っ取られて力を奪われていたせいでもあるけれど。そして実の姉だから、憎くても滅ぼす事が出来ず封印しているだけ。

でも、いつか椿本人が、完全なる呪いとしてあなた達に立ち塞がるよ。あなたと接した人達が犠牲になるかも知れない。私はそれを無くしたい。あなたの真の力を解放して。」

「・・・ワシに奴を殺せと言うのか。」

「椿の本性は知っているよね。自分の欲望の為になら、数多く犠牲者を出しても平然としている性根の持ち主。汚れた上昇志向の塊。あなたは、椿の一欠片を『人間』と称したけど、その通りだよ。悪しき人間の象徴。・・・この世に居てはいけない。

私達も共犯になるよ。そうすれば、いくらか気持ちは楽になる筈。」

 

こうして、里香はダラさん・・・、ダラと呼ぼう。奴を無理矢理説得した。

 

 

ダラの元には、里香の話にあった様に、呪力の強い餓鬼共が、ちょくちょく遊びに来ては、ダラを様々な場所に連れて行った。ダラは、口以外人間と同じ姿になれるので、目立たなかった。儂は、里香の力で、人間に見える様にさせられた。

そして、儂は、餓鬼供と様々な場所に行き、全く楽しめなかった。

 

餓鬼共は、様々なゲームとやらも持ってきた。ダラは嫌々そうな顔をしながら、迎合して遊ぶ。儂は心底嫌な気持ちで無理矢理付き合わされる。

そう、そのゲームとやらも、儂は1つも楽しめなかった。

 

「のう、漏瑚。お主って楽しいこと無いの?」

ダラにそう問われた。儂は答えられなかった。

「私が、漏瑚さんを観察したけど、彼が出現して楽しいと感じた事は、弱い存在を呪う事と殺す時だけ。いじめっ子の典型。そして、実力が拮抗してくると、途端に感情が無くなる。心が、感情が未熟すぎるんだよ。」

「里香は口が悪すぎじゃ。女の子じゃろうが。」

「ぶー。すいませーん。」

「・・・何故楽しまねばならない?」

「楽しくなくて何で生きておるのじゃ?」

「儂は使命の為に生きてきた。呪霊が人に成り代わり世界の頂点に立つ為に。」

「だーから、殺しとかしか面白さを感じない奴らが頂点になっても、世界がつまらなくなるだけだっての。心に遊び心というか、余裕というか、お主はそれが無さ過ぎ。負の感情ばかり。だから負けたんじゃないの?負の感情だけに。」

儂はダラを殺したい衝動に駆られたが、里香に力を封じられてそれも出来ない。

「漏瑚さんが、ダラさん殺したがっているんで、模擬戦でもやろうか。

漏瑚さんの力の一部だけ開放。ダラさんはまだ自分の力を使いこなせないからね。」

 

模擬戦を開始した。ここはダラの異界である為、山林が焼けても修復可能らしい。

ダラの術式は、元巫女であった為、結界系の技が得意だった。強力な防御系の簡易領域とも言える。そもそも、ダラは異空間を作り出して、そこに住んでいる。領域は得意な部類なのだろう。

その他は、呪力で形成した無数の腕を出現させ操作、無数の矢を出現させて放つ。レーザー。とにかく遠距離攻撃だ。近づけば、儂の有利と思ったが・・・。

儂が距離を詰めた瞬間、ダラは黒い髪の毛の様な呪力で儂を拘束した。これは純粋なダラの呪力の形らしい。近距離専門。焼こうとしても焼けない。

糞!力を弱体化させられなければ、こんな事には・・・。

「はい!しゅーりょー!」

里香だった。我々は、強制的に元の位置に戻された。

「で。どうだった?ダラさん。何か参考になった?」

「ならんな。術の仕組みがさっぱり分からん。」

「漏瑚さんは?」

「同じだ。」

「そうだろうね。でも、私達の術は便利だから、私がダラさんに色々教えるよ。」

 

そうして、里香はダラと過ごす事が多くなった。餓鬼共と遊びに行くのも奴だ。

儂は放って置かれた。やる事がないので山々を散策した。つまらん。

・・・儂は呪いや殺し以外に面白いと感じる機能が無いのか?

