脳を入れ替える魔法   作:Fronta

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第二話です。


第二話

北側諸国グローブ盆地 第一次試験区域

 

試験を受ける魔法使いたちが集まっていた。

「第一次試験の具体的なルールを説明する。」

「この試験区域には隕鉄鳥(シュティレ)という小鳥が生息している。各パーティーにつき一つ籠を配布しておいた。」

「第一次試験の合格条件は二つ。明日の日没までに隕鉄鳥(シュティレ)の入った籠を所持していること。その時点でパーティーメンバー全員そろっていることだ。」

「基本的に行動は自由だが試験区域の外に出たものがいた場合は、その所属パーティー全員をその場で失格処分とする。」

 

「区域を囲むように強力な結界を張っておいてよく言うぜ。」

「出られるわけないのにね。」

フリーレンのパーティーメンバーらしき取っ組み合いをしている二人がそう漏らす。説明は聞いているらしい。

 

「それでは第一次試験を開始する。」

受験者たちがバラバラの方角に移動を開始する中、ケンジャクたち第17パーティーはその場で相談を始めた。

 

「さてどうするんじゃ。」

エーデルの言葉を皮切りにケンジャクが話し出す。

 

「まずは隕鉄鳥(シュティレ)を探そうか。」

 

「探すといってもどこをじゃ?闇雲に探す時間はないぞ。」

 

「とりあえず水場に行こうか。」

ケンジャクの発案で3人は水場へと向かう

 

しばらく歩くと木々の間から川のせせらぎが聞こえてきた。

 

「なぜ水場なのですか?」

 

後ろをついてくるドゥンストが首を傾げながら尋ねる。

 

「動物は水を求めるからね。隕鉄鳥(シュティレ)だって同じだよ。広い試験区域をやみくもに探すより、集まりやすい場所を押さえた方が効率的だろう。」

 

「なるほど。しかし他のパーティーも同じことを考えているのでは?」

 

「まあ問題ないかな。」

 

ケンジャクは何でもないことのようにそう言った。その言葉の意味をドゥンストは測りかねたが、エーデルは興味なさそうに鼻を鳴らしただけだった。

 

湖に行くと、予想通りすでに別のパーティーが陣取っていた。男たちの三人組だ。ケンジャクが知らないということはさして警戒すべきでもない相手だ

 

「先客がいるね。」

 

「...退け。ここは我々が先に確保した。」

 

男の一人が杖をつきながら低く言った。

 

「怖いねぇ。」

 

ケンジャクはへらへらと笑いながらも、その目は笑っていなかった。

 

「スグル、ここは引いた方がよいのでは?わざわざ揉め事を起こさなくとも水場は他にもあるじゃろう。」

 

エーデルが耳打ちする。

 

「そうだね。」

 

あっさりとケンジャクは頷いた。

 

「じゃあ行こうか二人とも。」

老人のパーティーから見えなくなったところで、エーデルが目を細めた。

 

「引こうといった身でなんだが引くとは思わなかったぞ。」

 

「少なくとも今ここで消耗するのは得策じゃないんじゃない。」

 

「...儂が止めなくても最初からそのつもりじゃったのか。」

 

「もちろん。」

飄々と答えるケンジャクにエーデルは小さくため息をついた。

 

水を探して歩くこと十数分。今度は誰もいない小さな湧き水の池を見つけた。

 

「ここがよさそうだね。」

三人が池のほとりで息をついたとき、近くの茂みがざわりと揺れた。

 

ドゥンストが反射的に身構えると、茂みの奥から小さな鳴き声が聞こえた。

 

ぴっ、ぴっ。

 

三人の視線が一点に集まる。

枝の上に、小さな薄い茶色の小鳥が止まっていた。

「...あれが隕鉄鳥(シュティレ)じゃないか?」

エーデルが囁く。

 

「みたいだね。」

ケンジャクは籠をそっと持ち上げ、静かに一歩踏み出した。

 

当然隕鉄鳥(シュティレ)はケンジャクを察知し超高速で逃げようとする。

 

魔物を操る魔法(マニプリーレン)

ケンジャクは地面に影のような黒いシミを生み出しそこから鯰のような魔物をだす。

 

次の瞬間隕鉄鳥(シュティレ)が地面に落下しケンジャクが籠に捕らえる。

 