 

 

帰ってきた里香に、儂は聞いた。

「儂を無理矢理餓鬼共と遊ばせないのか?」

「だってつまらないんでしょ?」

「・・・儂に人の地位でいられる未来のきっかけを与える、とお前は言った。それは餓鬼共と遊ばせる事では無いのか?ダラが、それで人間の感情を持った様に。」

「ダラさんは、それ以前から人間らしかったんだよ。神というべきかな?呪いでもあり人と親しくもある。私達の世界にも、そういう存在がいたけれど、彼らは呪霊と言わずに、神と称するべきだね。実際に彼らは崇高だった。

で。漏瑚さんは、そうなれるか?

・・・無理。何故なら呪霊である事に固執しているから。

人類でも少数種族の末路は悲惨だよ。アイヌ人やインディアンみたいに土地も言語も文化も奪われる。人類でも、まだ原始人みたいに生活している人々がいる。彼らは言っちゃ悪いけど、動物園の動物だよ。見世物。淘汰した側の傲慢の上に生かされている。

何故彼らがそうなったか?成長・進化しなかったから。誇りや尊厳をかなぐり捨ててまで成長進化した人類種族だけが繁栄している。後は淘汰されるのみ。

人間同士でそうなんだから、呪霊の様な人間じゃない存在は、より変化しなきゃいけない。人間以上に成長進化しなきゃいけない。でも、呪霊が根源的に持つ負の感情がそれを妨げる。人間と共存する事すら出来ない。

簡単に言えばとてつもなく頑固なんだね。それを変えられる?漏瑚さん?」

「・・・無理だ。人間と共存なんて想像すらしたくない。かといって、人類と戦えば勝ち目は無い。・・・儂や呪霊に失望したか?」

「いや、その結論が出ると思ったよ。リカも呪霊だからね。

でもね?あなたは負の感情のままに動く呪霊を真の人間と言いつつ、宿儺が言った『力のままに焼き尽くす』事もできなかった。それは矛盾。

矛盾はね?人の立ち位置に居る存在じゃないと出来ないんだよ。」

 

儂の答えで、里香は呪霊に対する対応を決めたらしい。里香に勝てない儂にはどうする事も出来ない。

その後、里香は儂に我々の世界の術式を無理矢理教えた。必死で覚えた。そうでなければ呪霊は消される。

一つは、呪霊に対しては毒だ。だから、里香は性質を反転させる方法も教えた。

もう一つは、呪霊も使える筈なのだが、何故かほとんど何物も使わなかった術式だった。いや、使おうと考えすらしなかった。

 

そして、儂はそれを習得した。

故に、この世界から去る時が来た。

そう。ダラの姉、椿を完全に復活させ、滅ぼす時が来た。

 

 

戦いの場はダラの住まいがある異界。この場所で領域展開も出来るらしい。

そして、我々の前には小石がある。かつて、椿の一欠片を倒した時に、その場に残された小石。これを媒介に椿の本体を召喚する。

「2人とも、準備は良い?・・・じゃあいくよ。」

里香が呪力を石に込めた。

 

「大して久しくもないか、『木春』。」

我々の目の前の木に、ダラと同じ蛇の下半身を巻き付け、ダラと同じく六本の腕を持ち、顔だけは整っている女、椿が顕現した。

 

「その名で呼ぶなと言うたであろう『人間』!」

「あぁ。相変わらず愚かな妹よ。私はもう神の領域なのに。

私本体はな?600年間各地を回った。負の念を喰らい続けた。人間を殺し続け怨念を吸った。そして神になった。お前と同じ屋跨斑の身体を持っているから、お前の情報はすぐ分かる。本当に下らない事ばかりして、私の道具にもならぬ、役立たずな愚妹。

今度は、霊の幼子と何やら笑える妖怪がお供か。またしても学芸会か。愚かしい。

ここで魂を喰ろうてやるのも慈悲か。」

 

儂は数歩前に出た。

「儂が殺る。」

「ん?土くれが相手か。つまらんなぁ。」

「お前を見ていると、腹が立つ奴を思い出す。そいつは人に対する呪いから生まれた存在だ。

傲慢極まりなく、自己中心的で、自分が相手より立場が上だと機嫌が良く、立場が危うくなると誇りも何もかも捨てて命乞いをする。

儂ら呪霊にも矜持があるんだよ。矜持がそいつには無かった。

そう、儂が嫌いな人間そのものだ。奴もお前も。

予言してやろう。お前は必ず命乞いをする。そして儂らはそれを認めない。

と、いう事で低俗な人間らしく死ね。」

「戯れてやろうぞ、土くれ。」

儂と椿は激突した。

 

 

「冱ツ柳腕(いつやなのかいな)。」

椿がダラと同じく呪力の腕を多数召喚した。それらは、ダラのものより遙かに大きい。儂は回避しつつ後退。木々を、岩を、腕がなぎ倒していく。

「呆けるなよ?土くれ。矢が降ってくるぞ。」

「ぐぉぉぉぉぉ!!」

簾(すだれ)という髪の毛の様な呪力から形成した矢を放つ技。これも、ダラより遙かに多い数だ。焼き切れず手傷を負う。すぐに治せるが。

「しぶといのが自慢か?」

「火礫蟲(かれきちゅう)。」

大量に放った。椿の髪の毛の様な呪力も焼き、奴は焼け焦げた。が。

 

ベリベリと焼け焦げた身体を脱皮させて、椿は傷一つ無く復活した。

「木春と戦うべきではなかったなぁ。奴からお主の情報は大体得てある。炎の技を使うとな。これが、その対策。脱皮。どんなに身を焼かれても、一皮むけば元通り。

そういえば、愚妹はこんな技も使うていたな。」

レーザーが来た。やはりダラより遙かに巨大。山が吹き飛ぶ。

「極ノ番・隕(ごくのばん・いん)。」

儂はレーザーを回避して、巨大な火山岩を叩き付けた。

 

「うーん。これで決まれば良いんだけど。」

「椿の霊力を感じる。奴はまだ生きている。かなりダメージ負ったが。」

「ここまで計画通りかな。・・・ごめんね、ダラさん。私達は対価と言いながら、この戦いを私達呪霊の進化成長の為の踏み台にしようとしている。

そうしないと、私達は成長できないから。」

「かまわんよ。遅かれ早かれ、奴と決着つけるのは決定事項だったしな。」

「・・・ダラさんは凄いよね。『私もリカも』そう思っている。

600年近く存在しているのに、現代に迎合できている。リカ達の世界にもそういう呪術師がいたけど、奴の知識は自分の世界を作る為の踏み台でしか無かった。

ダラさんは違う。生きていて楽しむ為に受け入れている。

リカ達には、それが出来ないんだよ。あまりに人間が憎すぎて。」

「お主は想い人に浄化されたと言っていたが?」

「嘘だよ・・・。成仏したら、生まれ変わって別人になるから、憂太を見守れない。

憂太の恋人を認めているとか言うのも嘘。殺してやりたい。でも、そうすると憂太が悲しむから出来ない。

だから、私は『心を分割した』。そうしないと、私は、リカは、まともじゃいられなかった。憎くて憎くて。椿の事を悪く言えないね。似たもの同士だよ。」

「・・・ワシからの助言じゃが、時間が解決してくれると思うぞ。ワシも人間の寿命の数倍呪ってきた。殺してきた。その後、それが馬鹿らしくなってきたというか・・・。

まぁ、何とかなるんじゃよ。」

「そうだね。そうだといいなぁ。リカも。あの漏瑚も。」

 