「終わったよ。」

何でもないような調子でケンジャクが報告する。その一方二人は目を見開いていた。

 

「なんじゃそれは...魔物か?」

エーデルが驚いたように言葉を零す。

 

「ん?ああそうだね。これが私の魔法、取り込んだ魔物を操れるんだ。」

 

「見たことのない魔法じゃな...なにをさせたのじゃ?」

 

「あの魔物はね相手に自分が落下していると錯覚させられるんだ。だから平衡感覚が狂い墜落したんだよ。」

「さて、合格条件の一つは満たした。あとはパーティー全員で日没まで生き残るだけだけど。」

 

「生き残る、とはまたきな臭い言い方じゃな。試験区域で人を傷つけることは許されておるのか?」

 

「ルール説明をよく思い出してごらん。行動は自由、と言っていたよ。」

三人の間に一瞬沈黙が落ちた。

 

「つまり...他のパーティーから籠を奪うことも、あるいは」

 

「メンバーを欠けさせることも、ね。」

ドゥンストの言葉をケンジャクが引き取る。その口元には薄い笑みが浮かんでいた。

「この試験、鳥を捕まえるだけじゃ終わらないということですか。」

 

「どうだろうね。」

ケンジャクは籠を軽く持ち上げ、中の隕鉄鳥(シュティレ)を眺めた。

 

「とりあえずまだ時間がある。どこかで休もうか。」

 

少し時間がたった頃、三人は木陰に腰を落ち着けていた。結界の外では雨が降っているようだ。

 

籠の中の隕鉄鳥(シュティレ)はすっかり大人しくなっている。

 

「静かじゃな。」

エーデルが周囲を見渡しながら言う。

 

「そうだね。みんな鳥を探すのに必死なんだろう。」

 

「私たちはこのまま何もしなくていいのですか?」

ドゥンストが少し不安そうに尋ねた。

 

「いいんじゃないかな。わざわざ動く必要もない。」

 

「しかし他のパーティーが籠を奪いに来るかもしれんぞ。」

 

「来たら来たで対処するよ。」

ケンジャクはそう言って目を閉じた。まるで昼寝でもするような気軽さだった。

 

エーデルはそんなケンジャクをしばらく眺めてから、ふと口を開いた。

「スグル、一つ聞いていいか。」

 

「どうぞ。」

 

「お前は何のために一級魔法使いになりたいんじゃ。」

静寂が少し伸びた。

 

「北部高原に用があってね。」

 

「北部高原に?あそこに何をしに行くんじゃ。」

 

「さあ。行ってみないとわからないよ。」

はぐらかすような答えに、エーデルはそれ以上追及しなかった。長く生きた者の勘がそれを止めた。この男は話す気がないときは何を聞いても無駄だと、なぜかそう直感した。

 

その時だったどこからから白い光が天に放たれ結界が音を立てて崩れていった

 

「っはは...フリーレンか、やはり規格外だね。」

ケンジャクが楽しそうに笑う

 

「な、なんじゃ今のは...結界が崩れたぞ!」

エーデルが思わず立ち上がる。ドゥンストも驚きで言葉を失っていた。

 

「ゼーリエが張った結界だよ。あれを破るなんてね。」

 

ケンジャクは崩れた結界の余韻が空気に溶けていくのを眺めながら、どこか満足そうに目を細めた。

 

「さてあと2時間で日没だしこのまま隠れていようか。」

 

そして2時間後...

 

「時間だな。」

「第一次試験合格者は計6パーティー18名。現時刻を以て第一次試験を終了とする。」

暗い森にゲナウの声が響く。合格したのは第1パーティー、第2パーティー、第4パーティー、第8パーティー、第13パーティーそしてケンジャクたちの第17パーティーだった。その中には当然フリーレンの姿があった。

 

「第二次試験は3日後だ。詳細については追って連絡する。以上だ解散。」

ここに第一次試験は終了した。ケンジャクの力の大部分を隠しながら合格という形で。




今回ケンジャクが使った魔法は、魔物を操る魔法(マニプリーレン)です。そうです呪霊操術です。読みの由来はドイツ語のmanipulieren(操る)から。
呼び出したのは渋谷事変のときに虎杖に使った鯰くんです。
さて問題です。ケンジャクくんは北部高原で何を企んでいるでしょうか?
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