 

儂は、巨大な火山岩の上に居る。・・・かつての宿儺との戦いを思い出す。奴は避けた。この椿は当たった感じがする。

「がぁぁぁぁぁ!!!」

岩を掘り抜いて、椿が出てきた。やはり深手だ。

「はぁ。はぁ。舐めておったわ、土くれ。」

「儂も軽んじていた。この技を受けて、生きているだけで大したものだ。

・・・だが、お前は永遠に軽んじさせてもらうが。」

「そんなに私を格下に見たいのか?こんな事も出来るんじゃぞ?」

椿はまた脱皮した。だが傷等はそのままだ。

 

・・・脱皮した皮膚の裏側に術式が書き込まれていた。

「お主らは異なる世界の住人じゃろう?こんな術を見た事あるか?己が肉体に直接術を書き込む。これは、人だった頃の私と木春が使こうていた巫女の技。痛くて使いとうない。

己を犠牲に術を使って健気じゃろう?だから、意趣返しに相手を踏み台にしたくなる。

だが、今の言葉で言うとメリットもある。事前に霊力をストックできるので、重傷かつ霊力が枯渇しても強力な技が使える。そして、ここに書き込んだのは、木春から読み取ったお主らの世界の術。『術式反転した反転術式』。」

椿が回復するのと、儂が印を結んだのは同時だった。

「領域展開!!蓋棺鉄囲山(がいかんてっちせん)!!」

次の瞬間には、儂と椿は火山の内部と言える領域にいた。

 

蓋棺鉄囲山は、必中必殺の領域。通常ならば、これで仕留められる筈だが・・・。

椿は簡易領域の様な結界を形成していた。

「これも、皮膚に刻んだ私の術の1つ。やたらと溶岩が当たってくるが、予想通りに防げる。こうも上手くいくと、何かの策と疑いたくなるが・・・。」

その通りだ阿呆が、と種明かしをしたかったが我慢した。

そう、儂が最初に戦う事。椿への対策と称してダラに儂らの世界の術式を教えた事。全て計画通り。

これは試験だ。儂が、呪霊が、里香の目に適うかどうかの。

 

「さて。空間そのものが攻撃してくる。これを維持するのはさぞかし力を使おうな?

どの位持つのやら。」

 

その通りだ、長く持たんよ。

 

数分で領域が崩壊した。その直後に、儂は椿の尾に吹き飛ばされた。

 

「ほい、キャッチ。漏瑚よ、お主強いなぁ。」

「散々弱い弱い言われ続けてきたがな。」

「それは相手が悪いんだよ。でも、ダラさん、つけあがらせちゃいけないよ。漏瑚さんみたいないじめっ子タイプは褒めると調子に乗って暴走するから。」

「里香もいじめっ子タイプじゃがな。」

 

「何を喋っておるのか?愚妹ども。私もあの術を使えるのじゃぞ?お前から情報を得ているからなぁ。」

儂らに椿が接近し、3つの両腕でそれぞれ印を結んだ。

「領域展開。『蠱毒斑(こどくのまだら)』。」

 

 

椿の領域に包まれた。

そこは四方に大小様々な蛇が蠢いている空間。

そして、足場は巨大な蛇が口を開けて形成している。この領域も必中必殺か。

 

「さて、毒と溶解液を持つ蛇が際限なく襲いかかってくる。いつまで持つのやら。」

儂の背中に里香が触れた。術式反転した反転術式だ。

「漏瑚さん。腕の見せ所だよ。」

さっき褒めるなと言っただろうに。・・・あぁ矛盾か。これが人間か。

 

儂は、簡易領域を形成した。儂らを包む溶岩の結界。結界内の儂ら以外を焼き尽くす。

これが、里香が儂に覚えさせた技の一つ。そう、弱者の領域。

人の混じっていない呪霊で、これを身につけた存在はいない。宿儺ですら使っていない。

しかし、便利だ。呪力をあまり使わず、蛇の毒や侵入を防いでいる。領域展開の影響を防いでいる。

里香は『これを覚えるのも成長』と言っていた。本当にそう思う。

弱者が使う術式と何故侮っていたのか。そうやって逆に無駄な大技を使い続け、力尽きて敗北。愚か極まれり。

五条悟が言っていたな。『学習しろよ』と。

学び続けてやるよ、弱者が生き抜く術を。強者になる為に。

 

そう自問自答している間に、椿が疲弊してきた。明らかに顔に出ている。慣れない術式を使うから。

椿は騙し続けて生きてきたらしい。可哀想な女を装い続けて。人々を糧にして。

強者になって、その術を失ったのだろう。愚かな。

お前も儂の成長の糧にしてやるよ。

 

「・・・のう。私が疲弊しているように見えるか?」

「滅茶苦茶見えるよ。」

里香が、心底腹が立つ顔で挑発した。後で『メスガキ顔』という顔だと教わった。

「甘いわ!私には絶対に勝てぬ!そやつがいる限り!なぁ『木春』。」

「・・・。」

「『木春』。その名は『椿』の出来損ないを意味する。名とは絶対なる呪(しゅ)。

貴様がいかにダラなんたらと名乗ろうと、家系図等を書き替えようと意味は成さぬ。

木春という名の道具!私に貴様の力を寄越せ!」

 

 

 

 

・・・何も起きなかった。

 

 

 

 

「何故だ・・・。何故だ!何故だ!何故だ!」

「ダラさんの力が、圧倒的にお前を上回っているからだよ、椿。

名の縛りは強力だけど、呪いは所詮力関係。ダラさんは、チンケな呪いを超えた。

・・・リカも、お前はムカつくんで色々言いたい事があるけど、後はダラさんに任せるよ。

ダラさん。領域を破る最も簡単な方法は、より強い領域による上書きだったよね。」

「おう。任せよ。」

「おろち!こやつらを喰らえ!」

椿の領域の足下にある巨大な蛇の口が、儂らを喰おうとする前に、

 

「領域展開!『螺旋斑(らせんのまだら)』!」

3つの両腕で印を結んだダラの領域が掻き消した。

 

 

その空間は、最初は暗闇の中に巨大な蛇の胴体だけがあった。

そして、蛇の斑模様が変形する。斑点模様が分離して、儂らと椿の足場になった。

それは上に延々と連なる。下にも。螺旋階段の様に。

上には光が見える。下は底無しの闇。それがダラの領域だった。

 

「・・・ワシは、必殺とか性に合わぬ。だから、この空間は対象を成仏させる。上の空間へと押し上げ、極楽に逝かせる。そういう仕組みにした。」

「散々人を殺しておいて、どの口が言うのか愚妹。

それに、私は成仏などせぬぞ。私は、この現世を我が子で満たす。それが私の宿願故。」

 

変化が起きた。椿の身体に。メキメキと椿の身体が所々割れて、中から人が出てくる。

「な!何だ!こやつらは!」

「見覚えがありませぬか『姉様』。否、忘れたとは言わさぬ。」

「これは、我が村の者共・・・。父上、母上・・・。

何故だ!何故、私を呪う様な目で見る!貴様らを殺したのは、あの木春だろうが!」

「それらは怨念。本物では無い。そして本人達に全てを話した。ワシも本人達から全てを聞いた。その結果がこれ。お前を呪うと。」

「騙したのか、呪いを!」

「真実を聞き、真実を話しただけ。・・・少なくとも村人達を殺したのは貴様だろうが!」

 

椿の台座が下がっていく。下の果て無き無明の闇へと。

「何だ・・・。下に何がある!」

「上は極楽。ならば下は決まっておろう。」

「嫌じゃ!私は人々の為に尽くした!実の妹に無惨に殺された!そんな不幸な私が何故この様な目に・・・。」

「・・・呆れて物も言えぬ。」

「助けて、妹よ!実の姉を地獄送りにするのか!何でもするから・・・。謝るから・・・。」

「ほらな、命乞いした。そして。」

 

ダラは6本の手の親指を下に向けた。真底嫌そうな顔をして。

「地獄の底へ去ね。カスが。」

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

椿は、闇の底へと落ちていった。

 

ダラは領域を解除した。そして、慣れない術を使ったのでかなり疲弊していた。

儂は、術式反転した反転術式をダラに使用した。

これも里香に教わった術式。そして反転術式は、呪霊には毒である為、宿儺しか使用していない。

強い呪霊の宿儺や、人間側の強者である五条悟や乙骨憂太といった存在しか使用できない回復技。

弱者が最も使用するであろう回復を、弱者が使用できない。また矛盾だ。

「この世には矛盾が多い。多すぎる。嫌になる。」

儂は愚痴を言った。

「だからこそ成長するんだよ。進化していくんだよ。少しでも矛盾を是正していく為に。それを行うのが人たる地位にいる者達の使命。霊長の使命だと、リカは思うよ。」

 

儂は里香を見た。

見た目相応の少女らしく可愛らしく微笑んでいた。

 

「ふぅ。落ち着いた。ありがとう漏瑚。」

ダラに言われた。・・・何だ、このむず痒い感覚は。

 

 

儂と里香は、ダラと餓鬼共・・・三十木谷日向と三十木谷薫に別れを告げて、元の現世とあの世の狭間に帰った。

 

そして、儂ら呪霊の魂達は、里香に新たなる居場所として、地球より遙かに離れた場所にある惑星を与えられた。どこか未来の映像で見たあの異星人達の住んでいた場所に似ている。

「漏瑚さんは、呪霊の未来への道の一歩を示してくれた。これはプレゼントだよ。」

「呪霊達は成仏したのでは?」

「強制的だからね。納得していない魂達を、古今東西集めてここに連れてきたんだよ。」

 

魂達が元の呪霊の形を成してきた。

花御と陀艮がいた。元の記憶があった。儂らは再会し・・・涙一つも出なかった。

真人がいた。蹲ってブツブツ呟いている。

「こいつを虎杖さんと戦わせたり、利用させたのはリカだからね。本当なら虎杖さんにビビり続けて何も出来なかった筈なのに。

少し可哀想だから、再構築して連れてきた。まぁ教育してやって、少しはマシな性格にしてよ。」

「本当に傲慢だな、お前は。」

「だって呪いの女王だもん。」

 

「そして、これはリカからの宿題というか、願いだよ。

何百年も何千年もかけてもいい。人と寄り添って。共存できる様にして。

リカも地球の人間を、他の霊長と共存できる様に導くから。」

「共存して何になる。」

「可能性が出来る。異質なる存在と共存できなければ、可能性は生まれない。成長は生まれない。進化できない。進化できない種族は滅ぶだけ。

1人だったり同じ存在とだけくっついていた宿儺や羂索は、だから滅んだんだよ。可能性が無いから。進化の終点だから。

だから、宿儺を超えてね、漏瑚さん。リカも地球から見守っているから。」

 

そう言って、祈本里香は可愛らしい笑顔で去って行った。

 

今後、儂らがこの星で何をするか。それは、まだ決定していない。

術を極めても良いだろう。繁殖しても良いだろう。だが、それは進化ではない気がする。

まず、殺し呪い以外で楽しめる様になろう。ダラに言われて悔しかったから。

そして、泣ける様になろう。これを涙というのをあの世への道の途中で知った。

別に泣けて、何が偉いのかとは思う。

だが、水に濡れると常に熱い儂は、少し気持ちが良いのだ。


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